いびきがうるさい人の特徴
まずは、いびきがうるさい人の特徴について解説していきます。
肥満
いびきを発生させる最も多い原因は肥満です。
肥満になると、腹部をはじめ舌や喉、気道にも脂肪がつき、通常よりも気道が狭い状態になります。すると、横になったときに必然的に気道が狭くなり、いびきをかいてしまうのです。
あごが小さい・首が太くて短い
あごの骨格や首の形状によっても、いびきが引き起こされることがあります。
日本人は欧米人に比べて、あごが小さい人が多いです。あごが小さいと、舌や喉および周辺の筋肉も小さいため、舌の落ち込みによるいびきをかきやすくなります。
また、首が太くて短いと軽度の肥満でも首周りに脂肪が多くつき、気道を狭めてしまいます。その結果、見た目には太っていなくてもいびきをかいてしまうのです。
加齢
いびきは年齢を重ねることによっても、発症リスクが高まります。
特に、男性は中年期に差し掛かると上半身に脂肪がつく「内臓脂肪型肥満(上半身肥満・リンゴ型肥満)」になりやすい傾向があります。加えて、加齢に伴う気道粘膜の弾力の低下などもあいまって、よりいびきをかきやすくなります。
多くの人にとって「いびきは太ったおじさんがかくもの」というイメージがあると思いますが、それはこのような事情があるためです。ゆえに、中年期の男性で肥満体型の人は特に気をつける必要があります。
女性も閉経後は要注意
しかし、だからといって女性であればいびきをかく心配がないかといえば、そのようなことはありません。
確かに、女性は男性と違って同じ肥満でも下半身を中心に脂肪がつく「皮下脂肪型肥満(下半身肥満・洋ナシ型肥満)」になりやすい傾向があるため、首周りの脂肪によって気道が圧迫されることはあまりありません。
これは、女性ホルモンの働きによって、内臓脂肪の蓄積がセーブされていることが影響しています。加えて、女性ホルモンには気道開存効果(気道が狭くならないように維持する効果)もあるので、この2つの効果によっていびきがかなり抑えられています
ですが、このいびき抑制効果が働くのは、女性ホルモンが潤沢に分泌されている間に限られます。つまり、閉経をしてしまうと女性ホルモンの分泌が極端に低下するため、これまでのようないびき抑制効果も弱まり、女性も男性同様にいびきをかくようになるのです。
実際、若い頃はいびきを一切かかなかったのに、閉経した途端いびきを発症する女性は多くいます。
そのため、いびきは年齢や性別、体型などにかかわらず、誰でも発症するリスクがあるのです。
口呼吸で寝ている
睡眠中の口呼吸も、いびきの原因になります。
本来であれば、睡眠中の呼吸は鼻呼吸をするのが正常です。しかし、鼻詰まりなどによって鼻呼吸が阻害されていると口で呼吸をするようになり、睡眠中は常に口がぽかんと開いた状態になります。
すると、より舌が脱力して舌根部(舌の根本)が喉の奥に落ち込み、気道を塞いでいびきをかくようになってしまうのです。また、ぽかんと開いた口から水分が蒸発して口や喉が乾くと、よりいびきの音も大きくなります。
特に、朝起きたときに口や喉がガラガラしたりイガイガしたりする人は、寝ている間に口呼吸になっている可能性が高いため、注意が必要です。そして、下記のような鼻疾患を発症している人は、いびきの原因につながるリスクがあるため、医療機関にて治療を受けるようにしてください。
- ・花粉症
- ・アレルギー性鼻炎
- ・慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
- ・鼻中隔湾曲症
寝酒をよくする
飲酒、特に寝る前のアルコールはいびきをもたらします。
就寝前にアルコールを摂取すると、筋肉の脱力が普段よりも促進され、舌が喉に落ち込むのを助長します。その結果、よりいびきをかきやすくなります。
あわせて、寝る直前に飲酒をすると、アルコールの催眠効果で確かに寝つきは良くなります。ですが、利尿作用によって夜中に目を覚ましたり、早朝に起きてしまったりなど、睡眠の質自体を下げてしまうため熟睡には大変不向きです。
いびきだけでなく、質の良い睡眠を保つためにも寝る前の飲酒は控えることが大切です。
ヘビースモーカー
喫煙も、アルコールと同様に気道の閉塞を促進し、いびきをかきやすくさせます。
日常的に喫煙をすると、喉や気道に炎症や腫れ、むくみを発生させるため、気道を狭めていびきをかく原因になります。
また、とあるデータでは喫煙の習慣がある人は、タバコを吸わない人よりもいびきの発症率が高くなるばかりか、悪化させる要因になると報告されています。
ゆえに、日常的にタバコを吸うヘビースモーカーの人は気をつける必要があります。
いびきは病気につながる?
