寝過ぎると頭が痛くなるのはどうして?
はじめに、どうして寝過ぎると頭が痛くなるのかご説明します。結論からいうと、寝過ぎと頭痛には、医学的に明確な因果関係は認められていません。ですが、長時間眠ったあとに症状が見られることが多い頭痛が2種類あります。
それが、起床時の血管拡張と神経の刺激による「片頭痛」と、睡眠時の寝姿勢が悪いことによる「緊張型頭痛」です。
片頭痛
片頭痛とは、頭の片側もしくは両側のこめかみのあたりに生じる拍動性の頭痛で、主にズキンズキンと脈打つような強い痛みが生じるのが特徴です。また、基本的に「片頭痛」というだけあって、頭の片側だけに痛みが生じる場合が多いですが、中には頭の両側が痛むという人もいます。
そして、片頭痛には強い痛みだけでなく、次のような随伴症状(痛みに伴って現れる症状)や特徴的な症状が見られることがあります。
- ・吐き気や嘔吐、悪心
- ・光、臭い、音などの刺激に過敏になる
- ・強い痛みによって、ときには寝込むこともある
- ・無理に活動しようとすると、痛みが強くなる
- ・閃輝暗点(せんきあんてん)が見られる
- ・視野の中心が見えにくくなり、その周囲にキラキラ輝く歯車のようなギザギザ模様が見え、視野全体に広がっていく
寝起きに片頭痛が起きる原因
片頭痛を発症する原因は明確には判明していませんが、脳の血管がさまざまな要因で拡張することで、血管を取り巻く三叉神経が刺激されて痛みが生じるといわれています。そのため、起床時に発生する頭痛の場合だと、次のような発生メカニズムが考えられます。
- ・熟睡時間が長過ぎることで副交感神経が活性化されて血管が拡張し、心拍数や呼吸数が減少傾向になる。
- ・寝起きに急激に血流が増加し、血管の拍動が強まる。
- ・三叉神経が刺激されて目の奥から側頭部、頭全体にズキンズキンと痛みが起きる。
また、女性の場合は、月経前や月経中などエストロゲンの分泌バランスが大きく変動するタイミングで発作が起こりやすい傾向があります。さらに、ストレスや天候なども片頭痛の誘因の一つです。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、筋肉の緊張が原因で起こる頭痛で、頭が締め付けられるように痛くなるのが特徴です。ときどき症状が見られるもの(反復性緊張型頭痛)と、ほぼ毎日起こるもの(慢性緊張型頭痛)があり、片頭痛のようにズキンズキンと脈打つような痛みや、寝込むほどの強い痛みはありません。また、動いても痛みは強くならず、光・音過敏や吐き気もありません。
緊張型頭痛で見られる症状、痛みの特徴は次の通りです。
- ・後頭部から首すじにかけて、重苦しい感じや頭をベルトで締めつけられているような圧迫感と、じんわりとした痛みを感じる
- ・片頭痛のような、ズキンズキンと脈打つような痛みはない
- ・首や肩のこりをともなうことが多い
- ・通常は吐き気を感じることはない
- ・頭痛がしているときに光や音を煩わしく感じることは少ない
- ・動いても痛みは悪化しない
寝起きに緊張型頭痛が起きる原因
寝過ぎで緊張型頭痛が起こる原因としては、寝ている間の姿勢に問題がある可能性があります。
通常は、枕の上に頭を置き、無意識のうちに寝返りを打つなどして自分にとって最適な寝姿勢で眠ることができます。しかし、枕が頭から外れていたり、枕が適切な高さでなかったりすると、長時間姿勢が悪いまま寝続けることになり、首や肩に余計な負担がかかることにつながります。その結果、首や肩にかけての筋肉が過度に緊張した状態になり、寝起きの頭痛が発生すると考えられます。
片頭痛の解消法
では、片頭痛が発生した場合にはどのように対処すれば良いのでしょうか?片頭痛には、症状をさらに悪化させてしまう増悪因子(ぞうあくいんし)と呼ばれるものがあり、症状を改善するにはこの増悪因子を避けることが大切です。具体的な方法を見ていきましょう。
①暗く、静かな場所で横になる
