中途覚醒とは?
中途覚醒は、睡眠維持障害とも呼ばれる不眠症の一種です。
中途覚醒を発症すると、夜中に複数回にわたり目を覚ましてしまい、熟睡できない状態となります。
また、何度も目を覚ますだけでなく、一度目を覚ますとなかなか寝付けなくなり、睡眠の質が下がるだけでなく、睡眠時間も短くなってしまうのです。
睡眠時無呼吸症候群の方は、自分が起きていると認識していなくても、呼吸が止まるたびに脳が反応して覚醒状態となることもあります。
中途覚醒が続くことによる弊害
中途覚醒が長期間続き睡眠の質が落ちると、身体にさまざまな不調が現れます。ここでは、中途覚醒が続くとどのような弊害が起こるのか解説します。
うつ病になるリスク
睡眠不足の状態が続くと、自律神経が乱れ精神的に不安定になります。
自律神経には、心拍数を上げて精力的な活動を促す交感神経と、心拍数を下げて心身の回復をおこなう副交感神経の2種類があります。
昼間は交感神経が活発になり、夜間は副交感神経が働くことで心身のバランスが取れる仕組みです。
自律神経のバランスが崩れると夜中でも活動的な状態になり、肉体的にも精神的にも回復ができなくなるため、ストレスが溜まり、うつ病となるリスクが急増します。
反対に、うつ病になったことで睡眠障害も発症したケースも多くあります。
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センターが発表した睡眠障害ガイドラインによると、うつ病患者の約8割が不眠状態になっているとされています。
糖尿病や高血圧にかかりやすくなる
睡眠不足が続いて交感神経が活性化すると、インスリンの働きが落ちて血糖コントロールが不十分な状態となります。
睡眠不足は、食欲に関する脳内の伝達物質であるオレキシンの濃度も高めるため、食欲が増して肥満となるケースもあるのです。
インスリンの働きの低下とオレキシンによる食欲増大が合わさり、糖尿病にかかるリスクが増加します。
また、睡眠の質が低下して夜中に交感神経が活性化すると、血圧が高い状態が続くことになります。その結果、朝や日中の血圧まで高くなってしまい、慢性的な高血圧になってしまう可能性も。
仕事が上手くいなくなる
中途覚醒に限らず、不眠症の患者は、睡眠の質の低下により日中に強い眠気を感じて集中力が低下します。
注意力が散漫な状態で仕事をしても失敗を繰り返してしまい、そのストレスから不眠症が悪化することもあるそうです。
仕事だけでなく、プライベートなど家庭内にも問題が発生する可能性もあるので、注意が必要です。
仕事のストレスを家族にぶつけてしまい、家族関係が悪化して家庭崩壊に繋がるケースもあります。
中途覚醒以外の不眠症については、コチラの記事でも解説していますので是非チェックしてみてください。
中途覚醒の原因
中途覚醒を改善するためには、原因を知ることが大切です。ここでは、中途覚醒を引き起こす可能性がある原因について解説します。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に気道が塞がることにより呼吸ができない状態となる病気です。
一時的に呼吸ができない状態になると、息苦しさから目が覚めてしまいます。
また、睡眠時無呼吸症候群の患者は、いびきが大きくなるため、自らのいびきで覚醒してしまうことがあります。
加齢による体内リズムの変化
高齢者は、仕事などの社会活動から離れて昼間の活動量が減少するので、必要とする睡眠量が少なくなり浅い眠りの時間が増えます。
浅い眠りの状態では、少しの物音に反応して目が覚めてしまいます。
また、加齢により体内時計が変化して早寝早起きになるなど、睡眠のリズムも変化するので注意が必要です。
うつなど精神的な病気
