生理前・生理中に眠れなくなる原因
生理前や生理中に、眠りに関する悩みを持つ女性は少なくありません。生理前・生理中に感じやすいおもな睡眠障害は、以下の3つです。
- ・夜なかなか寝つけない
- ・眠りが浅く、何度も目が覚める
- ・日中の眠気が強い
夜眠れなくなったり、眠りが浅くなったりする原因については、女性ホルモンのエストロゲン、プロゲステロンの変化が睡眠に影響を及ぼすと考えられています。しかし、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。
女性ホルモンは自律神経に深く関わるホルモンです。自律神経が乱れると、セロトニンの働きに影響があらわれます。セロトニンの働きが弱まると、不安感や緊張が強くなり、快眠を妨げると考えられます。この連鎖が、生理前や生理中に不眠症状が出る原因のひとつといえるでしょう。
女性ホルモンの役割
女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンの2種類があります。
2つの女性ホルモンには、約1ヶ月の月経周期をつくり出したり、妊娠準備のために身体を備えたりする役割があります。
それぞれのおもな働きを確認してみましょう。
エストロゲンのおもな働き
エストロゲンは、卵胞(らんほう)ホルモンとも呼ばれる女性ホルモンです。月経終了時から排卵日にかけて、比較的多く分泌されます。
エストロゲンのおもな働きは以下の通りです。
- ・卵胞を成熟させて妊娠に備える
- ・子宮内膜を厚くして受精卵の着床に備える
- ・肌や髪のツヤを良くする
- ・骨密度を維持する
エストロゲンが分泌される時期は、心身ともに安定し、活発に過ごせるでしょう。
プロゲステロンのおもな働き
プロゲステロンは、黄体ホルモンとも呼ばれています。排卵日から月経開始日までの黄体期に多く分泌され、妊娠しやすい身体に調整する働きがあります。
プロゲステロンのおもな働きは以下の通りです。
- ・子宮内膜を柔らかく維持して妊娠しやすくする
- ・乳腺を発達させる
- ・体温を上げる
- ・食欲を増進させる
プロゲステロンが分泌されるおもな目的は、妊娠の維持です。しかし、イライラやむくみ、眠気などの面倒な症状を引き起こす面も併せ持っています。そのため活動量が低下したり、不調を感じやすくなったりする方も多いでしょう。
生理前に不調を起こす2つの病気
生理が始まる前にさまざまな不調が起きる方は、月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)の可能性があります。
PMSとPMDD、それぞれの病気の特徴や診断基準を確認してみましょう。
月経前症候群(PMS)
月経前症候群とは、生理が始まる1週間ほど前から、身体的・精神的な症状があらわれる病気です。
詳しい原因は不明ですが、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量の急激な変化に、脳の視床下部が対応できなくなるからではないかといわれています。PMSの具体的な症状は、以下の通りです。
- ・下腹部痛
- ・頭痛
- ・乳房の張り、痛み
- ・むくみ
- ・便秘、下痢
- ・イライラ
- ・抑うつ状態
- ・不安や緊張が高まる
- ・無気力
月経前気分障害(PMDD)
PMDDは、生理の2週間前から身体的・精神的な不調があらわれる病気です。月経終了とともに、症状が軽くなったり楽になったりする特徴があります。
PMSとよく似ていますが、以下のような精神的な問題が強い場合は、PMDDと診断されます。
- ・イライラ
- ・気分の落ち込み
- ・不安
- ・怒りっぽくなる
- ・感情の起伏が激しくなる
- ・自制できなくなる
PMDDは対人関係に大きな影響を与えたり、感情の浮き沈みが激しくなったりなどで、日常生活に支障をきたします。自分ではコントロールできない状態になるため、家族や職場の同僚などにとっても深刻な問題です。
更年期の不眠症状とは
更年期にも、不眠症状があらわれることがあります。
更年期には、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が減ります。たとえ脳の視床下部から「エストロゲンを分泌させよ」と指令が出ても、出せるエストロゲンは存在しません。脳と卵巣の連携がうまくいかず、自律神経がコントロールできなくなる状態になります。視床下部が混乱を起こすと、ホットフラッシュが起きます。夜中にホットフラッシュが頻発し、熟睡できない方も多いようです。
また更年期は、親の介護や子どもの独立など、生活が大きく変化する時期です。悩みは一人で抱えず、周囲に相談してストレスを軽減しましょう。ストレスが原因で、不眠症状を引き起こしている可能性もあります。
PMS・PMDDによる不眠の治療方法
PMS・PMDDの治療に明確な基準はありません。
PMSやPMDDが疑われる場合、まずはカウンセリングや生活指導、運動療法がおこなわれます。しかし十分な効果が感じられない場合や症状がひどい場合は、薬物治療が必要です。副作用を心配される方もいらっしゃいますが、適切に服用すれば、一定期間で消失します。
セルフケアで思うような効果が得られない場合は、我慢せずに薬の力を借りてみましょう。
低用量ピル
多くの婦人科では、低用量ピルを処方されます。低用量ピルとは、エストロゲン・プロゲステロンを合わせたホルモン剤です。黄体ホルモンと卵胞ホルモンを体内に取り入れることで、体内のホルモンバランスが整い、気になる症状の軽減が期待できます。
ピルの服用に関して、副作用を心配される方もいらっしゃいます。しかし低用量ピルは、比較的副作用が出にくいタイプです。不安な場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。なお、低用量ピルは市販されていません。婦人科やレディースクリニックなどで処方してもらいましょう。
