睡眠とは
睡眠は、私達の生活のうち平均7時間前後を占めています。睡眠は、身体や脳を休ませ、翌日の活動に備える時間です。
人の時間は体内時計によって覚醒と睡眠の2つで構成されています。
睡眠には浅い眠りで夢をみるといわれるレム睡眠と深い眠りで疲労回復と細胞の代謝を促すノンレム睡眠があります。2種類の睡眠と睡眠の質について解説します。
「レム睡眠って何?」という方はこちらの記事もご覧ください。
浅い眠りのレム睡眠
レム睡眠は浅い眠りのことで、眼球がはやく動いている様子の頭文字をとってREMs(Rapid Eye Movements)と名付けられました。
レム睡眠中の状態として身体(骨格筋)は寝ていますが、脳は起きており、夢をみる時間と考えられています。
レム睡眠と夢の関係は分からないことが多く、レム睡眠中に覚醒した人の多くが夢を覚えていることが多いので、「夢をみている時間」とされています。
脳が起きているためレム睡眠の時間帯は目覚めやすく、夜間に目が覚めるのもレム睡眠中の可能性が高いです。
深い眠りのノンレム睡眠
ノンレム睡眠は深い眠りのことで、「レム睡眠以外の時間(non-REM sleep)」が由来です。
ノンレム睡眠は研究により4段階あることが知られています。
私達が布団に入ると最初にノンレム睡眠が訪れ、90分から120分サイクルでレム睡眠と交互に繰り返します。
4段階あるうちの1、2段階が深い眠りといわれ、後半の3、4段階になるほど明け方が近く、目覚めの準備に入るため浅くなります。
ノンレム睡眠中に成長ホルモンが分泌されるといわれており、疲労回復、細胞の代謝を促します。寝ると頭がスッキリする、寝ると疲れが取れることは、ノンレム睡眠中に分泌される成長ホルモンが由来です。
ちなみにノンレム睡眠中に目覚めると頭がぼうっとして目覚めが悪いです。目覚ましで強制的に起こされると頭がぼうっとするのはこのためです。
睡眠の質が大切
「◯時間も寝たのに全然疲れがとれない」と聞きますが、睡眠は時間だけではなく質も大切です。
睡眠の質とはレム睡眠とノンレム睡眠のバランスを指します。
寝ついてからノンレム睡眠に入り、レム睡眠、ノンレム睡眠とうまく交互になることが重要です。
ホルモンの分泌によって寝ている間に疲れが取れます。熟睡した感じを得るには最初のノンレム睡眠による深い眠りが関係しています。
つまり、最初の眠りが浅いと冒頭の「睡眠時間を多くとったのに、よく寝た感じがしない」ということになります。
レム睡眠の多さと睡眠の質の関係
レム睡眠の量と、睡眠の質は密接に関係しているのはご存知ですか?
人はレム睡眠が多いと就寝してから最初のノンレム睡眠になるまでに時間がかかり、睡眠の質が低い可能性があります。
言い換えると、睡眠の前半にレム睡眠が多く、寝つきが悪くなります。この章ではレム睡眠の多さについて解説します。
寝つきの悪い人は睡眠の前半にレム睡眠が多い
レム睡眠はウトウトしている時間とも考えられているため、ウトウトしている時間が長い=寝つきが悪い人が当てはまります。
ノンレム睡眠には疲労回復、細胞の代謝を促す身体のメンテナンスの役割があるため、寝つきがあまりにも悪いと寝ても寝た気がしないと感じます。
明け方にレム睡眠が増えると睡眠の質がいい
睡眠サイクルでは明け方になるにつれて、ノンレム睡眠も徐々に浅くなります。コルチゾールというホルモンが分泌され、朝起きて活動する準備を始めるためです。
理想的な睡眠では、寝ついてから90分後にノンレム睡眠に入ります。その後レム睡眠が5分〜30分続き、再びノンレム睡眠に入ります。
このサイクルを3回ほど繰り返し明け方にレム睡眠の割合が増えると朝、すっきり起きられると考えられており、ノンレム睡眠とレム睡眠のバランスがよいと睡眠の質がよくなるといえます。
また、加齢によって睡眠時間が短くなるのは、体内時計の老化が原因です。ホルモン分泌など、ノンレム睡眠中におきる生理現象が前倒しになると考えられています。
深い眠りと浅い眠りのサイクルが若いときに比べ早く繰り返し、残りのレム睡眠が長くなるため、早起きになるといわれています。
睡眠の前半にレム睡眠が多い人の特徴
ここまで睡眠のメカニズムについて解説しましたが、寝つけないと感じる人の特徴をまとめました。
