不眠症とは?
不眠症とは睡眠障害の一種で、特定の睡眠問題が1ヶ月以上続き、かつ心身に不調が表れる病気を指します。
心身に表れる不調の例は次の通りです。
- ・倦怠感
- ・意欲の低下
- ・集中力の低下
- ・食欲の低下
- ・抑うつ
- ・頭重
- ・めまい
以上の他にも、不眠症に伴って表れる心身の不調は多岐にわたると言われています。
不眠症に悩まされる日本人は多い
不眠症は決して特別な病気ではありません。厚生労働省によると、日本人の5人に1人は不眠の悩みを抱えているそうです。
また、不眠の悩みは歳を重ねるにつれ、増えることも明らかになっています。同じく厚生労働省によると、60歳以上で不眠に悩まされている方は、約3人に1人の割合で存在すると言われています。
不眠症は「国民病」と言っても過言ではない病気です。
睡眠に関する悩みをお持ちの場合は、「たまたま眠れないだけ」と思わず、改善に努めるようにしましょう。
不眠症を放置した場合どうなるの?
不眠症を放置すると、日常生活に様々な悪影響が及びます。
例えば集中力の低下によって、仕事や運転中の重大なミスに繋がる危険性があります。倦怠感が原因でやる気が出ず、仕事や勉強に打ち込めない日もあるでしょう。
他には緊張、頭痛といった身体への影響も表れます。
以上のように、不眠症を放置することで安全・快適な生活が損なわれる恐れがあるため、早めの改善・治療を心がける必要があります。
短期的な不眠であっても同様です。放置した場合は悪化し、やがて不眠症へ至る可能性が考えられます。家庭での対処が難しくなるため、症状が軽いうちに改善するべきと言えるでしょう。
不眠症の4つのタイプと症状
不眠症には大きく4つのタイプがあります。タイプによって症状が異なり、また発症しやすい人も違います。
以下でタイプ別に、症状をチェックしてみましょう。
①入眠障害
入眠障害は、布団に入ってもなかなか寝付けないタイプの睡眠障害です。一般的に、30分〜1時間寝つけない場合は入眠障害であると考えられます。
原因としてはストレスのような精神的なものが多く、不眠症の中でもっとも悩む人が多いタイプです。
寝つくまでに時間はかかりますが、一度眠ってしまえば夜中に目覚めることは基本的になく、朝まで眠り続けます。
②中途覚醒
中途覚醒は、眠っている最中に何度も目が覚めてしまうタイプの睡眠障害です。
ポイントは「何度も」目が覚めるという点です。トイレに行きたかった、あるいは寝苦しかったなどの理由で一度目が覚めただけならば、中途覚醒の可能性は低いでしょう。
中途覚醒タイプの特徴として、熟睡感がないことも挙げられます。睡眠中に目が覚めてしまった後はすぐに寝つけますが、それが頻繁に繰り返されるので、眠りの質が低下していると考えられます。
肥満、高血圧、糖尿病などの病気を持っている方に多いタイプです。
③早朝覚醒
早朝覚醒は、起床しようと考えていた時間よりも早く目が覚めてしまうタイプの睡眠障害です。目安として2時間以上早くに目が覚めてしまう場合は、早朝覚醒であると考えられます。
また早朝覚醒は、朝方に一度目が覚めた後は、その後、なかなか寝つけないのも特徴です。
うつ病の方や高齢者に多いタイプと言われています。
④熟眠障害
熟眠障害は、十分な睡眠時間を確保しても眠りが浅く、「ぐっすり眠れた」という熟睡感を得られません。
睡眠中、何度も呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」や、無意識に足が動く「周期性四肢運動障害」などが関係していると言われており、眠りが浅い場合に起こりやすいようです。
また、高齢者や神経質な方にも多いタイプだと言われています。
不眠症の原因
ここまで、不眠症の症状やタイプについて解説してきました。
多様な症状がある不眠症ですが、共通しているのはできるだけ早くに改善したほうがいいということです。しかし、その改善方法は原因によって異なります。
