トリプトファンって何?
まずは、トリプトファンとはどのような成分なのか、解説していきましょう。
トリプトファンは必須アミノ酸のひとつ
トリプトファンは、必須アミノ酸のひとつです。必須アミノ酸は、人間の体内で生成ができないので、トリプトファンは食事から摂取する必要があります。
トリプトファンの効果は多岐に渡り、心身や見た目に良い影響を与えます。
<トリプトファンの効果>
効果 | 内容 |
---|---|
アンチエイジング効果 | トリプトファンには体内で発生した活性酸素を除去する作用があることから、アンチエイジングの効果があるとされています。 |
鎮痛効果 | トリプトファンから生成されるセロトニンには鎮痛効果があります。 |
集中力・記憶力を高める効果 | トリプトファンが生成したセロトニンには、集中力や記憶力を向上させる効果があります。 |
月経前症候群(PMS)を改善する効果 | トリプトファンには鎮痛作用や精神を安定させる効果があるため、月経前のイライラや体の不調を改善する働きがあるといわれています。 |
その他の効果 | 免疫系に働きかけ、コレステロール値や血圧を調整する、性機能を高める、更年期障害の症状を緩和するなど多くの効果があります。 |
トリプトファンは快眠に効果あり?
上記の働きに加えて、トリプトファンには安眠効果を高める働きがあります。ここからは、トリプトファンが睡眠に働きかけるメカニズムを解説していきます。
トリプトファンと睡眠の関係性
睡眠の質を高めるには、メラトニンの生成が必要です。メラトニンとは、暗くなると分泌が始まる脳内物質(神経伝達物質)で、「睡眠ホルモン」とも呼ばれています。このメラトニンの分泌が始まった1〜2時間後に眠気が増し、スムーズな入眠を促します。
メラトニンの分泌を増やすには、目覚めを促すセロトニンをしっかり出すことが重要です。セロトニンは朝が近づくと分泌が増え、交感神経を刺激して心と体を活発にする働きがあります。また、緊張やストレスを感じると分泌量を増やし、自律神経のバランスを整えるため、別名「幸せホルモン」とも呼ばれています。
さらに、このセロトニンは夜になると脳の松果体(しょうかたい)でメラトニンが合成されるための原料となります。つまり、日中にセロトニンをたっぷり出しておけば、夜はメラトニンに変わって熟睡に導いてくれるのです。
それでは、どうすればセロトニンを増やすことができるのでしょうか?そこで活躍するのが、トリプトファンです。
食べ物から摂取したトリプトファンは、日中に脳内でセロトニンに変化し、夜になると睡眠を促すメラトニンに変化します。そのため、トリプトファンが不足すると、不眠症や睡眠の質の低下を引き起こす原因となるのです。
トリプトファンは夜よりも朝に摂った方が良い?
上記をまとめると以下のようになります。
- 1.トリプトファンからセロトニンが生成
- 2.セロトニンからメラトニンが生成
- 3.メラトニンがスムーズな入眠を促し、安眠に導く
では、快眠効果を高めるには、トリプトファンは夜と朝のどちらに摂った方が良いのでしょうか?一見すると、夜に摂取した方がよく眠れそうですが、トリプトファンは朝に摂った方がより効果を発揮します。
その理由は、トリプトファンがメラトニンになるまでには少々時間がかかるためです。前述した通り、トリプトファンはまずセロトニンに変換され、その上でメラトニンが生成されます。そしてセロトニンは、日中に分泌量が増えます。
つまり、メラトニンを増やすには日中の活動前にトリプトファンを摂取し、十分にセロトニンが分泌されるようにすることが重要なのです。
ちなみに、セロトニンは太陽光を浴びることでも合成量が増えます。そのため、朝食でトリプトファンを摂ったのち、全身に太陽の光を浴びると夜にセロトニンの分泌量を増やす効果が期待できます。
トリプトファンを効率的に摂取するには?