寝つけない人は主に自分自身に原因がある場合と就寝環境に原因がある場合、病気の場合が考えられます。
当てはまるところがないかチェックしてみましょう。
自分自身が原因の場合:寝る前にスマートフォンやパソコンをさわってしまう
スマートフォン(以下:スマホ)、パソコンは画面からブルーライトという光を発します。
寝る前にブルーライトをみてしまうと、脳が昼間だと勘違いしてしまい入眠を促すホルモンであるメラトニンがうまく分泌されません。
また、寝る前のインターネット検索やSNSは関連情報をみていくうちに睡眠時間が後ろ倒しになりがちです。
夜間十分に睡眠が取れないため日中の社会活動に支障がでたり、休日に多く寝過ぎたりと、悪循環につながります。
就寝環境が原因の場合:枕や布団があっていない
枕が変わると眠れないという経験はありませんか。
例えば、枕の高さがあっていないと、寝ているときに首がうまく支えられず、首に負担がかかります。枕が高い場合、横向きで眠ると肩幅の分、布団までの距離があくため首の負担がさらに大きくなります。
人は寝ている間に平均約20回寝返りをうつといわれているため、自分に合った枕選びが重要です。また、枕の素材も使い続けると劣化し、購入時と比べて高さが変わっている可能性もあります。
布団も同様に睡眠に影響を及ぼします。
横になると腰に負担がかかりますが、腰を布団やマットレスが支えることで寝やすくなります。このため腰の部分がへたってきて底につくと寝にくく感じ、睡眠に影響がでます。
布団は素材によって寿命に幅があるため、寝心地が悪い場合は腰の部分がへたってきていないか確認するとよいです。
自分自身が原因の場合:布団にはいると目がさえる
遠足の前日になかなか寝付けなかったという経験はありませんか。
翌日に楽しみなことや不安なことがあったりすると自律神経のうち交感神経が優位になり、頭が冴えて寝つきにくくなります。
この場合、気持ちを落ち着かせると寝つきやすくなり、具体的な方法は深呼吸です。鼻から深く息を吸い、吸ったときよりも時間をかけて口から吐き出すと徐々に気持ちが落ち着きます。
楽しみや不安が過ぎると、もとに戻ることが多く、一過性です。
病気がある
睡眠時に以下のような特徴が継続する場合、病気が隠れている可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時無呼吸症候群は夜間に呼吸がしにくくなり、息苦しさを覚えて途中で目が覚める・眠りが浅くなる病気です。
主な特徴に、夜間に何度も目が覚める、自分のいびきで目が覚める、家族やパートナーからいびきを指摘されるなどがあります。
うつ病
うつ病は気持ちの落ち込みが一日中続き、しばらく継続する状態をさします。
気持ちの落ち込みや不安なことがあると寝つきが悪くなりがちです。
うつ病と似たような症状で別の病気もあるため、クリニック監修のセルフチェックなども活用し、なるべく早めの受診を心がけましょう。
レストレスレッグス症候群
別名むずむず脚症候群といわれる病気で、就寝時の主な症状は、横になると足の内側からくる不快感です。
不快感により睡眠が妨げられてしまい、寝つきが悪くなります。男女比は女性が男性の1.5倍かかりやすく、特に60代〜70代の高齢者に多い病気です。
睡眠の前半にレム睡眠が多いときの改善方法
前半にノンレム睡眠を多くし、後半にレム睡眠を増やすための改善方法は以下の5つです。それぞれ詳しく解説していきます。
朝起きる時間と夜寝る時間を一定にする
人間は本来、朝、日を浴びて活動し、夜は就寝する生き物です。朝起きる時間、夜、寝る時間を毎日同じにすることで、夜に自然と眠くなります。
朝起きたらカーテンをあけて太陽の日を浴びる、夜は就寝の1〜2時間前には照明のトーンをおとす、スマホやパソコンはみないといった心がけをして、規則正しい生活ができるようになると、睡眠の質が改善します。
寝つきやすい環境をつくる
睡眠の質を上げるためにはスムーズにノンレム睡眠に入るようにします。
人は体温が上がると活動し、体温が下がると眠くなります。寝付きをよくして深い眠りを誘うには、40℃前後の熱すぎないお風呂に就寝1〜2時間前に入ってリラックスできれば布団に入る頃には体温が程よく下がって、自然と眠くなります。
食事内容・食事の時間を見直す
食事は就寝する約3時間前までに済ませることがよいとされています。
