不眠?過眠?うつ病でみられる睡眠障害とは?
うつ病でみられる睡眠障害の特徴は、寝つきが悪く、夜中に何度も目が覚めることです。
うつ病の症状には気分の落ち込みや意欲低下などがあり、精神的な健康を害しているため、睡眠の質が悪くなりやすいといわれています。
うつ病患者のほとんどは、睡眠に関する悩みを抱えており、うつ病と睡眠障害は深く関係しているといえるでしょう。
一方で、うつ病により心身ともに疲労が溜まると、身体が休息を求め過度に寝てしまう過眠症になるケースがあります。
また、うつ病の治療薬には副作用に眠気が挙げられているものもあり、治療薬も過眠症に関係しているかもしれません。
うつ病と不眠症の関係について
うつ病と不眠症の関係について、以下の項目に沿って解説します。
・うつ病から不眠症になる原因
・うつ病の人がなりやすい不眠症の種類
・不眠症からうつ病を発症することもある
うつ病と不眠症は関係が深く、うつ病と診断される人には不眠症が、不眠症で悩んでいる人にうつ病の症状がみられるケースも多くあります。
うつ病から不眠症になる原因
うつ病から不眠症になる原因は、主に3つ考えられます。以下の表をご参照ください。
原因 | 詳細 |
---|---|
生命維持に欠かせない 食欲や睡眠欲の低下 |
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セロトニンの減少 |
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運動量の減少 |
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上記の原因は、複数当てはまっているケースが多くあり、意欲低下やセロトニンの減少は治療薬を服用することで改善する場合があります。
うつ病の人がなりやすい不眠症の種類
不眠症には大きく分けて4種類あり、それぞれに特徴があります。以下の表をご参照ください。
睡眠障害の種類 | 詳細 |
---|---|
入眠障害 |
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中途覚醒 |
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早朝覚醒 |
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熟眠障害 |
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上記の4つの原因を複数併発しているケースも多く、寝つきが悪く夜中に目が覚めたり、寝つきが悪いのに朝早くに目が覚めたりします。
不眠症からうつ病を発症することもある
うつ病の症状として不眠症が挙げられる一方で、不眠症が原因でうつ病に発展するケースも少なくありません。
不眠症により心身ともに疲労が溜まり、日中の活動意欲が低下することでうつ病になるのです。
寝つきが悪かったり、夜中に何度も目が覚めたり、朝早く目が覚めてから眠れないなどの症状が気になる場合は、早めに医療機関を受診し、治療を開始することでうつ病の発症を未然に防ぐことができます。
うつ病と過眠症の関係について
うつ病と過眠症の関係について、以下の項目に沿って解説します。
・うつ病から過眠症になる原因
・うつ病から過眠症になっている人は非定型うつ病かも?
うつ病から過眠症になる原因
うつ病により気分が落ち込み、何もする気になれないことで、精神的に疲労が溜まります。溜まった疲労を解消するために、多くの睡眠を取ろうと身体が反応するのです。
過眠症は、以下のような状態を指します。
- ・普段の睡眠時間よりも過剰に長い
- ・長く寝ているにも関わらず昼間に起きていられないほどの強い眠気を感じる
過眠症により日常生活に影響する場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
うつ病から過眠症になっている人は非定型うつ病かも?
近年、非定型うつ病が注目されるようになりました。
非定型うつ病の特徴は、以下の通りです。
- ・気分が落ち込むが好きなことをしていると元気になる
- ・いくら寝ても眠い
- ・過食傾向
- ・10代~30代の女性に多い
- ・周りにはうつ病とは見えにくい
- ・治療薬の効果が出にくい
一般的なうつ病とは症状が異なり、周りには病気と理解してもらえないことも多いといわれています。
女性の若年層で上記のような特徴がみられ、苦痛を感じている場合は受診してカウンセリングを受けることで改善が期待できます。
うつ病とは心の風邪であり誰でも発症する可能性がある
うつ病とは、気持ちが落ち込み何もやる気になれず、日常生活に影響を及ぼす気分障害を指します。
うつ病を発症するきっかけはストレスであり、誰がうつ病を発症してもおかしくありません。うつ病を発症するきっかけになりやすいストレスは以下の通りです。
- ・大切な人や物を失う喪失感(恋人と別れる、ペットの死、大切にしていたものを損失するなど)
- ・環境の変化(進学、就職、結婚、出産、転勤など)
- ・人間関係(友達にいじめられる、上司のパワーハラスメントなど)
また、きっかけは人それぞれの感じ方によってストレスに感じる度合いが異なるため、性格も大きく関係してくるといえるでしょう。
うつ病の代表的な症状とは?
