パワーナップとは昼の時間帯に15分程度の仮眠を取ること
パワーナップとは、昼食後の12~15時の間に15分程度の仮眠を取ることを指します。
「nap=うたた寝」と「power up=パワーアップ」を組み合わせて作られた言葉で、日本では積極的仮眠とも呼ばれています。
パワーナップは、なぜ15分という短い睡眠時間で効果が得られるのでしょうか?それは睡眠パターンであるノンレム睡眠と、レム睡眠が深く関わっています。
ノンレム睡眠は、脳が休んでいる状態であり、深い眠りです。一方レム睡眠は、身体を休める睡眠で脳は活動しており、浅い眠りと言われています。
人の身体は寝始めると、およそ30分後にノンレム睡眠が訪れ、深い眠りに入ります。完全にノンレム睡眠に入ってしまうと、覚醒するのが大変になり、より疲れを感じることも。
ノンレム睡眠の前に目覚めることで、深い睡眠に入らず休息が取れることから、パワーナップは効果があると言われているのです。
15分の短時間睡眠で身体を休めた後は、関節や筋肉など軽く体を動かすと効果的です。
パワーナップの4つの効果
パワーナップには、以下の4つの効果があります。
- ・疲労回復
- ・集中力の向上
- ・ストレス解消
- ・健康増進
パワーナップの効果を理解して、特に仕事中に取り入れると効率よく仕事が進められるでしょう。それぞれについて解説します。
疲労回復
パワーナップを取り入れると、午前中感じていた疲労感の改善が期待でき、午後の仕事にも集中して取り組めます。
日常の仕事では、午前中に慎重な作業や集中力が必要な仕事、または体力を使う仕事が多く、午前の疲労を感じながら昼食を摂ることも多いでしょう。
たとえば経理の仕事では、午前中パソコンで数字とにらめっこしていて目の疲労が溜まりやすいです。アイマスクなども併用してパワーナップすると、より目の疲労を改善できます。
集中力の向上
昼食後は特に眠気を感じ、仕事に集中しづらいときがありますが、パワーナップを活用すると集中力もアップします。
集中力の低下を招いているのは眠気や疲労感であるため、パワーナップでそれらを取り除くことで、午後も仕事に集中できるでしょう。
ストレス解消
パワーナップは、リラックス効果もありストレス解消にもつながります。
たとえば上司に注意されてしまった、仕事でミスをしてしまった。そんなときにパワーナップを取り入れ、心身ともに切り替えられることで、午後の仕事への影響を最小限に抑えられます。
また、昨夜の寝不足を引きずり午前中の仕事が捗らなかった場合でも、パワーナップにより午前中から効率よく仕事が進められるでしょう。
健康増進
疲労の蓄積は、ストレスや睡眠障害を引き起こし、健康にも影響を与えます。
疲労は睡眠により解消されるものであり、他に気を紛らわせることはできますが、根本的な回復には睡眠が重要です。
パワーナップにより、日中に適度な睡眠時間を確保することで心身の疲労を回復し、身体が元気になり健康にもつながってくると言えます。
パワーナップをやってみよう
パワーナップの方法をご紹介します。
- ・静かに眠れる場所を確保する
- ・寝る前にカフェインを摂取する
- ・アラームをセットし15分仮眠を取る
- ・15分後起きたらストレッチして身体を起こす
用意するものは特にありません。状況に応じて、目が疲れていればアイマスクを使ったり、静かな場所がないときは音楽を聴いたりなど、自分がパワーナップしやすい道具を用意してもよいでしょう。
静かに眠れる場所を確保する
職場内や外の公園など、静かな場所を探して睡眠を取りやすい環境を作りましょう。
オフィス内の会議室や使われていない部屋、コワーキングスペースがあるとよいでしょう。
静かな部屋が見つからず、自席でパワーナップする場合は、光や音を遮るようなアイマスクや音楽などを用意しておくとパワーナップに集中できます。
まったくの無音状態より、多少の生活音があった方がパワーナップに入りやすい傾向にあるようです。
寝る前にカフェインを摂取する
パワーナップに入る直前に、コーヒーや紅茶などのカフェインを多く含むものを摂取すると、目覚めるタイミングでカフェインの効果が発揮されスッキリ起きられます。
カフェインは、摂取後20~30分程度で覚醒作用が働き始めることから、パワーナップ終了のタイミングでカフェインの覚醒作用が働き始めるからです。
カフェインが多く含まれる飲料は、以下の通りです。
飲料名 | カフェイン含有量 |