ここからは、不眠症の大きな原因について解説していきます。
環境的な要因
就寝時の環境が不眠の原因になっているケースです。
例えば騒音や電気の灯り、暑さや寒さ、湿度などの影響によって眠れなくなります。特に寝室の温度や湿度は意識する方が少ないため、知らないうちに不眠を招いてしまっていることが多々あります。
身体的な要因
体の状態や病気が不眠の原因になっているケースです。
「不眠症に悩まされる日本人は多い」の項でお話したように、加齢に伴い不眠が生じやすくなるのは、身体的な要因の1つとして数えられます。
また、不眠に陥りやすい病気の例は以下の通りです。
- ・高血圧
- ・心臓病
- ・呼吸器疾患
- ・腎臓病
- ・前立腺肥大
- ・糖尿病
- ・関節リウマチ
- ・アレルギー疾患
- ・脳出血
- ・脳梗塞
この他、病気ではなくても痛みやかゆみが原因で眠れなくなることもあります。
精神的な要因
心の状態や病気が不眠の原因になっているケースです。
ストレスは精神的な要因の代表的な例と言えるでしょう。仕事や人間関係で悩んでいる時、イライラしている時、緊張している時などは眠りに就きにくくなります。
うつ病をはじめとした精神疾患も不眠を招く原因の1つです。
他には、「眠らないといけない」と考えすぎてしまうこともストレスに繋がり、眠れなくなる原因になります。眠れないからといって、あまり思い詰めないように気をつけなければなりません。
うつと不眠症の関係性についてはコチラの記事でも解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
生活習慣要因
生活習慣が不眠の原因になっているケースです。
近年、特に多いのは眠る前のスマホの操作。スマホをはじめとした電子機器の液晶画面は、「ブルーライト」と呼ばれる強い光を放っています。このブルーライトが脳を昼間と錯覚させてしまうため、眠りに就きにくくなります。
昼夜逆転生活で体内リズムが乱れている、アルコールの摂取量が多い、運動不足なども、生活習慣要因の1つです。
「眠れない」と感じたら?5つの対処法
まだ不眠症になっていない「不眠」の段階でも、放置すると悪化する恐れがあることは「不眠症を放置した場合どうなるの?」の項でお話しした通りです。
不眠の悪化を防ぐために、「眠れない」と感じたら下記の対処法を試してみてはいかがでしょうか。不眠が改善される可能性があります。
なお、適切な改善方法は原因によって異なるため、前項の「不眠症の原因」も、併せて参考にしてください。
また、以下の記事ではより詳しく、眠れない時の対処法を解説していますので、こちらもご一読いただければと思います。
①環境を整える
環境的な要因で眠れていない方は、環境を整えることで不眠の改善を見込めます。
例えば騒音が気になる場合は耳栓をすることで、外部からの音が気になりにくくなります。
部屋が明るいと感じている方は照明を絞りましょう。電気以外の光源もできる限り消しておくと、眠りに就きやすくなります。
暑さや寒さ、湿度はエアコンや加湿器、布団で調節してください。温度は20℃前後、湿度は40〜70%程度が、もっとも眠りに就きやすいと言われています。
②適度に運動する
一般的に、軽く汗ばむ程度の適度な運動をすると、夜に眠りやすくなると言われています。
具体的にはウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を30分程度行います。時間帯は17時〜21時頃が、効果が高くおすすめです。
激しい運動をしてしまうとかえって寝つきが悪くなるため、注意しましょう。
③ストレスを解消する
ストレスを感じている自覚がある方は、寝るまでにストレスを解消するようにしましょう。
ストレス解消法としては、音楽鑑賞や読書、スポーツなどが知られています。ただし前述の通り、激しい運動はかえって眠りを妨げてしまうため、注意が必要です。
