食いしばりの原因は?
「目が覚めたら歯を食いしばっていて、顎が疲れている」「作業中や緊張しているときなど、気付いたら歯を食いしばっていた」
このような経験をしたことがある方も少なくないのではないでしょうか?
緊張しているときや睡眠中、無意識に歯を食いしばってしまうと、周囲には歯ぎしりとして不快感を与えてしまいます。また、食事中に歯を食いしばる際に発生する負荷は約60㎏、睡眠中に行う無意識の食いしばりでは、なんと体重の2倍程度の負荷がかかるとも言われており、想像以上に自分の顎や歯に大きな負担がかかってしまいます。
さらに、食いしばりは体全体の不調につながることも知られており、早期から原因に応じた適切な対策を取ることが重要です。
では、なぜ食いしばりを行ってしまうのでしょうか?
結論から言えば、生活習慣や心理的状況が強く影響して食いしばりが生じます。顎の使い方が不適切であったり、精神的ストレスを抱えたりしている場合、食いしばりや歯ぎしりが起こりやすいと言われています。
ここでは、食いしばりの原因についてそれぞれ詳しく解説します。
奥歯を使いすぎ
歯の使いすぎは、食いしばりの原因になります。
普段からたくさん奥歯を使っていると、顎の筋肉が常に緊張した状態になってしまい、睡眠中や無意識の状態でも歯を食いしばってしまいます。特に、普段から柔らかい食べものばかり食べていると、食べ物を噛み切るのに鋭い前歯を使う必要がないため、奥歯で噛むことが習慣化してしまい、食いしばりの原因になってしまいます。
食事中、奥歯ばかり使用している人は気をつけましょう!
ストレスを抱えている
ストレスを抱えている場合は、食いしばりのリスクが高いため注意が必要です。
不安や怒り、悔しさなどを感じているとき、つい奥歯に力が入ってしまったということは、誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか?
精神的ストレスが蓄積すると、無意識に歯を食いしばることでストレスを発散しようとしてしまいます。さらに、習慣化すると睡眠中も同じように食いしばってしまうようになり、歯ぎしりの原因にもなります。
ストレスを溜め込まないよう、十分注意しましょう。
噛み合わせが悪い
噛み合わせが悪い場合は、食いしばりの原因になります。
噛み合わせ悪いとうまく食べ物を噛み切ることができなくなり、結果的に奥歯の使用頻度が増えてしまうため、
顎の筋緊張を招き、食いしばりを引き起こすのです。
具体的には、「過蓋咬合」「反対咬合」「叢生(そうせい)」「開咬」などの噛み合わせで食いしばりが引き起こります。
正常な噛み合わせでは、物を噛んだときに上の前歯が下の前歯に対して前方に出ているため、下の前歯は3〜4mm程度見えます。しかし、上の前歯がより前方に出ていると、下の前歯に覆いかぶさってしまい、物を噛んだときに下の前歯が2mm程度しか見えなくなってしまいます。これを「過蓋咬合」と言います。反対に、下の前歯が上の前歯よりも前方に突出している場合、「反対咬合」と言います。
また、歯並びが悪く歯の向きが不均一な状態を「叢生(そうせい)」、歯を噛み合わせたときに前歯同士がくっつかずに離れた状態を「開咬」と言い、これら4つの噛み合わせは前歯で噛み切る力が低下してしまいます。そのため、奥歯の使用頻度が増加して食いしばりの原因となります。
自分の噛み合わせは鏡で簡単にチェックできるため、是非確認してみてください。
歯の詰め物が合っていない
歯の詰め物が合っていないことは、食いしばりの原因になります。具体的には、虫歯などの歯科治療によるインプラントや金歯、銀歯などです。
装着した後、装着感に違和感がある場合や金属に体質が合わない場合には、つい食いしばってしまうことがあります。
長期的にこの状況が続くと、詰め物の部分から歯が損傷する可能性もあるため、注意が必要です。
食いしばりが与える悪影響とは?