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- 片頭痛は、大きな音やまぶしい光に対して敏感になり、痛みが強くなる特徴があります。また、無理に起きて活動するとさらに悪化するため、痛みが出たらベッドなどに横になり、部屋を暗くして安静にすることが大切です。
②痛みがある部分を冷やす
痛みがある部分を冷やすことで、周辺の血管の拡張が収まるため痛みが和らぎます。冷却シートや氷枕、氷のうを使用すると良いでしょう。
③睡眠をとる
片頭痛は動くと悪化する性質があるため、痛みが出たときはなるべく横になって睡眠をとるようにしましょう。
④カフェインの入った飲み物を飲む
カフェインには血管を収縮させる働きがあるため、痛みが出始めたときにコーヒーや緑茶などを飲むと、痛みが和らぐことがあります。ただし、片頭痛には随伴症状として強い吐き気を伴うことがあります。そのときは、吐き気の悪化や嘔吐につながる恐れがあるため、無理に飲もうとせず、様子を見ることが大切です。
⑤痛み止めを服用する
症状がひどい場合には、痛み止めを服用することも効果的です。ただし、こちらも上記のカフェイン同様、吐き気や嘔吐症状が見られるときに無理に飲もうとするのは良くありません。まずは様子を見て、症状が落ち着いたタイミングで服用するようにしましょう。
片頭痛を悪化させるNG行為
前述の通り、片頭痛では脳の血管が拡張すると痛みが発生し、悪化すると考えられています。そのため、片頭痛においては血管を拡張させる行為は増悪因子となり、避ける必要があります。
①運動や入浴
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- 運動や入浴は血流を促進し、血管拡張を誘発する可能性があるため、控えるようにしましょう。また、運動・入浴のみならず、日常動作も悪化の要因となるので、痛みが出たら何より安静にすることを優先するのが大切です。
②マッサージ
マッサージなどで刺激を与えると、血管拡張を促す恐れがあるため、これもNGです。痛みが出たらなるべく刺激を与えずに、安静にすることを意識しましょう。
③チラミンが含まれるものを食べる
チーズ、ナッツ、チョコレート、ソーセージ、赤ワインなどには、チラミンという成分が含まれており、片頭痛を助長することがあります。食べ過ぎは良くないので、摂取はほどほどにするのが良いでしょう。
④タバコ・飲酒
タバコや酒類に含まれるアルコールには、血管拡張作用があるため、片頭痛の誘発につながります。できる限り控えるようにしましょう。
緊張型頭痛の解消法
緊張型頭痛の原因は、後頭部や首、肩にかけての筋肉が緊張状態になることです。ですので、緊張をほぐし、血流を改善することが症状の軽快につながります。
①首、肩の周辺を温める
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- 筋肉が凝り固まって血行不良となった患部を温めると、痛みの改善が期待できます。
②寝るときの体勢を改善
睡眠時、枕や寝具が体に合っていないと不自然な体勢で長時間眠ることになり、起床時の頭痛発生につながる可能性があります。痛みが続く場合は、自分の寝具や睡眠環境を見直し、自分の体に合ったものに取り替えるのも有効です。
③運動や入浴で血流促進
運動や入浴をすることで、血行を良くし、筋肉の凝りを取り除く効果が期待できます。また、精神的なストレス解消にもつながるため、症状の改善が見込めます。
④マッサージを受ける
マッサージによって、筋肉の緊張をほぐし、血流を改善することで、症状の軽快が期待できます。
緊張型頭痛を悪化させるNG行為
緊張型頭痛の症状改善には、血流を改善することが効果的ですが、逆に血流を悪くすることは症状悪化につながります。
①患部を冷やす