いびきに悩む人の中には、「寝ている間にいびきをかくだけ」といびきを軽視している人もいるかもしれません。しかし、その考えは非常に危険です。
いびきは放置すると睡眠時無呼吸症候群というとても危険な病気を発症させるばかりか、寝室で一緒に寝ているベッドパートナーにも悪影響を与えます。ここからは、いびきを治療しない危険性について解説していきます。
睡眠時無呼吸症候群につながる可能性あり
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まる(無呼吸状態になる)ことで、慢性的な睡眠不足に陥ってしまう疾患です。特徴として、睡眠時はほぼ毎回大きないびきをかきます。
発症した初期段階の主な症状は、日中の眠気や熟睡感の喪失、倦怠感、集中力の低下などです。このときは、多くの場合睡眠不足と勘違いされ、無呼吸を発症しているとは気づかれません。
しかし、無呼吸に気づかず治療を後回しにすると、さまざまな合併症を発症します。
睡眠時無呼吸症候群の危険な合併症
合併症の代表的な疾患として、高血圧があげられます。
無呼吸を発症すると、睡眠中に何度も呼吸が止まるため、脳は酸素不足状態に陥ります。すると、脳は足りない酸素を補おうと血圧を上げて、全身の血流を活発にすることで酸素不足を解消します。
これが定着した状態が、高血圧です。そして、この高血圧はやがて動脈硬化を発症させ、最悪の場合脳卒中や心筋梗塞など命を落とすかもしれない危険な疾患をも引き起こします。
他にも、糖尿病などの生活習慣病や、うつ病、居眠りによる交通事故などにもつながる恐れがあるため、いびきは絶対に放置してはいけないものなのです。
ベッドパートナーも不眠症に
そして、いびきによる健康被害はいびきをかく本人だけでなく、同室で寝ているベッドパートナーにも及びます。
上記のような睡眠時無呼吸症候群を発症すると、睡眠時はほぼ毎回のように大きないびきをかきます。それはまるで、工事現場の隣で寝ているようなものです。このような状態で、満足な睡眠が取れるはずもありません。
そして、慢性的な睡眠不足に陥ると、日中の眠気や倦怠感、集中力の低下、ストレスなどを感じるようになるだけでなく、次のような健康被害も現れるようになります。
- <肥満>
慢性的な睡眠不足によって食欲をコントロールするホルモンが影響を受け、食べすぎて太ってしまう - <免疫力の低下>
細胞の修復や免疫細胞の活性化が正常に行われないことによって、病気や感染症にかかりやすくなる - <交通事故や作業中の事故>
日中の眠気によって事故を起こして命を落としてしまう - <うつ病>
慢性的な睡眠不足とストレスによって気持ちが落ち込みやすくなり、うつ病を発症してしまう
まさに、いびきはタバコの受動喫煙のように、いびきをかく本人だけでなくそれを我慢するベッドパートナーにも悪影響を及ぼしてしまう非常に危険なものといえるでしょう。
いびきは伝え方が大切
命を落としかねない危険ないびきですが、多くの人はそれをどのように本人に伝えて治療を促すかわからず困っていると思います。
いびきはかいている本人には自覚がないことが多いため、周りにいる第三者がいびきの事実を伝えることで、発症に気づくパターンがほとんどです。しかし、非常にデリケートな問題なので、伝え方を間違えると治療に消極的になるばかりか、夫婦関係や恋人関係にヒビが入ってしまう可能性もあります。
そこで、ここからは相手にいびきを伝えるときにぜひ気をつけてほしいポイントを3つご紹介します。
いびきをかいていることを責めない
まずは、いびきをかいていることを決して責めないことです。
お伝えしたように、いびきをかいている本人にはその自覚がない場合がほとんどです。たとえ自覚があったとしても、自分ではどうしたら良いかわからず途方に暮れている場合も実は多いのです。
ですので、絶対にいびきをかいていることを責めず、相手を思いやることが大切です。
いびきのリスクを正しく伝える
その上で、いびきのリスクを伝えて、治療を促していきましょう。
いびきのリスクや危険性についてはまだまだ知らない人も多いため、命を落とすかもしれないとわかっていない場合もよくあります。そのため、いびきがもたらす健康被害を的確に伝えることが大切です。
あわせて、正しく治療すれば改善する可能性は十分あることも伝えましょう。「いびきで病院に行くなんて恥ずかしい」と、最初は抵抗を示すかもしれません。しかし、医療機関で本格的ないびきや無呼吸治療を行うことで、症状の改善だけでなく突然死のリスクを減らす効果が期待できます。
また、睡眠がしっかり取れることで日々のパフォーマンスも上がり、前向きな気持ちになれることも伝えると、より積極的に治療に臨んでくれるようになるでしょう。
孤独にさせない
最後に、最も大切なのがいびきの問題を本人だけに押し付けて孤独にさせないことです。
医療機関でのいびき・無呼吸治療は、ときに多くの時間と費用を必要とします。そのため、本人にとっては長期間の治療にストレスを感じ、途中で治療を断念してしまう可能性があります。
そのため、いびき改善を本人だけに押し付けず、周りがサポートする意志があると伝えることが大切です。こうすることで、いびきを前向きに捉え、積極的に治療に臨んでくれる可能性が高まります。
いびきを解消するためにできる対策は?
