いびきと頭痛の関係性
「頭痛があって眠れない」「周りからいびきを指摘される」こんな悩みを抱えている人は要注意です!
いびきと頭痛は一見全く関係のない症状のように思えますが、病気によってはこの2つの症状が同時に出現し、しかも命の危険性があるハイリスクな病気である可能性が高いです。
具体的には、脳梗塞や脳出血などの脳卒中や睡眠時無呼吸症候群、耳鼻科疾患などが挙げられます。
これらの疾患では、いびきや頭痛が出現するメカニズムがそれぞれ異なります。
そもそもいびきと頭痛というかけ離れた症状がなぜリンクして出現するのか、ほとんどの方がご存知ないかと思います。
そこで、いびきと頭痛の関係性を解説するとともに、疑うべき疾患などもご紹介します。
いびきと頭痛で疑うべき病気とは?
いびきと頭痛がセットで出現している場合、疑うべき病気は主に下記の3つです。
- ・睡眠時無呼吸症候群
- ・脳卒中(脳梗塞や脳出血など)
- ・耳鼻科疾患
耳鼻科疾患の中には、主に下記のような疾患が含まれます。
- ・鼻中隔湾曲症
- ・肥厚性鼻炎
- ・鼻茸症
- ・副鼻腔炎
- ・習慣性扁桃炎
- ・アデノイド肥大
鼻の中で左右を仕切っている鼻中隔が湾曲する鼻中隔湾曲症や、鼻腔の粘膜の慢性的な炎症によって粘膜が肥厚してしまう肥厚性鼻炎、鼻腔の粘膜の炎症でポリープ状に変化してしまう鼻茸症、副鼻腔と呼ばれる空洞内に膿が溜まり鼻粘膜の肥厚をきたす副鼻腔炎などの疾患は、空気の通り道である鼻腔が狭くなってしまうため口呼吸をする割合が増えてしまいます。
口呼吸の場合、口が開いてしまうため舌根が後方に落ちやすくなり気道が狭くなりやすいため、いびきをかいてしまいます。
鼻呼吸と違って吸った空気が鼻粘膜を経由しないため、空気が加湿されず、ゴミも回収されません。
そのため、汚く乾燥した空気が肺に流入してしまい睡眠の質も低下し、そのストレスによって頭痛が生じます。
また鼻腔や服鼻腔の炎症によって直接的に頭痛を自覚する可能性もあります。
また、繰り返し扁桃に炎症を引き起こす習慣性扁桃炎や、咽頭部に存在するアデノイドの生理的な肥大によっても気道が狭くなり、いびきや睡眠時無呼吸症候群を発症するリスクが高くなります。
これらの耳鼻科疾患自体は命の危険性を伴うような病気ではありませんが、放置して睡眠時無呼吸症候群に進行すれば命の危険性を伴います。
またこれらの疾患は耳鼻科で適切な治療を行えば比較的簡単に治療できるため、早期に耳鼻科へ受診する事をオススメします。
比較的治療しやすい耳鼻科疾患に対し、睡眠時無呼吸症候群や脳卒中は命の危険性を伴う病気であるため注意が必要です。
そこで次に、睡眠時無呼吸症候群におけるいびきと頭痛の関係性について解説します。
睡眠時無呼吸症候群でいびきと頭痛が起こるメカニズム
結論から言えば、睡眠時無呼吸症候群による頭痛のメカニズムは持続的な低酸素状態が原因です。
そもそも睡眠時無呼吸症候群では肥満や解剖学的異常によって気道が狭くなり、それに加え睡眠中に舌根が後方に落ちる事でさらに気道が狭くなるためいびきをかいてしまう病気です。
症状が進行すると睡眠中の呼吸が減るだけでなく、一時的に完全に呼吸できなくなってしまう時間が発生します。
具体的にAHIを使って説明します。
AHI(Apnea Hypopnea Index)とは、睡眠時無呼吸症候群の診断において使用される指標のことです。
Apnea=無呼吸のことで、10秒以上の呼吸停止と定義されています。
Hypopnea=低呼吸のことで、口や鼻からの一回換気量が50%以上低下した状態が10秒以上続くことと定義されています。
1時間の中でApneaとHypopneaの合計回数をAHIと呼び、睡眠時無呼吸症候群の重症度の評価に用いられます。
最も軽症の睡眠時無呼吸症候群ですらAHI5以上と定義されているため、1時間のうちに最低でも50秒以上の無呼吸、もしくは低呼吸があるわけです。
そのため、睡眠時無呼吸症候群の患者は睡眠中体内の酸素が不足状態にあります。
これは体にとって非常にストレスフルな状態であり、持続的な低酸素状態に対して大きく2つのリアクションを起こします。
内因性カテコラミンの分泌
1つ目は、内因性カテコラミンの分泌です。
動物が敵に襲われた時、その場から素早く逃げるようにカテコラミンを一気に放出して血圧や心拍を無理やり引き上げます。
人間も同様で、持続的な低酸素などのストレスに晒されると、副腎と呼ばれる臓器からアドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミンなどのカテコラミンが分泌され、血圧は上昇し心臓の拍動も早くなります。