うつ病など精神的な疾患を抱えている方は、常に強いストレスに曝されているため、自律神経が乱れて中途覚醒などの睡眠障害を併発します。
うつ病だから睡眠障害になるのか、睡眠障害だからうつ病になるのかについては、詳しい研究結果が出ていません。
日本心身医学会の発表によると、不眠の症状が現れた方は3年以内にうつ病になるリスクが4倍高まり、不眠が1年以上続くとうつ病になるリスクが40倍高まると報告されています。
このように、不眠症とうつ病は密接に関係しているため、不眠症かもと感じたら精神的にも健康を保つために、運動などでストレス発散しましょう。
不眠症とうつ病の関係は、コチラの記事でも解説していますので是非チェックしてみてください。
寝る前にお酒を飲む
寝る前にお酒を飲む方がいますが、睡眠の質を高めるためには寝酒をしてはいけません。
アルコールを飲むと、脳の活動が低下して気分が楽になり、リラックスした状態で眠れることがあります。しかし、睡眠中に身体からアルコールが代謝される過程では脳が活性化するため、眠りが浅くなり中途覚醒する可能性が高まります。
また、アルコールの影響で、喉が渇く・尿意をもよおす回数が増えるなど、睡眠に悪影響を与えるでしょう。
アルコールの麻酔効果により、喉周りの筋肉が弛緩して気道を塞ぎやすくなるため、睡眠時無呼吸症候群の患者は特に注意が必要です。
眠る前にスマートフォンを操作している
人は夜になると自然と眠くなりますが、これはメラトニンというホルモンが影響しています。
メラトニンは暗い場所にいると分泌量が増えますが、強い光を浴びると分泌量が下がることが特徴です。
そのため、寝る前にスマートフォンを操作していると身体が昼間だと錯覚して、メラトニンの分泌量が下がり、眠くならない・睡眠が浅くなるなどの弊害が発生します。
就寝する2時間前はスマートフォンを使用しない、画面の明るさを暗めに設定する、ブルーライトカットのメガネを着用するなどの対策が必要の様です。
中途覚醒しないための対策
ここでは、眠りについた後に中途覚醒しないための対策を紹介します。
生活のリズムを整える
毎日、同じ時間に起きて同じ時間に就寝する、というように生活のリズムを整えることが大切です。
人は同じ生活リズムを続けると、身体が覚醒と睡眠の時間を覚えるため、中途覚醒しにくくなります。
生活のリズムを整える途中で、昼間に眠気に襲われ昼寝をすることがあります。しかし、長時間の昼寝は、夜の寝付きを悪くするため注意が必要です。
昼寝は15分~30分ほどにすると、頭がさえて作業効率が上がるだけでなく、夜の寝付きにも影響が少ないとされています。
生活習慣を見直す
現代人は仕事に追われ忙しい日々を過ごしているため、食事のバランスを考える余裕はなく、運動をする時間も取れない方が多いです。
しかし、生活習慣は睡眠の質に大きく影響します。
適度に身体を動かせば心地よい疲労感に包まれて、寝付きが改善されます。また、深い眠りに落ちるため、睡眠の質も向上するでしょう。就寝前に激しい運動をすると、身体が興奮状態となり寝付けなくなるので避けるようにしましょう。
ただし、急に激しい運動を取り入れると身体を傷めてしまうので、まずは、週に2~3回くらいのウォーキングから始めるのがおすすめです。
また、バランスの良い食事を摂ることも中途覚醒の改善に繋がります。
バランスの良い食事は肥満や高血圧を改善します。肥満は睡眠時無呼吸症候群の原因となり、高血圧は寝付きが悪くなる原因となるため、バランスの良い食事により、身体の中から改善することが大切です。
寝室の環境を整える
中途覚醒しないためには、寝室をリラックスできる環境に変化させましょう。
例えば、道路や線路が近くて走行音などが聞こえてくるのであれば、防音カーテンを設置すれば騒音を軽減できます。
