特発性過眠症とは?
「睡眠時間は足りているはずなのに、昼間に眠くなる」「寝ても寝ても眠い」このような悩みから、過眠症ではないかと不安になる人がいます。
特発性過眠症とは、過眠症の一種で、原因が明らかになっていない過眠症のことを言います。ナルコレプシーは、レム関連症状(情動性脱力発作、金縛り、入眠時幻覚)が見られますが、特発性過眠症には、レム関連症状が乏しいと言われています。
では、具体的に特発性過眠症について詳細をご紹介していきます。
特発性過眠症の主な症状
特発性過眠症は、夜しっかり睡眠をとっているにもかかわらず、日中に眠くなるのが特徴です。
夜間の睡眠時間は、11時間以上と長いタイプと、8時間以下の通常タイプ、2つのタイプに分けられます。居眠りは1時間以上と長く、目が覚めてもスッキリしていない傾向にあります。ボーっとした状態が目立ち、常に寝起きのようにフラフラしている人も少なくありません。
起立性調整障害や頭痛、めまい、立ちくらみなどの自律神経症状が見られる場合もあるようです。思春期から20代の若者に多いのも特徴です。
バスや電車などの移動中に居眠りし、寝過ごしてしまった失敗や、大事なテストや会議中にいびきをかいて寝てしまい、怒られた経験がある人もいるでしょう。授業中に寝てしまうので、思うように成績が伸びなかったり、集中力が落ちて時間内に作業が終わらなかったりと、日常生活に大きな影響を及ぼします。
このように学校や職場で居眠りを繰り返すため、周囲からの評価に悩む人も少なくありません。
特発性過眠症セルフチェック
ここまで読んで「自分は特発性過眠症なのでは?」と思った人もいるでしょう。特発性過眠症を発見するためには、専門医を受診して、精密検査を受ける必要があります。
とはいえ、「たかが睡眠の悩みで病院を受診するべきだろうか?」「通院する時間の確保が難しい」と、迷う方もいるはずです。そこでおすすめなのが、睡眠障害セルフチェック。
専門医の受診を検討する前に、以下のセルフチェックで特発性過眠症の可能性があるか、調べてみましょう。
- ・3カ月以上、日中の眠気に悩んでいる
- ・夜間の睡眠時間は10時間以上
- ・日常生活に支障が出るほどの眠気がある
- ・朝は目覚まし時計もしくは家族の協力がないと起きられない
- ・昼寝や仮眠の時間が1時間以上/1日
- ・昼寝をしてもスッキリ感がない
- ・頭痛やめまい、立ちくらみがある
当てはまる項目が多い人は、専門医への相談をおすすめします。
特発性過眠症の原因とは?
気になる特発性過眠症の原因ですが、実はまだよくわかっていません。現在では、中枢神経系の機能障害である可能性が指摘されています。
中枢神経系の障害による睡眠障害には、特発性過眠症をはじめ、ナルコレプシーや反復性過眠症なども含まれます。
特発性過眠症はどうやって診断する?
