寝ている間の歯ぎしり・食いしばりの原因とは?
「最近、歯がすり減ってきた気がする」
「目が覚めたら歯を食いしばっていて、顎が疲れている」
このようなお悩みをもっている方は、睡眠中に歯ぎしりや食いしばりをしている可能性があります。睡眠中、無意識に歯ぎしりや食いしばりをしてしまうと、周囲に不快感を与えてしまいます。放置していると、歯がすり減ったり歯が欠けたりなど、大切な歯を失ってしまうかもしれません。
さらに、食いしばりは体全体の不調につながることも知られています。頭痛や肩こり、腰痛などがあり、直接的な原因に思い当たる節がない場合、歯ぎしりや食いしばりを疑ってみましょう。
では、なぜ歯ぎしりや食いしばりをしてしまうのでしょうか?
結論から言えば、生活習慣や心理的状況が強く影響しています。顎の使い方が不適切であったり、精神的ストレスを抱えたりしている場合、歯ぎしりや食いしばりが起こりやすいと言われています。
ここでは、歯ぎしり・食いしばりの原因について詳しく解説します。
ストレス
ストレスを抱えている場合は、食いしばりのリスクが高いため注意が必要です。
不安や怒り、悔しさなどを感じているとき、つい奥歯に力が入ってしまった経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか?精神的ストレスが蓄積すると、無意識に歯を食いしばることでストレスを発散しようとしてしまいます。
さらに、習慣化すると睡眠中も同じように食いしばってしまうようになり、歯ぎしりの原因にもなります。
ストレスを溜め込まないよう、上手に発散して健康的な毎日を過ごしましょう。
歯並びや骨格の問題
ひとつだけ歯がぶつかっていたり、上下の歯がうまく噛みあっていなかったりしている場合、無自覚のうちの歯ぎしりや食いしばりに影響します。起きているときには違和感がない場合でも、睡眠中には違和感を覚えており、無自覚のうちに違和感を解消しようと強い歯ぎしりをしてしまいます。
また、歯の治療による詰め物の影響で、噛み合わせが悪くなるケースも少なくありません。詰め物がストレスとなって歯ぎしりを発症させることも多いです。治療時に違和感を覚えた場合は、歯科医に噛み合わせの悪さを訴えましょう。
その他の生活習慣による影響
上記で紹介した原因以外にも、飲酒や喫煙、生活習慣による肥満なども歯ぎしりを発症させる原因としてよく挙げられます。これらの症状は肥満やいびき、睡眠中の口呼吸との関連が強く、睡眠が浅くなることによって歯ぎしりを引き起こします。
また、私生活でのストレスが多い方には飲酒や喫煙が多く見られる傾向にあり、どれも生活習慣によるストレスにつながっていると言えるでしょう。
歯ぎしり・食いしばりがもたらす悪影響とは
「睡眠中の歯ぎしりで歯が欠けてしまった」「歯を食いしばってしまう癖が続くとどうなってしまうの?」などの悩みや不安を抱えている人も少なくないと思います。食いしばりや歯ぎしりは、百害あって一利なし。体に様々な悪影響を与えることが分かっています。
具体的には歯周病や虫歯、歯や顎の変形などが挙げられます。長期間放置すると肩こりや頭痛、めまいなど全身の不調を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
ここでは、食いしばりが体に与える悪影響について、詳しく解説していきます。
虫歯や歯周病、知覚過敏
食いしばりの影響で、歯周病や虫歯を患う可能性があります。食いしばりによって歯の詰め物が傷んだり変形したりしてしまうと、口腔内で菌が繁殖しやすくなってしまうからです。また食いしばりによって歯に多大な力がかかると、歯の根元にとても小さな穴(マイクロホール)が開いてしまい、歯周病やひび割れの原因になります。
歯ぎしりや食いしばりは、知覚過敏も生じさせる可能性があります。そもそも知覚過敏とは、なんらかの刺激に瞬間的な激痛が走る症状のことです。食いしばりによって歯の表面を守っているエナメル質が剥がれ、内層の象牙質が露出すると内部の神経に刺激が伝わってしまい、知覚過敏が生じます。