店舗の看板などの明かりが入ってくるのであれば、アイマスクを着用して光を遮断することがおすすめです。
また、外部からの音や光などの刺激を軽減するだけでなく、リラックスできるように工夫することも大切です。
例えば、睡眠アロマには自律神経を整えるものがあるため、副交感神経が優位となりストレスや緊張をほぐす効果が期待できます。
エアコンや加湿器を使用して、部屋の温度や湿度を過ごしやすい環境にすることもおすすめです。
朝散歩をする
起床してから早い時間に散歩をおこなうことで、日光を浴びてセロトニンの分泌が促進されます。
セロトニンは別名「幸せホルモン」と呼ばれていて、精神の安定やストレスに対して高い効能があります。
セロトニンは日が沈みにつれて、自然な眠りへと身体をいざなうメラトニンへと変化していきます。
つまり、朝散歩をしてセロトニンを分泌することが、メラトニンの分泌量の増加に繋がるのです。
目覚めてしまったらリラックスして入眠する
中途覚醒すると再び眠るまでに時間がかかり、イライラしたり焦ったりしてしまいます。
早く眠ろうと思えば思うほど眠れなくなり、時間だけが過ぎていく状況になってしまうものです。
起きてしまったものは仕方ないので、焦らずに深呼吸やストレッチなどでリラックスしましょう。
また、お気に入りの雑誌をパラパラ眺めることも効果的です。ただし、熟読してしまうと頭が活性化してしまうので、あくまで眺める程度にとどめることがおすすめです。
中途覚醒以外の不眠症の改善方法は、コチラの記事でも解説していますので是非チェックしてみてください。
中途覚醒などの不眠におすすめの漢方
中途覚醒の治療には睡眠薬を使用することもありますが、漢方での治療も人気があります。ここでは、中途覚醒におすすめの漢方を紹介します。
柴胡加竜骨牡蛎湯 (さいこかりゅうこつぼれいとう)
柴胡加竜骨牡蛎湯は、仕事や人間関係などで気持ちが強張ったり、思い悩んでしまったりして眠れない方におすすめの漢方薬です。
身体の中を流れる気を巡らせて熱を発散し、脳の興奮状態を落ち着かせる効果も期待できます。
黄連解毒湯 (おうれんげどくとう)
気持ちが高ぶり、頭部が熱っぽく落ち着かなくて不眠になっている方向けの漢方薬の様です。
黄連解毒湯は、身体の熱を冷まし、精神を落ち着かせることで、リラックスした状態で眠りにつく効果が期待できます。
また、湿疹や皮膚炎・口内炎など肌荒れに関する悩みにも効果も期待出来ます。
抑肝散加陳皮半夏 (よくかんさんかちんぴはんげ)
精神が高ぶりイライラや怒りの感情が出た際に、精神や自律神経の興奮を抑制する漢方薬の様です。
神経だけでなく筋肉の強張りを緩めてくれるため、心身の緊張状態を和らげられます。些細なことにイライラして眠れなくなってしまう方におすすめです。
まとめ
中途覚醒は、夜中に何度も目を覚ましてしまい、睡眠時間の減少や睡眠の質の低下を引き起こします。
うつ病や睡眠時無呼吸症候群・加齢などさまざまな要因により中途覚醒が発症します。
中途覚醒の改善には、生活リズムを整えたり、運動や食事などの生活習慣を改善したりすることが大切です。
夜中に目を覚ます状況が長く続くと、うつ病など精神的病気の併発や仕事など私生活が上手くいかなくなるなどの弊害が発生します。
日中に強い眠気を感じるなど悪影響が生じるのであれば、早い段階で医師に相談するようにしましょう。
よくある質問
Q.中途覚醒の原因は?
A.うつ病や加齢による体内リズムの変化・就寝前のスマートフォンの操作・就寝前の飲酒など原因は多岐に渡ります。
Q.中途覚醒の主な症状は?
A.夜中に何度も目を覚ますことが主な症状ですが、一度覚醒すると再入眠に時間がかかるという特徴もあります。