光と睡眠の関係
はじめに、光と睡眠の環境について簡単に解説します。
人間の体内には、体温やホルモン分泌など、体の基本的な機能やさまざまなリズムを調節する仕組みが備わっています。一般的に「体内時計」と呼ばれる仕組みです。
この体内時計のおかげで、私たち人間は朝になると目が覚め、夜になると眠くなるという生活サイクルを繰り返しています。具体的には、「メラトニン」という名の睡眠ホルモンが体内時計に働きかけることで、覚醒の状態と睡眠の状態が切り替わるようになっています。
夜の強い光は体内時計が乱れる原因に
睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌量は、主に光によって調節されています。明るい昼間にはメラトニンの分泌が止まり、反対に暗い夜間にはメラトニンの分泌が活発になるのが正常な状態です。
しかし、夜に照明などの明るい光を浴びてしまうと、体内時計が乱れてメラトニンの分泌が抑えられます。これによって睡眠のリズムが崩れ、場合によっては体へ悪影響が及ぶ可能性があるのです。
電気をつけっぱなしで寝た時の体への悪影響
「光と睡眠の関係」で解説したように、夜に明るい光を浴びていると、睡眠のリズムが崩れてしまいます。このため、電気をつけっぱなしで寝ることは睡眠の質を低下させ、体へ悪影響を及ぼす可能性もあります。
では、電気をつけっぱなしで寝た場合、具体的にどのような悪影響があるのでしょうか?以下で解説していきます。
熟睡障害に陥る
熟睡障害とは、「熟睡した」という満足感がなく、朝起きても睡眠不足だと感じる状態のことです。夜中に目が覚めたり、眠りが浅かったりする場合に起こりやすいです。
寝る時に電気をつけていると、まぶたを閉じていても光が目に入りこんでくるため、脳が覚醒している状態が続きます。すると、「寝ている」という感覚を得られずに、熟睡障害に陥ってしまいます。
一度熟睡障害になると体内時計のリズムが崩れ、以降にも影響してしまうので、夜は必ず電気を消して寝るようにしてください。
肥満のリスクが上がる
電気をつけっぱなしで寝た場合の悪影響としては、肥満のリスクが上がることもよく知られています。
夜、明るい状態で眠ると、睡眠ホルモンであるメラトニンが通常のおよそ5分の1しか作られません。すると、食欲を増加させるホルモンの分泌量が増え、食事量も増し、肥満のリスクが上がってしまうという仕組みです。
他にも、就寝中に光を浴びることはストレスホルモンの分泌増加につながり、ストレスから食欲が増してしまう可能性があります。
いずれにしても、電気をつけっぱなしで寝ることは肥満のリスクを高めるため、ご注意ください。
糖尿病のリスクが上がる
ホルモン分泌をコントロールする体内時計が乱れると、「インスリン」と呼ばれるホルモンの分泌にも影響が及びます。インスリンとは膵臓で作られるホルモンで、血糖を下げる働きがあります。
明るい環境で眠ると、体内時計の乱れによってこのインスリンの分泌量が減り、血糖を上手く下げられません。結果、糖尿病のリスクが高まってしまうのです。
うつ病のリスクが上がる
睡眠不足による体内時計の乱れは、うつ病とも関連が深いとされています。事実、うつ病を治す方法の1つとして、きちんと朝に起床し朝日を浴び、夜は電気をつけっぱなしにせず寝るという方法がとられることがあります。
日頃からストレスを感じている方は、電気をつけっぱなしにして寝ることで、うつ病のリスクを高めてしまう恐れがあるため注意してください。
