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ショートスリーパー

【睡眠学習は効果あり?】寝ながら勉強する方法や睡眠との関係性を解説

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玉木 いずみ

医療系大学を卒業後、臨床検査技師の資格を取得。総合病院に就職し、臨床検査部にて主に検体検査を担当。その傍ら、独学で心理カウンセラーの資格を取得。現在はこれまでの経験を活かし、ライターとして医療系や心理系を中心に多くの記事を執筆中。「専門的な内容でもわかりやすく、そして正しく執筆する」ことがモットー。

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【基本情報】睡眠学習について

ヘッドホンをして眠る男性

まずは、睡眠学習とはどのようなものか基本情報をお伝えします。

睡眠学習とは

睡眠学習とは、その名の通り寝ている間に学習することです。
1960年代、日本で「睡眠学習器」という商品が販売されました。この商品は、枕の裏にカセットテープをセットして、睡眠時にそのテープを聞くだけで暗記ができると謳ったもので、大ヒット商品になりました。

ただ、「睡眠学習器は、テープに記憶したいことを吹き込む過程で記憶することはあっても、睡眠時に聞くだけでは記憶することはできない」という認識が広まったため、人気は長続きせずあっという間に市場から姿を消してしまいます。




睡眠学習って効果はあるの?

勉強する女子高生
上記のように、一時は話題になった睡眠学習ですが、それ以降「睡眠学習は嘘」「睡眠学習なんて眉唾だ」と世間に認知されたまま今に至ります。

ですが、時代が進みさまざまな科学者によって睡眠学習について研究が行われた結果、睡眠学習に関する新事実が次々に発見されていったのです。

【新事実】睡眠学習は効果あり⁉︎

まずは、2009年にアメリカのノースウェスタン大学で行われた実験です。この実験では、睡眠中に音声を聞かせることによって記憶が定着し、起床後に思い出しやすくなることが判明しました。このことから、夜に聞いた音が記憶の固定化につながる可能性が示唆されるようになります。

また、2012年にはイスラエルのワイツマン科学研究所が睡眠中に匂いと音を条件づけて記憶させることに成功しました。これにより、睡眠中には古い記憶だけでなく、新しい学習も行える可能性が示されたのです。

さらに同年、日本でもショウジョウバエの脳機能を調べた結果、睡眠中に学習の回路のみを働かせることができれば、睡眠学習を理論的に裏付けられると指摘されます。

このように、睡眠中に記憶を定着させることは理論上可能で、睡眠学習は不可能ではないことが明らかになってきたのです。

睡眠学習は復習において効果的

そして2014年、スイスにあるチューリッヒ大学で行われた実験によって、さらに睡眠学習の可能性が示されます。その実験とは、「ノンレム睡眠時に外国語の音声を復習として聞くことでボキャブラリーが増えるのか?」という内容です。

実験方法は次の通りです。

  • 1.ネイティブスピーカーのドイツ人学生を集めて、AグループとBグループに分ける
  • 2.午後10時から、両グループにオランダ語のボキャブラリー学習用の音声を聞いてもらう
  • 3.Aグループの学生には仮眠を取らせ、ノンレム睡眠に入った段階で午後10時に学習したものと同じ音声を聞かせる
  • 4.Bグループには仮眠は取らせず、起きたままテープを引き続き聞いてもらう
  • 5.両グループに単語の記憶量に差は生まれるのか検証した

上記を行った結果、ノンレム睡眠時に外国語の音源を聞いたAグループの学生は、起きた後に単語を思い出す確率が大きく上昇することが分かりました。

このことから、睡眠学習は一定の効果が期待できるとともに、復習において効果を発揮する可能性が高いことが示されます。




効果的な睡眠学習法とは?

