睡眠と健康に密接な関係があった!
睡眠と健康にある関係の中で、双方に大きく作用するのが「睡眠の質」です。
睡眠時間がしっかりとれていても日中眠気が強く出ることがある場合、睡眠の質が悪いために生じます。また、日中力が出ないことから活動量が少なかったり、何かあったわけではないのに憂鬱な気持ちになったり、眠気が強いあまりたくさん仮眠をしたりするとことがありますよね。普段の生活に支障が出るばかりか、夜何時になっても眠れない…なんてことが起こりやすくなります。
これは睡眠の質の低下による悪循環に陥っている状況です。日常を過ごすのに支障が起こる体調不良を長引かせたり、大きな病気をしたりしないためにも、対処が必要なのです。
睡眠の質が悪かった場合に起こること8選
睡眠の質が悪い状況が最低でも3日続いただけで、日中になにかしらの体調不良が起こり得ます。
症状は様々ですが、ここでは睡眠の質が悪い場合に起こる、代表的な体調不良をご紹介していきます。
マイクロスリープ
マイクロスリープとは、自分自身は眠っていない(覚醒状態)と自覚しているのに、目を開けたまま瞬間的に意識が途切れ、眠りに落ちてしまう症状を言います。
マイクロスリープによる障害としてもっとも有名な事故は交通事故です。運送業など長時間長距離と車を走らせる方は、マイクロスリープを起こすリスクが高くなるため、特に注意が必要になります。マイクロスリープはやはり睡眠の量より質で改善が見込める症状になります。自覚のない一瞬の眠りを起こす可能性があることを、よく気に留めておいてくださいね。
「なんだか調子のすぐれない」なんて日は、可能であれば車の運転を控えるなど事前の予防に努めましょう。
過眠と不眠の繰り返し
しっかりと睡眠の質が確保できていない方や、規則な時間に睡眠をとる方に多く見られますが、過眠と不眠は誰にでも起こりうる症状です。病気ではないのですが、一度不眠になってしまうとどうしても極端に寝すぎてしまう過眠になる、という悪循環が生じてしまいます。
従来人間の睡眠は体内リズムの関係上、時間を後ろへずらしていくことはできるのですが、前にずらすことはできません。睡眠サイクルと体内リズムのズレを調節するのは1日に1時間だけと、かなりの時間をかけて調節していくことになります。概ねこの過程で過眠と不眠のサイクルを繰り返してしまう方が多いです。
まずは生活リズムを見直し、寝る時間と起きる時間を決めること。
そうすれば日中の強い眠気も少しずつ改善していくはずです。
体内リズムと概日リズムが狂う
体内リズムと概日リズムがずれてしまうと、眠気を誘う深部体温の温度の変化が乱れ、入眠がスムーズにいかなくなります。
概日リズムはサーカディアンリズムともいい、1日24時間の周期で過ごすための軸になる重要なリズムです。地球の自転に合わせて、昼と夜の時間の流れを体内でも同じにするしくみをいいます。体内リズムと概日リズムはもともと1時間ほどのずれはありますが、体内リズムが大きく狂ってしまうと、夜になって眠る時間となっても覚醒状態が続き、朝方になって入眠…のように生活に支障が出ることとなるのです。
原始的ですが、まずは可能な限り太陽とともに生活する意識を持つと、今後改善の道を拓くことができますよ。
自律神経やホルモンバランスが崩れる
自律神経は睡眠によって交感神経が落ち着き、副交感神経が高まるよう調節されています。自律神経睡眠流れがゆらいでしまうと、自律神経から直接影響を受けるホルモンバランスは崩れ、自律神経失調症のような症状が出現することがあります。睡眠の質が悪いと悪循環な症状を引き起こす可能性があるので、注意が必要です。
ちょうど睡眠不足が多く見られる年代は、ホルモンバランスに変化が出やすい20代から40代。仕事に子育て、家事と目まぐるしく活動することで睡眠時間の確保ができない世代に多く、更年期障害などと間違えられやすい傾向にあるのが現状です。
まずは一度、基本的な睡眠の質を見直してみると改善することもあります。
記憶力の低下
よく聞く話ですが、記憶というのは寝ている間に整理されます。
その流れは、以下のようになります。
- ・入眠してすぐ一番深い眠りとされるノンレム睡眠では新しい記憶を定着させ不要な記憶を消去
- ・ノンレム睡眠の後のレム睡眠で記憶した情報の関連性や紐づけを行い整理する