乳がんのリスクが上がる
女性の場合、電気をつけっぱなしで寝ることは乳がんのリスクを高めるとも言われています。実際に道路やスーパー、コンビニなどの人工的な照明が部屋まで入り込みやすい場所に住む女性は、そうではない女性に比べて乳がんになる可能性が高いそうです。
老化の進行スピードが早まる
睡眠ホルモンのメラトニンは、老化の進行スピードを緩やかにする役目もあります。つまり、体内時計が乱れてメラトニンの分泌量が減ると、老化が早まってしまうということです。
老化の進行スピードが早まるということは、緑内障など高齢者によく見られる病気のリスクも高めてしまう恐れがあるということ。軽視はできません。
就寝前はスマホやパソコン、テレビの光も避けよう
光に関連する事項としては、就寝前にスマホやパソコン、テレビなどの液晶画面を見ることにも注意しなければなりません。
液晶画面からは「ブルーライト」と呼ばれる強い光が発せられていて、夜に見ることで脳が覚醒状態になってしまいます。寝つきが悪くなり、電気をつけっぱなしで寝た時と同様、体内時計が乱れて睡眠の質が低下する恐れがあるため、寝る1時間前からスマホ、パソコン、テレビの使用はできるだけ避けましょう。
睡眠の質を高める就寝環境の整え方
上述したような熟睡障害、肥満、糖尿病、うつ病、乳がん、老化のリスクが高まる根本の原因は、「睡眠の質の低下」です。つまり電気を消して寝ることはもちろん、他にも睡眠の質を高めるような工夫をすれば、体へ悪影響が及ぶ心配も少なくなると言えます。
ここからは、睡眠の質を高める就寝環境の整え方を紹介します。中には今日からすぐに実践できる方法もあるので、ぜひ試してみてください。
就寝1〜2時間前から照明を暗くする
夜は就寝する1〜2時間前から照明を暗くしておくと、眠りの質が高まります。目安として、10メートル先の人の顔が分かる程度の明るさまで照明を落とすのが良いと言われています。
部屋を暗くすることが難しい場合は間接照明を使うようにし、就寝前に蛍光灯の光を目に入れる時間は極力短くしましょう。
就寝前は落ち着いた電球色の明かりで過ごす
先ほど、「就寝前に蛍光灯の光を目に入れる時間は極力短くしましょう」と書きました。これは、蛍光灯のような白っぽい色の光(昼白色)だとまぶしすぎて、眠気が飛んでしまう恐れがあるためです。
間接照明はオレンジっぽい色の光(電球色)であるケースが多く、ほど良い明るさなので寝つきを良くしてくれると言われています。
就寝1〜2時間前になったら、昼白色の蛍光灯から電球色の間接照明に切り替えて過ごすことが、睡眠の質を高めるポイントの1つです。
寝室の温度と湿度にも注意
睡眠の質には、寝室の温度と湿度も関係しています。
人は、「深部体温」と呼ばれる体内の温度が徐々に下がることで、眠気を覚える仕組みになっています。しかし、温度や湿度に問題があると体温調節が上手くいかず、この深部体温が下がりにくくなり、睡眠の質も低下してしまうのです。
就寝時、寝室の室温は33℃、湿度は50%が理想と言われています。できる限りこの数字に近づくよう、エアコンや加湿器などで調節しましょう。
浴室は暗めの照明に調整
一般的に、就寝の1時間前にお風呂に入ると、寝るまでに深部体温が徐々に下がって、寝つきが良くなると言われています。浴室の照明は通常ならば昼白色ですが、それだと明るすぎるので暗めに調節しましょう。
調節が難しい場合は備え付けの照明を消してバスライトを使うと、ほど良い明るさになります。
暗い部屋で眠るのが不安な時は?
