鼻いびきって何?
まずは、鼻いびきとはどのようなものなのか、解説していきましょう。
鼻いびきのメカニズム
そもそも、いびきとはさまざまな理由で気道が狭くなり、気道中を無理やり空気が出入りすることによって粘膜が振動し、発生します。
この気道の狭窄・閉塞の原因が鼻づまりの場合に起こるのが、「鼻いびき」と呼ばれるものです。
睡眠中に鼻がつまると、鼻呼吸がうまくできなくなり、代わりに口で呼吸をするようになります。そして、寝ている間の口呼吸は喉の筋肉を緩ませ、舌が喉の奥に落ち込んで気道の閉塞を引き起こします。
これが、鼻づまりによって鼻いびきが発生するメカニズムです。また、口腔内の水分が蒸発して乾燥するので、いびきの音が大きくなる要因にもなります。
そして、いびきには鼻いびきの他に、喉いびきと呼ばれるものもあります。これらの違いは、下記で解説しているのでぜひ参考にしてください。
鼻いびきと喉いびきの主な違いは?原因と注意したいいびきの特徴
鼻いびきの原因となる疾患
では、鼻づまりを起こす原因となる疾患には、どのようなものがあるのでしょうか?
風邪・花粉症
まずは、風邪・花粉症による鼻づまりです。
誰しも、風邪や花粉症によって鼻がつまり、呼吸がしづらくなった経験があるでしょう。風邪は細菌やウイルス感染による感染症、花粉症はスギやヒノキの花粉などが原因で生じる季節性アレルギー性鼻炎によって鼻づまりになります。
ですが、風邪・花粉症によるいびきは、原因が一時的なものであるため、症状が治ればいびきも自然と改善する場合が多いです。ゆえに、鼻いびきの原因の中では、比較的心配が少ないと言えるでしょう。
通年性アレルギー性鼻炎
次は、通年性アレルギー性鼻炎による鼻づまりです。
通年性アレルギー性鼻炎は、ダニやホコリなどが原因で1年を通してくしゃみや鼻水、鼻づまりがある鼻炎です。
上記で花粉症について紹介しましたが、花粉症は原因となる花粉が飛ぶ時期にのみ発症する季節性アレルギー性鼻炎であるのに対し、 通年性アレルギー性鼻炎は季節に関係なく年中鼻炎症状が認められるのが特徴です。
そのため、鼻呼吸が妨げられ、日常的な口呼吸による鼻いびきを助長します。
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
次は、慢性副鼻腔炎による鼻づまりです。
慢性副鼻腔炎は、副鼻腔(頬、顔、目の周りの骨の空洞部分)が炎症を起こす疾患です。炎症の発端はウイルスや細菌感染で、発症すると副鼻腔内に膿が溜まります。これを、急性副鼻腔炎と呼びます。
そして、これが慢性化すると、中に溜まった膿が排出できなくなって炎症が悪化し、さらに膿が溜まるという悪循環に陥ります。この状態が、慢性副鼻腔炎です。
ちなみに、慢性副鼻腔炎と似た症状として蓄膿症(ちくのうしょう)がありますが、こちらは正式な医学用語ではなく、古くから使用されている俗称です。ゆえに、両者は同じ病気を指していると認識して良いでしょう。
慢性副鼻腔炎になると、以下のような症状を認めます。
- ・鼻詰まり(鼻閉)
- ・黄色く粘り気のある鼻水が出る
- ・後鼻漏(こうびろう)がある:鼻水が喉の方へ落ちてゆく
- ・咳が出る
- ・頭痛や頭重感がある
- ・匂いが分かりづらくなる嗅覚障害がある
こうした症状によって、口呼吸が誘発され、鼻いびきを引き起こす原因となるのです。
鼻中隔湾曲症
最後の鼻中隔湾曲症は、鼻の中で左右の鼻腔を隔てる壁(鼻中隔:びちゅうかく)が生まれつき強く湾曲しているために、睡眠中の鼻呼吸を著しく妨げてしまう疾患です。
とはいえ、健康な人でも少々の湾曲はあるので、鼻中隔の湾曲自体はそれほど珍しいことではありません。
しかし、鼻中隔湾曲症の人は上記で紹介したようなアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がないにもかかわらず、強い鼻づまりや鼻閉感を生じ、鼻いびきにつながることがあります。
鼻中隔湾曲症を発症している人には、次のような症状も見られます。
- ・日常的に口呼吸をしている
- ・頻繁に頭痛がある
- ・嗅覚障害がある
- ・狭くなった鼻腔内の粘膜が敏感になり、鼻血が出やすくなる
鼻いびきを放っておくとどうなるの?
