睡眠中の口呼吸が良くないのはどうしてなの?
睡眠時に口呼吸をすることで起こる良くない影響は、主に3つ、挙げられます。
- ・細菌やウイルスに感染するリスク
- ・虫歯、歯周病、口臭悪化のリスク
- ・睡眠の質の低下
それぞれの影響について、より詳しく説明していきます。
細菌やウイルスに感染するリスク
口呼吸では、細菌やウイルスに感染するリスクが高まります。
なぜなら、鼻呼吸は吸った空気が肺に届くまでに、細菌やウイルス、花粉、塵などの不純物をブロックするフィルター機能や、加湿保温するエアコン機能を持っていますが、口呼吸にはそれらがないからです。
鼻呼吸では、鼻毛で大きな異物である塵などを捕獲し、さらに細かい細菌やウイルスなどは鼻孔の粘膜でつかまえ、粘液と繊毛の働きで体外に排出します。また、異物の刺激が強い場合や塵などが大きい場合は、くしゃみで外に出すのです。
したがって、鼻呼吸をした方が細菌やウイルスに感染するリスクは低くなります。
虫歯、歯周病、口臭悪化のリスク
口呼吸では、虫歯、歯周病、口臭悪化のリスクが高くなります。
なぜなら、口の中が乾燥して、唾液の量が減少するからです。
唾液には以下のような働きがあります。
- ・自浄作用
- ・抗菌作用
- ・pH緩衝作用
- ・再石灰化作用
それぞれの働きについて、より詳しく説明していきます。
自浄作用
自浄作用とは、歯や歯間に付着した食べ物やプラーク(歯垢)を洗い流す働きのことです。
したがって、唾液が少ないと流されず、留まったままになってしまうので、虫歯や歯周病になりやすくなります。さらに、虫歯や周病があると、口臭も悪化します。
抗菌作用
抗菌作用とは、口の中の細菌の増殖を抑える働きのことです。
具体的には、唾液中のリゾチーム、ラクトフェリン、ペルオキシダーゼヒスタチンなどの酵素や抗菌物質、分泌型免疫グロブリンA(IgA)などの抗菌因子が抗菌力を示します。
したがって、唾液が少ないと、細菌は増殖し、虫歯や周病が起こりやすくなります。
pH緩衝作用
酸っぱいものを食べても酸味が持続せず、歯が溶けてしまうわけでもないのは、唾液のpH緩衝作用のお陰です。
飲食により酸性に傾いた口内のpHを中和させることで、虫歯を防ぎます。
したがって、唾液が少ないと、虫歯が発生しやすくなります。
再石灰化作用
再石灰化作用とは、飲食により溶けかかった歯の表面を修復し、虫歯を防ぐ働きのことです。
初期虫歯になっても、溶け出したカルシウムやリンを歯の表面に戻したりする働きをして、虫歯が進行しないようにしてくれます。
つまり、唾液がないと、初期虫歯が本格的な虫歯になってしまいます。
睡眠の質の低下
睡眠時に口呼吸をしていると、睡眠の質の低下を招くことがあります。
なぜなら、口呼吸では呼吸が浅いため、酸素吸入量が少なくなる上に、交感神経が過剰に働くからです。
さらに、睡眠時の口呼吸は、睡眠時無呼吸症候群やいびきのリスクでもあります。
口を開けたまま寝ている時に、下あごや舌が重力で下がり、気道を圧迫・閉鎖することで、睡眠時無呼吸症候群は起こります。同様の理由で誘発されるのがいびきです。
睡眠時無呼吸症候群やいびきが起こると、睡眠の質の悪化は、さらにひどくなります。
睡眠中に口呼吸になってしまう原因は何なの?