脳は睡眠よりも消化を優先させるため、食べてすぐに寝てしまうと眠りが浅くなります。
とはいえ、帰宅や食事時間が遅くなると、就寝までに時間があけられません。
食事の時間が遅くなり、眠る時間までに十分時間を空けられない時は脂分を控えた消化に良い食べ物やたまごや大豆類などのタンパク質をとるとよいでしょう。
唐辛子などのスパイス料理は古くは健胃とよばれ、胃腸を活性化させます。あまり辛いと発汗を促し、交感神経を刺激するためおすすめできませんが、程よい辛さは消化を助けるためおすすめされます。
カフェイン、アルコール摂取を見直す
コーヒーに含まれるカフェインは覚醒作用があり、寝付きを悪くします。
カフェインが身体に入ってから効果が持続する時間は個人差がありますが、論文では6時間という報告があります。そのため、必然的に、カフェインは午前中か、昼過ぎまでで控えておいたほうが良いでしょう。
また、アルコールを摂取すると寝つきはよくなりますが、アルコールを分解する過程で眠りが浅くなり、夜中に目が冷めやすくなります。
身体にとってアルコールは耐性ができやすく、寝付きやすい効果は徐々になくなります。
寝室の環境をチェックする
寝室の環境とは大きく分けて枕の高さと照明、布団の中の温度・湿度の3つです。
枕の高さ
枕の高さが合っていないと横になったときに頭や首が支えられず寝苦しく感じます。
最適な枕の高さは、枕なしで仰向けに寝たときに首に負担がかからない高さです。一般的に男性が7〜8cm、女性が6〜7cmといわれています。高さが足りないときはタオルを使って少しずつ高さを調節するとよいです。
枕が高すぎると顎の位置が上がり、気道を圧迫しやすくなるため「いびき」をかきやすくなります。また、首筋が張り、肩こりの原因になる可能性は否定できません。
反対に枕が低いと、脳への血行が悪くなり、朝起きたときに頭痛を覚えやすいといわれています。
特に枕の高さはセルフチェックしやすく、寝具の中でも買い替えやすいので、確認するとよいでしょう。
照明
部屋の明るさは睡眠に影響するため、布団に入るまでに徐々に暗くしていくとよいです。
明るい電気をつけたまま寝落ちすると、光により朝だと勘違いして夜間に起きやすくなり、眠りが浅くなりがちになります。
スマホやパソコンのブルーライトも覚醒の刺激を与えます。就寝前には控えるようにしましょう。
布団の中の温度と部屋の湿度
人が快適に眠る温度は30℃前後、部屋の湿度は50%前後といわれています。また、布団の中の温度は体温よりも少し低いくらいが丁度いいとされています。
日本には四季があり、季節によって気温が大きく変化します。しかし、快適と感じる布団の中の温度は季節に問わず一定です。
夏場は汗をかきやすいため、通気性のよい麻のパジャマがおすすめです。冬場はニット素材など体温を逃さない工夫をします。
しかし、靴下を履くと足からの体温調節がうまくできず、寝苦しく感じるので推奨されません。
着衣の環境を整えたあとは、室温を調節します。目安として室温25℃では薄いタオルケット1枚で布団の中の温度が30℃前後といわれています。
湿度は夏場に高く、冬場に低いです。湿度が高いと蒸し暑く寝にくくなり、湿度が低いと乾燥からノドの粘膜に負担がかかります。除湿と加湿を使い分けて、快適な湿度環境を整えると効果的です。
まとめ
睡眠の種類からレム睡眠が多いときの改善方法を解説しました。
睡眠の前半にレム睡眠が多い人は寝つきが悪く、睡眠の質が低いといえます。
睡眠の質を改善するには主に生活リズムの見直し、就寝環境の見直しが有効です。生活リズムや睡眠環境を整えることで、レム睡眠とノンレム睡眠のバランスを改善が期待できます。
自分の生活や就寝環境を見直して、レム睡眠とノンレム睡眠のバランスを整えましょう。
よくある質問
Q.夜中に目が覚めるのがしばらく続いています。病気でしょうか?
A.病気とは一概には言えませんが、いびきや不安、足のムズムズなど症状がある場合は可能性があります。
Q.夜中に起きても少しするとまた眠れます。問題ないでしょうか?
A.繰り返すと十分な睡眠が得られず身体に負担がかかります。最初の寝つきが悪いとうまくノンレム睡眠に入れない可能性があります。寝つきをチェックし、続くようなら病気を疑った方がよいでしょう。