睡眠学習とは寝ている間に勉強した内容を記憶すること
睡眠学習とは、寝ている間に勉強した内容を記憶することで、翌日も暗記した内容が頭に入っている勉強方法です。
寝ている間に勉強できる、というイメージを持っている人もいるのではないでしょうか。しかし、数学の公式や英単語など、勉強をしないで寝ている間にいつの間にか覚えていた、ということではありません。
睡眠学習は、寝る前に勉強した内容を、寝ている間に記憶として脳に定着させることを指すものであり、復習の勉強方法のひとつといえるでしょう。
効果的な学習ポイント3選
睡眠学習は、効果的に行うための3つのポイントがあります。
- ・寝る30分~1時間前に暗記する
- ・就寝2時間後に暗記した内容を音声で流す
- ・起きたらすぐに復習する
それぞれのポイントについて解説します。
寝る30分~1時間前に暗記する
記憶は、新しいものから整理されていくため、寝る30分~1時間前に暗記すると脳に記憶として定着しやすいです。寝る前に勉強する内容として適切なのは、以下の通りです。
- ・英単語の暗記
- ・数学の公式の暗記
- ・漢字の書き取り
- ・歴史の年表の暗記
国語の文章問題や計算問題などより、丸暗記する勉強内容が定着しやすいため、寝る前の勉強は上記のようなものをおすすめします。
就寝2時間後に暗記した内容を音声で流す
睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠があり、ノンレム睡眠のときに暗記した内容を音声で流すと、記憶に定着しやすいとされています。
睡眠学習は、様々な国や地域で研究がされており、いずれもノンレム睡眠のときに起こしたアクションが記憶に定着しているという結果が出ています。
ノンレム睡眠のタイミングに合わせて暗記した内容の音声を流すことで、記憶の定着につながるといえるでしょう。
起きたらすぐに復習する
起床後、昨夜暗記した内容が頭に入っているか復習することで、更に記憶として定着しやすくなります。
朝起きたときの脳は、前日の経験や勉強した内容などが整理されているため、記憶を定着させる準備が整っている状態だからです。
寝る前に暗記系の勉強に集中する→ノンレム睡眠の間に音声を流す→朝起きたら復習する、この流れで暗記していくと、長期間記憶に残るため、効率よく勉強が進められるでしょう。
記憶とは経験した物事や情報を覚えておくこと
記憶とは、経験したことや情報などを覚えておき、必要な場面で思い出せるようにしておくことです。
そもそも記憶には、以下のような働きがあります。
- ・記銘:視覚や聴覚、触覚など五感を刺激されたエピソードを覚える
- ・保持:記銘のエピソードを忘れずにいること
- ・想起:保持した情報を思い出す
例えば、通勤路の景色を覚えておくことで、次の出勤時に同じ道を通れるのは、記憶の働きがあるからです。
記憶には、短期記憶と長期記憶の2種類があり、それぞれに特徴があります。
- ・短期記憶とは情報を一時的に覚えること
- ・長期記憶とは物事や情報が長期間脳内に留まること
以下に具体的に解説します。
短期記憶とは情報を一時的に覚えること
短期記憶は、文字通り短期間だけ覚えておく記憶を指します。
短期記憶の例をご紹介します。
- ・初対面の人の名前を会った日は覚えているが翌日には忘れている
- ・文章を読むとき前の文章を覚えておき次の文章へとつなげる
- ・板書するとき黒板を見ないでノートに書き写す
上記の短期記憶は、繰り返し行わないと忘れてしまいます。初対面の人の名前を覚えておくには、名前を繰り返し声に出したり、名刺を眺めたりしなければ忘れてしまうでしょう。
短期記憶は、繰り返すことで記憶に定着し、長期記憶へと移行できます。
