夢占いとは
夢占いとは、夢に出てきたものや状況をもとに、現在の心理状態や近い未来に起こる出来事などを判断する占いのことです。古くから、夢は「深層心理が映像化されたもの」と解釈されてきました。
具体的には、心の奥に潜んでいるものが眠っている間にイメージとして映像化されたものと捉えられ、夢が深層心理を見せてくれることで自分の現状を把握したり、心理状態を認識したりすることができるといわれています。
また、「神からのお告げ」などと解釈されることもあり、これから起こることに注意を促したり、逆に背中を押してくれたりするものとも考えられてきました。
よくいわれる夢占いの例
一般的に、夢占いでは「〇〇の夢を見たら、こんな運勢だ」とか「△△の夢を見たら、こんなことを予兆している」と、特定の夢に対して独特な解釈をして占われることがほとんどです。
その例を10個ご紹介しましょう。
①自分が殺される夢 | 一見不吉な感じがするが頼もしい味方が現れ、問題が解決に向かうことを予兆している |
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②自分が太る夢 | 生命力や精神力がアップしていることを表し、これからやってくる幸せを予兆する夢 |
③白い生き物が出てくる夢 | 白い蛇や白い象など白い生き物は神様の使いとされ、これから運気がアップすることを告げる良い夢 |
④朝焼けの夢 | 新しいことがスタートする予兆。朝日が昇っていく様子は運気上昇を暗示している |
⑤高いところから落ちる夢 | 悪い夢の代表で、どんなに努力しても問題が解決しないことを暗示する。トラブルに見舞われることの予兆でもある |
⑥枯れ木の夢 | 木は人の一生を象徴しているため、枯れ木の夢は生命力が低下し、不安定な状態になることを意味する |
⑦家が浸水する夢 | 夢に出てくる家は生活の盤石さを意味し、それが浸水することはすなわち財政上のトラブルに見舞われることを予兆している |
⑧薔薇の花が出てくる夢 | バラの花にまつわる夢は、運命的な恋愛が待っていることを告げている。特に赤いバラは大恋愛に発展する証 |
⑨焚き火の夢 | 火の夢は恋愛関係がはじまることを予兆している。特に、激しく燃える火は強い感情や情熱、性的願望を意味する |
⑩山の夢 | 山が出てくる夢は結婚を暗示し、大きな目標や崇高な精神を意味している |
夢占いの信憑性について科学的観点から解説
このように、夢によってさまざまな解釈がされる夢占いですが、これらを科学的に証明する根拠はあるのでしょうか?
夢占いに科学的根拠はない
残念ですが、現在夢占いを科学的に証明する根拠はありません。
特定の夢を見たからといって、その後の人生に大きな影響を及ぼすという報告はありませんし、夢で見たことが現実で起こるという研究結果もありません。
夢占いは個人の考えや思い込み、偏見によるところが大きいといえるでしょう。
夢占いのはじまり
上記を読んで、「そんな夢のないことを!」と思った人もいるかもしれませんが、そもそも夢占いがどうしてここまで普及したか知っていますか?確かに、前述したように夢については太古の昔から神のお告げといわれたり、未来予知のひとつとして用いられたりしてきましたが、大きく世間の注目を集めた要因は、心理学の権威であるフロイトとその弟子ユングにあります。
当時、夢について研究していた心理学者のフロイトは、夢の正体を「願望や欲求が別の形で表れたの」と考え、そしてユングも「夢は人が抱える問題や心理を表したもの」と提唱しました。
いずれも、普段は表に出てこない潜在意識が人間の中には存在し、そこに潜む感情や思い、考えなどが眠っている間に出てきたものが夢であるという解釈です。そして、フロイトはこうした考えをもとに「夢診断」という書物を出版し、精神分析や心理学に基づいた精神疾患の治療を行ったとされています。
「じゃあ、夢占いは科学的に信頼できる方法じゃないの?」と思うかもしれませんね。
フロイトの夢診断が発表されたのは今から100年以上前の1900年で、そのころはまだ脳科学や心理学が今のように発展してはいませんでした。脳科学が劇的な進歩を見せ始めたのは、MRIといった脳内の活動をリアルタイムで可視化する検査機器が開発された1990年代以降です。それに、フロイトの発表した夢診断には科学的に問題点のある仮説がいくつも立てられており、現在では「信憑性にかなり欠けるものである」と評価されています。
ただ、今のような最新の技術もない時代に、夢に対して新たな視点をもたらしたフロイトやユングの理論が多くの人を魅了したのもまた事実といえるでしょう。
「夢占いは当たる!」と思ってしまう理由
では、技術が進歩した現代においてもいまだに「夢占いは当たる!」と思われているのはなぜでしょうか?
それは、人間が持つ認知のクセを占いがうまく利用しているからです。
確証バイアス
例えば、日本ではおなじみの「血液型占い」をした結果、「AB型の性格は自由奔放で二面性がある」と診断されたとします。すると、不思議なことに診断された人は「自由奔放」や「二面性」という情報ばかりにとらわれて、他の情報に目がいかなくなってしまうのです。
こうした、自分の思い込みや願望を強化する情報ばかりに目がいき、そうではない情報に意識が向かなくなる傾向のことを「確証バイアス」といいます。
バーナム効果
また、夢占いをした結果、次のように診断されたとします。
- ・あなたは未来に不安を抱えていますね
- ・あなたは真面目で、几帳面な性格です
- ・あなたはとても芯の強い方です
よくある占い結果ですが、何が問題だと思いますか?