うつ病の代表的な症状は、以下の通りです。
- ・やる気が出ない
- ・気分が悪い
- ・身体がだるい
- ・眠れない
- ・趣味が楽しめない
先述したストレスがかかったときに、上記のような症状が現れ始めたらうつ病の可能性があります。
気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
うつ病になりやすい人の特徴
うつ病は、ストレスを感じると発症するといわれており、感じ方は人それぞれです。
ストレスを溜めこんでしまう人、自分なりに発散方法を知っている人、そもそもストレスを気にしない人など、性格や体質が大きく影響してくるといえるでしょう。
うつ病になりやすい人には特徴がありますので、以下をご確認ください。
気質 | 詳細 |
---|---|
循環気質 |
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執着気質 |
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メランコリー親和型気質 |
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上記の特徴に当てはまる人はストレスを強く感じやすく、うつ病になりやすいといわれています。
うつ病の治療方法
うつ病の治療方法は、大きく3つに分けられます。
治療方法 | 詳細 |
---|---|
休養・環境調整 |
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薬物療法 |
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精神療法(カウンセリング) |
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休養や薬物療法だけでは回復に時間がかかったり、再発する可能性が高かったりします。並行して精神療法を取り入れると、うつ病の症状が早く軽減されるようです。
うつ病による不眠症を改善するポイント4選
うつ病による不眠症でつらい人へ、薬だけではなく日常生活で気を付けるとよいポイントを4つ紹介します。
・起床時間を固定する
・バランスのよい食事を心がける
・適度に身体を動かす
・寝る前にリラックスできる環境を整える
睡眠の質がよくなると、疲労が回復し気持ちが前向きになりやすくなります。自分でできることは実践していきましょう。
起床時間を固定する
朝起きる時間を固定し、決まった時間に日光を浴びることで夜に分泌される睡眠ホルモンが増え、寝つきやすくなります。
人間の身体は日光を浴びると生成されるセロトニンが、夜になると睡眠ホルモンであるメラトニンに変化し、眠気を感じるのです。セロトニンの量が少ないと、メラトニンの量も少なくなるため夜の眠りに影響します。
以上のことから、朝日光を浴びることが重要といえるでしょう。
また、体内時計は25時間サイクルのため、1時間のズレが生じています。朝起きて日光を浴びることでリセットされ、ズレを調整しているのです。体内時計が狂わないように決まった時間に起きて日光を浴び、体内時計を調整することも大切です。
バランスのよい食事を心がける
うつ病では食欲が低下し、食べ物を受け付けないことがしばしばあります。
しかし、バランスのよい食事を摂るようにすると必要な栄養素が摂取でき、うつ病の回復が期待できます。
うつ病で不足しがちな栄養素、栄養素の役割、栄養素が含まれている食材について以下の表を参照ください。
栄養素 | 役割 | 含まれる食材 |
---|---|---|
トリプトファン |
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乳製品、肉類、魚類、大豆製品、卵、ナッツなど |
葉酸 |
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豚肉の赤身、納豆、緑黄色野菜、ウナギなど |
鉄分 |
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牛肉、レバー、赤身の肉、海藻、大豆製品など |
うつ病の人の食事では、バランスの他に脂っこい食事や飲酒にも注意が必要です。
脂っこい食事は、消化にエネルギーが使われるため睡眠を取るためのエネルギーが不足する可能性があります。
飲酒は寝つきがよくなる一方で、アルコールが分解され始めると覚醒作用が働くため、夜中に目が覚めて眠れなくなります。
上記の注意点も意識して、バランスや消化のよい食事を心がけましょう。
適度に身体を動かす
うつ病では意欲低下により、何もする気になれず布団でごろごろして過ごすことも珍しくありません。
倦怠感が強く、運動どころではないと思う人もいるでしょう。できる範囲で身体を動かすことで、適度な疲労感が得られ寝つきがよくなります。
ジョギングや筋肉トレーニングなどのハードな運動ではなく、近所を散歩する、自転車で近所のコンビニまで行ってみるなど、スモールステップで少しずつ身体を動かすようにしていくのがおすすめです。
寝る前にリラックスできる環境を整える
寝る前にテレビやスマホなどをみていると、ブルーライトの影響でメラトニンの分泌が減少し、眠気に影響します。
テレビやスマホの代わりに、以下のような方法でリラックスできる時間を確保してみてはいかがでしょうか?