- ・2度目以上のノンレム睡眠・レム睡眠:技術関連の知識や実践の習得など
上記3つの流れを繰り返すことで記憶が整理され、不要なものは削除することで、朝起きた時にすっきりとした頭になるのです。
眠りにおけるノンレム睡眠・レム睡眠の波は、やはり睡眠の質が悪いと乱れてしまい、うまく記憶が整理されない結果が、記憶力の低下につながります。
免疫力の低下
風邪などをひいたとき、まず一番の治療法は次の通りです。
- 1.きちんとした食事をとる
- 2.しっかりと眠る
- 3.水分をとる
以上の3つが基本です。これは落ちた免疫力を上げるために、自己回復を促す対処法として剤師や登録販売者が薦める処方なのですが、意外とこの基本的なことが実践できず、薬に頼りっきりになってしまうこともありますよね。
薬を使うことは悪いことではないのですが、薬を使うからこそしっかりと休養の基本である睡眠を確保するべきなのです。休むといって布団に横になり、スマホをいじっていたり動画を見ていたりするのは、休んでいるとは言えません。ブルーライトの光は入眠の妨げになりやすいので、それこそ睡眠の質が低下して免疫力が落ちてしまします。
免疫力を上げるためには、しっかりと眠ることがかせないのです。
メンタル症状の出現、悪化
律神経が乱れることによって精神的不安定さが生じます。これは睡眠の質の低下から生じた、自律神経の乱れによる二次的症状になります。
もともと精神的に不安定な方や持病を持っている場合は顕著に出やすく、抑うつ状態になったり、不安症状やパニック症状が起きたりします。女性の場合は感情のコントロールが効かないことが増え、情緒不安定になるなど、ホルモンバランスの乱れからの二次的症状がみられることも多いのが現状です。
脳の老廃物除去ができなくなる
身体の老廃物はリンパを通して運ばれ体外に排出されますが、脳の場合、リンパ管は通っていないため老廃物が排出されません。では、どうやって排出しているかというと、睡眠の働きです。正確には、寝ている間に脳脊髄液によって老廃物は除去されているのです。しかし、睡眠の質が悪い状態だと脳脊髄液の働きも悪くなり、気が付くと脳の中に老廃物が溜まってしまうのです。
脳の老廃物除去ができなくなった場合に怖いのが、認知症の進行です。
本来なら除去されるはずの廃物が脳内に溜まると、その中に含まれるアミロイドβが老人班をつくり、アルツハイマー型認知症の原因となることがあります。
認知症は遺伝性があるという見解もありますが、生活習慣によって引き起こす可能性もゼロではありません。
睡眠の質の重要性がわかったところで、ではどうすればいいか。この後説明します。
睡眠の質の確保が健康への近道!
睡眠の質の確保に重要なことは、入眠時の90分間を確保することです。これは、ノンレム睡眠の平均時間に当たります。ノンレム睡眠の時間は初期段階の記憶の整理はもちろん、深い眠りであるために心身のバランスを整える面でもゴールデンタイムといえます。
入眠時の90分を確保するために注意することは、「無理に寝るのではなく、眠くなった段階で布団に入り眠ること」です。眠る時間は一定に保った方が良いとされていますが、その日の心身のコンディションや疲労度などで多少の変動はありますよね。
「いつも22時には寝ているのに眠れない!」なんてときは、眠くなるのを待ってみるのも手です。
深部体温のコントロール
眠くなるのを待つときや、入眠のタイミングを調整しているときにおすすめなのが、深部体温を下げることです。
緊張の糸がほどけた時のような脱力した時や気持ちが落ち着いてリラックスした時、体の内部である深部体温は下がり皮膚の表面の体温感覚は上がる傾向にあります。この2つの温度の差が埋まることで、眠くなるのです。
深部体温は、体の広範囲で温度が上がれば上がるほど、下がるのに時間がかかります。深部体温と皮膚体温を近づけるためには、寝る前にタイミングよく深部体温を下げ、皮膚体温に近づけることです。
方法としておすすめなものは、以下の2つになります。
- ・お風呂上りにはニット素材など肌触りのいい厚手の靴下をはいて過ごし、寝る前に脱いで寝る
- ・肌感覚でちょうどいいくらいの温度で足湯をし、十分に温まったら布団に入り眠る