特発性過眠症の診断方法についても、確認しておきましょう。特発性過眠症は、ほかの睡眠障害はないか、睡眠時間や生活リズムに問題はないか、精神的な病気や薬の影響はないかなど、さまざまな方面から観察します。
それでもなお、特発性過眠症が疑われる場合、1泊2日の検査入院がおこなわれます。
まずは夜間の睡眠について、睡眠ポリグラフ検査(PSG)で睡眠の質をチェック。翌朝は反復睡眠潜時検査(Multiple Sleep Latency Test)で、2時間おきに寝付くまでの時間を計測します。これら2つの検査結果を総合的に判断し、特発性過眠症かどうか診断されます。
とはいえ、特発性過眠症の診断は、さまざまな要素が絡み合っているため複雑です。心配な人は、精神科や脳神経外科、心療内科などを受診しましょう。
特発性過眠症に似た睡眠障害
日中の強い眠気、いくら寝てもすっきりしない不快感、自律神経の問題などは、特発性過眠症以外の病気でも散見される症状です。
ここからは、特発性過眠症によく似た睡眠障害や、そのほか考えられる病気を紹介します。
ナルコレプシー
ナルコレプシーは、夜間の睡眠時間に問題がないにもかかわらず、日中に強い眠気が起きるのが特徴です。食事中や歩行中など、通常はあり得ない状況で眠ってしまうことがあります。
またカタプレキシーと呼ばれる情動脱力発作も、ナルコレプシーの特徴です。感情の高まりを引き金に、一時的な脱力感が発生します。まったく力が入らず、失神したように見えるほどの脱力もあれば、周囲からは気付かれない程度の脱力もあるなど、程度はさまざま。
ほかにも睡眠麻痺や入眠時幻覚など、レム睡眠に移行するタイミングでの異常症状も特徴的です。
反復性過眠症
強い眠気が現れる時期と、症状が完全に消失する時期が交互に訪れる、非常にまれな睡眠障害です。眠気が現れる過眠期は、数日から数週間と長く、8~12年かけて徐々に症状がなくなっていきます。
反復性過眠症には、16~20時間もの長時間眠り続けたり、過食や性欲の亢進などの傾向があったりなど、さまざまな症状があげられます。原因はわかっておらず、治療法も確立していません。
睡眠不足症候群
慢性的な睡眠不足が原因で、日中に強い眠気に襲われることがあります。これを睡眠不足症候群といい、睡眠障害として中枢性過眠症に分類されています。
充分な睡眠が確保されない日々が続くと、疲れは溜まる一方。蓄積された疲労感は、集中力やパフォーマンスの低下、気分の落ち込みなどに繋がります。授業中や勤務中にボーっとしたり、居眠り運転をしたりと、日常生活に大きな影響を与える可能性もあるでしょう。
うつ病
うつ病は、気分の落ち込みや憂うつ感などの精神的な症状をはじめ、不眠や食欲不振などの身体的な症状が起きる気分障害です。過度なストレスや喪失体験が原因で発症することが多いですが、特別きっかけになる出来事がなくても、うつ病になる人もいます。
うつ病患者の中には、眠りが浅くなったり、朝早くに目覚めてしまったりと、熟睡できずに悩む人もいるでしょう。睡眠の質が下がるため、日中に強い眠気が襲ってくる場合があります。
「特発性過眠症」は睡眠障害の一種です。他の睡眠障害については下記のコラムでもまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
特発性過眠症の主な治療法
特発性過眠症の治療法には、おもに生活指導と薬物療法の2つがあります。毎日をより活発に過ごすためにも、特発性過眠症を放置せず、適切な治療を受けましょう。
生活習慣の改善
特発性過眠症は、生活習慣を見直すだけで、症状の大きな改善に繋がることがあります。まずは、十分な睡眠時間を確保しましょう。
適切な睡眠時間は、人によって大きく異なります。6時間でスッキリ目覚められる人もいれば、8時間の睡眠時間が必要な人もいるでしょう。自分に最適な睡眠時間を把握し、意識的に毎日の睡眠時間を確保してください。
寝る時間と起きる時間を一定にし、生活リズムを安定させることも重要です。体内時計を意識し、早寝早起きを心がけましょう。
寝起き一番にカーテンを開け、日光を浴びるのもおすすめです。幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが分泌され、脳を覚醒させてくれます。体内時計をリセットでき、夜も寝付きやすくなりますよ。