他にも自分が「楽しい」と思えることをしながら過ごせば、それがストレスの解消に繋がります。趣味に打ち込む時間を作ってみましょう。
不眠症とストレスの関係性についてはコチラの記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
④就寝前のリラックスタイムを作る
あまりストレスを感じていないという方も、就寝前にリラックスタイムを設けることで、眠りに就きやすくなります。
リラックスタイムを設ける目的は、副交感神経を優位にすることです。「休息」を司る副交感神経が優位になることで血圧が下がり、心拍数も減少して、体が休んでいる状態になります。
リラックスタイムの過ごし方としては、半身浴がおすすめです。眠る1時間前に入浴することで、眠るまでに体の深部の体温が徐々に下がっていき、眠りに就きやすくなります。
⑤生活習慣を見直す
昼夜逆転の生活をしている方や、毎晩のように大量のお酒を飲んでいる方は、生活習慣を見直し、改善に努めましょう。
また、朝起きたらカーテンを開け、窓辺で日光浴をする習慣を作ると、夜にぐっすり眠れるようになります。太陽の光を浴びることで体内時計が調節されるためです。
この他、毎日同じ時間に起床・就寝すること、昼寝は30分程度に留めることなども意識しましょう。
不眠症の疑いがある場合は医療機関へ
前項「「眠れない」と感じたら?5つの対処法」では、不眠の悪化を防ぐため、眠れない時の対処法について解説しました。しかし、もしもすでに不眠症になっている場合は、家庭で対処することが困難です。
「不眠症かも?」と思った時は、できるだけ早めに病院やクリニックなどの医療機関へ行き、専門の医師による診察を受けてください。精神科や心療内科で扱っています。
不眠症への対処が遅れると不眠が悪化するだけではなく、うつ病やストレス性疾患のような心身のトラブルにまで発展します。健やかな生活を守るために、早期発見・治療が大切です。
不眠症の治療方法
不眠症の治療方法は大きく2つに分けられます。薬を使わない「非薬物療法」と、薬を使う「薬物療法」です。
非薬物療法
非薬物療法では、主に生活習慣を改善することで不眠症の治療を目指します。
具体的には、眠りに就きやすい環境を整える、リラックスタイムを設ける、適度な運動を取り入れるなどの睡眠衛生指導を医師から受けることになります。
薬物療法
非薬物療法(生活習慣の改善)での不眠症治療が難しいと診断された場合は、睡眠薬を使用する薬物療法に移ります。
睡眠薬といえば、「依存しそう」「副作用が怖い」と感じる方が多いようです。確かに、昔の睡眠薬は効果が高い反面、副作用も強く表れるという難点がありました。
しかし最近の睡眠薬は、不安・緊張・興奮をやわらげることで眠りに導きます。医師の指導の元、適切に使用すれば副作用も少なく、安心して使えます。
不眠症とは異なる睡眠障害にも注意
ここまで不眠症の症状やタイプ、原因、対処法、治療方法について解説してきました。しかし、気をつけなければならないのは不眠症だけではありません。
睡眠障害には、不眠症以外にも様々な症状があります。いずれも家庭で改善することが難しく、早めに病院やクリニックなどの医療機関に相談し、適切な治療を受けることが大切です。
最後に、不眠症とは異なる睡眠障害について簡単にご紹介します。「当てはまるかもしれない」と疑いを持ったら、診察を受けてみてください。
また、以下の記事でも睡眠障害について、種類や対策を解説していますので、併せて参考にしていただければと思います。
過眠症
不眠症とは対照的に、起きていられないほどの強い眠気が生じる病気です。中でも「ナルコプレシー」と呼ばれる病気は、1,000〜2,000人に1人見られるくらい多いと言われています。
ナルコプレシーについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