上記2つの方法で試してみて、自分の身体に合うやり方を継続して試してみてください。もちろん両方実践してみるのもいいでしょう。
眠りモードへと誘うモノトナスを利用する方法
モノトナスという言葉は、単調な状況を表します。モノトナスというのは、単調なことの繰り返しによる退屈さを感じたような状態を指します。入眠直前、脳の状態がこのモノトナス状態とすることができれば、スムーズな入眠とノンレム睡眠の90分を確保できるようになりますよ。
現代を生きる人々は、年齢問わず眠る前まで頭の中で考え事・悩みなどの解決策などを弾き出すために、とめどなく脳を働かせすぎる面があります。そのような忙しない脳内状況で、スムーズに眠れるわけがありません。なかなか難しいことかもしれませんが、翌日に高いパフォーマンスで過ごすためにも、このモノトナスを利用してみてください。
方法は単純です。「羊が1匹、羊が2匹…」という、眠ることができないときに使う数え歌がありますよね。あの言葉を「sheep, sheep…」に変えるだけです。単調な同じ言葉を繰り返しているうちに、脳は単純な働きを繰り返されることで退屈になり、気づくと眠気が出てくるというしくみになっています。
モノトナス状態になる条件というのは人それぞれ異なるので一概には言えませんが、中には活字を追っていると眠くなるという方や、クラシック音楽を聴いていると眠くなる方とさまざまです。いざという時のために、自分にあったモノトナス法を見つけておくのもいいですね。
目覚めのリズムは一定に保つ
どんなに寝るのが遅かった方でも、朝の起きる時間は一定に保つことが大切です。起床時間を固定することで、日中に眠気が襲うことがありますが、この後ご紹介する方法を意識して取り組めば、睡眠の質は確保できますよ。
とはいえ、朝スムーズに起きられない方は多いですよね。
そのような場合はぜひ、以下の方法を習慣化してみてください!
- ・布団の中で両腕をまっすぐ頭上へ伸ばし、軽いストレッチ
- ・朝起きたら太陽の光を浴びる
- ・コップ1杯の白湯、または常温水を飲む
- ・朝食は歯ごたえのある和食中心にする
目覚める方法として有名ですが、太陽の光を浴びることで体内リズムと概日リズムが整います。積極的に取り入れて欲しい習慣です。
また朝食は食べない方も多いようですが、なるべくとるようにするといいですよ。直色を取る習慣があると、食べ物を噛むという感覚刺激から脳に目覚めの信号として伝達されます。ぜひ歯ごたえのある和食中心の朝食をおすすめします。
入眠のタイミングを見逃すな!入眠禁止ゾーンについて
「眠りたいのに眠れない…」そんな状況の方に覚えていてほしいことが1つ、この入眠禁止ゾーンの存在です。
「最近寝不足だし、今日は時間があるから早めに寝よう…」「明日の朝家を出るのが早いから、今日はいつもより2時間早く寝なきゃ」このような考えに身に覚えはないでしょうか。その結果全然寝付けなかった、ということになりませんでしたか?
普段眠るのが22時の方が2時間早く寝ようとしても、実は眠くならないことがあります。具体的にはおよそ2時間。つまり、結局早く布団に入っても眠れるのはいつも通りの22時となってしまうのです。
入眠禁止ゾーンの存在を知っていると、眠りたいのに眠れない原因だと考えられることから、気に病まずに済みます。ぜひ気に留めておいてほしい言葉になります。
このような場合、結論を言ってしまえばいつも通りの時間に眠る方が、ノンレム睡眠の90分を確保できる確率は上がるので、眠った時間は少なくても起きたら頭と気分がすっきりしていることがほとんどです。
寝不足の方は、睡眠負債がたまっている可能性があります。その場合は、まずその負債に対処することを優先に考えるといいでしょう。
睡眠負債に関する記事はこちら
どうしても眠れない、起きられないときの対処法
ここまで、日中の生活に支障をきたさない健康に過ごすための睡眠法を紹介してきました。ですが睡眠の質を高めるための眠る時間の調節は、1日1時間ずつでしかできないことは説明した通りです。
体内リズムと概日リズムに合わせた規則正しい睡眠時間を意識し習慣としている方たちが、なるべく睡眠の質を高めるための実践行動を長く続けられるように対処法を紹介します。ご自身に合うものを見つけてもらえたら幸いです。
眠れない時におすすめの対処法3つを紹介!