「睡眠中の歯ぎしりで歯が欠けてしまった」「歯を食いしばってしまう癖が続くとどうなってしまうの?」などの悩みや不安を抱えている人も少なくないと思います。
食いしばりや歯ぎしりは百害あって一利なしで、体に様々な悪影響を与えることが分かっています。
具体的には、歯周病や虫歯、歯や顎の変形などが挙げられ、長期間放置すると肩こりや頭痛、めまいなど全身の不調を引き起こす可能性もあります。
ここでは、食いしばりが体に与える悪影響について、詳しく解説していきます。
歯周病や虫歯
食いしばりの影響で、歯周病や虫歯を患う可能性があります。食いしばりによって歯の詰め物が傷んだり変形したりしてしまうと、口腔内で菌が繁殖しやすくなってしまうからです。
また食いしばりによって歯に多大な力がかかると、歯の根元にとても小さな穴(マイクロホール)が開いてしまい、歯周病やひび割れの原因になります。
顎関節症
食いしばりを原因として、顎関節症を患う可能性があります。食いしばりによって顎関節にも負担がかかり変形することで、顎関節の動きに左右差が生じてしまい、スムーズな噛み合わせが得られなくなってしまうからです。
主な症状として、「顎が痛む」「顎を動かすと音が鳴る」「口が大きく開けられない」「噛み合わせに違和感がある」などが挙げられます。
場合によっては顎が外れてしまうこともあるため、注意が必要です。
顔全体の変形
食いしばりによって、顔全体が変形する可能性があります。左右どちらかで歯ぎしりや食いしばりをする方は、片方の咀嚼筋だけが発達・肥大してしまうからです。
また、歯ぎしりや食いしばりだけではなく、普段から食べ物を噛むときに左右どちらかで咀嚼している人も注意が必要です。
放置して症状が進行すると、顎だけでなく頬や目の形にも左右差が生じるため、早期から対策することをおすすめします。
知覚過敏
食いしばりによって、知覚過敏が生じる可能性があります。
そもそも知覚過敏とは、なんらかの刺激に瞬間的な激痛が走る症状のことです。食いしばりによって歯の表面を守っているエナメル質が剥がれ、内層の象牙質が露出すると内部の神経に刺激が伝わってしまい、知覚過敏が生じます。
特に歯ブラシによる刺激や、冷たいものを摂取したときの寒冷刺激が痛みの原因になります。悪化すれば歯の神経を抜くような治療も必要になるため、早期から対策することをおすすめします。
体全体の不調
食いしばりによって、体全体の不調が生じる可能性があります。これは、長期的な歯ぎしりや食いしばりによって頭頸部の筋肉が持続的に緊張し、血行不良になってしまうからです。
具体的には、頭痛や肩こり、腕のしびれ、腰痛、全身の倦怠感などが挙げられます。
全身の不調の原因が歯にあると考える人はそこまで多くないと思いますが、歯ぎしりや食いしばりを放置すると実際に生じることもあるため注意しましょう!
