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【半球睡眠とは】半分起きて半分眠ることができる生き物の仕組みについて

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睡眠の質を上げる健康医療メディア睡眠Dr.の編集部です。いびき治療や睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治し方、睡眠の質を良くする方法、睡眠障害(不眠症、ショートスリーパー、ナルコレプシー、過眠症)についてなど、睡眠のエキスパート達によって執筆されるコンテンツは、医学的根拠に基づいて作成されています。

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起きている?寝ている?半球睡眠の仕組みとは

脳みその模型と聴診器

あまり聞きなれない言葉である「半球睡眠」のことを、よく知らない人も多いでしょう。まずは眠っているようで起きている、面白い睡眠の仕組みを3項目に分けて紹介します。

なぜ半球睡眠が必要なのか、その理由も解説しているので、ぜひ覚えてみてください。

脳の半分で眠る

半球睡眠とは、脳を半分眠らせて、残りの半分を覚醒させたままの状態にする睡眠のことです。人間で例えるなら、日常生活で食事や仕事、プライベートを楽しみながらも、脳の片方が眠っているような状態だといえます。つまり、ベッドで眠る必要がありません。

世界中に生息する生き物のほとんどは、両方の脳を休ませるために睡眠を取ります。一方、半球睡眠を行う生き物は、片方の睡眠が終わったらもう片方が睡眠を取るというように、片方ずつ睡眠を取るのが特徴です。
ひとつの個体が、ずっと寝ている・ずっと起きているという状態を継続できるため、昼夜を問わず活動できるうらやましい睡眠の仕組みといえます。

常に警戒を怠らない動物の習性

半球睡眠は、なんとなく身に付いた動物の習性というわけではありません。実は、半球睡眠が身に付くのは、動物が暮らす環境や、周りの危険度によって変化するのです。

動物界には、食べる・食べられる関係を示す「食物連鎖」という生態ピラミッドがあります。例えば、小動物を食べるキツネであっても、さらに上位にいるクマなどから食べられる危険性があるなど、ピラミッドの上位者にならない限り、食べられる側へと回ってしまうのです。

動物界では「いかに弱点を減らせるか」が生き残りのカギを握ります。その結果、外的要因から身を守るため、常に周囲を警戒する目的で半球睡眠が身に付きました。

睡眠戦略は自然での生き残りに欠かせない

サバンナや海など、いつどこに敵が潜んでいるか分からない環境においては、睡眠が命の危機を招きます。捕食される動物は、睡眠という弱点を克服するため、長い時間をかけて面白い睡眠の仕組みをつくりだしてきました。例としては、以下のような動物が存在します。

  • ・1日に2時間程度しか眠らない動物
  • ・群れで生活して順番に睡眠を取る動物

例えば、危険な動物が生息する広大なサバンナで、無防備に何時間も眠っている動物はいません。動物界において危険のない生き物はいないため、半球睡眠も含めて、動物界を生き残るために睡眠戦略は重要な仕組みだといえます。




半球睡眠を行う有名な動物8選

寝ているコアラ

半分寝て半分起きているという面白い仕組みを、どのような動物が行っているのか気になる人も多いはずです。続いて、半球睡眠を行う有名な動物を合計8種整理しました。

メディアによく登場する動物はもちろん、意外と身近にいる動物も半球睡眠を行っているので、睡眠の知識を深める参考にしてみてください。

イルカ

イルカは、世界中の寒帯・亜熱帯まで幅広いエリアに生息する哺乳類です。超音波を利用してコミュニケーションを取るほか、水族館でイルカショーなどを行う頭の良い生き物ですが、次のような生き物から捕食される場合があります。

  • ・シャチ
  • ・サメ

上記の生き物は、ほとんどの海域に生息しているため、常に身の危険がある状況です。少しでも身の危険を減らすため、イルカは片目を閉じて半球睡眠を行います。

クジラ

クジラは、世界で最も巨大な生き物といわれている水生動物です。イルカと同じく高い知能をもち、おとなしい性格であることから、世界中で親しまれている動物でしょう。

一見、巨大であるがゆえに危険とは無縁な生き物だと思われがちです。しかし実際には、次のような生き物から捕食されるケースが多々あります。

  • ・シャチ
  • ・サメ

ちなみにイルカとクジラはほぼ同じ種類だということをご存じでしょうか。クジラもイルカと同様に、片目を閉じて半球睡眠を行い、ウインクしているような姿で生活を送っています。

オットセイ

オットセイは、北太平洋およびアフリカ・オーストラリア南岸に生息する哺乳類です。アシカやアザラシと近い種類であり、陸上・海中を行き来する哺乳類であるため、後ろ足が退化し、ヒレのような水かきをもっています。

オットセイについてもシャチやサメから捕食される危険性があることから、半球睡眠を身に付けて生活しているのが特徴です。また、陸上で生活するため、クマなどの大型生物から身を守る目的で、睡眠のほとんどをノンレム睡眠で過ごしています。

トド

トドは、前述したオットセイと同様に、手足がヒレ状になった水陸で活動を行える哺乳類です。オットセイよりも大型の見た目をしており、北太平洋など寒い地域に分布しています。

トドのような巨大な動物であっても、海中および陸上で捕食される危険性がある状況です。また、食べ物の少ない地域で生活しているため、すぐ獲物に気付けるように半球睡眠が発達したといわれています。

