夜間頻尿とは夜寝ているときに1回以上排尿のために起きること
夜間頻尿とは、夜中に1回以上トイレに起きる状態を指します。寝る前にいつもより水分を多く摂取していたり、トイレに行く前に寝てしまったりすると、夜中に尿意を感じる場合があるかもしれません。
また、年齢を重ねてから夜間頻尿に悩まされる人も少なくありません。中には病気の症状として夜間頻尿がみられる場合があります。水分の摂り過ぎや年齢によるものと判断せず、受診した方がよい夜間頻尿もありますので、以下で詳しく解説します。
夜間頻尿タイプ
夜間頻尿には、以下の3つのタイプがあります。
- ・多尿タイプ
- ・夜間多尿タイプ
- ・膀胱畜尿障害タイプ
自分に当てはまっている夜間頻尿タイプを確認しましょう。
多尿タイプ
1日の尿量が多いタイプです。多尿タイプは、1日の尿量が3,000mlを超えた場合を指し、トイレに行く回数も多くなります。
多尿タイプの特徴は、水分を1,500ml以上摂取している、1日に8回以上排尿するなどです。
多尿の原因は、以下の4つが考えられます。
原因 | 詳細 |
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水分の摂り過ぎ | ・食事以外の水分で1,500ml以上摂取している ・水分摂取量が多くなると余分な水分を排出しようとするため尿量が増える ・1日の水分摂取量が10リットルを超えると多飲症と診断される ・多飲症は精神疾患の人に多い ・水分を過剰に摂取すると血液内のナトリウム濃度が下がり嘔吐やけいれん、 意識障害を起こすため注意 |
カフェイン摂取 | ・コーヒーや紅茶、玉露などのカフェインの摂取により利尿作用が働く ・利尿作用とは体内の水分を外に排出しようとする働きを指す ・利尿作用により体内の水分を尿として排出するため尿量が増える |
糖尿病 | ・インスリンの働きが弱いことにより血糖値が高い状態を指す病気 ・血液中の糖分が多くなり血液がドロドロになる ・血液をサラサラにしようと身体が水分を取り込もうとして喉が渇き水分を余分に摂取する ・過剰に摂取した水分を排出しようとするため尿量が増える |
尿崩症 | ・腎臓で水分を再吸収する働きを持つ抗利尿ホルモンが減少することで尿量が増加する ・腎臓の機能が低下し、抗利尿ホルモンが取り込めなくなっている場合もある |
夜間多尿タイプ
夜間多尿タイプは、夜中に3回以上トイレに行く状態を指します。多尿タイプと同じく、水分の摂り過ぎや糖尿病の人は、夜の尿量も増えるため注意しましょう。
その他、夜間多尿の原因は以下の通りです。
原因 | 詳細 |
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血液の循環が悪い(下肢静脈瘤、心不全、腎不全など) | ・血液の循環が悪くなると重力の影響で下肢に血液が滞る ・通常血液中の余分な水分は尿として排出されるが、下肢に血液が滞ることでむくみになる ・下肢にむくみとして残った水分は夜横になった後、血液内に戻って循環し尿として排出されるため、夜に尿量が増える |
加齢 | ・年齢を重ねると抗利尿ホルモンの分泌が減少する ・通常寝ている間は尿を作る作用は抑えられているが、抗利尿ホルモンが減少することで日中と同様に尿が作られるため、夜間の尿量が増える |
高血圧 | ・血液中の塩分量が多い状態であり、塩分量を薄めようと水分の摂取量が増える ・水分の摂取量が増えることで尿量が増える |
膀胱畜尿障害タイプ
膀胱畜尿障害タイプとは、膀胱に尿を溜めておく機能が低下し、尿が作られて膀胱に送られるとすぐトイレに行きたくなる状態を指します。夜間はもちろん、日中もトイレに行く回数が多いのが特徴です。
膀胱畜尿障害タイプの原因は、以下の表をご参照ください。
原因 | 詳細 |
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前立腺肥大 | ・男性ホルモンの影響で前立腺が大きくなることで排尿に影響を及ぼしている ・夜間頻尿の他、残尿感、強い尿意、排尿時力まなければならないなどの症状がみられる |
過活動膀胱 | ・排尿回数が日中8回以上、夜間1回以上ある場合に加え強い尿意、トイレが間に合わないなどの症状がみられる状態 ・尿意を感じると我慢ができないため、外出が困難になったりトイレを気にして眠れなくなったりする |
夜間頻尿がもたらす日常生活での悪影響3選
夜間頻尿は、日常生活において以下のような悪影響を及ぼします。
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- ・睡眠不足
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- ・転倒
- ・睡眠障害や精神疾患
夜間頻尿により生活の質が著しく低下する可能性があります。上記のような悪影響を深刻化させないためにも、夜間頻尿が気になる場合は早めの対処が必要です。
睡眠不足
夜間頻尿になると、トイレのことに意識が集中して眠れなくなったり、トイレに起きた後眠れなくなったりするため、睡眠不足になりやすいです。
夜間十分な睡眠が取れないため、日中の眠気や集中力の低下がみられる可能性があり、日常生活に影響を及ぼすと考えられます。
転倒
夜寝ている途中でトイレに起きると、ふらつきやすく部屋が薄暗いこともあり転倒の危険性が高いです。特に高齢者や睡眠薬を服用している人は、ふらつきやすいため注意しましょう。
トイレまでの通路に手すりを設置したり、照明を付けたりするなどの対策が必要です。
睡眠障害や精神疾患
夜間頻尿は「さっきトイレに行ったけど大丈夫かな?」「漏れるのが心配」など、トイレの心配をして睡眠障害になりやすいです。
また、十分な睡眠が取れないことで疲労やストレスが蓄積し、うつ病や認知症に発展する可能性も考えられます。
夜間頻尿は睡眠時無呼吸症候群との関係も深い
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が停止あるいは浅くなることで体内の酸素濃度が低下し、身体に様々な影響を及ぼす病気を指します。
