ロングスリーパーの特徴とは?
適切な睡眠時間は専門家の間でも意見が分かれており、明確には決定づけられていないのが現状です。
しかし中には、周囲の人よりも明らかに睡眠時間が異なる方もいます。睡眠時間が明らかに短い方をショートスリーパーと言い、逆に長い方をロングスリーパーと言います。
「人と同じくらいの時間寝ているにも関わらず体調が悪い」
「長時間睡眠を取らないとスッキリしない」
などのお悩みを抱えている方はロングスリーパーの可能性があるため、注意が必要です。
人によって適切な睡眠時間は異なるため、ロングスリーパーを定義する明確な基準は存在しませんが、ロングスリーパーには共通していくつかの特徴が挙げられます。
ここでは、ロングスリーパーの方に多い特徴について、それぞれ詳しく解説します。
長い睡眠時間
ロングスリーパーの特徴として、長い睡眠時間が挙げられます。
その名の通り、ロングスリーパーの方は一般の人と比較して、長い睡眠時間を確保できないと日中に眠気を感じてしまい、活動に支障をきたしてしまう体質を持った人のことを意味します、しかし、具体的な睡眠時間が定義されているわけではありません。
成人の平均睡眠時間は7〜8時間であるため、一般的には9時間以上の睡眠が必要な人をロングスリーパーと言いますが、睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)では「成人は10時間以上、子どもは年齢に適した睡眠時間より2時間以上多い場合にロングスリーパー」とされています。
ご自身の睡眠時間を把握するためにも、睡眠日誌を付けて睡眠時間を記録することをおすすめします。
怠けているわけではない
ロングスリーパーの方は、決して怠けたくて長時間寝ているわけではありません。
一見すると、睡眠時間が人より長いため周囲からは怠けているように見えてしまいますが、ロングスリーパーはあくまで「最適な睡眠時間が人よりも長い」だけです。ロングスリーパーにはロングスリーパーなりの苦悩があります。
具体的には、通勤や通学への悪影響、周囲からの心無い言葉によるストレス、活動時間の短縮などが挙げられます。
人によっては12時間以上の睡眠が必要な方もいるようで、その場合21時に寝ても翌朝9時まで睡眠が必要となります。通学や通勤はもちろんのこと、日中の活動可能な時間も少なくなってしまいます。
他の人の睡眠時間に合わせてしまうと、日中に強い眠気を感じてしまい体調も優れないため、生きづらいと感じてしまう人もいるようです。
健康に悪い?
ロングスリーパーは長時間睡眠を取っているため、健康的だと思われている方も多いのではないでしょうか?
結論から言えば、ロングスリーパーは決して健康的とは言い切れず、むしろ健康に悪影響を与えている可能性もあります。
1980年代にアメリカのカリフォルニア大学で行われた睡眠時間と死亡率に関する研究によると、最も死亡率が低いのは1日あたり6.5~7.5時間の睡眠を取っている人とのこと。これに比べると、7.5時間以上の睡眠時間を取っている人は、死亡率が20%以上も高くなったそうです。
また、40~79歳の男女約10万人を、10年間にわたって追跡調査した北海道大学の研究もあります。死亡率が最も低かったのは男女ともに睡眠時間が7時間の人たちで、睡眠時間が7時間より長い人は死亡率が高くなる傾向が示されました。
睡眠時間が長いからといって健康的であるわけではなく、睡眠時間と質の両方が重要です。
過眠症との違い
ロングスリーパーと過眠症は混同されがちですが、症状や分類などに違いがあります。
過眠症は睡眠障害という病気として分類されていますが、ロングスリーパーはあくまで体質であり、病気とは言い切れません。
また、過眠症は夜間に十分な睡眠を取っていても日中に強い眠気を感じる病気ですが、ロングスリーパーは十分な睡眠時間さえ確保できれば日中に眠気や倦怠感を感じることはありません。
とは言え、滞りなく社会生活を送る上では、ロングスリーパーの方が十分な睡眠時間を確保することは難しいです。