マナティー

マナティーは、アフリカ~アメリカの水域で生活するカイギュウ目の動物です。両手両足がヒレ状になっており、肺呼吸であるため時折水面に顔を出して生活しています。

分布水域に住むワニやピラルクから襲われるケースも多いため、半球睡眠が発達しました。

ニワトリ

私たちがよく食肉として食べているニワトリも、半球睡眠を行っているとご存じでしょうか。日常的に片目で眠っており、常にうとうとした状態で生活していることが分かっています。

また、ニワトリは群れで生活することが多く、集団で集まって睡眠を取るのが特徴です。睡眠を取る際には、群れの内側のニワトリであるほど深い睡眠を取り、外側のニワトリであるほど浅い睡眠になっていると分かっています。

ツバメ

世界中を飛び回る渡り鳥のツバメは、何日間も飛行する関係で半球睡眠を身に付けた鳥類です。太平洋などの広大な海を何日もかけて渡るため、脳を片方ずつ休ませつつ、新しい大陸へと移動します。

ただし、陸上で子供を育てる際には、半球睡眠ではなく通常の睡眠を取るなど、睡眠方法を使い分けるのが特徴です。

カモメ

海沿いに生息するカモメは、海・陸・空にいる天敵から身を守るために半球睡眠を身に付けました。例えば次のような動物から狙われる危険があります。

  • 【海の場合】
  • ・サメ
  • ・シャチ
  • ・トド
  • 【陸の場合】
  • ・猫
  • ・ヘビ
  • 【空の場合】
  • ・ワシ
  • ・カラス

海に浮かんで休憩することはもちろん、陸を歩いたり、空を飛んだりと、さまざまな生活樹段があるため、その分天敵の数も多いのです。さまざまな天敵から身を守るために、常日頃から半球睡眠を行っています。




半球睡眠は人間にもできる?実験結果を紹介

アイマスクをして寝ている女性

半分だけ寝て半分だけ起きていられる半球睡眠は、人間にもできる睡眠なのでしょうか。実際に日本では、人による半球睡眠の実験が行われました。

「ヒト半球睡眠の実験的検討(関口雄祐)」をもとに、実験の方法や結果をまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。

実験の方法

もともと、両目にアイマスクを着用して視覚情報の取得を閉ざすことにより、脳波に変化が起きるという実験結果がありました。そこで当実験では、過去の実験をベースとして、片目に眼帯を装着して夜間覚醒を維持させる実験が行われました。

実験結果

通常生活を送った人と片目に眼帯をつけて生活した人を調査した結果、眠気については、どちらも大きな差は見られませんでした。しかし、作業効率や注意力の部分において眼帯をつけた人のほうが高い効果を得られたと分かっています。

また、深夜よりも明け方に問題誤答率が低下した被験者が数名確認できるなど、片目の視覚情報取得を制限することによって、睡眠回復の効果を得られる可能性があると分かりました。つまり、人間であっても微力ながら半球睡眠の効果を得られるのです。ただし、まだ実験段階であり精度が低いため、今後さらなる実験が進む予定となっています。




動物の睡眠に関する面白い豆知識

?の吹き出し

動物の睡眠時間は、周辺環境や天敵といった外的要因によって大きく変化します。また、生き物の種類によって睡眠の方法が大きく違ってくるのも特徴です。

最後に動物の睡眠に関する面白い豆知識を2つまとめました。話題にもできる知識ですので、ぜひチェックしてみてください。

豆知識①:睡眠時間は動物によってバラバラ

動物の睡眠時間は、生活する環境や場所によって大きく変化します。例えば、ゆったりとした動きが特徴のナマケモノは、1日に20時間近く眠るといわれています。対して長い首が特徴のキリンは1日に2時間しか寝ません。

外敵に襲われる環境、そして隠れる環境の有無によって睡眠時間が異なります。人間は1日に約7時間眠りますが、他の動物も同じわけではないと覚えておきましょう。

豆知識➁:虫はまぶたがないので目を開けたまま眠る

睡眠というものは、生きている限りすべての生き物が行う行動です。基本的に睡眠は目を閉じて眠りますが、一部の生き物は目を閉じずに眠るとご存じでしょうか。その生き物とは「虫」です。

虫にはまぶたというものが存在しないため、起きているときも寝ているときも常に目を空けています。一見、目が乾燥してしまうイメージがありますが、専用の膜で覆われているため、目を開けたままでも問題ないのです。現在見つかっている虫には、すべてまぶたがありません。




まとめ

泳いでいるイルカ

半球睡眠は、危険な生物界を生き残る「動物の習性」によって生まれた睡眠の方法です。自然で暮らす生き物は、常に死と隣り合わせの生活を送るため、睡眠が生死を左右するポイントとなるでしょう。

どのように生き残るのか、それを何万年もかけて考え、成長してきた姿が半球睡眠として形となったのかもしれません。面白い動物の習性ですので、ぜひ誰かに話してみてください。




よくある質問

Q.半球睡眠とはどんな仕組み?

A.脳を片方だけ休ませて活動します。片方の脳が休まれば、今度はもう片方の脳を休ませるため、活動と睡眠を同時に行えるのが特徴です。

Q.人間も半球睡眠ができるの?

A.過去に行われた実験によると、片目を閉じて休むことによって多少の回復があると分かっています。しかし、実験精度が低いため、今後の研究に期待が集まっています。

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