- ・好みのアロマオイルを焚いて好きな香りを感じながらリラックスする
- ・自然音やクラシックなど音楽を聴いてリラックスする
- ・ヨガやゆったりストレッチで筋肉の緊張をほぐす
上記のリラックス方法を実践してみると、身体がリラックスして自然と眠気を感じるようになります。ぜひ試してみてください。
うつ病は睡眠時無呼吸症候群とも関係している?
うつ病は、不眠障害の他にも睡眠時無呼吸症候群とも関係が深いです。
うつ病と睡眠時無呼吸症候群について、以下の項目に沿って解説します。
・睡眠時無呼吸症候群とは夜間の無呼吸により睡眠の質が低下すること
・睡眠時無呼吸症候群により睡眠の質が低下することでうつ状態になりやすい
睡眠時無呼吸症候群は、脳梗塞や心筋梗塞などの急を要する病気を発症する引き金になりかねません。
うつ病との関係を知り、自分に当てはまってないか確認してみましょう。
睡眠時無呼吸症候群とは夜間の無呼吸により睡眠の質が低下すること
睡眠時無呼吸症候群とは、夜寝ている間に呼吸が止まったり、浅い呼吸を繰り返したりする病気を指します。家族やパートナーでいびきをかいたり、呼吸が止まったりしている場合は、睡眠時無呼吸症候群かもしれません。
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間の呼吸が不安定になることで体内の酸素量が低下しているため、睡眠の質に影響しています。呼吸を促そうと脳が指令を出し続けるため、脳の休息が取れていません。浅い睡眠が多く深い睡眠が少なくなっている状態です。そのため、寝た気がしない、日中強い眠気を感じるなど、日常生活に影響します。
睡眠時無呼吸症候群により睡眠の質が低下することでうつ状態になりやすい
睡眠時無呼吸症候群は、浅い眠りの繰り返しで睡眠の質が悪く昼間の生活に影響が出ます。
眠れないことで集中力が低下し何もする気になれない、身体が重いなどの症状がみられるようになります。
中には、倦怠感が強いことや意欲が低下していることを自分が悪いと思い込み、自分で自分を責めてしまう人もいるでしょう。
睡眠無呼吸症候群は精神的に疲労やストレスを感じやすくなり、うつ病を発症するきっかけになるのです。
まとめ
うつ病と睡眠障害の関係について解説してきました。
本記事のまとめは以下の通りです。
- ・うつ病の人は不眠症を訴えることが多い
- ・入眠困難や中途覚醒を訴えることが多い
- ・うつ病は誰もが発症する可能性があるが完璧主義な人や真面目な人がなりやすい
- ・若い女性で過眠症の場合は非定型うつ病の可能性も考えられる
- ・睡眠時無呼吸症候群による睡眠の質の低下はうつ病を発症しやすい
気分の落ち込みや眠れなくて悩んでいる人は、迷わず医療機関を受診し早期に治療を開始しましょう。早期治療により、つらい症状が早く解消されます。
よくある質問
Q.うつ病と不眠症はどう関係していますか?
A.うつ病による睡眠欲の低下や、睡眠ホルモンの減少が原因で寝つきにくくなったり、夜中に何度も目が覚めたりします。反対に、寝つきの悪さや夜中の覚醒、早朝に目が覚めるなどの不眠症により疲労・ストレスが蓄積してうつ病に発展する場合もあります。
Q.不眠症を解消するにはどうすればよいですか?
A.起床時間を固定し、朝起きたら日光を浴びるようにしましょう。日中は運動し、適度な疲労感が得られると寝つきやすくなります。夜寝る前のテレビやスマホの使用は控え、ストレッチをしたり音楽を聴いたりするなどリラックスタイムを取り入れると寝つきやすくなります。不眠症を解消する方法は「【あきらめないで!】うつと不眠症の関係性について」でも紹介していますので、ご参照ください。
参考文献