マグネシウムが睡眠に効果がある理由
さっそく、マグネシウムが睡眠に及ぼす具体的な効果について見ていきましょう。
安定した精神状態を保つ
マグネシウムには、神経の興奮を抑え、神経伝達を正常に保つ働きがあります。
就寝時、「心配事ばかり考えてしまって眠れない」、「ベッドに入ってもなかなか落ち着かない」など、気持ちが昂って眠れなくなることは多いでしょう。そんな不眠症状に、マグネシウムは効果を発揮することが見込めます。
筋肉をほぐしてリラックス
マグネシウムには精神の安定だけではなく、筋肉をほぐすリラックス効果も期待できます。
そもそも、筋肉の収縮・弛緩はマグネシウムやカルシウムなど、さまざまなミネラルのバランスによって調整されています。しかし、マグネシウムが不足するとそのバランスが崩れ、筋肉が過度に緊張した状態になります。
そのため、マグネシウムを摂取すると筋肉の緊張状態がほぐれ、スムーズな入眠を促すことができるのです。
抗不安・抗うつ作用
マグネシウムには、抗不安・抗うつ効果も見込めます。
マグネシウムは、精神的なストレスやアルコールによって、体外への排出量が増えます。ゆえに、ストレスの多い現代社会ではマグネシウムが不足しやすく、心の健康に影響を及ぼす恐れも懸念されています。
また、不眠症に陥る患者の多くは、精神的な疾患も発症している場合が多いです。そのため、今後更なる関係性の追求と治療への応用が期待されています。
メラトニンの生成をサポート
マグネシウムには、メラトニンの生成をサポートする働きがあります。
メラトニンは、睡眠ホルモンとも呼ばれており、体内時計を調節して睡眠サイクルを正常に働かせるためには欠かせないホルモンです。このメラトニンの前段階であるセロトニンの生成に、マグネシウムは関わっています。つまり、マグネシウム不足はメラトニンの生成不良につながり、悪化すると不眠症につながる恐れがあります。
ゆえに、マグネシウムを摂取することは、睡眠の質改善に効果が期待できます。
どうしてマグネシウムは欠乏するの?
上記でも軽く触れましたが、現代人はマグネシウムが不足しがちです。では、マグネシウムが不足してしまう原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
ストレス
マグネシウムには、ストレスを感じると尿中に排出されやすくなるという性質があります。
また、マグネシウムが不足すると、神経伝達物質であるドーパミンの産生が減少します。ドーパミンは、やる気や満足感を感じる上で必要な物質です。そのため、ドーパミンが減少するとモチベーションが維持できなくなり、気持ちが落ち込むことにつながります。
さらに、ドーパミンの減少は、精神安定に関係しているセロトニンの分泌も低下させます。つまり、ストレスを感じると、「マグネシウムが排出→ドーパミンやセロトニンの減少→メンタルの不調→さらにストレスを感じる」という悪循環に陥ってしまうのです。
飲酒
飲酒をすることで、マグネシウムの排出量が増加します。
これは、アルコールの利尿作用によって、マグネシウムが尿として排出されてしまうことに起因します。つまり、アルコール摂取量が多い人は必然的に尿の量も増え、それに伴ってマグネシウムも排出されるため、相対的なマグネシウム量が減少してしまうのです。
カフェイン
カフェインにも、アルコールと同様に利尿作用があります。
よって、カフェイン摂取量が多いとマグネシウムが尿と一緒に排出されてしまうため、マグネシウム不足に陥る可能性が高まります。
糖分
私たちの体は、砂糖などの糖分を代謝するときにマグネシウムを使用します。
間食やおやつなどで、甘いものをつい取りすぎてしまう人は多いでしょう。しかし、日常的に糖分を含む食品をたくさん食べていると、体内のマグネシウムが消費され、マグネシウム不足になるのです。
年齢
マグネシウムは、年齢を重ねるごとに吸収率が低下します。また、高齢者は若年成人よりも食事量自体が減少するため、食事由来のマグネシウム摂取量が少なくなります。