長期記憶とは物事や情報が長期間脳内に留まること
長期記憶とは、いつまでも忘れないエピソードや情報を指します。覚えておける容量は無限であり、生涯にわたって覚え続けていられるのが特徴です。
例えば、年齢を重ねて人や物の名前が思い出せなくなったり、忘れ物が増えたりするでしょう。しかし、何十年も前に経験したエピソードや、特に力を入れて勉強した分野などはいつまでも覚えています。
これは、何十年も前に経験したエピソードや勉強した内容が長期記憶に留まり続けているため、いつまでも思い出すことができるのです。
記憶力を高める睡眠を手に入れる4つの方法
睡眠学習は、睡眠と記憶が深く関係しているため、睡眠学習を活用したい人は、質のよい睡眠と記憶力を高めましょう。記憶力や睡眠の質を高める4つの方法をご紹介します。
- ・入浴は40℃前後のぬるま湯で
- ・寝る1時間前からはテレビやスマホは見ない
- ・寝室の照明は暖色系や間接照明を使用する
- ・睡眠時間は6~8時間は確保しよう
上記を実践して、睡眠力・記憶力を高め学習に活かしましょう。
入浴は40℃前後のぬるま湯で
人の身体は、体温が温まった後、急激に下がることで眠気を感じるため、寝る2時間前にぬるめの湯で入浴しましょう。
身体を温めるために41~42℃の湯船に入る人もいますが、熱い風呂は交感神経を刺激して眠気を誘発できません。
ぬるめの湯は、リラックス効果もあります。質のよい睡眠・記憶力を向上させるためには、40℃程度のぬるめの湯がおすすめです。
寝る1時間前からはテレビやスマホは見ない
テレビやスマホの画面には、ブルーライトが含まれており、交感神経を刺激して眠りの妨げになるため、見ないようにしましょう。
睡眠学習のポイントは、寝る30分~1時間前に暗記系の勉強をすることと解説しました。しかし、勉強する手段として、スマホやタブレットを使わないようにしましょう。単語帳や赤・緑シートの使用や、書いて暗記するなど、デジタルデバイスの使用を避けて暗記をするのがおすすめです。
寝室の照明は暖色系や間接照明を使用する
暖色系の照明や間接照明は、睡眠の妨げにならない明るさや色味であり、おすすめです。
天井の照明に暖色系の豆電球が付いているご家庭も多いと思います。豆電球が明るすぎる場合は、間接照明をつけてもよいでしょう。
暖色系の照明は刺激が少なく、リラックス効果も得られるため、寝室に適しています。
睡眠時間は6~8時間確保しよう
一般的に理想とする睡眠時間は、6~8時間といわれています。しかし、日中の活動量や個人の体質など様々な事情で、人によって理想の睡眠時間は異なります。
自分に適した睡眠時間を探して、必要な睡眠時間を確保しましょう。睡眠時間が不足すると、せっかく勉強しても脳が働かず、勉強した内容が思い出せない可能性があります。
睡眠中に脳内で行われている2つの処理
寝ている間、脳内では、以下の2つの処理が行われています。
- ・記憶の整理・定着
- ・日中に経験した嫌なことを忘れる
それぞれについて解説しますので、ご参照ください。
記憶の整理・定着
脳は寝ている間に、日中経験したエピソードや勉強した内容を整理し、記憶に定着させる作業をしています。
レム睡眠、ノンレム睡眠は、それぞれ記憶を処理するための工程を役割分担しています。
- ・レム睡眠のとき:いつ、どこで、何があったのかエピソードを記憶する。すぐに思い出せるようにインデックスをつけている
- ・ノンレム睡眠のとき:記憶を固定している。記憶同士を結び付けて整理する
寝ている間にレム睡眠とノンレム睡眠が繰り返される回数が多いほど、記憶の整理や定着がしやすくなります。
一方で、睡眠時間が短くなると、睡眠パターンの繰り返しが少なくなり、記憶の定着やインデックスをつける処理が不十分となります。結果、勉強したのに思い出せなかったり、忘れてしまったりします。