ここまで、トリプトファンが快眠に効果を発揮するメカニズムと摂取のタイミングについて解説しました。
本章からは、より効率的に摂取するために、トリプトファンを多く含む食材とメニューをご紹介していきます。
トリプトファンを多く含む食材
トリプトファンが多く含まれている食材は主に、豆腐・納豆・味噌・醤油などの大豆製品や、チーズ・牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、ナッツ・ピーナッツなどの種実類などです。また、肉や魚にもトリプトファンが含まれており、特に赤身魚やレバーに多いです。
トリプトファンを多く含む食材の一例を、100gあたりの含有量とともに下記の表にまとめました。
<トリプトファンを多く含む食材(mg/100g)>
食材 | 可食部100gあたりの含有量(mg/100g) |
---|---|
マグロ | 270mg |
カツオ | 310mg |
豚ヒレ | 290mg |
牛ランプ | 280mg |
牛レバー | 290mg |
豚レバー | 290mg |
鶏レバー | 270mg |
カシューナッツ | 360mg |
ピスタチオ | 270mg |
ピーナッツ | 270mg |
アーモンド | 200mg |
牛乳 | 45mg |
ヨーグルト | 60mg |
プロセスチーズ | 300mg |
脱脂粉乳※1 | 470mg |
ガセイン※2 | 1100mg |
木綿豆腐 | 98mg |
豆乳 | 53mg |
きな粉 | 510mg |
醤油 | 18mg |
味噌 | 140mg |
バナナ | 15mg |
※1:スキムミルク
※2:牛乳から脂肪とホエイを取り除いた残りの不溶性固形成分
トリプトファンを効率良く摂取するメニュー
トリプトファンからメラトニンの原料となるセロトニンを作り出すには、炭水化物とビタミンB6の助けが必要です。そして、ビタミンB6は赤身肉、鶏肉、牛レバー、マグロ、カツオ、鮭、バナナ、玄米ごはんに多く含まれています。
これらを踏まえて、トリプトファン・ビタミンB6・炭水化物を満遍なく含むメニューを考えると、昔ながらの和食をベースに以下の通りになります。
- <トリプトファンを効率良く摂取するメニュー>
- ・玄米ごはん
- ・木綿豆腐の味噌汁
- ・鮭の塩焼き
- ・バナナヨーグルト
調理する際の注意点としては、ビタミンB6は冷凍食品や加工食品では減少するため、できる限り新鮮な状態で摂取するのがおすすめです。また、長時間の加熱もビタミンB6を損なうことにつながるので、サッと炒めたり、軽く煮て栄養が溶け出た汁ごと食べたりできるようなメニューが良いでしょう。
バナナは最強食材
トリプトファンの快眠効果を高める上で、バナナは最強食材と言えます。
トリプトファンを多く含む食材でも紹介しましたが、バナナ100gあたりのトリプトファンの含有量は15mgで、他の食材と比べてあまり多くありません。ですが、セロトニンの材料として必要となるトリプトファン・ビタミンB6・炭水化物のすべてを含んでいるため、効率的にセロトニンを作り出すことができます。
また、皮を剥くだけで手軽に食べられて、なおかつビタミンやミネラル、食物繊維がバランスよく含まれているため、健康維持にも効果的な食材です。ゆえに、朝は忙しくて朝食を食べる時間がない人にとっても、おすすめの食材と言えるでしょう。
サプリメントの活用も効果的
普段の食事からトリプトファンを摂取するのがなかなか難しい人は、サプリメントを活用するのも効果的です。
トリプトファンサプリの選び方
トリプトファンのサプリメントを選ぶ際のポイントは、次の3つです。
- ・含有量で選ぶ
- ・良質なものを選ぶ
- ・飲みやすいものを選ぶ
含有量で選ぶ
トリプトファンサプリを選ぶ際は、含有量が適切かどうかを確認しましょう。