無呼吸の状態になると体内の酸素濃度が低下するため、脳が呼吸を促そうと働きかけます。脳は一晩中働き続けており、寝ているつもりでも身体は活動しているときと同様に、脈拍や血圧を上げ、尿を作っています。そのため、夜間でも尿量が増えトイレに起きる回数が増えるのです。夜間頻尿が気になり受診したところ、睡眠時無呼吸症候群が発覚したパターンも少なくありません。
夜間頻尿が気になる方に実践してほしい5つのポイント
日常生活において以下のポイントを意識することで、夜間頻尿が軽減されます。
- ・寝る前の水分摂取は控える
- ・塩分控えめの食事を心がける
- ・足のむくみは寝る前までに解消しておく
- ・寝室の温度や湿度を適切にしておく
- ・排尿日誌を付けて自分の排尿パターンを把握する
睡眠障害や精神疾患
寝る前にたくさんの水分を摂取すると、夜間の尿量が増えるため夜間頻尿になりやすいです。
例えば、入浴後喉が渇いたため水分を摂取しそのまま就寝した場合、入浴により失った水分を補給しているためよいと思われます。しかし、摂取した水分が多かった場合は、夜間に尿として排出されてしまい、夜中に起きることになるでしょう。
寝る前の水分は、コップ1杯程度に留めておくとよいでしょう。また、寝る前にトイレを済ませておくのも有効です。
睡眠障害や精神疾患
塩分の多い食事は、血液中の塩分濃度を上げ水分を多く摂取するため夜間頻尿になりやすいです。他にも高血圧になりやすく、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気の原因になりやすいため、塩分控えめの食事を心がけましょう。
以下に減塩のコツをご紹介します。
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- ・酢やレモン、ショウガなどで風味を付ける
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- ・ちくわやかまぼこなどは茹でて塩分を取る
- ・醤油やソースなどは小皿にとって付けて食べるようにする
足のむくみは寝る前までに解消しておく
足のむくみとして体内に残っている水分は、そのままにしていると血液中に戻り、尿として排出されます。寝る前に排出しておくことで、尿量が減り夜間トイレに起きることが少なくなります。
足のむくみは、以下の方法で解消できますので実践しましょう。
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- ・足が心臓より高くなるように枕やクッションなどで上げる
- ・ふくらはぎを足先から太ももに向けてマッサージする
足のむくみは、血液の循環が悪くなることで起こります。普段から足のむくみを予防することも重要です。
足のむくみを予防するポイントは、以下の通りです。
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- ・座りっぱなしや立ちっぱなしの姿勢を1時間以上取らない
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- ・散歩や筋肉トレーニングなど運動する
- ・身体を冷やさないようにする
特に運動は、足の筋肉を動かして血液の循環を促すため、足のむくみを予防するのに効果的です。また、程よい疲労感により寝付きやすくなるため、積極的に取り入れましょう。
睡眠障害や精神疾患
寝室を快適な環境にしておくことで、寝付きやすく睡眠の質がよくなります。特に冬は、寒さからトイレが近くなりやすいため、適切な温度を保っておきましょう。
夏・冬の最適な室温や湿度は、以下の通りです。
季節 | 温度 | 湿度 |
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夏 | 28℃程度 | 50~60% |
冬 | 16~19℃ | 50% |
排尿日誌を付けて自分の排尿パターンを把握する
排尿日誌とは、排尿時間や1回の尿量、気になる症状(残尿感がある、突然トイレに行きたくなったなど)を記録するものです。
排尿に関する記録に加えて、水分量や飲み物の種類(コーヒーやお茶、ジュースなど)を記入しておくと、頻尿の原因を特定するのに役立ちます。
排尿日誌を記録する際は、尿量が測定できるように計量カップを用意しておきましょう。
夜間頻尿が気になる人は受診しよう
上記の夜間頻尿を解消するポイントを実践しても夜トイレに起きる場合は、病院を受診するのがおすすめです。日常生活に影響したり、重大な病気を見落としてしまったりする可能性が考えられます。
医師の指示のもと、治療薬を使用することで夜間頻尿が改善する場合もあります。日常生活に支障があったり、夜間トイレに起きることを苦痛に感じていたりする場合は、早めに受診しましょう。
まとめ
夜間頻尿は、水分の摂り過ぎや年齢を重ねることで起きやすく、悩んでいる人が多いといえるでしょう。
自分で改善できるところは改善し、それでも夜間頻尿が続く場合は別の原因が潜んでいる可能性があります。夜間頻尿は糖尿病や心不全、睡眠時無呼吸症候群とも関係が深いです。重大な病気を発症している可能性も考えられるため、医師に相談しましょう。
A.尿量が増える糖尿病や多飲症、むくみの原因となる心不全や腎不全、睡眠時無呼吸症候群など、様々な病気が考えられます。夜間頻尿に関連する病気については「【夜間頻尿とは?】夜に目が覚めてしまう方の原因をご紹介」でも解説していますので、あわせてご参照ください。
A.年齢を重ねると頻尿になりやすいですが、原因が加齢だけとは限りません。中には糖尿病や心不全などの病気も隠れている場合もあるため、日常生活に影響するほどの夜間頻尿がみられる場合は、医師に相談しましょう。
排尿日誌を記録して受診時に持参すると、原因の特定がしやすいためおすすめです。
よくある質問
Q.夜間頻尿にはどのような病気が考えられますか?
Q.加齢による夜間頻尿は我慢するしかないのでしょうか?