まず眠れない時は「眠れない!」と焦らないことです。体の力を抜いて、自律神経の副交感神経を優位にすることで体内リズムと概日リズムのゆらぎが安定しますよ。
おすすめの方法が以下のものです。
芳香浴
森林など植物の香りで満たすと良いでしょう。ラベンダーの香りが定番で、リラックス効果が高くおすすめ。アロマディフューザーがない場合やそれだと香りが強くて苦手な方には、アロマキャンドルやピローミストなど香りの持続時間があるものを使うといいでしょう。
少量のお酒
飲み過ぎはよくないのですが、適度な量のアルコールは体の緊張をゆるませ、脳の働きを落ち着かせる効果があります。夜間に目を覚ましてしまう場合はアルコールの飲み過ぎになるので、飲む量を控えましょう。
飲み過ぎてしまうと、睡眠の質に関わる体内リズムや概日リズムを乱すだけでなく、睡眠時無呼吸障害(SAS)を招く要因になることがあるので注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群についてはこちら
通気性のいい寝具
年間通して通気性の良い寝具は、眠りの質を高めるのでおすすめです。頭寒足熱を意識して、頭部を置く枕は冷感素材、足元はあたたかくすることがスムーズな入眠に繋がります。ですが、熱がこもってしまうのは体にストレスとなるので通気性のある寝具、というのは重要なポイントです。
また、ここに挙げた3項目以外にも眠れない時の対処法はあります。
こちらの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご参考ください!
スムーズに起きられないときの対処法
どんなに寝ていても起きられない、睡眠不足で起きられない。そんな方にもおすすめの対処方法を紹介します。
アラームを2度セット
アラームの複数回セットをしている方は、ぜひ20分間隔でセットするのがおすすめです。起きるタイミングはレム睡眠かその前後で起きるのがベストなので、20分間隔でセットしておけば間違いありません。
1回目でアラーム音が聞こえない場合はノンレム睡眠である可能性が高く、そうなると20分後にはレム睡眠のタイミングとなります。この間隔時間を意識して、ぜひアラームをセットしてみてくださいね。
日中仮眠する時間を確保する
生活リズムによっては難しい場合もあるかと予想されますが、最悪の場合、ゆったりと腰掛け目を閉じるだけでも違います。日中の仮眠時間を確保しておき、その時間にまた休める、と心に余裕をもっておくとまた違いますよ。
1杯のコーヒーでシャキッと!
できればドリップしたものが理想的です。自宅で飲む時間がない場合は、缶コーヒーではなくカフェで購入するといいでしょう。店員の人との会話とカフェインによる脳の覚醒を促す成分のダブル作用で、より早く気分が引き締まります。
日中どうしても眠いときは?
睡眠リズムの調整を行っていて、日中どうしても強い眠気に襲われることがあったら20~40分だけ過眠をするのがおすすめです。
この際に注意したいことは、以下の通りです。
- ・横になって仮眠するのではなく、椅子に腰かけテーブルにクッションを置き、もたれかかるようにする
- ・どんなに眠くても仮眠をしたら起きて、1日の間で決めた時間のみ仮眠をする
この上記2つはぜひ覚えていてほしいことです。
特に2つ目は、だまされたと思って試してみてください。
まとまった時間で眠れない方は、このような分割した眠り方を試してみるのもいいかもしれません。
意外に思われるかもしれませんが、仮眠はほんの少しの時間で、夜眠る睡眠と同等以上の質を確保できます。睡眠がしっかりとれている方でも日中の眠気はあるものです。あまり深刻に考えず、眠い時は仮眠をとって休みましょう。
もちろん、仮眠のとりすぎには気を付けてくださいね。
分割睡眠についてはコチラの記事でも紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
まとめ
睡眠の質によって健康にも影響が生じることをお話ししました。
一度乱れた、眠りたいという欲(睡眠圧)を整えるのは時間がかかります。また、たった一度の乱れによって生活に支障が出るほどの身体諸症状や精神諸症状があるのです。これは逆のパターンでも同じことが言え、日ごろの生活で起きた諸症状によって睡眠の質が低下することも。
一度睡眠の質が確保できているかを見直し、必要なら生活習慣もこれを機に整えていくのも良いかも知れません。一気に全部変えていく必要はないので、無理のない範囲でゆっくり見直し生涯長く健康でいられるようにしたいですね。
よくある質問
Q.夜更かしの影響は?
A.体内リズムと概日リズムがおおきく崩れるので、翌日以降に気分の浮き沈みがあったり記憶力低下などが見られたりします。早く症状が出る方だと、寝る時間になっても眠れなくなったり日中も眠気が続いたりと日常に支障をきたすことも。夜更かし(1日)で崩れたリズムは3日以上かけても戻すのは難しいのが現状です。
Q.徹夜するのと1時間だけ寝るのはどっちがいい?
A.どちらかと言えば、眠気の強いタイミングで90分間だけ仮眠するのが理想です。というのも、入眠時の90分は睡眠時間の中で最も深い睡眠のノンレム睡眠がとれるので、この時間だけでも眠れれば脳の記憶整理が行われすっきりした気持ちになれます。眠れるのなら、90分寝てください。
参考文献
- 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト
- 西野精治著 眠れなくなるほど面白い図解睡眠の話