睡眠時に口呼吸になってしまう原因は、次の3つが考えられます。
- ・鼻づまり
- ・顔の骨格の形状
- ・口輪筋など口まわりの筋力低下
3つの原因について、より詳しく説明していきます。
鼻づまり
風邪やレルギーによる鼻炎、副鼻腔炎など、何らかの疾患で鼻づまりがあると、鼻で呼吸がしにくいので、口呼吸になってしまいます。子どもの場合は、アデノイド(咽頭扁桃)肥大が原因の場合もあります。
したがって、日常生活から判断して、鼻づまりの原因になるような疾患がある場合は、改善するために早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。原因疾患を治療すれば、自然と鼻呼吸ができるようになります。
鼻づまりについては、下記のコラムでも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
顔の骨格の形状
顎が未発達で小さかったり、歯並びが悪かったりすると、口が閉じにくかったり、舌が収まるスペースが狭かったりして、口呼吸が習慣になってしまう場合もあります。
このような場合は、歯科医師に相談しましょう。12歳(個人差あり)までなら患者さん自身が行うトレーニングでも、さらに大人でも矯正治療で改善することは可能だと言われています。
口輪筋など口まわりの筋力低下
年齢を問わない原因として挙げられるのは、口輪筋など口まわりの筋力低下です。口まわりの筋肉が弱いため、開きっぱなしになり、自然に口呼吸をしてしまいます。
口周りの筋力の低下は、現代の柔らかい食事や、 E-メール・SNSなどの通信手段が発達したことによる会話機会の減少も、要因になっているかもしれません。
睡眠中の口呼吸対策法9選
口呼吸は、原因となる疾患がある場合は治療が必要ですが、そうでない場合は自力で対策することも可能です。
疾患が原因ではなく、単に習慣や癖で口呼吸をしてしまう方のための口呼吸対策を9つご紹介します。
- ・鼻呼吸の練習
- ・ホットタオルで温める
- ・横向きに寝る
- ・マウステープ
- ・鼻腔拡張テープ
- ・鼻呼吸マスク
- ・マウスピース
- ・チンストラップ
- ・筋機能訓練法
それぞれの対策について、より詳しく見ていきましょう。
鼻呼吸の練習
口を閉じて、一方の鼻を人差し指で押さえ、もう一方の鼻で息を吸って吐きます。反対側も同様に、交互に5回繰り返します。
鼻呼吸のコツか掴めたら、1日に何度でも良いので、口が開きっぱなしになっていないか、鼻で呼吸をしているかを意識しましょう。これだけで、口呼吸から鼻呼吸へ治せることがあります。
ホットタオルで温める
水で濡らしたハンドタオルを固く絞り、電子レンジで20秒〜30秒温めて、ホットタオルを作ります。このホットタオルを鼻に2~3分乗せましょう。血行が良くなり、適度な湿り気で鼻づまりが軽くなります。
簡単なので、寝る前の習慣にしても良いですね。
横向きに寝る
口まわりの筋力が低下している人が仰向けに眠ると、どうしても口が開きやすくなります。
しかし、横向きに眠ると、筋力の有無に関係なく、口が閉じやすいです。
仰向けで寝ている人は横向きに寝てみましょう。
マウステープ
マウステープとは、口に貼って強制的に口を閉じるテープのことです。
睡眠中に口が開かないように、唇に対し縦に一本テープを貼ります。このように貼れば、咳やクシャミをしても隙間から呼気が逃げるので、鼓膜を痛めません。
しばらく継続することで、鼻呼吸の習慣が付きます。
アロマ付きの「マウステープ」という名称の市販品もありますが、普通のサージカルテープで十分です。12mm幅から開始しましょう。慣れてきたら、24mm幅にすると、より効果的です。
ただし、皮膚を傷めないように、テープの糊が強いものは避けましょう。肌が弱い方は専用のテープがありますので、薬局の方に相談しましょう。
マウステープについては下記のコラムでも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
鼻腔拡張テープ