睡眠時間を増やしたり、睡眠の質を高めたりしても日中に居眠りをしてしまう場合は、過眠症を疑いましょう。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
夜中に何度も呼吸が停止して、睡眠の質が低下する病気です。睡眠の質が低下することにより、日中の眠気や倦怠感に繋がります。
睡眠時無呼吸症候群の特徴として、大きないびきが挙げられます。同じ空間で寝ている人から無呼吸といびきの両方を指摘されたら、睡眠時無呼吸症候群を疑いましょう。
睡眠時無呼吸症候群について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)
むずむず脚症候群の別名が示す通り、むずつきや不快感といった下肢の異常により、寝つきにくくなる病気です。
具体的には、足を動かしたくて仕方がなくなり、安静にしていると不快感が増します。一方で、足を動かしている時は症状が軽減されます。夕方から夜にかけて、症状が悪化するのもレストレスレッグス症候群の特徴です。
周期性四肢運動障害
周期性四肢運動障害(しゅうきせいししうんどうしょうがい)は、就寝中、足や手が頻繁にぴくつくことで、眠りの質が低下する病気です。このような手足のぴくつきは「不随意運動(ふずいいうんどう)」と呼ばれます。
就寝中の不随意運動は自覚がない場合が多く、他人からの指摘があって初めて気づく方も少なくありません。
レストレスレッグス症候群と同時に発症することもあると言われています。
概日リズム睡眠障害
概日リズム睡眠障害(がいじつりずむすいみんしょうがい)は、「覚醒障害」とも呼ばれます。体内時計がずれていることで不眠の症状が生じる病気です。
例えば日勤と夜勤を交互に行うようなスケジュールの方は、体内時計がずれやすく、概日リズム睡眠障害のリスクが上がります。
概日リズム睡眠障害になると、望む時間帯に寝られず、日中の眠気や倦怠感などの症状が表れ、活動に支障をきたします。
睡眠時随伴症
睡眠時随伴症(すいみんじずいはんしょう)は、就寝中に起こる様々な現象の総称です。
睡眠時随伴症に見られる現象には、同じ動作を繰り返したり、歩き回ったりする「睡眠時遊行症(夢遊病)」、錯乱状態になる「睡眠時驚愕症(すいみんじきょうがくしょう)」、強い不安や恐怖によってうなされる「悪夢」、夢での行動が体に現れる「レム睡眠行動障害」などがあります。
まとめ
本記事では不眠症と呼ばれる病気について、症状やタイプ、原因、治療法、眠れないと感じた時の対処法、不眠症とは異なる睡眠障害などを解説しました。
睡眠に関する問題を「ただ眠れないだけ」と片付けてしまう方は多いですが、不眠は放置することで悪化し、健康や日常生活に対して様々な弊害をもたらします。そして、気づかないうちに不眠症にまで発展しているかもしれません。
「眠れない」と感じている場合、またはそうした日が続いている場合は、ぜひ本記事で紹介した対処法をお試しください。それでも改善されなければ、早めに医療機関へ相談しましょう。
よくある質問
Q.不眠症にはどんな症状がありますか?
A.不眠症には「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」「熟眠障害」の4つのタイプがあります。
入眠障害は30分〜1時間以上、寝つけません。中途覚醒は眠っている最中に、何度も目が覚めてしまいます。早朝覚醒は望んだ時間より2時間以上も早く目が覚め、熟睡感がありません。熟眠障害はしっかり睡眠時間を確保しても、熟睡した感じを得られません。
以上のように、不眠症の症状は様々です。
Q..不眠症はどのように治療するのですか?
A.まずは医師による睡眠衛生指導を受けながら、不眠の原因を排除し、生活習慣の改善に努めます。
生活習慣の改善だけでは不眠症の治療が見込めない場合、睡眠薬を使用した薬物療法に移行する可能性があります。
いずれにしても不眠症の疑いがある場合は、医師による診断を受けるため、早めに病院やクリニックなどの医療機関へ相談しましょう。