それは、どれも診断されると真っ向から「それは違う」と否定できないものばかりなところです。
誰にでも該当するような曖昧で一般的なことをいわれているのに、あたかも自分だけに当てはまっているように感じてしまうことを「バーナム効果」といいます。
占い結果 | 一般論 |
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あなたは未来に不安を抱えていますね | 誰でも未来に不安を抱えている |
あなたは真面目で、几帳面な性格です | たいていの人が真面目で、几帳面 |
あなたはとても芯の強い方です | 誰もが自分の意志を持っているので、芯は強い |
こうした心理的なトリックによって「当たっている!」と感じてしまうからこそ、いまだに多くの人が占いに惹きつけられているのかもしれません。
そもそも夢ってどんなもの?
ここまで、夢占いの科学的な信憑性と「当たっている」と思ってしまう要因を解説しましたが、夢占いを信じてしまうもうひとつの要因として、夢そのものの曖昧さがあるといえます。
ですが、近年の夢に対する研究によって、その科学的な正体が明らかになってきています。
科学的に判明している夢の正体
現在科学的に判明している夢の正体は、「海馬」から「大脳皮質」へ記憶が転送される際に脳内で映し出された断片的な映像だと考えられています。
「海馬」や「大脳皮質」といわれても、なかなか難しいですよね。
まずは人間がどのように記憶をしているのか、そのメカニズムを解説していきます。
記憶のメカニズム
そもそも、人間は新しい情報を記憶するとき次の3つのステップを踏んでいます。
- 1.脳に入った情報は、脳内の「海馬」にて一時保存される
- 2.必要と判断された記憶だけが、「海馬」から「大脳皮質」に送られる
- 3.「大脳皮質」に転送された記憶が、長期記憶として保存される
この、記憶が「海馬」から「大脳皮質」に送られる、すなわち記憶の整理が行われているときに脳内で再生されるのが「夢」だという説が現在では有力です。
記憶のメカニズム
そして、夢はその人が見たり聞いたりした記憶が大きく影響しています。
例えば、昔家族で行った旅行の夢を見た場合は、旅行で実際に見たり聞いたりした情報が脳内で整理されるときに、それが他の記憶と合わさって夢になっている可能性が高いです。
同様に、「空を飛ぶ」や「憧れの芸能人と会う」など、現実では起こり得ない場合の夢においても、実際の記憶とテレビや映画などの記憶が組み合わさって夢になったと考えられます。
しかも、記憶の整理が行われるのは人間が眠っている間です。つまり、人間が寝ている間にのみ夢を見るのも裏付けるというわけです。
悪夢を見ても落ち込む必要はない
さらに、この理論で考えると人間が「悪夢」を見る原因も説明できます。
先ほど、夢は記憶を整理する際に再生される映像であると解説しましたが、記憶には良い記憶もあれば、悪い記憶もありますよね。例えば、犬に追いかけられて怖い思いをしたある晩、とてつもなく凶暴で大きな化け物に追いかけられる悪夢を見たとしましょう。これも、脳が犬に追いかけられた記憶を整理する際に、他の怖い記憶や不安を感じたエピソードとたまたまミックスされて、悪夢になったと考えられるのです。
ですので、悪夢を見てしまったからといって、落ち込む必要はありません。
それに、最近の研究では悪夢を見ることによって危険回避を行っているのではないかとも考えられています。まだまだわからないことも多い夢ですが、今後更なる研究が進むことが期待されます。
夢占いとの上手な付き合い方
さて、人間の認知のクセや心理トリックをうまく利用している夢占いですが、その本質を理解していれば、診断結果に振り回されずに楽しむことも十分可能です。
最後に、夢占いとの上手な付き合い方について解説していきましょう。
自身の心理状態を把握する
先ほど、夢はその人の記憶が大きく影響していると説明しましたが、夢の内容を振り返ることで、現在の心理状態を把握することは有効だといえます。
例えば、良い夢や楽しい夢を見たときは、自分の心理状態が良い状態で保たれていると判断できます。逆に、悪夢を見たとしても、それは自身に焦りや不安を感じる出来事があったからだと心理状態を把握し、ケアをしていく方向に気持ちを切り替えることが可能です。
夢占いをはじめとした「占い」というものは確かに信憑性に欠けるものです。ただ、あくまで個人の領域で楽しんで行える場合は、気持ちを切り替える良いツールとなるかもしれません。
まとめ
今回は、夢占いの科学的な根拠について解説しました。
現在の研究では、夢占いの信憑性を科学的に証明する根拠はありません。あくまで、人間の認知のクセや心理トリックを利用したものであるといえるでしょう。
ただ、個人の範囲内で行う分には問題ありません。使い方によっては、自身の心理状態を客観的に把握することができるツールにもなり得ます。振り回されない範囲で、楽しんで行えると良いですね。
よくある質問
Q.夢占いとはなんですか?
A.夢占いとは、夢に出てきたものや状況をもとに、現在の心理状態や近い未来に起こる出来事などを判断する占いのことです。
Q.夢占いに科学的な根拠はありますか?
A.夢占いの信憑性を科学的に証明した研究はありません。人が夢を見るメカニズムについては、「【怖い夢ばかり見てしまう】悪夢の原因と対処について解説」を参考にしてください。