明晰夢とは夢の中でも自分の思いのままに行動できること
明晰夢とは、寝ている間に見ている夢を、自分自身が「これは夢である」と自覚していながら、自分の思いのままに行動できることを言います。
夢を見るメカニズムがまだ解明されていません。明晰夢に関しても同様です。夢を見る理由には、以下のような仮説が立てられています。
- ・日中に経験した内容を整理するため
- ・日中覚えたことを忘れるまたは覚えておくため
- ・自分の願望を映し出している
以上のような仮説が有効と言われています。
睡眠は「レム睡眠(浅い眠り)」と「ノンレム睡眠(深い眠り)」のサイクルを繰り返しており、人は睡眠のサイクルを問わず、必ず夢を見ていると言われています。朝目が覚めて記憶に残っている夢は、「レム睡眠」の時に見たものだと考えられています。明晰夢も同様に、レム睡眠の時に経験することが多いです。
通常の夢と明晰夢を見ている時の脳の働きはどう違う?
明晰夢はあくまで自分が感じたことが前提であり、客観的に明晰夢だと判断することは難しいです。
通常の夢を見ている時と、明晰夢の時の脳波を測定した研究があり、比較した以下の表を参照ください。
通常の夢 | 明晰夢 | |
---|---|---|
脳波 | シータ波 | ガンマ波 |
夢を見ている時の睡眠状態 (レム睡眠orノンレム睡眠) |
・レム睡眠 ・ノンレム睡眠 |
レム睡眠 |
脳の働き | 前頭葉は活動していない | 前頭葉が活発に活動している |
脳波に現れるシータ波とは、浅い睡眠でウトウトしている状態の時に出ている脳波です。レム睡眠の状態の時に出ている脳波と言えるでしょう。
一方、ガンマ波とは記憶力が向上したり、知覚が敏感になったりしている時に発している脳波と言われています。
更に脳の働きでは、前頭葉の活動の有無があるようです。前頭葉とは、考えたり判断したりする、思考力を司っています。
明晰夢では、前頭葉が活発に活動しているのが分かっていることから、寝ていながら思考力が働いていると言えるでしょう。
明晰夢を見る3つのメリット
明晰夢は不思議な現象ですが、明晰夢を経験することで以下の3つのメリットが得られます。
- ・現実では叶わない願望が体験できる
- ・精神的な苦痛が緩和される
- ・イメージトレーニングができ現実の世界に役立てられる
メリットを理解すると、明晰夢を見ている最中に試してみることで現実での幸福度があがったり、苦手意識の克服につながったりする可能性があります。参照ください。
現実では叶わない願望が体験できる
現実では起こりえない体験でも、明晰夢ではできることがあります。夢の中で自由に動くことができ、自分が創造していた世界を作り出せるからです。
空を飛んだり、宇宙へ行ってみたり、現実では存在しない生物を作り出してみるなど、仮想の空間を自由に散策できることで、想像力が引き立てられ、現実世界でのアイディアや発想力に活かせるでしょう。
精神的な苦痛が緩和される
海外では、PTSDなどの精神疾患を持つ患者さんへの治療の一環として、明晰夢を活用する取り組みが始まっています。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、災害や事故などを経験したり目撃したりすることで、精神的に大きなストレスを感じ、その後の生活に精神的な苦痛を伴う状態を言います。
代表的な精神的苦痛は、以下の通りです。
- ・フラッシュバック:経験した苦痛が突然目の前で繰り返されているような感覚に陥る
- ・外出や他者との関りが困難になる:フラッシュバックすることで、「いつどこで起こるか分からない」という恐怖心から、外出できなくなったり、他者とのコミュニケーションを避けようとしたりする
- ・悪夢を見る回数が増える
上記のような反応に対し、明晰夢を利用して悪夢を楽しい記憶へ変換することでフラッシュバックの軽減・克服につながるのではないかと考えています。
イメージトレーニングができ現実の世界に役立てられる
仕事のプレゼンやスポーツの大会など、大事な場面を控えている人に、明晰夢を利用してイメージトレーニングすることで現実の世界に役立てられます。
明晰夢の中で、自分の思い通りのシチュエーションを創り出し、現実世界と同じ状況で予行練習ができます。
練習ではうまくいかなかったことも、明晰夢でうまくいった体験をすることで自信につながり、成功した時の感覚が養われるため、現実世界でも役立てられると言えるでしょう。
健康被害につながる可能性も!明晰夢の3つのデメリット
明晰夢についてメリットを3つ挙げましたが、活用方法を間違えると以下のような健康被害につながる可能性があります。
- ・睡眠障害に陥る危険がある
- ・眠りが浅くなり疲れが取れない
- ・幻覚や妄想などの精神疾患にかかる可能性がある
明晰夢によって、日常生活が脅かされるようなデメリットもあるため、確認しておきましょう。
睡眠障害に陥る危険がある
明晰夢の時は、通常のレム睡眠とは異なり、脳の前頭葉が活発化している状態です。通常の睡眠リズムが変化すると考えられ、明晰夢を繰り返すと睡眠障害に陥る危険があると言われています。
