反復性過眠症の特徴とは?
まずは、反復性過眠症の特徴について解説します。
反復性過眠症の患者は10代の若い世代が大半です。また、女性より男性の方が発症する頻度も高い傾向にあります。
傾眠期や過眠期と呼ばれる強い眠気を感じる時期が3日~5週間続き、1日のほとんどを寝て過ごします。傾眠期は年に数回、数カ月おきに発生しますが不定期です。寛解までは平均14年といわれており、長期にわたる治療が必要です。
反復性過眠症の原因
残念ながら、反復性過眠症の原因は解明されていません。
しかし、覚醒中枢や睡眠中枢などの乱れ、ストレスが原因ではないかと考えられています。また風邪や過労、睡眠不足などがきっかけとなり、反復性過眠症を引き起こすケースもあります。
反復性過眠症の主な症状
反復性過眠症は、おもに以下のような症状がみられます。
- ・知覚変容
- ・認知機能の低下
- ・摂食障害
- ・脱抑制行動
それぞれ詳しく解説します。
知覚変容
知覚変容とは、物事が歪んで見えたり、見ているものに現実感がないように感じたりする知覚の異常のことです。「ふわふわとして、夢の中にいるような感じがする」と、離人感や現実喪失感などを訴えることもあります。
認知機能の低下
反復性過眠症では、記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障をきたす場合があります。
代表的な症状は、記憶障害です。強い眠気からボーっとすることが多くなり、簡単な会話が理解できない、頭に入らないなどの問題があらわれます。ほかにも見当識障害や判断力障害なども、反復性過眠症に顕著な症状です。
これらは高次機能障害とも呼ばれます。これまで当たり前にできていた行動や、感情の整理が難しくなり、家族や友人との衝突も増えるでしょう。
摂食障害
過食もしくは拒食も、反復性過眠症の代表的な症状のひとつです。
通常の何倍も食べ過ぎたり、または食欲が減退したりして、栄養面での不安も大きくなっていきます。普段好まない食べ物を欲しがるケースや、特定のものばかりを食べる選択的摂食障害が起きるケースも少なくありません。
また、食事を一切とらずに眠り続けることもあります。
脱抑制行動
脱抑制行動とは、自分でコントロールがきかなくなった状態を指します。ルールやマナーなどが守れなくなったり、幼稚でわがままな言動が増えたりなど、反社会的行動を起こすことがあります。
とくに性欲亢進は男性の約半数、抑うつ症状は女性の約半数にみられる症状です。性別によって症状に違いがある点も、反復性過眠症の特徴といえるでしょう。
そのほかに不安感や幻覚、妄想などの症状も、全体の30%程度で確認できます。
反復性過眠症セルフチェック
自分や家族の過眠症状が、反復性過眠症ではないかと心配になっている方は、以下のチェックリストを試してみましょう。
- ・16~20時間、眠り続ける
- ・過食や拒食の傾向がある
- ・会話が緩慢になる
- ・性欲の亢進
- ・うつ症状
- ・夢の中にいる感じがする
- ・認知機能の低下を感じる
- ・記憶力の低下
- ・幻覚、不安の症状が出現する
当てはまる症状が複数ある場合は、専門医を受診しましょう。
睡眠外来のある心療内科や精神科、脳外科で精密検査を実施してくれます。
反復性過眠症の主な治療法
反復性過眠症の根本的な治療法は確立されていません。しかし2010年に発表された臨床報告では、炭酸リチウムが有用であったとされています。
- ・炭酸リチウムを投与すると、過眠発作が頻度・程度ともに軽減した
- ・服薬コンプライアンスが乱れ血中濃度が低下すると過眠発作が再発した
しかしすべての症例・患者に有用ではありません。また、炭酸リチウムによる治療は保険適用外となっています。
反復性過眠症の傾眠期には、仕事や学校は休み、安全が確保された場所でしっかりと休みましょう。認知機能が低下しているため、ひとりで出歩くのは危険です。また、うつ症状がみられる場合は、注意深く経過を観察しましょう。
反復性過眠症とよく似た睡眠障害
過度な眠気で日常生活に支障が出る病気には、反復性過眠症以外にもナルコレプシーや特発性過眠症などがあります。それぞれ特徴があるため、反復性過眠症と混同することは少ないでしょう。ここでは、反復性過眠症によく似た症状をもつ睡眠障害について解説します。
過眠症についてはコチラの記事でも解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
ナルコレプシー
夜間のまとまった睡眠時間が確保されているにもかかわらず、日中に強い眠気に襲われるのがナルコレプシーです。授業中や就業中に眠ってしまうため、パフォーマンス能力が低下します。
また歩行中や大事な会議の最中など、通常では考えられないタイミングでも眠ってしまうため、周囲からの評価にも大きな影響を与えます。
急に身体の力が抜けたようになる脱力発作や、入眠時の幻覚、睡眠麻痺などもナルコレプシーの特徴です。そのため高所からの転落や交通事故、業務上の過失による補償問題など、人生に多大な影響を与える可能性もあるでしょう。
ナルコレプシーによる居眠りは30分程度と短い傾向にあります。反復性過眠症と比較すると、短時間でスッキリと起きられます。覚醒後の爽快感は、ナルコレプシー特有の症状といえるでしょう。
特発性過眠症
特発性過眠症も10代の若い世代によくみられる疾患です。