---|---|
コーヒー | 100mlあたり約60mg |
紅茶 | 100mlあたり約30mg |
エナジードリンク | 100mlあたり約32~300mg |
玉露 | 100mlあたり約160mg |
煎茶、ほうじ茶、ウーロン茶 | 100mlあたり約20mg |
緑茶類のなかでも、玉露入りのお茶はカフェイン含有量が高いことが分かります。
パワーナップに煎茶を使用する場合は、玉露入りを選ぶと効果が高いでしょう。
アラームをセットし15分仮眠を取る
15分後にアラームを設定し、パワーナップ開始です。目を閉じ、リラックスしましょう。
もし自席でパワーナップする場合、デスクで寝ていると「具合悪いのかな」と勘違いされてしまうこともあるかもしれません。「仮眠中です」などのメモで周りに分かるようにしておくと、声もかけられずパワーナップに集中できるでしょう
15分後起きたらストレッチして身体を起こす
アラームがなったら起きます。
眠気が強いと「もうあと5分」となりがちですが、疲労感が増してしまうため、決められた時間で必ず起きるようにしましょう。
軽く腕や首を回したり、立ち上がって足首を捻ったりなど、軽くストレッチをすると身体が仕事モードになりやすいです。ぜひ、試してみてください。
パワーナップを行うときの3つの注意点
パワーナップを行うときの3つの注意点をご紹介します。
- ・横にならないようにしよう
- ・腕を枕にして寝ないようにしよう
- ・20分以上は寝ないように注意しよう
上記の注意点を知らないと、パワーナップの意味がなくなってしまう可能性があります。それぞれの理由について、詳しく解説します。
横にならないようにしよう
横になってしまうと、完全に睡眠モードに突入してしまい、15分のアラームに気付かないほど深い眠りに入ってしまう可能性があります。
パワーナップをするときは、壁に寄りかかったり、デスクに上体を倒したりするなど、横にならない姿勢を探してみましょう。
腕を枕にして寝ないようにしよう
デスクに上体を倒してパワーナップしようとすると、腕を枕にしてしまいますが、腕を痛めるのをはじめ、顎が圧迫されて噛み合わせが悪くなるなどのトラブルに発展します。
昼寝用の枕として、デスクで使用できる枕やクッションが販売されているため、そのようなアイテムを使用してパワーナップしましょう。
20分以上は寝ないように注意しよう
20分以上寝てしまうと、本格的にノンレム睡眠に入ってしまうため、起きること自体が大変になってしまいます。
身体が軽くなるどころか、重く感じ疲労を感じることもあるので、ノンレム睡眠に入る前に起きることを心がけ、20分以上は寝ないことがコツです。
昼食後に眠くなるのは血糖値が関係している
昼食後に眠気を感じるのは、上昇した血糖値を下げようとインスリンが働くことが原因です。急激に上昇した血糖値がインスリンの分泌により急激に下がることで、脳に供給されるブドウ糖が減少して眠気が生じます。
血糖値の急激な上昇や下降(血糖値スパイク)は、糖尿病の人だけでなく、誰もが起こりうる反応です。インスリンの過剰な分泌は、すい臓や血管にも負担がかかるため、血糖値の急上昇を抑えるような食事方法を取りましょう。
血糖値の上昇を緩やかにする食事方法は、以下の通りです。
- ・野菜類から先に食べる
- ・米やパン、麺類などの糖質が豊富に含まれているものは最後に食べる
- ・ゆっくりよく噛んで食べる
- ・腹八分目に抑える
上記は、食事制限をしなくても食べる順番や食べるときに意識していればできる方法です。
血糖値の急上昇を抑えれば、食後の眠気も強く感じずにすむため、パワーナップで十分な効果が得られるでしょう。
実際にパワーナップを導入した企業の声を紹介
国内の企業でも、少しずつパワーナップを取り入れている企業が増えています。
実際にパワーナップを取り入れている企業を3社ご紹介します。
- ・【集中力の向上が見られた】三菱地所株式会社
- ・【午後の作業に集中できるようになった】株式会社OKUTA
- ・【空きスペースを活用】GMOインターネットグループ
パワーナップの導入を検討されている人は、ご参照ください。
【集中力の向上が見られた】三菱地所株式会社
2018年に本社移転をきっかけに、パワーナップを試験導入しています。
結果は、客観的なデータからも試験者からも「集中力の向上」「業務効率の向上」が見られました。