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- 痛みがある部分を冷やすと、逆に血流が悪くなってしまい、痛みが増す原因になります。
②入浴せず、シャワーだけで済ませる
シャワーだけで済ませてしまうと、血流が改善されないため、痛みが続いたままになってしまいます。体を温めるために、しっかり湯船に浸かって入浴するようにしましょう。
③長時間同じ姿勢で過ごす
デスクワークなどで長時間同じ姿勢で過ごすと、血流が悪くなって痛みが誘発されます。頭の重さや肩こりを感じたら、すぐに休憩をとって首すじや肩をマッサージしたり、簡単な体操やストレッチをしたりして、体全体をほぐすようにしましょう。
頭痛は不調のシグナル
ここまで、寝起きに発生しやすい頭痛の特徴と、解消法について解説しました。多くの場合、頭痛は「ちょっと頭が痛いだけ」と見過ごされ、治療を後回しにされがちです。ですが、一見ただの頭痛と思っても、その裏にもっと深刻な病気が隠れていることがあります。その一例が、睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中にしばしば呼吸が止まるなどして中途覚醒を繰り返し、その結果慢性的な睡眠不足に陥る睡眠障害です。
実は、睡眠時無呼吸症候群においても、起床時に頭痛を発症することがあります。また、無呼吸は治療せずに放っておくと、次々と死亡リスクの高い合併症を引き起こすため、なるべく早く医師の診断を受けることが大切です。
なるべく早めの受診を
先ほど、片頭痛と緊張型頭痛の対処法についてお伝えしました。見ていただくとわかる通り、症状などは似通っている部分があるにもかかわらず、両者の対処法はアプローチが全く逆です。
片頭痛においては、血行を促進して血管の拡張を促すことは、増悪因子として避けた方が良いとされています。反対に、緊張型頭痛では症状の改善する軽快因子とされ、逆に患部を冷やして安静にする(長時間同じ姿勢をとる)ことは、症状悪化につながるとされています。
しかし、一般の人にこの両者を正しく見分けて、適切に対処するのは難しいのが現状です。そのため、もし症状が見られた場合には、無理に自己判断をせずに医師の診察を受けることをおすすめします。
頭痛は何科に行けばいい?
では、頭痛は病院の何科を受診すれば良いのでしょうか?
頭痛は、次の診療科で診てもらうことができます。
- ・内科
- ・神経内科
- ・脳神経外科
- ・頭痛外来
- ・ペインクリニック(痛み専門外来)
また、近くに上記の診療科がない場合は、かかりつけ医に相談して、頭痛専門の先生を紹介してもらうと良いでしょう。
まとめ
今回は、寝過ぎと頭痛の関係について解説しました。
寝過ぎと頭痛には直接的な因果関係は認められていませんが、片頭痛や緊張型頭痛は起床時に痛みを感じる場合があり、寝起きの頭痛の原因となっているかもしれません。その際は、自身の痛みのタイプや特徴をしっかりと見極め、適切に痛みにアプローチしていくのが大切です。
しかし、両者は特徴が似通っている部分もあり、正しく見分けるのは難しいのが現状です。それにもかかわらず、対処法のアプローチは全く逆なので、自己判断で誤った行動をとってしまうと、悪化させてしまう危険もあります。
そのため、自分ではどうしたら良いかわからないという人は、躊躇せず医療機関を受診して、医師に正しく診断してもらうことをおすすめします。
よくある質問
Q.寝過ぎと頭痛には、どのような関係がありますか?
A.寝過ぎと頭痛には、明確な因果関係は認められていません。ですが、起床時に痛みが出る場合が多い頭痛として、「片頭痛」と「緊張型頭痛」があります。
Q.寝過ぎによる頭痛にはどのように対処したら良いですか?
A.片頭痛の場合は、血管の収縮を促すために横になって安静にすることが大切です。反対に、緊張型頭痛の場合は、運動や入浴、マッサージなどをして首や肩の血流を良くすることが痛み軽減につながります。