日中の耐えがたい眠気と居眠りが特徴ですが、居眠りから起きたあともスッキリせず、爽快感はありません。ナルコレプシーとの最大の違いは、居眠り後の感覚にあるといえるでしょう。また特発性過眠症は、日中に頭痛やめまいを感じる方も多いようです。
特発性過眠症は3ヶ月以上の長期間にわたって、ほぼ毎日、眠気に悩まされる傾向があります。この点では、反復性過眠症と明確な違いを感じられるでしょう。
なかなか周囲に理解されない点は、特発性過眠症における問題点のひとつです。ただの怠けや甘えと思われてしまい、両親や教師から叱責されるケースも多くみられます。
概日リズム睡眠・覚醒障害
概日リズム睡眠・覚醒障害とは、望ましいタイミングで睡眠が取れず、生活に支障を生じさせる睡眠障害です。人間の身体に備わっている体内時計は、体温や血圧などの自律神経系、内分泌ホルモン系などを1日24時間のリズムで調整しています。
しかし体内時計は1日25時間で動いているといわれており、本来の1日24時間とは1時間のズレがあります。このズレを修正するのは、毎朝浴びる太陽の光や食事、通勤や通学などの社会生活です。しかし1時間のズレをリセットできない状態が続くと、睡眠や覚醒に障害をもたらします。
朝起きられないため、遅刻や欠勤の原因となります。立ちくらみや頭痛、倦怠感などを生じさせることもあり、眠気以外の影響も大きいでしょう。
精神疾患による過眠症状
うつ病や不安障害では不眠傾向になる印象がありますが、過眠症状を引き起こす場合もあります。
うつ病では、精神的・身体的な疲れが蓄積されているため、これまでと同じ睡眠時間では満足せず、日中に眠気を感じやすくなっていると考えられます。
また現実逃避の手段として、眠気を引き起こしているとも考えられるでしょう。これは人間の本能として備わっている反応のひとつで「寝逃げ」とも呼ばれています。
さらに精神疾患の治療薬の副作用から、過眠傾向が強くなっている可能性もあります。どうしても日中の眠気に耐えられない場合や、生活に支障をきたしている場合は、主治医や薬剤師に相談してみましょう。
睡眠障害を防ぐために
睡眠障害の治療は、薬物療法と非薬物療法の2つに分けられます。しかしどちらも短期的な解決は見込めず、長期的に取り組む必要があります。そのため、睡眠障害を引き起こさないよう、日々の努力が不可欠です。
最後に、睡眠障害を防ぐため、今すぐ取り組みたいことや気を付けたいことを紹介します。
原因となっている疾患の治療
睡眠障害は、過度なストレスや生活リズムの乱れ、アルコールや薬による影響などが主な原因です。しかし中には、精神疾患や基礎疾患が原因の睡眠障害もあります。
- ・うつ病や適応障害などの精神疾患
- ・睡眠時無呼吸症候群や脳神経疾患・呼吸器疾患などの基礎疾患
まずは睡眠障害の原因を探りましょう。原因が疾患によるものだった場合、疾患に合わせた治療や生活習慣の改善が求められます。
規則正しい生活を心がける
反復性過眠症は、睡眠不足をきっかけとする場合があります。
夜遅くまでスマホやタブレットを見たり、睡眠時間を削って勉強していたりすると、生活リズムが乱れてしまいます。睡眠不足が積み重なり、日中に居眠りしていると、ますます夜寝つけなくなるでしょう。
またスマホやタブレットから発せられるブルーライトには覚醒作用があるため、眠りを妨げます。電子機器との付き合い方を見直したり、時間を制限したりする工夫も検討してみましょう。
適度な運動やバランスの良い食事も有効です。朝起きたら太陽の光を浴び、体内時計をリセットしましょう。カフェインやアルコールの過剰摂取にも、注意が必要です。
睡眠障害を防ぐには、毎日の規則正しい生活が基本。朝起きる時間を固定し、週末も同じリズムで生活していれば、スムーズな入眠が期待できます。
ストレス解消法を見つける
ストレスは不眠症の最大の要因です。ストレスは交感神経を刺激し、寝つきを悪くします。浅い眠りで何度も目が覚める中途覚醒や、早朝覚醒などに悩まされる場合もあります。
実際、過度なストレスが反復性過眠症の引き金となったケースもあるといわれているため、いかにストレス発散が重要か、理解できるでしょう。
ストレスを感じずに生活することは困難ですが、うまく発散したり、リラックスしたりして自分を労わる時間が必要です。仲間と一緒に汗を流すスポーツ、映画や音楽鑑賞、ひとりになる時間の確保など、自分にあったストレス解消法を見つけましょう。
まとめ
反復性過眠症は10代に多い睡眠障害のひとつで、年に数回のペースで一定期間の過眠期が持続します。毎日16~20時間も眠っているため、そのほかの過眠症とは区別しやすいといえるでしょう。
根本的な治療や特効薬はなく、予防のための薬物療法が主となります。
認知機能の低下や異常行動による交通事故のリスクもあるため、家族の理解や協力が欠かせません。過眠症状が落ち着いている時期には、睡眠時間や体調の管理に気を付け、傾眠期を引き起こさないように注意しましょう。
よくある質問
Q.反復性過眠症の検査や治療は何科を受診すればいい?
A.反復性過眠症は精神科や脳神経外科を受診してください。睡眠外来のある心療内科や呼吸器科でも、対応してもらえる場合があります。
Q.反復性過眠症の原因は?
A.反復性過眠症の原因ははっきりしていませんが、脳の中枢神経系に何らかの刺激が加わっていると考えられています。またストレスや過労、睡眠不足などがきっかけになっているともいわれています。