日中に経験した嫌なことを忘れる
嫌な経験をいつまでも鮮明に覚えていると、精神的に不安定となり、日常生活に影響を及ぼすおそれがあります。そのため脳は、寝ている間に日中経験した嫌なエピソードを忘れるように働きかけます。
翌朝目が覚めたとき、嫌な記憶は残っていますが、前日よりは気持ちが落ち着いているでしょう。
睡眠時間が短いと、嫌なエピソードを忘れる処理が追いつかず、翌日まで引きずってしまう可能性があるため、必要な睡眠時間を確保しましょう。
睡眠時間を削って勉強しても効果は薄い!寝不足による3つの悪影響
テスト前になると「一夜漬けで勉強した」「今日のテストに向けて寝不足が続いている」という人もいるのではないでしょうか。
睡眠時間を減らして勉強に取り組んでも、身体に悪影響が出てしまい、効果は期待できません。
寝不足になると起こる、身体の悪影響を3つ紹介します。
- ・集中力の低下
- ・ストレスが溜まる
- ・睡眠障害に陥る可能性がある
睡眠時間を削って勉強するよりも、しっかり寝た方が勉強した内容が身につきます。
集中力の低下
寝不足になると、脳の休息が不十分となり、働きが鈍くなります。脳の働きが鈍くなるため、集中力が低下したり、考えたりできなくなるのです。
睡眠時間を削って勉強した場合、記憶の処理が追いつかず、覚えた単語や年表も忘れてしまいます。
「勉強したのに忘れてしまった」と感じ、モチベーションの低下にもつながるため、睡眠時間の確保は重要です。
ストレスが溜まる
ストレスは、寝ている間に忘れるように処理されることで軽減しています。寝不足が続くと、ストレスの処理が足りなくなり、徐々に溜まってしまいます。
自覚していないところでストレスを抱えていることもあり、寝不足により蓄積して爆発してしまうおそれもあるため、適切な睡眠時間を確保しましょう。
睡眠障害に陥る可能性がある
睡眠時間を削って勉強することで、体内時計にズレが生じ、睡眠障害を起こす可能性があります。
体内時計は、24時間よりも少し長いサイクルなので、朝日を浴びることでリセットし、調整しているためです。
寝不足により、起床時間が遅くなると体内時計のリセットも遅れ、睡眠障害へ発展します。
睡眠は、質や時間だけではなく、規則正しく取ることも重要です。特に、平日と休日で起床時間や就寝時間が2時間以上違うと、睡眠障害を起こしやすくなりますので、ご注意ください。
まとめ
睡眠学習は、勉強した内容をしっかり記憶するために活用できる手段です。
- 1.寝る30分~1時間前に暗記系の勉強をする
- 2.寝ている間に勉強した内容を音声で流す
- 3.起きたらすぐ復習する
上記のパターンで勉強を進めることで、暗記系の勉強が捗るでしょう。
記憶を定着させるには、十分な睡眠が必要です。睡眠時間を削ると記憶の定着どころか、身体に悪影響が出るため、自分に合った睡眠時間を確保しましょう。
よくある質問
Q.睡眠学習に効果的なのはどのような方法ですか?
A.睡眠学習は、適切な睡眠時間や、質を向上させるのが効果的です。寝る前1時間はテレビやスマホは見ない、寝るときは間接照明や暖色系の電球をつけるなどの工夫をすると、睡眠の質が向上します。効果的な睡眠学習の方法については「【睡眠学習は効果あり?】寝ながら勉強する方法や睡眠との関係性を解説」 でも紹介していますので、ご参照ください。
Q.テスト前日に徹夜で勉強するのはダメですか?
A.徹夜はおすすめできません。脳が休めておらず、頭が働かない状態となり、せっかく勉強した内容も思い出せないからです。自分に合った睡眠時間を確保することで、勉強した内容を記憶したり、休息したりできるため、睡眠時間はしっかり確保しましょう。