1㎝×5㎝ほどの粘着テープに、テープより1まわり小さめのプラスチック製板ばねを組み込んだ構造で、鼻骨下周辺を覆うように貼り、板ばねの復元力で鼻孔上部の皮膚が外側に引っ張られることで鼻孔を広げる仕組みになっています。
鼻の皮脂による粘着力低下防止のため、普通のテープより強い粘着力があります。したがって、剥がす時に皮膚を傷つけないよう注意しなければなりません。しかし、薬剤を使っていないので、薬を服用中でも気にしなくて良いのも特徴です。
鼻呼吸マスク
鼻呼吸マスクとは、顎を下から支えることで、口を閉じるように工夫されたマスクです。就寝時に付けることで、口呼吸を予防します。
マウステープよりやや強力なので、自分で着脱できない方の使用は避けるように、との説明が商品にもあります。
マウスピース
マウスピースを付けていると、口呼吸ができないので、自然に鼻呼吸をすることになります。
購入先はドラックストアなどです。
軽度の睡眠時無呼吸症候群の治療などに用いられる医療用のマウスピースは、診断があれば、保険適用となる場合があります。詳しくは下記のコラムでも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
チンストラップ
顎を支え、口をしっかりと保ち、喉への空気の流入を制限することで口呼吸を防止します。
ただし、歯の矯正中の方や顎関節に異常のある方、骨格の成長期に当たる18歳未満の方は、使用できません。
形や素材には、さまざまな種類があります。扱いやすさや肌触り、洗濯機で洗えるかなどを確認してから購入しましょう。
筋機能訓練法(Myofunctional Therapy:MFT)
筋機能訓練法とは、舌、唇、頬など口まわりの筋肉をトレーニングする方法です。
これは、口まわりの悪いくせを取り除くために、正しい動きを再教育していくような方法で、矯正歯科などでも指導しています。
1例をご紹介します。
- ・スポットポジション:リラックスした状態で口を閉じ、上あごのくぼみの先の「スポット」に舌の先端を付け、舌の表面は上あごに付け、この状態で30秒間、唾液を飲み込む練習をする(唾液を飲み込むときもスポットから舌を離さない)
- ・ポッピング:舌の先端をスポットに付け、舌全体を上あごに吸い付け、口を大きく開けて舌の裏側を伸ばし、それから舌を「ポン!」と音を立てて下におろすこれを10回繰り返す
他に、あいうべ体操と言う、トレーニング方法もあります。
あいうべ体操についてはこちらのコラムでも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
また、食事も日常生活でできる筋機能訓練法の1つになります。食事を摂る際は、1つ1つの食材をしっかり噛んで咀嚼筋を鍛えましょう。
万全の対策で睡眠中も鼻呼吸をしよう!
この記事では、睡眠中の口呼吸の影響と防止策について解説しました。
本来、人間は呼吸を鼻でする生き物で、鼻もそのような構造になっています。
口呼吸を止め、鼻呼吸にすることで、健康に害を及ぼすリスクが少なくなります。
睡眠中に口呼吸をしてしまう原因があれば解消し、鼻呼吸できる環境を整えましょう。
よくある質問
Q.口を開けて寝てしまう原因は何がありますか?
A.睡眠中は上気道(鼻や咽喉)が狭くなるので、起きている時より、鼻から咽喉までの呼吸抵抗が高く、鼻で息がしにくくなるからです。肥満による喉の圧迫、加齢などで筋肉が緩むなどが重なると睡眠時無呼吸症候群になってしまうこともあります。詳しくは「【症状例】無呼吸症候群の主な症状とは?」をご覧ください。
Q.睡眠中の口呼吸を治す方法はありますか?
A.病気による鼻づまりや歯並びの悪さが原因の口呼吸でなければ、鼻呼吸の練習、睡眠時のマウステープの使用、横向きに寝る、口輪筋を鍛えるトレーニングなどで改善します。マウステープについては、「【効果はあるの?】睡眠時無呼吸症候群に口閉じテープは効くのか」をご覧ください。
[…] 起床時に口が乾いているなど、常に口呼吸である兆候が見られるいびきの場合は、喉いびきの可能性が高いと言えます。睡眠中の口呼吸の治し方について、詳しく知りたい方は、「【意識だけじゃ治らない?】睡眠中の口呼吸対策法9選」をご覧ください。 […]