経口摂取したGABAには効果があるのか?
GABAは、睡眠の質を高める成分として知られています。睡眠サポートが期待できると謳われている、GABAを含んださまざまな製品が販売されています。しかし、経口摂取したGABAに、本当に効果が期待できるのでしょうか。
ここではGABAのことや、経口摂取したGABAの効果についてご紹介します。
GABAとは?
GABAは、γ-アミノ酪酸の略称で、脳に多く存在しているアミノ酸の一種です。興奮を抑えて精神を安定させる方向に働く精神伝達物質として働いています。
GABAは脳内で興奮系の伝達物質であるグルタミン酸から作られていますが、穀物や野菜などの食材にも含まれています。
GABAは体内で十分な量が合成されていますが、疲労や過度なストレスに曝されると、大量に消費されてしまうため、足りなくなってしまうのです。GABAが不足すると、興奮性の神経伝達物質が過度に分泌されてしまい、緊張状態となり睡眠の質に大きく影響を及ぼしてしまうと考えられています。
経口摂取したGABAには効果なし?
GABAが含まれているものを食べると、腸から吸収されて血中に取り込まれます。しかし、血中に取り込まれたGABAは血液脳関門を通過できないため、脳に取り込むことができないのです。
血液脳関門とは、脳を防御している関所のようなものです。神経細胞が正常に働くために必要となる酸素や栄養分は通過して脳組織に到達できますが、多くの物質は通過できず脳組織に取り込むことができません。GABAは、血液脳関門を通過できない物質として知られています。そのため、経口摂取したGABAには効果が期待できないのではないか、という意見があります。
経口摂取したGABAにも効果ありという多くの報告がある
経口摂取したGABAは脳組織に取り込むことができないため、効果が期待できないはずですが、経口摂取したGABAでも効果があらわれたという数多くの研究報告があります。
GABA・ストレス研究センターが、日中にGABAを摂取すると同日夜の睡眠にどのような影響を与えるのか調べた実験があります。
この実験から、以下のような結果が得られました。
- ・いつもより7.5分早く眠りにつけた
- ・いつもより深く、ぐっすり眠れた
- ・いつもより熟睡度が高まった
- ・いつもよりすっきり目覚められた
なぜこのような結果があらわれたのかについては、研究途上の段階のためまだはっきりとわかっていません。しかし、GABAが含まれているものを食べて、睡眠の質が改善したと実感している方が大勢いるのです。
GABAにはどんな効果があるの?
GABAには、主に次のような効果があると解明されつつあります。
- ・リラックス作用
- ・血圧降下作用
- ・成長ホルモン分泌促進作用
- ・中性脂肪低減作用
- ・記憶学習促進作用
- ・体重軽減作用
このようにGABAは、睡眠に関係する作用以外にも、さまざまな働きをする成分であることが解明されつつあります。しかし、現在明確な効果が期待できるのは、リラックス作用と血圧降下作用です。その他の効果は、今後さらなる研究により明確になってくるでしょう。
GABAが睡眠に及ぼす影響とは?
GABAには、副交感神経を優位にさせる効果があるため、精神的な緊張を和らげリラックスを促してくれます。リラックス状態だとスムーズな入眠が期待できるでしょう。また入眠後、スムーズにノンレム睡眠へ促してくれる効果があるといわれています。
過度なストレスは自律神経を乱し呼吸が浅くなってしまうため、脳に必要な酸素が運ばれなくなってしまいます。そのため、酸素を多く取り込める口呼吸をするようになってしまいがちです。口呼吸になると、舌が後方に落ち込み気道が狭くなってしまうため、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高くなってしまいます。
睡眠時無呼吸症候群のストレス以外の原因について詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
GABAのその他の効果
GABAは、糖尿病などの生活習慣病や、動脈硬化が主な原因で発症する脳卒中・心筋梗塞の予防効果もあると考えられています。
GABAは、エネルギー消費を高めて内臓の代謝を促進する働きがあるのです。また、血中の中性脂肪やコレステロールに働きかけ、脂質代謝を促すという報告もあります。コレステロールや中性脂肪の増加は、糖尿病や動脈硬化の原因となるので、GABAはこれらの病気を予防する効果があるといわれています。
また、GABAには、血圧抑制効果があることも多くの研究で明らかになっているのです。血管収縮作用があるノルアドレナリンの分泌を抑制することで、血圧を下げると言われています。しかも、正常血圧時には作用せず、高血圧時にだけ作用します。高血圧は、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクを高めるため、GABAはこれらの病気の予防効果があると考えられているのです。
GABAの副作用とは?
GABAの過剰摂取による副作用の報告は、現在のところありません。
しかし、GABAの安全な摂取量は、年齢や性別、体重によって変わり、胃腸トラブルや喉の痛み、疲労、筋力低下、息切れが潜在的な副作用となる可能性があるという報告があります。
また、妊婦や授乳婦に対する影響に関しては、まだ安全性が確立されていないため、明らかになるまでは摂取を控えるべきという意見もあるので注意してください。
GABAはどのぐらい摂ればよいの?
1日の摂取量の目安として30mg以上といわれていますが、明確に定められた量はありません。適切な摂取量は、年齢や性別、体重、体質、疲労、ストレス、生活環境、食事内容などにより異なると考えられています。
摂取量の目安30mgというのは、リラックス効果を期待できる量で、睡眠の質を向上される量ではありません。
GABA・ストレス研究所センターが行った試験では、寝る30分前にGABAを100mg摂取すると、入眠までの時間が短くなり、深い眠りの時間が長くなったという結果が出ています。そのため、睡眠の質の向上を目的とするならば、GABAを100mg以上摂取することがおすすめです。
GABAが多く含まれている食べ物は?