この状態が長期間続くことで、高血圧や不整脈、心筋梗塞や脳卒中などの命の危険性のある病気に罹患しやすくなってしまうのです。
脳血管の拡張
2つ目は、脳血管の拡張です。
人体の中で最も酸素を消費しているのは脳であり、わずか1400gの小さな臓器であるにも関わらず酸素消費量はなんと全体の25%にも及びます。
裏を返せば低酸素状態に最も弱い臓器であり、実際に低酸素状態になった時は最もダメージを受けやすい臓器です。
そこで、脳は低酸素状態になると脳の血管を無理やり拡張させ、より多くの血液を流入できるように変化します。
これにより酸素の供給量を上げているわけですが、その代償もあります。
脳は頭蓋骨という固い容器に入っている臓器であり、頭蓋骨の中には脳や血液が含まれていますが、頭蓋骨の容積が一定である以上、流入する血液が増加すれば頭蓋骨の内圧が上昇してしまい、脳そのものが圧迫されてしまうため頭痛が生じるのです。
これが、睡眠時無呼吸症候群において頭痛が生じるメカニズムです。
睡眠時無呼吸症候群かも!?不安な方が取るべき行動は・・?
睡眠時無呼吸症候群はその原因や症状によって治療法が異なる上に、放置すれば命の危険性もある病気ですので、自己判断するのではなく専門の医療機関で適切な診断、適切な治療を受けるべきです。
睡眠時無呼吸症候群による頭痛やいびきにはいくつかの特徴があるため、参考にしてみてください。
具体的に、睡眠時無呼吸症候群の頭痛には下記のような特徴が挙げられます。
- ・睡眠後の覚醒時に頭痛が生じる
- ・頭痛が無呼吸と連動している
- ・両側性の頭痛である
- ・1ヶ月に15日以上発現する
- ・ほとんどの場合30分で症状が消失する
また、睡眠時無呼吸症候群のいびきにも下記のような特徴があります。
- ・朝まで継続する
- ・仰向け以外の姿勢で改善する
- ・いびきが変化して呼吸が止まることがある
このような特徴に当てはまる頭痛やいびきが生じている場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いため不安な方は専門の医療機関への受診をご検討してください。
いびきや頭痛は脳梗塞や脳出血の危険!
いびきや頭痛を生じる疾患の中でも最も命の危険性がある病気として、脳卒中が挙げられます。
脳卒中は脳血管障害とも呼ばれ、脳に栄養を送る血管が閉塞する脳梗塞や脳に栄養を送る血管が裂けて出血してしまう脳出血、クモ膜下出血などの総称です。
「卒中」とは、「突然起こる」という意味であり、脳に突然起こる病気であることを意味しています。
これらの疾患は軽症であっても重篤な後遺症を残す可能性があり、重症であれば命を失う可能性もあるため、迅速かつ適切な対応が求められます。
そこで、脳卒中でいびきや頭痛が起こるメカニズムやその際の対応について解説していきます。
脳卒中でいびきと頭痛が起こるメカニズム
脳卒中の場合。頭痛はイメージがつきやすいと思いますが、いびきはイメージがつきにくいと思います。
結論から言えば、脳卒中で頭痛が起こるメカニズムは脳が圧迫されるため、いびきが起こるメカニズムは舌根が落ちてしまうからです。
それぞれについてもう少し詳しく解説していきます。
前述したように、脳は頭蓋骨という一定容積の器に収納されているため、内部で何かが急速に増加すると内圧が増加して頭痛を感じます。
例えば、脳腫瘍であれば腫瘍の増大に伴い内圧が増加し、髄膜炎であれば白血球の増加に伴い内圧が増加します。
脳梗塞の場合は脳が浮腫を引き起こすことで内圧が増加し、脳出血やクモ膜下出血の場合は血液が溢れ出すことで内圧が増加します。
その結果、脳は徐々に行き場を失い圧迫されていくため、様々な障害が引き起こります。
身体の身体機能が麻痺するため筋肉がうまく収縮できず、舌根が落ちやすくなり気道が狭くなるためいびきが出現します。
さらに、呼吸中枢が圧迫されると呼吸様式にも変化が出現し、不安定な呼吸になります。
具体的には、呼吸が徐々に大きくなった後、徐々に小さくなり、10秒から20秒ほど呼吸が止まり、その後再び徐々に大きくなるというサイクルを繰り返すチェーン・ストークス呼吸が見られます。
つまり、脳卒中によって頭の中の圧が上昇し頭痛が生じるとともに、舌根が落ち呼吸様式に変化が出ることでいびき症状が出るわけです。
脳卒中かも!?不安な方が取るべき行動は・・?