特に歯ブラシによる刺激や、冷たいものを摂取したときの寒冷刺激が痛みの原因になります。悪化すれば歯の神経を抜くような治療が必要になるため、早期からの対策がおすすめです。
顎関節症
食いしばりを原因として、顎関節症を患う可能性があります。食いしばりによって顎関節にも負担がかかり変形することで、顎関節の動きに左右差が生じてしまい、スムーズな噛み合わせが得られなくなってしまうからです。
主な症状として、「顎が痛む」「顎を動かすと音が鳴る」「口が大きく開けられない」「噛み合わせに違和感がある」などが挙げられます。場合によっては顎が外れてしまうこともあるため、早めに専門医を受診しましょう。
顔全体の歪み
食いしばりによって、顔全体が変形する可能性があります。左右どちらかで歯ぎしりや食いしばりをする方は、片方の咀嚼筋だけが発達・肥大してしまうからです。
また、歯ぎしりや食いしばりだけではなく、普段から食べ物を噛むときに左右どちらかで咀嚼している人も注意が必要です。放置して症状が進行すると、顎だけでなく頬や目の形にも左右差が生じるため、早期からの対策をおすすめします。
頭痛や肩こり
歯ぎしりや食いしばりによって、体全体の不調が生じる可能性があります。これは、長期的な歯ぎしりや食いしばりによって頭頸部の筋肉が持続的に緊張し、血行不良になってしまうからです。
慢性的な頭痛や肩こりに悩んでいる方は、睡眠中に歯ぎしりや食いしばりをしているかもしれません。
歯ぎしり・食いしばりの予防と対策
睡眠中の歯ぎしりや食いしばりに気付くには、第三者の指摘がもっとも効果的です。寝ている間の出来事であり無自覚での行為のため、自分自身で気付くのは難しいでしょう。
しかし、起床時の顎の疲れや歯の磨耗など、過度な歯ぎしり・食いしばりをしている方は何かしらの症状があらわれています。
自分自身で歯ぎしりの疑いを感じている方や、歯を食いしばるクセのある方など、歯ぎしりを発症するケースは幅広く存在しています。そのため予防と対策は、自分自身の原因に合わせて選択しなければいけません。
ここでは、歯ぎしりや食いしばりの主な予防法と対策を紹介します。
ストレス解消
無自覚の歯ぎしりや食いしばりを改善するためには、ストレス解消が欠かせません。
ストレスは、歯ぎしりをしてしまう原因としてもっとも多いと考えられています。日常生活での緊張状態や蓄積された疲れが、歯ぎしりや食いしばりの頻度を増すとも言われているからです。
仕事や人間関係はもちろん、趣味や家族絡みでもストレスは生まれます。自分の生活にストレスはないか再度確認し、少しずつ取り除いていきましょう。
睡眠の質向上
睡眠の質の低下は、歯ぎしりや食いしばりを発生させやすくします。
睡眠の質とは、単なる睡眠時間で測れるものではありません。布団や枕があっていない、騒音や窓から差し込む光が気になる、不安感が強くて熟睡できないなど、原因は多数考えられます。一度、睡眠環境をチェックし問題がないか見直してみましょう。睡眠の質を改善することで、歯ぎしりや食いしばりの症状が改善されるケースがあります。
ストレッチなどの軽い運動
ストレッチやラジオ体操などの運動で、食いしばりが改善する可能性があります。
食いしばりは無意識に筋肉が緊張することで生じているため、改善には筋肉の緊張を弛緩させるような運動が効果的です。肩や首の筋肉が弛緩するようなストレッチが望ましいでしょう。
「肩こり ストレッチ」「肩こり ヨガ」などで検索すると、様々な動画が閲覧できます。テレビを見ながらできるような簡単なストレッチが多いため、毎日の習慣にしましょう。
マウスピース
過度な歯ぎしり・食いしばりの対策としては、マウスピースも有効です。