ここまでの内容を読んで、「鼻づまりが原因でいびきをかくだけなのに、どうしてそれほど心配する必要があるんだろう?」と疑問を持った方もいるでしょう。
確かに、いびきは一見すると寝ている間に大きな異常音を発生させるだけなので、大きな問題はないように思えます。
ですが、鼻いびきは放置すると睡眠時無呼吸症候群というとても危険な疾患につながることがあります。
睡眠時無呼吸症候群を発症させる
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中にしばしば呼吸が止まってしまう(無呼吸状態になる)病気です。発症すると睡眠中は毎晩大きないびきをかくのが特徴で、日本の潜在患者数(適切な検査・治療を受けられていない人も含む)は940万人以上いるとされています。
そして、この睡眠時無呼吸症候群の発症原因となり得るのが、鼻いびきです。
鼻いびきが慢性化して睡眠中に無呼吸状態に陥ると、酸素不足を感じ取った脳が中途覚醒を起こし、睡眠阻害が起こります。
これにより、患者は慢性的な睡眠不足や、日中の強い眠気、集中力の低下などを引き起こします。
さらに症状が進むと、高血圧や糖尿病、肥満、動脈硬化、心臓病、脳卒中など、生活の質を著しく低下させ、最悪命を落とす可能性のある危険な合併症を次々と招くようになります。
睡眠時無呼吸症候群は社会活動への影響も甚大
そして、睡眠時無呼吸症候群で最も懸念されているのが、日中の強い眠気が原因で起こる居眠り運転や、それによる死亡事故です。
睡眠時無呼吸症候群は、発症していても自覚症状が乏しいという特徴があり、「最近ちょっと寝不足だな…」程度しか本人は感じ取ることができません。
それゆえに、無自覚のまま車の運転などをしてしまい、事故を起こして自分や相手に多大な損害を与えてしまうという事態が後を立たないのが現状です。
したがって、睡眠時無呼吸症候群に気づいたら放置は厳禁です。下記で紹介する鼻いびきの治療を早急に行う必要があります。
鼻いびきは治療できる?
鼻いびきは、次の治療法で改善を目指すことができます。
CPAP治療
まずは、CPAPです。
CPAPとは、鼻にマスクを装着し、そこから持続的に空気を送り込むことで狭くなっている気道を広げ、いびきの発生を防ぐ治療法です。睡眠時無呼吸症候群治療の中で最も安全性が高く、医療機関で頻繁に行われています。
これをすることで、多くの人は睡眠中のいびきや無呼吸症状が軽減し、ぐっすりと眠れるようになります。また、慢性的な睡眠不足も解消され、突然死につながる疾患の発症リスクを下げることも可能です。
ただし、鼻づまりがかなり深刻な場合は、CPAPを行っても効果が得られないこともあります。CPAP治療を受ける際は、自分の鼻づまりの程度や原因をしっかり見極めたうえで、実施する必要があるでしょう。
ナステント
次のナステントは、柔軟性が高いシリコーン樹脂を使用した管を鼻腔内に装着することで、鼻の呼吸を確保し、いびきを抑えることができる一般医療機器です。
上記で紹介したCPAP治療は、比較的重症のいびきや無呼吸に対して実施されますが、ナステントの対象は軽度のいびきや無呼吸、そして鼻づまりによって発生するいびきに対して効果を発揮します。
ゆえに、花粉症や通年性アレルギー性鼻炎による鼻づまりに対し、行われることが多いです。
ただし、ナステントも重症の鼻づまりには効果を発揮しきれないことがあるので、治療を希望する場合は医師から十分な説明を受けることが大切でしょう。
外科手術
重度の鼻づまり、特に慢性副鼻腔炎や鼻中隔湾曲症を伴う鼻いびきは、疾患の治療が優先的に行われます。
例えば、慢性副鼻腔炎の治療は専門の医療機関で膿を除去したり、薬物療法で炎症を抑えたりするなどの方法があります。
また、鼻中隔湾曲症の治療法は、主に湾曲を解消する外科手術が主流です。薬物療法などはありません。
このような手術を経て、鼻づまりが改善されたのちにCPAPをはじめとしたいびき・無呼吸の基本の治療が行われるのが通例です。
ただ、中には鼻づまりの解消手術を行っただけで鼻づまりがかなり改善され、睡眠が取りやすくなるケースもあります。
外科手術は費用も高額になりやすく、手間もかかるため、億劫だと感じる人もいるでしょう。しかし、良質な睡眠と将来の健康を維持するためには欠かせない治療ですので、心当たりのある人は速やかに耳鼻咽喉科を受診して、治療を受けるようにしてください。
近年注目を集めているパルスサーミア治療
最後に、睡眠時無呼吸症候群を解消する外科手術の中で、近年注目を集めているパルスサーミア治療についてご紹介します。
パルスサーミア治療は、特殊なレーザーを使用した最新のいびき治療で、これまで難しいとされていたいびきの根本治療を高い確率で目指せる画期的な方法です。
従来の外科手術では、レーザーを照射した部位の出血や痛み、術後の副作用、ダウンタイムなどがあるとされ、患者の負担が大きいのが難点でした。
しかし、パルスサーミア治療ではレーザーを照射した喉粘膜(軟口蓋や口蓋垂など)からの出血はなく、痛みもほとんどありません。また、ダウンタイムや副作用もほぼないため、術後数日で通常通りの生活に戻ることができます。
パルスサーミア治療を受けてみたいと思われた方は、いびきメディカルクリニックでの治療がおすすめです。当クリニックでは、治療前に無料カウンセリングを実施しています。専門のスタッフが治療に関して分かりやすく説明しますので、ぜひご活用ください。
まとめ
今回は、鼻いびきが発生するメカニズムと原因になる疾患、そして治療法について解説しました。
鼻いびきは、鼻づまりによって呼吸がしにくくなることが原因で発生するいびきで、風邪や花粉症、通年性アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症などが要因としてあげられます。
そして、鼻いびきを改善するには、これらの疾患に対し、治療を行うことが重要です。それぞれの疾患によって適用される治療法は異なるため、症状に心当たりのある人は、医療機関を受診してください。