【基本情報】睡眠日誌について
まずは、睡眠日誌とは一体どのようなものなのか、基本情報をわかりやすくご説明しましょう。
睡眠日誌とは
睡眠日誌とは、普段の就寝時刻や起床時刻、日々の行動などを記録することで大まかな睡眠パターンを把握し、睡眠習慣を改善するのに使われるものです。
睡眠日誌を継続して記録することで、自分の睡眠の状況を客観的に知ることができます。また、眠りの妨げとなる要因を探したり、取り除いたりするのにも効果的です。そして、この睡眠日誌は睡眠外来でも頻繁に用いられ、睡眠障害や不眠症の治療効果の確認としても使われます。
このように、睡眠日誌は、睡眠障害の解消や健康的な睡眠習慣維持の第一歩として、大きな力を発揮するツールといえます。
睡眠日誌で記載する項目
睡眠日誌では、就寝時刻や目を覚ました時刻などを記入するのですが、具体的にはどのような内容を書き込むのでしょうか?睡眠日誌で記載する項目は、主に以下の9つです。
- ・就床時刻(ベッドもしくは布団に入った時刻)
- ・入眠時刻(眠りについた時刻)
- ・途中で目を覚ました時刻
- ・起床時刻(朝、目覚めた時刻)
- ・起床時の体調や気分(すっきり目覚めることができた、何だかだるいなど)
- ・睡眠薬の服用の有無、服用時刻
- ・日中の眠気や居眠り、昼寝の時刻
- ・その日の出来事(アルコール摂取やストレスなど)
- ・眠っているときの異常行動(体動、夢など)
他にも、睡眠前に行っていた行動(テレビを見ていた、スマホを見ていた、本を読んでいたなど)や、家族やベッドパートナーなどに指摘された睡眠中の様子(寝相やねごと、いびきなど)なども記載しておくと、より詳細な睡眠日誌を作ることができます。
睡眠日誌をつけるメリット3選
では、何のために睡眠日誌をつけるのでしょうか?睡眠日誌をつけるメリットは、主に次の3つです。
自分の睡眠を客観的にチェックできる
まず、睡眠日誌は自分の睡眠状態を客観的に把握するのに役立ちます。
自分の睡眠がどのような状態であるか、客観的に判断するのはなかなか難しいものです。みなさんも、「しっかり寝たはずなのに、何だか疲れが取れていない…」といったように、自分で思う睡眠と、実際の睡眠との間にギャップを感じたことは多いでしょう。そのため、睡眠日誌をつけることで、日々の睡眠習慣が健康的なものなのかを正確に判断することができます。
悪い睡眠習慣改善のきっかけになる
次に、睡眠日誌をつけることで、睡眠の妨げとなっている悪い習慣や要因を探したり、取り除いたりすることができます。
例えば、あなたは寝る前にどのようなことをして過ごしていますか?もしかして、夜遅くまでスマホを見て、いつの間にか寝落ちして気づいたら朝になっていた、というのが習慣になってはいませんか?
当然、上記のような過ごし方では、質の高い睡眠をとることはできませんよね?このように、睡眠日誌をつけることで、どうして寝ても疲れが取れないのか、その原因を客観的に知ることができます。また、睡眠日誌をきっかけとして、悪い睡眠習慣からの脱却と、健康的な睡眠習慣への第一歩とすることも可能です。
健康的な睡眠習慣維持に役立つ
そして、睡眠日誌は健康的な睡眠習慣の維持ができているかを客観的に判断するのにも有効です。
基本的に、睡眠日誌は睡眠外来などで医師から勧められて書き始めるというパターンが多いです。しかし、睡眠外来などに通院していなくても、睡眠日誌をつけることには意義があります。
例えば、健康的な睡眠習慣を続けられている人でも、仕事が多忙になったり、予定が立て込んだりすると睡眠習慣が乱れることがあります。そんな時に睡眠日誌をつけていれば、睡眠習慣の乱れにいち早く気づき、悪い習慣が定着する前に軌道修正することができます。
睡眠日誌をつけてみよう!