日本人の20〜30代の社会人で最も多い睡眠時間は6時間台であり、ロングスリーパーの方であれば明らかに睡眠時間が不足してしまいます。
そのため、寝不足で日中に眠くなってしまい、過眠症と区別するのが難しくなっているのが現状です。
ロングスリーパーの原因
「どうして自分は人よりも睡眠時間がたくさん必要なのだろう?」
このような悩みを持つ方もいらっしゃると思いますが、結論から言えば、ロングスリーパーの原因ははっきりと解明されているわけではありません。
病気とは違ってはっきりとした単一の原因があるわけではなく、いくつかの要因が複合的に重なり合って生じていると考えられています。具体的には、遺伝や体質、ストレスなどが挙げられます。
それぞれの原因について詳しく解説していきます。
遺伝
ロングスリーパーの原因として遺伝が考えられます。
原因となる特定の遺伝子が解明されているわけではありませんが、両親のどちらかがロングスリーパーである場合、子どももロングスリーパーになりやすい傾向があると言われており、遺伝の関与が考えられます。
その一方で、その子どもは両親と同じ生活スタイルで暮らしているため、環境要因が影響している可能性も高く、一概に遺伝だけで説明できるわけではありません。
体質
ロングスリーパーの原因として体質が考えられます。
体質によっては睡眠の質が低下し、ある程度長時間の睡眠を確保しないと身体が十分に休息できなくなるからです。
具体的に、セロトニンやドーパミンと呼ばれる睡眠に関わる神経伝達物質が体質的に少ない方は、ロングスリーパーになるリスクがあります。
セロトニンやドーパミンは眠気を誘発する際に分泌されるため、分泌量が少ないと眠りが浅くなってしまい、睡眠の質が低下することで代償的に睡眠時間が長くなってしまうわけです。
ストレス・疲労
ロングスリーパーの原因としてストレスや疲労が考えられます。
ストレスや疲労によって睡眠の質が低下するため、長時間の睡眠時間を確保しないと身体や脳が疲労回復できなくなるからです。
人間はストレスや疲労を感じると、副腎髄質と呼ばれる臓器からカテコラミン (アドレナリンやノルアドレナリン)が分泌され、自律神経の内の交感神経が優位に活性化します。
本来、睡眠は副交感神経の活性化で誘発されるため、ストレスに伴う交感神経の活性化によって寝つきが悪くなってしまいます。結果、睡眠の質も低下してしまうので、十分な休息を得るには長時間の睡眠が必要になると考えられています。
ロングスリーパーの治し方
ロングスリーパーは睡眠時間が長い分、日中の活動時間が短縮してしまい、学校や職場での社会活動やプライベートにおける交友関係にも支障が出てしまいます。
また、無理をして睡眠時間を平均程度に抑えてしまうと寝不足に陥り、日中の眠気やパフォーマンスの低下に繋がってしまうため、早期から適切な対策を取ることが重要です。
ロングスリーパーはあくまで体質であり病気ではないため、睡眠時間を短縮させるような特効薬は存在しません。
しかし、睡眠の質が低いことで睡眠時間が増えている場合、睡眠の質を向上させることで改善できる可能性があります。
ここでは、睡眠の質を向上させるための具体的な方法についてご紹介します。
起床時間や就寝時間を整える
起床時間や就寝時間を整えることで、睡眠の質が向上する可能性があります。毎日の睡眠時間が不規則だと体内時計が乱れてしまい、睡眠の質が低下してしまうからです。
休日の寝溜めや、休日前夜の夜更かしなどは特に控えるべきでしょう。
起床時間や就寝時間を毎日睡眠日誌で記録することで、より時間を遵守しやすくなるのでおすすめです。
日中に運動する
日中に運動することで、睡眠の質が向上する可能性があります。日中に運動を行うと自律神経のバランスが整い、夜になると副交感神経が活性化しやすくなるからです。
あまりにも高い負荷の運動を行うと身体にストレスが残ってしまうため、程よくリラックスできる程度の運動を毎日行うと良いでしょう。