客観的なデータとして、他社と協力し、集中度を測るゴーグルを装着してもらい、タイピングをしてもらうことで計測しています。
試験者からは、以下の声が聞かれたとのことです。
- ・頭がすっきりした
- ・会議中の眠気がなくなった
- ・仮眠を継続したい
当初は、業務効率化の一環として取り入れたパワーナップが、生産性の向上だけでなく社員の健康にもよい影響を与えている結果となりました。
現在は、1時間のお昼休憩に加えて、30分の仮眠時間が認められています。
【午後の作業に集中できるようになった】株式会社OKUTA
作業の効率化と、従業員の健康維持を目的に2012年からパワーナップを導入しています。
OKUTAが実施しているパワーナップの原則は、以下の通りです。
- ・眠気を感じたら業務に差支えのないタイミングで仮眠すること
- ・仮眠時間は15~20分
- ・場所は自席か社用車
- ・パワーナップ中の従業員には声をかけない
仮眠室は設けられていませんが、各自デスクでパワーナップをするための枕や、音楽を持ち込んで取り組んでいます。従業員からの声は、以下の通りです。
- ・眠気によるケアレスミスが減った
- ・体調が優れないときは助かる
- ・午後の仕事が捗るようになった
パワーナップ導入前より社内の雰囲気が明るくなったそうです。
【空きスペースを活用】GMOインターネットグループ
2012年より導入された「GMO Siesta」は、使用していない会議室を12:00~20:00の間、パワーナップスペースとして活用しています。「Siesta=イタリア語で昼食後の昼寝」から「GMO Siesta」と名付けられました。
昼食後には、パワーナップスペースの8割程度埋まるそうです。実際に利用している従業員からは、以下の声が聞かれています。
- ・午後眠くなることがほとんどなくなった
- ・デスクワークのため、作業効率が上がったと実感した
- ・育児中の寝不足解消に利用できてありがたい
パワーナップスペースの利用率や、従業員の声により、就業中に仮眠を取ることの後ろめたさはないようです。
睡眠時無呼吸症候群についてはコチラの記事でも解説していますのでぜひチェックしてみてください。
まとめ
パワーナップは、昼食後の眠気を解消する短時間の仮眠方法を指します。
昼食後の眠気は、食後の血糖値が急下降することが関係しているため、食事方法の工夫により眠気の程度も解消されるでしょう。
加えてパワーナップすることで、午後の業務効率や集中力が向上し、生産性・従業員の健康維持につながります。
パワーナップを活用して、午後の仕事を乗り切りましょう。
よくある質問
Q.パワーナップってなんですか?
A.昼食後に15~20分の仮眠をとることです。仕事の効率化や集中力の向上が図れます。人の身体は、眠り始めると30分程度で深い睡眠であるノンレム睡眠に入ります。
パワーナップは、深い睡眠に入る前に起きることで身体を休めることができ、すっきり目覚められるため、昼食後の眠気に効果があるとされています。睡眠の種類については「【レム睡眠とは】睡眠の種類を徹底解説」
で詳しく解説しているため、合わせてご参照ください。
Q.パワーナップってどうやるのですか?
A.まずは仮眠スペースを確保しましょう。自席のデスク、社用車内、会議室など、できれば静かな場所がおすすめです。デスクでパワーナップする場合は、枕やクッションがあるとより効果的です。
スペースを確保したら、15~20分でアラームをセッティングして仮眠を取ります。アラームがなったら、起きて軽く体を動かすと、目が覚めやすいため、おすすめです。職場で試してみてはいかがでしょうか。
参考文献
- 『パワーナップ』(昼寝)を疲労回復につなげよう
- パワーナップとは?効果や実践方法、注意点、企業の導入事例を解説
- パワーナップ(積極的仮眠)の効果とは?事例と共に紹介
- 三菱地所との「仮眠室を活用した仮眠効果検証実験」結果報告 仮眠を活用することで日中の集中力向上と眠気低減を計測データで確認
- 業務効率をアップさせた昼寝制度とは?株式会社OKUTA
- 【パワーナップ導入状況】先端企業のオフィス環境は?
- パワーナップ(積極的仮眠)とは?効果やメリット・行う際の注意点を紹介
- カフェインの過剰摂取について|農林水産省
- 食後に眠くなる原因は低血糖?血糖値スパイクの予防法を解説
- 仮眠30分で業務効率アップ|三菱地所が導入した「パワーナップ制度」とは?