薬物療法
日中の強い眠気を抑えるため、中枢神経刺激薬が処方されることがあります。おもに、モダフィル、メチルフェニデート塩酸塩、ぺモリンなどが処方されています。夜の眠りを妨げる可能性があるため、夕方以降の服用は避けましょう。
薬の副作用として、頭痛や不眠、動悸、口渇などが挙げられます。薬物依存のリスクもあるため、必ず医師や薬剤師の服薬指導に従いましょう。しかし薬物療法は、あくまでも症状を緩和させるために使われる薬です。特発性過眠症を根本的に治療する薬ではありません。そのため、服薬を止めると、また日中の強い眠気に悩まされる可能性があります。
より良い睡眠のためにできること
特発性過眠症以外でも、睡眠に関するお悩みを抱える人はたくさんいます。寝付けない、眠りが浅くて寝た気がしない、早朝に目が覚めてしまうなど、誰しも一度は悩んだ経験があるのではないでしょうか。
そこでここからは、睡眠の質を上げるために日々心がけてほしいポイントを紹介します。
質の良い食事
健康な体は、食事から作られます。
とくに1日のスタートは、栄養バランスの整った、質の良い朝食を心がけましょう。そのためには、時間に余裕を持って起きる必要があります。1分1秒でも長く寝ようと、家を出るギリギリまで寝る生活では、ゆっくりと朝食を食べられません。彩りの良い朝食で、身体と脳を目覚めさせましょう。
また、カフェインやアルコールはほどほどに。カフェインは、脳を覚醒させ寝付きを妨げます。適度なアルコールは寝付きを良くする効果もありますが、深酒は眠りを浅くします。カフェイン・アルコールの摂取量や時間も、工夫してみましょう。
ストレスを溜めない
ストレスは交感神経を優位にさせ、入眠を妨げる原因のひとつです。頭の中がストレスでいっぱいのままでは、浅い睡眠が続き、熟睡できません。ストレスをゼロにするのは困難ですが、趣味や友人との会話でストレスを発散しましょう。適度なスポーツで汗を流したり、読書で自分だけの世界に集中したりするのも、ストレス解消に効果的です。
また、毎日日記をつけるのもおすすめ。自分の心と向き合うことで、自分の本当の気持ちに気付けたり、イライラを発散できたりするでしょう。日記には、癒しの効果が期待できます。
寝る前の過ごしかたを工夫する
より良い睡眠のためには、寝る前の過ごしかたも重要です。
安眠に向けて、穏やかな気持ちにシフトしていく時間にしましょう。ベッドの中で、遅くまでスマホを見ている人はいませんか?スマホやタブレットは、ブルーライトを発しているため、寝付きにくくなります。就寝前は、アロマを焚いたり心を落ち着かせてくれる音楽を流したりして、リラックスしましょう。
お風呂の入り方にもコツがあります。寝る2時間前を目安に、ぬるめのお風呂にゆっくりと浸かりましょう。
人間は、体温が下がると眠気を感じる身体になっています。そのため、寝る直前に熱いお風呂に入ると、体温が上昇しているため寝付きにくくなります。ぬるめのお湯で身体の深層部をあたためておくと、2時間後にはちょうど体温が下がり、寝付きが良くなりますよ。
まとめ
特発性過眠症は、夜間の睡眠時間に問題がないのに、日中に強い眠気に襲われる病気です。原因はわかっていませんが、中枢神経系の機能障害ではないかといわれています。
昼間の眠気が主な症状のため「ただ怠けているだけ」「やる気がないのでは?」と誤解されやすい病気です。特発性過眠症による眠気は、気合いや気力だけで乗り越えられるものではありません。まずは生活習慣を見直し、できることから改善してきましょう。
もし日中の強い眠気で、日常生活に支障をきたしているなら、専門医への相談をおすすめします。
よくある質問
Q.特発性過眠症の原因は?
A.特発性過眠症の原因はよくわかっていません。中枢神経系の機能障害ではないかといわれています。
Q.特発性過眠症を治すにはどうしたら良い?
A.特発性過眠症の主な治療には、生活習慣の改善と薬物療法があります。充分な睡眠時間を確保するだけで、症状が改善する場合もあります。生活習慣の改善方法については、「【どうしたら良い?】不眠症の改善方法16選」でも解説しています。