結論から言えば、脳卒中を疑う場合はご自身で経過を見るのではなく、まず真っ先に救急車を呼んで病院を受診してください。
脳卒中ではいびきや頭痛以外にも、麻痺やしびれ、意識障害、構音障害(呂律が回らない)、嚥下障害(飲み込みがうまくいかない)など多くの症状が出現します。
これらの症状がある場合、脳卒中の可能性が高いと判断して救急車を呼びましょう。
ご自身で病院やクリニックに行くよりも救急車での受診を勧めるには、大きく2つの理由があります。
1つ目は、1秒でも早い治療が求められるからです。
脳出血やクモ膜下出血であれば緊急手術を行う可能性が高く、極力早急に手術を行うことで後遺症の有無にも影響が出ます。
脳梗塞の場合も同様で、発症から4.5時間以内であれば原因となる血栓を溶かすt-PA治療を行える可能性があり、予後に大きく影響するため早急な医療機関への受診が必要です。
2つ目は、適切な医療機関の選択が出来るからです。
例えばご自身で受診した病院に頭部CTや頭部MRIなどの検査機器がなければ診断が付けられないため、時間を無駄にして他の病院に転送されることになります。
また、脳外科医がいない病院やクリニックであれば手術を受けることもできず、t-PA治療も専門性の高い病院でなければ受けることができません。
以上の理由から、救急車を呼んで早急に適切な医療機関を受診することがベストです。
いびきや頭痛に悩む方が取るべき対策
いびきや頭痛は脳卒中や睡眠時無呼吸症候群のような危険な病気の可能性もあるため、放置せず早期から対策を取る必要があります。
そこで、いびきや頭痛に悩む方が取るべき対策についてご紹介します。
脳卒中や睡眠時無呼吸症候群への対策はとても共通点が多く、どちらの疾患にも有効な予防法となるため是非参考にしてみてください。
減量
いびきや頭痛の予防には減量が効果的です。
肥満によって頸部の脂肪が増加し、気道が狭くなることがいびきの主な原因であり、それによって脳が低酸素状態になると頭痛が生じるため、減量はどちらにも効果的です。
特に肥満による睡眠時無呼吸症候群の方には減量が非常に効果的な治療となります。
また、睡眠時無呼吸症候群は脳卒中の原因となるため、減量によって同時に脳卒中のリスクを下げることもできるのです。
生活習慣の是正
いびきや頭痛の予防には生活習慣の是正も効果的です。
就寝前の飲酒や喫煙、習慣的な暴飲暴食は気道を狭くする原因となり、やはりいびきや頭痛を引き起こす可能性があるため、生活習慣の是正によって症状が改善する可能性があります。
医療機関への受診
仮に睡眠時無呼吸症候群であれば、重症度によって治療法も異なります。
脳卒中であれば、内服療法や手術療法を受ける必要があるかもしれません。
繰り返しになりますが、いびきや頭痛がある場合これらの重篤な疾患の可能性もあるため、自己判断で対応するよりも早期に医療機関に受診して、各々に適した検査や治療を受けるべきです。
また、症状がなくても隠れた病気がある可能性も否定できないため、事前に脳ドッグで精査を行うのもオススメです。
まとめ
今回はいびきと頭痛の関連性や原因となる病気、症状の解消法などについて詳しく解説させて頂きました。
頭痛やいびきを認める場合、脳卒中や睡眠時無呼吸症候群などの病気を疑う必要があります。
機序は違いますが、どちらの疾患も頭痛といびきを併発する可能性があり、命の危険性もあるため心配な方は極力早急に医療機関を受診することをお勧めします。
また本書では睡眠時無呼吸症候群や脳梗塞におけるいびきや頭痛の特徴も示したので、是非ご自身でもセルフチェックの参考にしてみてください。
よくある質問
Q.いびきと頭痛にはどんな関係性があるの?
A.睡眠時無呼吸症候群であれば、気道が狭いためいびきをかき、その結果低酸素状態に陥るため代償性に脳の血管が拡張して頭痛が生じます。 脳卒中であれば、脳が圧迫されるため頭痛が生じ、それと共に舌の運動機能も低下するため舌根が後方に落ち込みやすく、気道が狭くなりいびきをかきます。
Q.いびきや頭痛の治し方は?
A.これらの症状は睡眠時無呼吸症候群や脳卒中の初期症状の可能性もあり、その場合は減量や生活習慣の是正を行うことで共通して効果を示す可能性があります。 しかし、実際には治し方は原因疾患によっても異なるため、医療機関で原因を精査することを勧めます。