GABAは、発芽玄米やなす・トマトなどの野菜類、納豆などの発酵食品に多く含まれています。
発芽玄米は玄米を発芽させたもので、白米よりも栄養価が高く、GABA含有量も多いです。白米100gに含まれているGABAが1mgであることに対して、発芽玄米100gには15mgもGABAが含まれています。
トマトには30~40mg/100g、なすには40~50mg/100g、ジャガイモ20~30mg/100g、納豆には約10mg/100g含まれているため、GABAを摂取したい方は意識して多く食べるようにしましょう。
GABA合成にはビタミンB6が不可欠
GABAが体内で生成されるとき、たんぱく質をアミノ酸に分解する働きのある成分が、ビタミンB6です。
ビタミンB6は、カツオ・マグロの魚類や唐辛子、にんにく、バナナなどに多く含まれています。GABAが含まれている食べ物だけでなく、ビタミンB6が含まれている食べ物も意識的に多く食べるとよいでしょう。
GABAが含まれているお菓子やサプリメントは?
食事だけから必要なGABAを摂取できるのが理想的ですが、そのために食生活を調整することは簡単ではありません。そのようなときにおすすめなのが、GABAが含まれている機能性表示食品です。
最近、GABAが含まれているお菓子やサプリメントなどの商品が開発され、ドラッグストアやコンビニで販売されています。多くの商品が販売されているため、どれを選べばよいのか迷ってしまう方は少なくないでしょう。そのようなときに参考として欲しいのが、Amazonなどのサイトに記載されているお客様レビューです。評価が高いもの、自分の希望を満たす商品を探して購入してみましょう。
LOHASTYLEやシオノギヘルスケア、大正製薬などから発売されている機能性表示食品なら手軽に飲める上に、就寝前に適量を飲んだとしても、睡眠の質を低下させるようなこともないためおすすめです。
GABAが含まれているものを食べるときの注意点
睡眠の質を向上させるために、GABAが含まれているものを食べる場合でも、就寝前には食べるものに気をつけるようにしましょう。睡眠中に消化器系が活発に動くと、途中で目が覚める原因につながり、睡眠の質を低下させてしまう可能性があるためです。
また、GABAの効果は2時間程度しか持続しないと考えられています。
そのため、睡眠の質を向上させるためにGABAが含まれているものを食べる場合は、就寝30分~1時間前にチョコレートなどの消化器系に負担が少ないものを食べることをおすすめします。
GABAを効果的に働かせるには?
食べ物からGABAを摂取することも大切ですが、体内でGABAが生成されやすい環境や活用されやすい環境に整えることも大切です。
十分な睡眠
GABAは睡眠中に生成されます。そのため、睡眠時間が短いと生成されるGABAが少なくなり、さらに睡眠の質が低下してしまいます。
そのため、しっかりGABAが生成されるように、十分な睡眠をとることは大切です。
腸内環境を整える
脳内にあり、GABAと結合して神経細胞の活動を抑制するのがGABA受容体です。GABA受容体は腸内にも存在します。
腸内のGABA受容体が刺激を受け、その刺激が脳と腸をつなぐ迷走神経を経由して脳に伝わり、GABAの生成能力向上につながるという研究報告がありました。そのため、腸内環境を整え、腸内のGABA受容体がしっかりと働くようにしておくことが、GABA生成には大切だと考えられています。
いびきを伴った睡眠障害を悪化させる不眠症治療薬
睡眠障害に悩みクリニックで診察を受けたとき、処方される薬の中には「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」があります。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、GABAの作用を強めることで睡眠作用をもたらす薬です。また、ベンゾジアゼピン系睡眠薬には、筋肉の緊張をほぐす作用もあります。この筋弛緩作用によって、首周りの筋肉が弛緩してしまうと、睡眠中の空気の通り道である気道が狭くなってしまうのです。そのため、ベンゾジアゼピン系睡眠薬を使用すると、気道の狭窄が原因で起こる睡眠時無呼吸症候群の症状悪化につながります。
ベンゾジアゼピン系には抗不安薬もあるため、うつ病や不安障害で投薬治療を受けている方がいます。もし、睡眠中の激しいいびきや無呼吸が現れたら、ベンゾジアゼピン系抗不安薬を服用しているかどうかの確認も含め、医師に相談してください。
睡眠時無呼吸症候群の治療薬についてもっと詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
まとめ
GABAの効果や睡眠にもたらす影響などをご紹介しました。GABAを経口摂取しても、血液脳関門を通過できないため、脳内に取り入れられることはありません。しかし、GABAを経口摂取したら効果が現れた、という数多くの報告があります。
GABAは、睡眠の質を向上させる効果以外にも、糖尿病や脳卒中予防効果などが期待できる成分です。食事から必要量のGABAを摂取できればよいですが、難しい場合はGABAが含まれているお菓子などで補いましょう。
よくある質問
Q.GABAは1日にどのぐらい摂取すればいいのですか?
A.1日の摂取量の目安は30mg以上といわれていますが、明確に定められた量はありません。適切な摂取量は、年齢や性別、体重、体質、疲労、ストレス、生活環境、食事内容などにより異なると考えられています。睡眠の質の向上を目的にGABAを摂取する場合は、100mg以上摂取することがおすすめです。
Q.GABAを睡眠の質を高めるために摂取する場合は、いつ摂取するのがよいですか?
A.就寝30~1時間前に摂取することをおすすめします。しかし、消化器系に負担がかかるものを食べてしまうと、睡眠途中で目が覚めてしまうので、睡眠の質の低下につながる可能性があります。そのため、チョコレートなど消化器系に負担が少ないものを食べるようにしましょう。