日本ではサプリメントの含有量についての規定などはありませんが、WHOの必須アミノ酸推奨摂取量では体重1kgあたり4mgとされています。ですので、これ以上の含有量を含むものは避けた方が良いでしょう。
詳しくは後述しますが、トリプトファンを過剰に摂取した場合の健康被害も報告されています。摂りすぎないよう含有量は必ずチェックするようにしてください。
良質なものを選ぶ
トリプトファンサプリは「GMP表示」のある良質なものを選ぶようにしましょう。
「GMP表示」とは、厚生労働省が一定品質を保つために設けている製造工程管理基準のことです。
この表示があれば100%安全というわけではありませんが、サプリメントを選ぶ際のひとつの指標になります。ぜひGMP表示を探して、良質なものを選ぶようにしてください。
飲みやすいものを選ぶ
サプリメントを選ぶ際には、自分が飲みやすいものを選びましょう。
現在出回っているトリプトファンサプリの多くはカプセルタイプで、メーカーによって粒の大きさや形状はまちまちです。そのため、中には粒が大きすぎるものだとうまく飲み込めない人もいるでしょう。
しかし、サプリメントは一定期間飲み続けなければ、効果を実感することはできません。ゆえに、購入する前に自分が飲み続けることができる大きさや形状をしているか、必ず確認するようにしましょう。
服用の際に気をつけることは?
服用する際には次の2つに注意してください。
- ・用法用量を守る
- ・副作用について
用法用量を守る
プリメントを服用する際は、同封されている説明文書をよく読み、用法用量を守って正しく服用しましょう。
前述で、トリプトファンからセロトニンを効果的に生成するためには、寝る前よりも朝に摂取する方が良いと説明しました。ですが、文書に服用時間が明記されている場合は自己判断せず、文書が指定する飲み方を守るようにしてください。
副作用について
トリプトファンを過剰摂取すると、健康被害が出る可能性があります。主な症状は、次の通りです。
- ・頭痛
- ・吐き気
- ・昏睡
- ・肝硬変
一般的に、トリプトファンの1日の摂取目安量は、成人体重1kgにつき4mgとされています。つまり、体重60kgの人の場合だと、1日の摂取目安量は60×4=240mgとなります。
基本的には、サプリメントに添付されている用法用量を守れば問題ありませんが、飲み過ぎには十分注意しましょう。そして、体調に異変が生じた場合はすぐに服用を中止し、医療機関を受診するようにしてください。
まとめ
今回は、安眠効果をもたらすトリプトファンについて解説し、あわせて効率的に摂取する方法をご紹介しました。
トリプトファンは、睡眠を促すメラトニンの原料となるセロトニンの生成に欠かせない栄養素で、体内で合成できないことから食事によって摂取する必要があります。
効率的に摂取する食材で特におすすめなのが、バナナです。バナナは他の食材に比べてトリプトファン含有量は少ないですが、トリプトファンの働きを助けるビタミンB6と炭水化物をバランス良く含んでいます。
また、サプリメントを活用するのも効果的です。ただし、過剰摂取は健康被害をもたらす報告もあるため、服用の際は用法用量を守って正しく服用しましょう。
最近安眠できないと悩んでいる人は、ぜひこの記事を参考にして、日常生活にトリプトファンを取り入れてみてください。
よくある質問
Q.どうしてトリプトファンを摂取すると睡眠に効果があるのですか?
A.トリプトファンは、睡眠ホルモンであるメラトニンの原料となるセロトニンの生成に使われるため、摂取すると睡眠の質を上げる効果が期待できます。
Q.トリプトファンを効果的に摂取するにはどうすれば良いですか?
A.トリプトファンの働きを促進するには、炭水化物とビタミンB6を合わせて摂取する必要があるため、朝ごはんとして玄米、木綿豆腐の味噌汁、鮭の塩焼きに、バナナヨーグルトを合わせるのがおすすめです。