睡眠とストレスは相互に影響を与えている
ストレスは睡眠不足を引き起こしますが、その逆もまたしかりです。睡眠不足が慢性的になると、脳内の情報処理が追い付かなくなり、常にイライラしたり、リラックスできなくなったりします。
つまり、ストレスが溜まっているから眠れないケースと、充分な睡眠がとれないからストレスになっているケース、2つのパターンがあるのです。
睡眠不足はストレスを蓄積させる
睡眠不足は、私たちの身体や心に深刻な影響を及ぼします。睡眠不足が続くと、脳内のストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増加し、ストレスへの対処能力が低下するからです。
さらに、充分な睡眠がとれない日々が続くと、日中の活動においても集中力や注意力が低下します。自分のパフォーマンス性が下がったことにより、ますますストレスを感じやすくなる可能性があるでしょう。
睡眠不足がストレス解消を妨げるうえ、さらなるストレスを感じさせるため、悪循環を引き起こしているのです。
ストレスが眠りを妨げる
一方で、溜まったストレスが原因で、眠りにくくなることがあります。心配事や不安、プレッシャーなどにより、心が落ち着かず、寝つきが悪くなるのです。
また、日中に抱えたストレスが夜間の眠りに影響を及ぼし、眠りを浅くするケースもあります。
不十分な睡眠は、翌日のストレス耐性を低下させます。結果として、さらなるストレスを生み出す可能性があるため、睡眠の質向上はストレス管理にも重要です。
ストレスが睡眠不足を引き起こすメカニズムとは
このように、睡眠とストレスは密接に結びついています。適切な睡眠の確保は、ストレスの軽減や、心身の健康維持に重要です。
ここからは、ストレスが睡眠不足に繋がるメカニズムについて、詳しく解説します。
ストレスホルモンの影響
ストレスはホルモンバランスを乱すため、満足のいく睡眠がとれなくなってしまいます。
ストレスで不眠症になるケースが多いですが、反対に過眠症を発症するケースもあるため注意が必要です。
過眠症とは、睡眠中枢に異常をきたし、いくら寝ても眠気がとれない状態が続く病気のことです。常に眠気を感じているため、集中力の低下や疲労の蓄積が懸念されます。
7~8時間寝ているにもかかわらず「疲れがとれない」「日中の眠気がおさまらない」などと感じている場合は、過眠症を疑ってみましょう。
睡眠時無呼吸症候群の影響
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何らかの原因で呼吸が止まってしまう病気のことです。呼吸停止の原因の多くは、舌の付け根や口蓋垂が落ち込み、気道を塞いでしまうからです。
無呼吸状態や低呼吸状態では、血流が妨げられているため、心臓や脳に負担がかかっています。そのため、たとえ8時間眠っていても、心身が休息できていません。
睡眠時無呼吸症候群による無呼吸や低呼吸によるストレスは、睡眠不足を感じる原因のひとつです。
睡眠環境の問題
快眠には、睡眠環境の整備も欠かせません。毎日眠りにつく寝室は、快適な眠りに最適な環境でしょうか。
近隣の騒音やカーテンのすき間から入る街灯の光も、実は眠りを妨げているかもしれません。静かで落ち着いた環境になるよう、耳栓や遮光カーテンを利用しましょう。
また、寝室の温度や湿度も、睡眠環境に重要な要素です。エアコンや除湿器を活用し、心地よい環境をつくりましょう。
枕やマットレスなどの寝具にも、気を配ってください。身体に合った寝具を選択すれば、肩こりや腰の痛みを軽減できる可能性があります。
いびきメディカルクリニックの記事「ストレスがいびきの原因になる?」では、ストレスによるいびきの理由や対処法についてより詳し解説されています。
睡眠不足で発生する5つのリスク
睡眠は、健康的な生活を送るために欠かせない行動のひとつです。睡眠をおろそかにすると、ストレスや疲労が蓄積し、心身に重大な影響を与えます。
ここからは、睡眠不足によって懸念される5つのリスクを紹介します。
生活習慣病
睡眠不足は、生活習慣病のリスクを高めると聞いたことがあるかもしれません。
適切な睡眠時間を確保している人に比べ、慢性的な睡眠不足状態にある人は、生活習慣病を発症するリスクがあります。睡眠不足が影響する主な生活習慣病は、以下の通りです。
- ・高血圧
- ・心筋梗塞
- ・脳血管障害
- ・がん
- ・糖尿病
とくに糖尿病は、睡眠に問題ない人と比較すると、発症リスクが1.5~2倍になるといわれています。
健康寿命を延ばすためにも、良質な睡眠を心がけましょう。
抑うつ
睡眠にはストレス解消効果があります。そのため睡眠時間が不足していると、日常的に溜め込んだストレスが解消されないまま、蓄積されます。
ストレスが原因で神経伝達物質の分泌量が減ると、うつ病を発生するリスクもあります。多忙な現代ですが、少しでも睡眠時間を確保できるよう、時間の使い方を見直してみましょう。
また、普段からストレスを溜め込まないよう、自分に合ったストレス発散方法を見つけてください。
肥満
睡眠不足の身体は、食欲を抑えるホルモン「レプチン」の分泌量が減少します。反対に、食欲を増進させるホルモン「グレリン」の分泌が活発になります。
そのため睡眠が足りていないと、食欲のコントロールがうまくいきません。これら2つのホルモンが、睡眠不足が肥満体型を生み出す原因です。
たとえ睡眠不足を解消したとしても、食欲の増加はなかなか改善できません。急に食事量を減らせば、逆にストレスとなるでしょう。