食いしばりの治し方
歯ぎしりや食いしばりは、病気というよりも癖や体質に近いため、症状をすぐに治せるような特効薬など存在せず、どのようにすれば改善できるのかお悩みの方もいらっしゃると思います。実際に、食いしばりの治し方は原因によって異なるので、まずは原因を同定する必要がありますが、治し方は大きく2つに分類できます。
具体的には、口周りの形や噛み合わせを整える、ストレスを発散する、の2つです。
ここでは、それぞれの対策法について詳しく解説していきます。
マウスピース
マウスピースの装着によって、食いしばりが改善する可能性があります。
自身の歯の型に合ったマウスピースを睡眠中に装着することで、食いしばりによる歯の損傷を抑えることができます。また、歯以外に顎への負担も軽減できるため、顎関節症や顔の変形のリスクも下げることができます。
しかし、歯型に合わないマウスピースを装着してしまうとかえって歯や顎に負担をかけてしまう可能性もあるので、専門の歯科医院で自分の型に合ったマウスピースを作製することをおすすめします。
ストレスの発散
ストレスの発散によって、食いしばりが改善する可能性があります。
引越しや入学、転職、別れなど環境の変化によるストレスは多大であり、ストレスが重なっていくことで食いしばりが生じることもあります。ストレスの発散方法は人によっても異なるため、自分なりのストレス発散法を自分で事前に把握しておくことが重要です。
上下の歯を接触させないようにする
上下の歯を接触させないようにすることで、食いしばりが改善する可能性があります。上下の歯が接触する時間が長ければ長いほど歯や顎にかかる負担は大きく、食いしばる癖が付いてしまうからです。
一般的に上下の歯が接触している時間は1日のうちで15~20分であるとされているため、この時間を意識して極力接触時間を減らすように心掛けましょう。
ストレッチなどの運動
ストレッチなどの運動をすることで、食いしばりが改善する可能性があります。
食いしばりは無意識に筋肉が緊張することで生じているため、改善させるためには筋肉の緊張を弛緩させるようなストレッチなどの運動が効果的です。
肩や首の筋肉が弛緩するようなストレッチが望ましく、具体的には両腕を天井に突き上げて、背筋を一気に伸ばすようにしてから脱力する、などのストレッチがあります。
誰でも簡単に実践できるため、とてもおすすめの方法です。
自律訓練
自律訓練を行うことで、食いしばりが改善する可能性があります。
自律訓練とは自律神経を整えるためのリラックス法であり、身体の緊張を緩和して食いしばりを改善させる効果が期待されます。
具体的な方法は、下記の通りです。
- 1. 薄暗い部屋でリラックスした態勢になり、4~5回腹式呼吸を行います。
- 2. 腹式呼吸で精神を整えたら、心の中で4~5回程度「気分が落ち着いている」と呟きます。
- 3. 利き手に意識を集中させ、「利き手が重く感じる」と4~5回心の中で呟きます。
- 4. 「重く感じる」という呟きをもう片方の手、左右の足に対しても行います。
- 5. 再び心の中で、「気分が落ち着いている」と4~5回呟きます。
- 6. 利き手が温かくなると心の中で呟き、これも両手両足に対して行います。
誰にでもすぐに実践可能ですので、是非お試しください!
医療機関を受診する
医療機関を受診することで、食いしばりが改善する可能性があります。原因がストレスなどではなく、歯科疾患や全身の病気の場合は専門の治療を要する可能性があるからです。
噛み合わせの問題であれば歯科へ、その他の肩や腰、頭頸部の問題であれば総合病院へ受診することをおすすめします。
まとめ
今回の記事では、睡眠中の食いしばりの原因や身体への影響、治し方などについて詳しく解説しました。
睡眠中の食いしばりは歯ぎしりを引き起こしてしまい、周囲の人にとって不快な思いにさせてしまう可能性があります。また、精神的ストレスや噛み合わせが悪い場合に生じやすく、歯や顎に想像以上に大きな負担をかけてしまいます。
長期的に放置すると虫歯や歯周病、顎変形症、さらには全身の不調につながるため、早期から適切な対策を取ることが重要です。
よくある質問
Q.睡眠中の食いしばりの原因は?
A.睡眠中の食いしばりの原因は、歯の詰め物が合っていない、歯の噛み合わせが悪いなどの歯に関するトラブルや、精神的ストレスが挙げられます。
原因によって治し方も異なるため、早期から原因を特定することが重要です。
Q.睡眠中の食いしばりが与える影響は?
A.睡眠中の食いしばりによって歯に負担がかかると歯周病や虫歯のリスクを増加させます。 また、食いしばりはいびきとも関連があり、【防止策】いびきと歯ぎしりの関係性についての記事で詳しく解説されているため是非参考にしてください。