マウスピースを装着することで、歯と歯がぶつからないように噛み合わせを調節できます。しかし、マウスピースを装着しての睡眠は、口の中に大きな違和感が生まれます。そのため「逆に眠れない」といった声が多いのも事実です。また、今までと違う位置で顎を固定するため、慣れるまでは顎や首の疲れを感じやすいといったデメリットもあるでしょう。
もちろん、自分にあった特製のマウスピースを作成した場合、これらのデメリットは防げます。しかし、数万円から数十万円と金額の幅が広く、なかなか手を出せる金額ではありません。
市販のものを使っていつもよりストレスが増えると感じた場合、マウスピースの装着は中止しましょう。
歯列矯正
どの改善策もしっくりこない場合、歯並びや骨格に問題がある可能性が高いです。
幼い頃から歯の噛み合わせが悪いままの状態で大人になることは多く、珍しくありません。そのため、歯列矯正はもっとも的確に噛み合わせの悪さを改善することができるでしょう。
しかし、歯の噛み合わせの悪さだけが歯ぎしりを発症させているわけではありません。そもそも睡眠時の口呼吸や、これまでの歯ぎしりによって歯がすり減っていることが問題であることが多いため、歯列矯正をすれば完全に歯ぎしりの問題がなくなるという解釈は間違いです。
医療機関の受診
歯科医を受診してもなお、歯ぎしりや食いしばりが改善されない場合は、睡眠障害に特化した専門医に相談してみましょう。
睡眠に特化した医療機関を受診することで、食いしばりが改善する可能性があります。原因がストレスの場合は心療内科、肩や腰、頭頸部の問題であれば総合病院など、それぞれの問題に合わせた医療機関を紹介してくれます。
歯ぎしり・食いしばりと睡眠時無呼吸症候群の関係
歯ぎしりと食いしばりは、睡眠時無呼吸症候群と密接な関係があります。歯ぎしりや食いしばりをしている人の多くが、睡眠中の無呼吸や低呼吸の最中に確認されているからです。また、睡眠中の無呼吸や低呼吸の回数が増加するにつれ、歯ぎしりの頻度も比例して増加する傾向にあります。
睡眠時無呼吸症候群とは、なんらかの原因によって睡眠中の呼吸が止まったり、浅くなったりする病気です。無呼吸や低呼吸の状態では身体が低酸素状態になり、心臓や脳、血管系などの生活習慣病のリスクを高めます。
充分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、日中の過度な眠気を感じる人は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。専門医を受診し、精密検査を受けましょう。
睡眠時無呼吸症候群のセルフチェック方法についてはコチラの記事でも解説していますので是非チェックしてみてください。
まとめ
A.睡眠中は本来上下の歯と歯がぶつからない状態が理想です。ですが、癖や歯の噛み合わせの悪さから上下の歯がぶつかってしまい、その気持ち悪さを改善しようと無自覚のうちに歯ぎしりをしてしまいます。ほかにも、ストレスによって歯を強く噛み締めてしまう方もいます。
A.歯ぎしりの原因によって、防止策は異なります。口内環境に問題がある場合は、歯科医による治療が有効です。歯列矯正やマウスピースの作成など、適切な防止法を示してくれます。ストレスが原因の場合は、ストレス発散やリラックスタイムを心がけましょう。市販のナイトガード(マウスピース)のおすすめについては「【2023年版】おすすめの市販ナイトガード8選」
でも紹介しています。
歯ぎしりや食いしばりは生理現象のひとつです。脳や身体へリラックス効果をもたらす症状であるため、歯ぎしりや食いしばり自体が悪いわけではありません。
しかし、過度な歯ぎしりや食いしばりは、虫歯や歯周病、頭痛や肩こりなどの不調を呼び起こします。
歯ぎしりや食いしばりは、第三者からの指摘がない限り気が付きにくい症状です。しかし起床時に顎や首の疲れ、歯の痛みなどを感じる方は、早めに専門医を受診しましょう。
よくある質問
Q.睡眠中の歯ぎしりの原因は?
Q.歯ぎしりを防止する方法とは?