ここからは、いびきを解消するために自宅でもできる対策について解説していきます。
生活習慣の改善をする
まずは、生活習慣の改善です。
いびきは、日々の生活習慣が原因で発症することがあります。特に、肥満はいびきに直結することが多いので、適度な運動やバランスの取れた食事を取り入れて、肥満解消に取り組むことが大切です。
あわせて、寝酒や喫煙が習慣化している場合も、改善するようにしましょう。説明したように、寝る前の飲酒や日常的な喫煙はいびきだけでなく、睡眠の質をも低下させます。
良質な睡眠を維持するためにも、生活習慣の改善は必要不可欠です。
横向き・うつ伏せ寝をする
次に、いびきを防ぐには横向き、もしくはうつ伏せで寝ることも重要です。
仰向けで横になると重力によって舌が喉の奥に落ち込みやすくなり、いびきをかきやすくなります。
そのため、いびきを防ぐにはなるべく仰向けで寝ないようにすることが大切です。例えば、枕を横向き寝がしやすいものに変えたり、うつ伏せで寝ても苦しくないようにクッションなどを使ったりすると、楽に仰向け寝を防ぐことができます。また、抱き枕を使うのも横向き寝をしやすくさせるためおすすめです。
ぜひこの機会に、自分の寝具を見直してみてください。
いびき防止グッズを使う
最後に、いびき防止グッズを使うのもおすすめです。
いびき防止グッズには、次のようなものがあります。
- <鼻呼吸テープ>
口にテープを貼って口呼吸を抑え、鼻呼吸を促す - <鼻腔拡張テープ>
鼻腔を広げて鼻の通りを良くする
これらの商品は、ドラッグストアで簡単に購入することができるので、気になる人はぜひ探してみてください。
ただし、ここでひとつ注意点があります。これらのいびき防止グッズは、いびきを防ぐ効果はあっても、治療する効果はありません。いびきを改善するためには、医療機関で治療を受ける必要があります。
そのため、あくまでも病院に行くまでの一時的な応急処置として利用し、なるべく早く医療機関を受診するようにしてください。
いびきメディカルクリニックの記事「【いびきがうるさくて眠れない!】いびきがうるさい人対策方法」の記事をご覧ください。
まとめ
今回は、いびきがうるさい人の特徴とその危険性、そして対策について解説しました。
いびきはさまざまな原因によって発症しますが、「たかが、いびき」と軽視され、治療が遅れるケースがよくあります。ですが、治療の遅れは睡眠時無呼吸症候群を招き、最悪命を落とすことにつながりかねません。
いびきに気づいたら躊躇せず、速やかに医療機関を受診するようにしてください。
そして、家族や周囲の人もいびき解消に協力することで、本人も前向きに治療に臨んでくれるようになります。
このコラムが、いびき治療に踏み出すひとつのきっかけになれば幸いです。
よくある質問
Q.いびきがうるさい人にはどのような特徴がありますか?
A.いびきがうるさい人には、肥満や加齢、あごの骨格、寝酒をする、ヘビースモーカーなどの特徴があります。
Q.いびきを放置するとどうなりますか?
A.睡眠時無呼吸症候群という病気を引き起こす可能性があります。
いびきに気づいたら、速やかに医療機関を受診してください。
参考文献