人によっては、照明を暗くするのが不安な方もいると思います。電気をつけっぱなしで寝るのは体へのさまざまな悪影響がありますが、だからといって不安を感じる暗さでも、それ自体がストレスの原因になってしまいます。安心して眠れる空間づくりを一番に心がけましょう。
そうは言っても、体のためにはできるだけ照明を落としたいことも事実。もしも暗い部屋で寝ることに不安を感じるならば、豆電球や間接照明を活用し、ほんの少し明るくすると不安が和らぎます。
睡眠の質をさらに高める習慣
睡眠の質を高めるには、就寝環境を整えることと同じくらい生活習慣を見直すことも大切です。少し習慣を変えるだけで寝つきやすくなったり、熟睡できたりするようになります。
ここからは、そんな睡眠の質を高める習慣を紹介していきます。
カフェイン入りの飲み物を飲まない
ご存じの方は多いと思いますが、カフェイン入りの飲み物は眠気を遠ざけ、寝つきにくくしてしまいます。これは、カフェイン自体に脳の覚醒効果があることと、血管収縮作用により体温が低下するのを妨げてしまうことが理由です。
夕方以降はカフェインレスのお茶やコーヒー、もしくは水などを飲むようにして、カフェインの摂取を避けましょう。
寝る前のリラックスタイムを作る
ストレッチをしたり、飲み物を飲んだりなど、寝る前にリラックスできる行動をとることで寝つきが良くなります。自分にとっての気分が軽くなる方法を探し、実践してください。
ただし、やり過ぎないように注意は必要です。例えば息が上がるほどのストレッチは、かえって寝つきを悪くしてしまいます。また、飲み物に関してもカフェイン入りのものは前述の通り避けてください。
昼間に軽い運動をする
厚生労働省によると、運動と睡眠の質には関連があり、習慣的に軽い運動に取り組むことで寝つきが良くなり、睡眠の質が高まるそうです。
軽い運動とは、早足のウォーキングや緩やかなランニングなどです。あまりに激しい運動は逆効果なので注意しましょう。
起きたら朝日を浴びる
睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌は、目覚めてから14〜16時間ほど時間が経つと始まります。つまり、朝日を浴びることで体内時計をリセットし、脳に「朝だ」と認識させることで夜の寝つきも良くなるのです。
朝日が差し込むのであれば室内の窓際で問題ありません。朝、起きたらまずは朝日を浴びることを目的にしましょう。
暗い部屋でも夜中に目が覚めてしまうのは病気のサインかも
通常であれば就寝環境を整えたり、睡眠の質を高める生活習慣を実践したりすることで、夜の寝つきや朝の寝覚めが改善されます。しかし、実践しても夜中に目が覚めてしまうなどの場合、病気の可能性があるため注意が必要です。
睡眠に関する代表的な病気「睡眠時無呼吸症候群」
睡眠に関する代表的な病気に、睡眠時無呼吸症候群があります。就寝中、呼吸が一定時間以上止まってしまう病気で、息苦しさから夜中に目が覚めてしまうことも。
睡眠時無呼吸症候群の特徴は大きないびきです。睡眠の質を高めてみても夜中に目が覚めてしまう方は、パートナーや家族に、夜中に大きないびきをかいていないか聞いてみてください。一人暮らしの方は、睡眠アプリなどで寝ている間の状況を録音しておく方法があります。
睡眠時無呼吸症候群の治療なら「パルスサーミア」
もしも睡眠時無呼吸症候群の疑いが強いと思われた場合、イビキメディカルクリニックまでお気軽にご相談ください。当院では睡眠時無呼吸症候群の最新レーザー治療「パルスサーミア」を提供しています。従来のレーザー治療よりも痛みや身体への負担が少なく、ダウンタイムもほぼありません。
まずは無料のカウンセリングからご予約ください。
まとめ
この記事では電気をつけっぱなしで寝た時の体への悪影響や、睡眠の質を高める方法を解説しました。
明るい環境で寝ることは睡眠の質の低下に繋がり、体にもさまざまな悪影響を及ぼします。就寝時にはきちんと電気を消し、快眠できる就寝環境を整えましょう。
光以外にも睡眠の質を低下させる要因はたくさんあります。この記事を参考に睡眠の質を高める就寝環境を用意したり、生活習慣を見直したりすることで、健康な心身をキープしましょう。
よくある質問
Q.電気をつけっぱなしで寝ると、体にどんな悪影響がありますか?
A.電気をつけっぱなしで寝ると、熟睡障害や肥満、糖尿病、うつ病、乳がん、老化のリスクが高まります。これは睡眠の質が低下することによって起こるため、電気のつけっぱなしはもちろん、それ以外の睡眠の質を低下させる要因にも気をつけなければなりません。
Q.睡眠の質を高める方法は?
A.睡眠の質を高めるためには、照明を暗くする、寝室の温度・湿度を調節するなどで、就寝環境を整えます。寝る前にカフェイン入りの飲み物を飲まない、リラックスタイムを作るなどの生活習慣も効果的です。
熟睡するための改善策としては「熟睡できない・寝た気がしないと感じる原因と改善について」も参考にしてください。
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