健康的な睡眠が取れていることを前提に、明晰夢を活用しましょう。
眠りが浅くなり疲れが取れない
明晰夢はレム睡眠の状態で、かつ前頭葉が活発に動いている状態で起こりやすいことから、眠りが浅く、脳が休めていないと言えます。
人の身体は、ノンレム睡眠を長くとることで、心身ともに休息ができ、疲労回復効果が得られます。そのため、明晰夢ばかり活用していると、疲れが取れないため、日中の活動に影響するでしょう。
現実世界で活用するために明晰夢を利用している場合は、疲れが取れていない状態で現実世界の本番に臨むことになる可能性があり、肝心な本番で本領発揮ができないということになりかねません。
睡眠をしっかり確保しながら、明晰夢を利用するタイミングや回数を検討しましょう。
幻覚や妄想などの精神疾患にかかる可能性がある
明晰夢を意図的に起こし、現実世界と夢の世界を混同させることで幻覚や妄想などの精神疾患にかかる危険性があります。
夢と現実の境界線が分からなくなってしまうと考えられるからです。
夢を見る理由として、強い願望や衝撃が夢に現れると仮説が立てられています。明晰夢を利用せず、見たい夢を強く願いながら眠りにつくと、願いが叶う可能性もあります。
明晰夢だけに頼らず、見たい夢を想像しながら眠りについてみてはいかがでしょうか。
明晰夢を意図的に見る方法
明晰夢を意図的に見る方法が3つあります。
- ・リアリティチェック法
- ・WBTB法
- ・MILD法
それぞれについて解説していきます。
リアリティチェック法
リアリティチェック法とは、明晰夢と現実を区別するために、普段から特定の行動を習慣づけることです。
「手のひらを見る」や「ジャンプする」など、特定の行動を習慣にすると、明晰夢を見ている時も同じ行動をします。
明晰夢では、自分の手のひらが透けていたり、ジャンプすると現実世界よりも高く飛べたりするなど、現実世界と違うことが認識でき「明晰夢を見ている」と自分自身が認識できるのです。
以下の行動は、習慣にしやすく手軽にできるため、試してみましょう。
- ・指で手のひらを突く
- ・同じ文章を2回読む
- ・手のひらを見る
- ・ジャンプする
上記のうち、1つを習慣にすると決めたら、1日に何回も同じ行動を繰り返して習慣づけしていきましょう。
その時、「これは夢かな?現実かな?」と考えながら行動すると効果的です。
WBTB法
WBTB法は、アラームなどで強制的に起こした後、再度眠りにつくことで明晰夢が見られる方法です。
手順は以下の通りです。
- 1. いつもの起床時間より2~3時間早くアラームを設定する
- 2. アラームで目が覚めたら、30分ほど起きておく(過剰な刺激は与えないように注意。テレビやスマホは覚醒してしまうため見ない)
- 3. 再度寝る
睡眠パターンは、目覚める時間が近付くにつれてレム睡眠が長くなっていきます。眠りが浅くなる前に起こし、再度眠りにつくことで、覚醒状態とレム睡眠状態が混在し、明晰夢が見やすくなると考えられます。
ただし、睡眠パターンが乱れ、寝不足や疲労回復が困難となる場合があるため、注意が必要です。
MILD法
MILD法とは、WBTB法と似ており、就寝してから5時間後に1度起き、時間を置いて再度眠りにつく方法です。
WBTB法と違うのは、再度眠りにつく前に「次は夢の中にいる」と声に出してはっきり意識づけをしてから眠りにつくところです。
MILD法は、明晰夢を体験したことがない人に効果があるとされています。
まとめ
明晰夢とは、自分が夢の中にいると認識し、自由自在に環境を変えたり、動いたりできることを言います。
イメージトレーニングができたり、悪夢を楽しい夢に変えたりすることができる一方で、睡眠障害や眠りが浅くなることで日中の活動に影響が出るなどの可能性が考えられます。
なかには、夢と現実の区別がつかなくなり、幻覚や妄想などの精神疾患につながる危険性もあるため注意が必要です。
自分の健康状態を確認し、睡眠の質がよい場合は、試してみるのもよいですが、疲労感を感じない程度にしておきましょう。
よくある質問
Q.明晰夢とはなんですか?
A.明晰夢とは、自分が夢の中にいると認識でき、夢の中の環境を自由に変えたり、動き回ったりできることをいいます。海外では、PTSDの治療に活用されている例もあり、現実世界と同じシチュエーションを作ってイメージトレーニングをすることも可能です。
一方で、明晰夢に夢中になり過ぎると睡眠パターンが崩れ、睡眠障害や疲労の蓄積につながるため、注意が必要です。睡眠障害については、「【どんな種類がある?】睡眠障害について徹底解説」で紹介しています。
Q.明晰夢を意図的に見る方法はありますか?
A.リアリティチェック法、WBTB法、MILD法の3種類あります。リアリティチェック法は、特定の行動を日々何回も習慣づけることで、明晰夢と現実世界の区別をつける方法です。
WBTB法やMILD法は、普段の起床時間より早く起きて、再び眠りにつくことで覚醒状態とレム睡眠状態を混在させ、明晰夢を見やすくする方法です。
いずれも手軽にできる方法ですが、普段の起床時間より早く起きることは睡眠パターンに変化を及ぼすため、注意しましょう。