睡眠薬
睡眠薬には「抜け出せなくなる」「心身に悪い影響を与える」などの怖いイメージがありますが、正しく服用すれば安全です。生理前・生理中の不眠にも効果があり、強い副作用の心配もありません。
最近ではドラッグストアやネットでも、睡眠改善薬が購入できます。しかし睡眠改善薬は一時的な不眠症状を改善するためのものです。効果はマイルドですが、頭痛や口の乾きなど、副作用のリスクがあります。
安全かつ、しっかりとした効果を望むなら、専門の医師に処方してもらいましょう。内科や心療内科、婦人科などで処方してもらえます。
抗うつ剤
精神的な状態が中等症以上の場合は、抗うつ剤を処方されます。抗うつ剤はセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどの物質を増加させて、脳内のバランスを整えてくれます。症状に応じて、連続して投与するか、生理前のみ服用するか選択されるようです。
副作用には、胃腸障害や眠気、喉の渇きなどがあります。また長期間にわたって服用すると、離脱症状が起きる場合がありますので、服薬のスケジュールについては医師の指導に従いましょう。
漢方薬
漢方薬も、PMSやPMDDの治療によく使われています。
漢方医学では「気」「血」「水」のバランスが崩れるために、さまざまな不調が起きると考えられています。たとえば、イライラや不安感が強い状態は「気」の異常、頭痛や腹痛は「血」の異常。むくみや吐き気、めまいは「水」の異常です。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などが処方されるでしょう。漢方を利用する際は「気」「血」「水」のどこに問題があるかを探り、バランスを整えるための薬の選択が重要です。
まずは生活習慣を見直そう
PMSやPMDDの治療には、専門医を受診する必要があります。しかし仕事や家事、学業などで忙しい女性は、すぐに受診できない場合もあるでしょう。とはいえ不眠症状が続くと、日中の眠気や集中力の欠如で、生活に支障を生じさせます。
そこで、気軽に試せる不眠症改善方法を紹介します。不眠症だけでなく、PMSやPMDDの改善にも有効ですので、是非試してみてくださいね。
規則正しい生活
多忙な現代人は、不規則な生活を余技なくされています。帰宅が遅く、夜更かしが定着している方も多いのではないでしょうか。
不規則な生活や夜更かしは、自律神経を乱す原因です。できれば毎日同じ時間に寝起きし、生活リズムを整えましょう。健康的な生活は、早寝早起きが基本です。
ストレス解消
ストレス社会といわれる現代。ストレスをまったく感じない生活は無理ですが、意識的にストレス解消しましょう。
趣味に没頭したり、気を許せる友人や家族との時間を楽しんだり。何もしない時間、一人でゆっくりする時間も大切です。スケジュールを詰め込み過ぎず、ゆとりのある生活を心がけましょう。
また月経前に不調が生じるのは当然です。自分の不調に左右されず、ありのままを受け入れるのも有効なストレスケアといえるでしょう。
適度な運動
運動不足も、睡眠障害を起こす重要な問題です。
多忙で運動する時間が捻出できない方もいるかもしれません。しかし適度な運動で汗を流せば、ストレス解消になります。
運動で血行が良くなるため、むくみも解消できます。また身体的な疲労感は、寝つきを促してくれるでしょう。
運動が苦手な方は、軽いストレッチやヨガ、ウォーキングから挑戦してみてはいかがでしょうか。
カフェインやアルコール
コーヒーや緑茶が好きな人は、カフェインを摂取しすぎかもしれません。
休憩のたびにコーヒーを飲む習慣のある女性、食事の際はいつも緑茶を飲む女性。このような方は知らず知らずのうちに、カフェイン中毒になっている可能性があります。カフェインは脳を興奮状態にさせるため、寝つきを悪くします。できれば夕方以降のカフェイン摂取は控えましょう。
アルコールの摂取も、不眠症には要注意です。
少量のアルコールは、寝つきを良くしてくれます。寝酒と称して、就寝前のアルコールが習慣になっている方もいるのではないでしょうか。しかしアルコールは、睡眠の質を下げる原因です。一時的に寝つきが良くなったとしても、耐性がつくと、少量では寝つけない身体になってしまいます。
禁煙
喫煙習慣のある人は、禁煙も検討してみてはいかがでしょうか。タバコに含まれるニコチンは、不眠や夜間覚醒を引き起こすといわれています。
一服してリラックスした気分になっていても、実は覚醒作用の方が強く働いています。カフェイン同様、夕方以降の喫煙は控えた方が良いでしょう。
まとめ
生理前や生理中に眠れなくなるのは、女性ホルモンが関係していると考えられています。健康な若い女性でも、不眠症状を感じることがありますので、あまり心配する必要はありません。ありのままの自分の状態を受け入れ、リラックスして過ごしましょう。
しかし不眠症状以外に、イライラや気分の落ち込みなどがある場合は、PMSやPMDDなどの可能性があります。生活習慣を改善しても充分な眠りが得られない場合は、婦人科を受診しましょう。それぞれの症状に合わせて、適切な治療法を提案してくれます。
よくある質問
Q.生理前や生理中に眠れない原因は何ですか?
A.女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンが、自律神経を乱すからではないかと考えられています。しかし、詳しい原因やメカニズムはまだ解明されていません。女性の不眠症に関しては「【女性必見】不眠症の女性に向けたコラム」 でも解説しています。
Q.生理前や生理中に眠れないときはどうしたら良い?
A.まずは生活習慣を見直し、自然に眠くなるように生活リズムを整えましょう。決まった時間に寝起きし、適度な運動やバランスの良い食生活を心がけていると、精神的な安定も期待できます。