とくに中年以降の世代は、肥満のリスクが高まっています。肥満体型が気になったら、食事制限とともに睡眠時間の確保を意識してみましょう。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群が睡眠不足の原因となっているケースがありますが、反対に、睡眠不足によるストレスが睡眠時無呼吸症候群の原因となっている可能性もあります。
睡眠時無呼吸症候群には、閉塞性睡眠時無呼吸症候群と中枢性睡眠時無呼吸症候群の2種類があります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、気道が狭くなり空気が通りにくくなることが原因です。
対して中枢性睡眠時無呼吸症候群は、呼吸中枢の異常が原因です。なぜ呼吸中枢に異常が起きるのか、そのメカニズムは未だはっきりしていません。しかし、ストレスが呼吸中枢の働きに影響しているのではないか、といわれています。
認知機能・集中力の低下
睡眠時間が不足し、寝不足のまま朝を迎えた日、頭がボーっとするのを感じたことはありませんか。このように、睡眠不足によって簡単な計算に時間がかかったり、瞬時な判断ができなかったりと、認知機能が低下してしまいます。
また、ひとつのことに集中する能力も低下します。上司の指示を聞き逃したり、大事な約束を忘れたりといったトラブルに発展する可能性もあるでしょう。
睡眠不足は、業務上のミスや交通事故のリスクが高まります。
睡眠の質を高める5つのコツ
睡眠の質向上は、健康的な生活を送るために欠かせない課題です。ここからは、良質な睡眠を手に入れるためのコツを、5つ紹介します。
就寝前の食事を控える
仕事で帰宅が遅いからといって、寝る直前まで食べたり飲んだりするのはやめましょう。
消化のために胃腸が働いていると、寝ている間も体は休息できません。また、胃腸の不快感や胸やけを起こす可能性もあります。
寝る2~3時間前に食事を終えられるのがベストです。できる範囲で、生活リズムを整えましょう。
寝る前のリラックスタイムをつくる
就寝前には、心を落ち着けるためのリラックスタイムを設けましょう。
好きな音楽を聴いたり、読書をしたりして、一日頑張った自分へのごほうびタイムにします。リラックスできる時間を過ごせば、心身をリフレッシュできます。
ヒーリングミュージックやクラシックなど、歌詞のない音楽がおすすめです。ロック系ミュージックを聞いたり、推理小説を読んだりすると、逆に興奮してしまう可能性があります。
入浴で深層体温を上げる
就寝前の入浴は睡眠の質を向上させる効果があります。入浴で身体の深層体温が上がると、入浴後には体温が急激に降下。この体温の急降下が、体内時計が眠りのサイクルを作り出してくれます。
また、入浴は心身のリラックスも期待できます。温かいお風呂にゆっくり浸かることで、心地よい眠りを促進しましょう。睡眠と入浴の関係についてはコチラの記事でも解説していますので、是非チェックしてみてください。
定期的な運動を心がける
現代人は運動不足も、重大な問題です。運動不足の自覚がある人は、適度な運動を取り入れましょう。
身体を疲れさせることで、スムーズな入眠を促せられます。また、運動によってストレスも解消できます。ストレスを軽減できれば、質の高い睡眠も期待できますので、積極的に運動しましょう。
ウォーキングやランニングなど、軽い有酸素運動がおすすめです。
ストレスを解消する
ストレスは睡眠に悪影響を与える要因です。日常生活でストレスを感じたら、趣味やリラックスするアクティビティを楽しむことで解消しましょう。
また、問題を抱えている場合は相談することも大切です。ストレスを取り除くことで、心穏やかな状態をつくり出し、質の高い睡眠を得ることができます。
まとめ
睡眠とストレスは、密接に結びついています。ストレスが蓄積されると、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりする可能性があります。
また、充分な睡眠がとれないことが、ストレスとなっている可能性もあるでしょう。集中力の低下や注意力の散漫が、日々の活動に影響を及ぼすかもしれません。
睡眠とストレスの悪循環を理解することで、健康的な生活を送れるようになります。ストレスを溜め込まないような工夫や、安眠できる睡眠環境を整備しましょう。
もし自分では解決できない悩みや問題があれば、専門医の受診をおすすめします。
よくある質問
Q.睡眠時無呼吸症候群とストレスの関係は?
A.ストレスは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)という病気を引き起こす可能性があります。ストレスが睡眠中枢に影響を与え、無呼吸や低呼吸を引き起こすと考えられているからです。また、睡眠時無呼吸症候群で睡眠の質が下がると、日中の眠気や集中力の低下、疲労の蓄積に繋がり、ストレスとなる場合もあります。 睡眠時無呼吸症候群の詳しい症状や原因については、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)ってどんな病気?原因・リスク・治療法について解説」でも解説しています。
Q.ストレスは睡眠にどんな影響を与えるの?
A.ストレスが溜まると、入眠困難や夜間覚醒が起こり、睡眠の質や量が低下します。また、ストレスによって深い眠りが妨げられると、疲労感や集中力の低下、心身の不調が生じるリスクがあります。