それでは、どのように睡眠日誌をつけていくのか、詳しく説明していきましょう。
睡眠日誌のつけ方
睡眠日誌は、次のような手順に沿って記入していきます。
横になっていた時間に矢印を記入する
まずは、ベッドや布団に入って横になっていた時間に矢印を記入しましょう。この間は、起きている、眠っているにかかわらず記入します。
眠っていた時間を塗りつぶす
次に、眠っていた時間を塗りつぶします。このとき、ぐっすり眠っていた時間を濃い色、ベッドに入っていたけれど起きていた時間を斜線にすると、後から見たときによりわかりやすくなります。
- ・ぐっすり眠っていた時間→濃い色
- ・ベッドに入っていたが起きていた→斜線
また、夜中に起きた時間については、大体の感覚で記載して構いません。書き忘れたときは、空欄にしておいてください。そして、日中の昼寝や仮眠、うたた寝も忘れずに記入します。
日中に感じた眠気の強さを10段階で評価
日中に眠気を感じた場合は、その強さを10段階で評価します。
例えば、次のように記入するといいでしょう。
- ・眠気を全く感じていない→0
- ・少しの時間うとうとしてしまった→5
- ・仕事や作業に支障が出てしまうくらいの強い眠気を感じた→10
気づいたことは特記事項に
その他に、何か気づいたことがあれば特記事項に記入します。例えば、次のようなことです。
- ・今日は会社の飲み会でお酒をたくさん飲んだ
- ・最近仕事が忙しくてストレスを感じている
- ・明日は大事なプレゼンがあって緊張している
- ・最近風邪気味なので、風邪薬を飲んだ(風邪薬の名前も記入)
- ・寝る前の行動(スマホを長時間見ていた、本を読んでいたなど)
睡眠日誌を続けるコツ
睡眠日誌は、継続して記入することが最も大切です。続けることで蓄積したデータが、睡眠障害を解消するきっかけになります。ですが、最初は記入するのを忘れてしまったり、面倒に感じたりしてしまうこともあると思います。そこで、睡眠日誌を続けるコツを、注意点とあわせてお伝えします。
記入は毎朝行いましょう
睡眠日誌を続けるコツの1つ目は、毎朝記入することです。
後からまとめて数日分記入しようとすると、どうしても記憶が曖昧になり、不正確なデータになってしまいます。ですので、朝起きたら睡眠日誌を手に取り、昨晩の状況を思い出しながら忘れずに記入するようにしましょう。
できる範囲でやってみる
睡眠日誌を続けるコツの2つ目は、完璧を求めすぎず、できる範囲でやってみることです。
睡眠日誌は、継続することが何より重要です。時間をかけて正しいデータを蓄積することで、健康的な睡眠習慣の維持をサポートします。しかし、完璧を求めすぎて正確に記載しようとするあまり、頭が冴えて眠りに影響が出てしまっては元も子もありません。
ですので、まずは2週間を目安に自分のできる範囲で睡眠日誌をつける習慣を続けましょう。もし記入を忘れてしまったり、記憶が曖昧になったりしても気にする必要はありません。わからないところは空欄にして、「記入を忘れてしまった」と記入するか、わかる範囲の内容を特記事項に記入しておくだけでも、後から見返したときに判別の手助けになります。
睡眠日誌の見直すときのポイント
睡眠日誌を2週間以上継続して記入することができたら、睡眠日誌の振り返りをします。特にチェックするのは、主に以下の項目です。
- ・毎日だいたい同じ時間に眠れているか
- ・起床時間は規則的か
- ・睡眠時間は十分か
- ・夜中に頻繁に起きていないか
- ・日中の眠気はどれくらい感じているか
- ・体調との関連性はどうか
例えば、起床時間が日によって2時間以上異なっている場合は、なるべく一定になるように心がけましょう。
また、ベッドに横になっている時間(矢印で記入した部分)が極端に長く、ぐっすり眠っている時間(濃い色で記入した部分)が短い場合は、まだ眠くないのにベッドに入っている可能性が高いです。このような場合は、眠たくなってからベッドや布団に入るようにして、スマホなど余計なことはせず、速やかに眠りにつくようにしましょう。
もし、10分以上経っても眠くならないときは、一旦寝床から離れ、眠たくなってきたらまたベッドに戻ることを意識すると良いです。
そして、自分の睡眠リズムが不規則だと感じた人は、以下の記事に掲載されているセルフチェックを行ってみましょう。もし、不眠度が高いという結果が出た場合は、深刻な不眠症になっている可能性がありますので、速やかに睡眠外来やクリニックを受診することをおすすめします。
睡眠リズムを整えるには?
さて、ここまで睡眠日誌についての解説と、記入のやり方を説明してきました。それでは、もし睡眠日誌をつけてみて、自分の睡眠リズムに問題が見つかった場合はどうすればいいのでしょうか?