勉強する女子高生の手元

これらの実験結果をふまえて、次のような睡眠学習法が効果的とされています。

復習として用いる

効果的な睡眠学習の代表例は、睡眠学習を復習として用いることです。前章の実験では、就寝する前に覚えたい内容を記憶し、その後睡眠中に音声を聞くことで記憶の強化に成功しました。

そのため、今まで全く覚えたことのないものよりは、一度頭に入れた内容の復習として用いるのが効果的と考えられています。

単語の復習に使う

睡眠学習は単語や年号の復習に向いています。睡眠学習は、あくまで記憶の定着を促す勉強法なので、数学などの思考力を必要とする教科には不向きです。

ゆえに、英単語やフレーズ、公式、年号などのいわゆる「丸暗記系」の勉強において効果を発揮する可能性が高いといえるでしょう。

ノンレム睡眠時に聞く

睡眠学習の音声はノンレム睡眠(体も脳も眠っている深い睡眠)中に聞くと、より効果が見込まれます。

人間の睡眠は、深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠を交互に繰り返していますが、眠り始めてから約90分後に最初のノンレム睡眠が現れます。

ゆえに、タイマーをセットして大体2時間後に流れ始めるようにすれば、タイミング良くノンレム睡眠時に睡眠学習を行うことができるでしょう。




【注意】まだまだ睡眠学習は研究段階

授業中に居眠りをする男子高生

ここまで、睡眠学習の新事実とそれに関する研究、そして効果が見込める睡眠学習法について解説しました。

ただし、現在も睡眠学習は研究段階で、その効果はいまだ科学的に証明されたわけではありません。その上、睡眠学習は睡眠を妨げるリスクがあると危険視する声もあります。

睡眠学習は眠りを妨げる?

情報を新しく記憶するには、次のような手順を踏む必要があります。

  • 1.脳に入った情報は、脳内の「海馬」にて一時保存される
  • 2.必要と判断された記憶だけが、「海馬」から「大脳皮質」に送られる
  • 3.「大脳皮質」に転送された記憶が、長期記憶として保存される

この一連の作業は睡眠中に行われます。つまり、英単語や公式などを長期記憶としていつまでも覚えておくためには、睡眠を十分に取ることが大変重要なのです。

しかし、睡眠学習はその大事な睡眠中に音声を流して記憶を強化しようとします。
その上、近年の研究で取り沙汰されている睡眠学習では、ノンレム睡眠時に音声を流すことを推奨する研究者が多いです。

眠り始めのノンレム睡眠は睡眠の質を左右する最も重要なフェーズのため、阻害されると睡眠全体の質を下げ、記憶の作業などはまともにできなくなるとされています。

こうしたことが、睡眠学習はその効果が曖昧で「危険だ」と警鐘を鳴らす研究者が多く存在する理由です。
また、前述したスイスのチューリッヒ大学で行われた実験も疑問視されており、「効果が見られなかったBグループは、単に睡眠不足が原因だったのではないか」という声もあります。

ゆえに、現段階において睡眠学習の効果はいまだはっきりしておらず、科学的な証明もされていないのが現状です。よって、睡眠学習の効果ばかりに注目し、むやみに実行するのは避けた方が良いといえるでしょう。




記憶の定着を高める睡眠法

眠る女性

睡眠学習の効果を信じる場合や反対に危険視する場合でも、共通しているのは睡眠の大切さです。
英単語や公式をたくさん覚え、いつどんな時でも思い出せるようにするためには、質の良い睡眠を取ることが不可欠です。

ここからは、記憶の定着を高める効果が期待できる睡眠法を紹介していきます。

入浴はぬるめの温度で

入浴は40℃前後のぬるめの温度で行います。

皆さんも、眠気を感じると手や足先がポカポカと温かくなった経験があるでしょう。
これは、手足の先に集中している毛細血管から熱放散を行い、深部体温(内臓などの体の内側の温度)を下げているからです。そして、深部体温には急激に上がるとその反動で大きく下がる性質があります。

つまり、寝る前に深部体温を下げるためには、一度大きく上昇させる必要があるのです。そこで役に立つのが、入浴です。

入浴によって深部体温をしっかり上昇させることで、その後の深部体温の下降を促し、眠りにつきやすくなる効果が期待できます。そのため、シャワーではなくちゃんと湯船に浸かって体温を上げることが、睡眠の質を向上させる上で大切です。

睡眠前のブルーライトは最小限に

睡眠前のスマホやパソコンなどのブルーライトは、最小限にしましょう。

ブルーライトには強い覚醒作用があり、夜間に長時間浴び続けると脳は朝がきたと勘違いして、眠気を遠ざけてしまいます。ゆえに、睡眠前はなるべくスマホやパソコンなど、ブルーライトを発するものを見ないようにしましょう。