また、就寝直前の運動はかえって睡眠の質を低下させてしまうことが知られているので、遅くとも就寝2時間前までには運動を終わらせることをおすすめします。
日中に太陽光を浴びる
日中に太陽光を浴びることで、睡眠の質が向上する可能性があります。本来、夜になると眠気を感じるのは睡眠を誘うホルモンであるメラトニンが分泌されるからです。
メラトニンは、日中に体内で生成されるセロトニンという神経伝達物質が原料になりますが、セロトニンは光刺激によって分泌が促進されます。
そのため、日中に太陽光を浴びることでセロトニンの分泌量が増加し、夜間になるとセロトニンを原料としてメラトニンも大量に分泌されるため、良質な睡眠を得ることができるのです。
また、1日が24時間であるのに対し、人間の体内には1日25時間周期の体内時計が存在するため、本来であれば毎日1時間ずつ睡眠時間は後ろにずれ込んでいくはずです。しかし、太陽光を浴びることでズレがリセットされるため、毎日同じような時間に眠くなります。
これら2つの理由からも、太陽光を浴びることは睡眠の質を向上させるために非常に重要です。
就寝前に適切な入浴を行う
就寝前に適切な入浴を行うことで、睡眠の質が向上する可能性があります。
これまでの研究によって、睡眠中の深部体温の低下が睡眠の質を向上させるとわかっています。就寝前に入浴することで深部体温が上昇するため、入眠後の深部体温の下げ幅が大きくなり睡眠の質が向上します。
しかし、就寝直前の入浴は深部体温がかえって下がりにくくなるため、少なくとも就寝の2時間前までには入浴を終わらせておくようにしましょう。
就寝前の光刺激を避ける
就寝前の光刺激を避けることで、睡眠の質が向上する可能性があります。
就寝前の光刺激、特にスマホなどから発せられるブルーライトによって、睡眠ホルモンであるメラトニンの生成が抑制されてしまうため、寝つきが悪くなってしまうからです。
具体的に、就寝の2時間前までにはスマホやパソコン、テレビの画面を見るのを控えることをおすすめします。
生活習慣を整える
生活習慣を整えることで、睡眠の質が向上する可能性があります。就寝前の飲酒や常習的な喫煙などの乱れた生活習慣は、睡眠の質を低下させるからです。
就寝前の飲酒は気道に浮腫を引き起こし気道が狭窄するため、睡眠中に取り込める酸素の量が減少してしまい、睡眠の質を低下させることが知られています。
また、アルコールに含まれるアセトアルデヒドという成分は覚醒作用があるため、睡眠中の中途覚醒を引き起こす可能性もあります。
次に、喫煙は気道に炎症・浮腫を引き起こし、飲酒同様に睡眠の質を低下させます。
アルコール以外に、お茶やコーヒーに含まれるカフェインにも覚醒作用があるため。就寝前の摂取は控えるべきです。
まとめ
今回の記事では、人よりも長時間の睡眠が必要なロングスリーパーの原因や治し方について解説しました。
ロングスリーパーは長時間の睡眠が必要となるため、通勤や通学などの社会生活に支障をきたすだけでなく、日中の活動可能時間も短縮してしまうなど、様々なデメリットを抱えています。
また、不適切な長時間睡眠は決して健康的とは言えず、むしろ健康に悪影響を及ぼすという報告もあるため、質の良い睡眠を確保して睡眠時間を短縮できるようにしましょう!
よくある質問
Q.ロングスリーパーの睡眠時間は?
A.ロングスリーパーの睡眠時間は明確に定義されているわけではありません。
一般的な線引きとしては睡眠時間9時間以上、睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)では「成人は10時間以上、子どもは年齢に適した睡眠時間より2時間以上多い場合にロングスリーパー」とされています。
Q.ロングスリーパーの治し方は?
A.ロングスリーパーに特効薬など存在しません。
睡眠の質を向上させて、短い睡眠時間でも心身が疲労回復できるようにすることが肝要です。
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