睡眠のリズムが不規則になっている人は、体内時計の乱れが考えられます。体内時計とは、人間の生理機能を正常に行うのに欠かせない生体リズムで、この体内時計のズレは不眠だけでなく、さまざまな悪影響を体に及ぼします。
そのため、睡眠のリズムを整えるには、体内時計のズレを元に戻すことが肝心です。では、どうすれば体内時計のズレを解消できるのでしょうか?そこで、おすすめの睡眠ルーティン5選をご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
起きる時間はなるべく一定に
平日・休日に関係なく、毎朝できるだけ同じ時間に起きるようにしましょう。
休日だからといって、いつもよりも遅い時間に起きてはいませんか?休日の寝だめは、体内時計のズレを生じさせるためNGです。休日など特定の日にたくさん寝ても、睡眠不足の解消にはつながりません。そればかりか、休み明けの朝に起きるのが辛くなってしまいます。
ですので、毎日決まった時間に起床時間を設定し、起きるよう心がけましょう。
朝起きたら太陽の光を浴びる
朝起きたらカーテンを開けて、太陽の光を全身に浴びましょう。太陽の光には、眠りを導くホルモンであるメラトニンの分泌を抑制し、覚醒を促す作用があります。ですので、起床後はすぐに太陽の光を浴びて、体内時計のズレを元に戻しましょう。
太陽の光を浴びるときのポイントは、以下の通りです。
- ・太陽の光を浴びるのは数分間で十分
- ・太陽の光を直接見るのは、目を傷めるためNG
- ・天気が悪くても、覚醒に必要な太陽の光は届いているので問題なし
朝食はきちんと食べる
体内時計のズレ解消には、朝食が欠かせません。よく、ダイエットのためだからといって朝食を抜いたり、スムージーや果物、ヨーグルトのみで済ませたりする人がいますが、それだと体内時計はいつまでもズレたままです。
体内時計のズレを元に戻すために最も有効的な朝食は、和食です。ご飯にみそ汁を基本に、歯ごたえのある漬物などを添えると、寝起きの低い体温も上昇し、よく噛むことで感覚が刺激されて良い目覚めにつながります。
「それでも痩せたい!」という方はコチラのコラムでダイエットとの関係性について解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
日中はしっかり活動しよう
日常的な運動習慣も、体内時計のズレ解消に効果的です。程よく運動をすることで快眠を促すうえに、良い目覚めにつながります。ですが、筋肉痛になるほどの激しい運動は、逆に寝つきを悪くしてしまうためおすすめしません。大切なのは、会話を楽しみながらできる程度の軽い運動を、日々継続して行うことです。
特に、次のようなポイントを重視すると良いでしょう。
- ・週2〜3回、就寝3時間前までに行う
- ・会話しながらできる、軽いジョギングやウォーキングなどの有酸素運動を行う
上記のようなまとまった運動時間を確保できない人も、エスカレーターやエレベーターではなく階段を使ったり、一駅分歩いたりして、程よく疲労する運動習慣を取り入れることを意識してみましょう。
寝る前のスマホは厳禁
寝る前に、ついスマホを見ながら寝落ちしてしまうという人は多いでしょう。しかし、寝る前のスマホは、体内時計のズレに直結するためNGです。
テレビやスマホから出ているブルーライトは、誘眠効果があるメラトニンの分泌量を抑えてしまうことが報告されています。そのため、就寝1時間前にはテレビやスマホの使用を控え、脳をリラックスさせることを心がけましょう。
以下の記事でも、体内時計のズレを解消し、良い睡眠に導く快眠ルーティンが解説されています。こちらもぜひ参考にしてみてください。
まとめ
今回は、睡眠日誌の解説と、そのつけ方についてご紹介しました。睡眠日誌は、自分の睡眠習慣を客観的に見直し、眠りを妨げている要因を見つけたり、取り除いたりするのに大変役立ちます。また、不眠に悩んでいない場合でも、睡眠日誌を習慣的につけることによって、不眠症になったときにいち早く気づき、対処することも可能です。
今回の記事を読んで、睡眠日誌に興味を持った方は、ぜひ始めてみることをおすすめします。そして、もし自分の睡眠リズムに不規則な点や違和感を見つけた場合は、睡眠日誌を持って医師に相談することで、速やかに原因を特定して治療を始めることができます。この記事がみなさんの睡眠を見直すきっかけになれば幸いです。
よくある質問
Q.睡眠日誌の目的は?
A.睡眠日誌とは、普段の就寝時刻や起床時刻、日々の行動などを記録することで、大まかな睡眠パターンを把握し、睡眠習慣を改善するのに使われるものです。
Q..睡眠日誌のメリットは?
A.睡眠日誌は、自分の睡眠習慣を客観的に見直すのに大変役立ちます。また、不眠に悩んでいない場合でも、睡眠日誌を習慣的につけることによって、不眠症になったときにいち早く気づき、対処することも可能です。