そして、部屋の照明にブルーライトが使用されている場合は、なるべく暖色系の赤みがかった照明に切り替えることを推奨します。暖色系の照明はブルーライトのような覚醒作用が少ないため、睡眠に影響を与えにくいとされています。より効果を高めたい場合は、天井から直接照らすのではなく、家具の後ろや足元から間接照明で照らすのがおすすめです。

十分な睡眠時間を確保する

記憶の定着を高めるためには、十分な睡眠時間を確保することは欠かせません。

最近では、「短時間睡眠でも目覚めスッキリ!」や「短時間睡眠で快眠!」と謳った書籍やサイトがしばしば話題になりますが、記憶の定着に短時間睡眠はNGです。

確かに、世間には4時間程度の短時間睡眠でも一切健康を害さない「ショートスリーパー」と呼ばれる人たちが存在します。そして、このような性質を持った人は有名人やアスリート、芸能人として活躍している人が多いため、中には自分もそうなりたいと憧れを持つ人もいるでしょう。

しかし、最近の研究でショートスリーパーは非常に珍しい遺伝子の突然変異によるものだと判明しています。そのため、多くの人にとって睡眠時間は6時間〜8時間は必要です。

ゆえに、極端な短時間睡眠はせず、記憶の定着を促進できる睡眠時間を維持するようにしましょう。

就寝前はいつも通りを心がける

記憶の定着を高める質の良い睡眠の近道は、ズバリ「いつも通り」です。

難しい本を読んでいる時や、電車に乗ってずっと変わらない景色を眺めていると、眠たくなる経験をしたことがあるでしょう。これは、脳が単調な状態(モノトナス)に退屈を感じて眠くなっていることが原因と言われています。

つまり、睡眠前の行動をできる限り「退屈」にすることで、脳が眠気を感じて眠りやすくなるのです。

そのために有効なのが、睡眠前の行動をルーティン化して「いつも通り」にすることです。就寝時間や寝具、服装、照明、音楽、香りなど、あらゆる習慣や睡眠環境を毎日一定にすることで、最終的にはルーティンをするだけで自然と眠気を感じるようになります。

一気にルーティンを決めて固定化するのは少々ハードルが高いので、まずは自分ができるところから始めてみると良いでしょう。




まとめ

参考書を持ちほほ笑む女子高生

今回は、睡眠学習について深掘りし、最近の研究で分かった新事実や効果的な睡眠学習法、そして記憶の定着を高める睡眠法について解説しました。

これまで、睡眠学習は効果がないとされてきましたが、近年の研究によってその可能性が示唆されています。ただし、現在も研究段階の時点ではっきりとしていない部分も多いため、むやみに実行するのは避けた方が良いといえるでしょう。

そして、記憶を脳に定着させるには、質の良い睡眠が欠かせません。
睡眠学習においても、睡眠をしっかり取らなければ、その効果は十分には発揮されないです。ゆえに、英単語や公式を長期的に記憶しておきたい時は、毎日質の高い睡眠を取って、脳の記憶の定着・保存を妨げないようにするのが大切です。




よくある質問

Q.睡眠学習とはなんですか?

A.睡眠学習とは、寝ている間に英単語や公式などが録音された音声を聞くことで、寝ている間に暗記ができるという学習法です。睡眠と記憶の関係性については、「【受験生必見】記憶の定着と睡眠の関係性について」 でも解説しています。

Q.睡眠学習に効果はありますか?

A.かつては効果なしとされていましたが、近年の研究によって復習においてはその効果が示唆されています。ただ、現在も研究段階で分かっていない部分も多いのが現状です。

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玉木 いずみ

医療系大学を卒業後、臨床検査技師の資格を取得。総合病院に就職し、臨床検査部にて主に検体検査を担当。その傍ら、独学で心理カウンセラーの資格を取得。現在はこれまでの経験を活かし、ライターとして医療系や心理系を中心に多くの記事を執筆中。「専門的な内容でもわかりやすく、そして正しく執筆する」ことがモットー。

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