つまり、高齢になればなるほどマグネシウム量は減少し、不足した分を補うことも難しくなるのです。
マグネシウム不足によって起こる代表的な症状
マグネシウムが不足すると、不整脈が生じやすくなり、慢性的に不足すると虚血性心疾患や動脈硬化症になる確率も高まります。また、吐き気や精神障害などにもつながり、筋肉の痙攣であるテタニーを起こしやすくなります。
さらに近年、長期的なマグネシウムの不足が骨粗鬆症や糖尿病、心疾患、高血圧などの生活習慣病の発症リスクを高めることも報告されています。
このように、マグネシウム不足は睡眠だけでなくあらゆる病気の原因となり、長期的な不足は死亡リスクの高い疾患につながる恐れがあるため、注意が必要です。
マグネシウムを多く含む食品
では、マグネシウム不足にならないようにするには、どうすれば良いのでしょうか?上記でも触れたように、マグネシウムが不足する原因は、ストレス、飲酒、カフェイン、糖分、年齢の5つです。確かに、これらもマグネシウムを減らす重要な原因ですが、最も重要な原因は、食事由来のマグネシウム摂取量の減少です。最近は、「食の欧米化」によって昔ながらの日本食を食べる機会が減りました。その結果、マグネシウムを豊富に含んでいる雑穀などの摂取量が減少し、マグネシウム不足に陥りやすくなってしまったのです。
そのため、マグネシウム不足を補うためには、「古き良き日本の食事」を意識することが大切です。以下に、マグネシウムを多く含む食品をまとめました。
- ・海藻類:あおさ、青のり、わかめ、ひじきなど
- ・豆類、大豆加工食品:豆腐、納豆、油揚げ、味噌、きなこなど
- ・種実類:ごま、アーモンド、カシューナッツ、ひまわりの種、カボチャの種など
- ・その他:煮干し、小麦胚芽、米ぬか、切り干し大根、ほうれん草など
マグネシウムを効率的に摂取するコツ
マグネシウム不足解消には、「古き良き日本の食事」を積極的に取り入れることが重要です。上記で紹介した食品は、スーパーマーケットなどで手軽に購入することができるため、日々の食事にも簡単に取り入れることができます。
しかし、中にはどのように食事にプラスすれば良いか、わからない人もいるでしょう。そこでここからは、マグネシウムを日々の食事から効率的に摂取するコツをご紹介します。
1日1食に大豆製品をプラス
大豆製品には、マグネシウムが多く含まれています。1日に1食でも良いので、副菜として冷奴を添えたり、納豆を追加したりすることで、簡単にマグネシウムを補うことができます。
以下に、大豆製品をプラスすることで、どれくらいマグネシウムを補うことができるか記載しています。ぜひ、参考にしてください。
- ・木綿豆腐1/3丁(100g)→+130mg
- ・絹ごし豆腐1/3丁(100g)→+55mg
- ・納豆1パック(40g)→+56mg
- ・油揚げ1/2枚(10g)→+15mg
味噌汁やスープに海藻をプラス
海藻類にも、マグネシウムが豊富に含まれています。酢の物やサラダに加えるのも良いですが、おすすめなのは味噌汁やスープにプラスすることです。
特に、マグネシウムが多く含まれているあおさやわかめは、水で戻せば手軽に汁物に加えることができます。さらに、上記で紹介した豆腐や油揚げも加えると、さらにマグネシウムを効率よく摂取することが可能です。
間食にはナッツ類がおすすめ
小腹が空いたときや間食の際には、甘いものではなくナッツ類を食べるのがおすすめです。
説明したように、糖分の過剰摂取はマグネシウム不足を誘発する原因になります。そのため、おやつにはナッツ類、特に砂糖などでコーティングされていない素焼きのものを食べるようにしましょう。以下に、マグネシウムを多く含むナッツ類ベスト5を載せておきます。
- ・【1位】かぼちゃの種:530mg
- ・【2位】ひまわりの種:390mg
- ・【3位】ブラジルナッツ:370mg
- ・【4位】アーモンド:310mg
- ・【5位】松の実:250mg
ヨーグルトにバナナときなこをトッピング
果物のバナナや、大豆をすりつぶして作られるきなこにも、マグネシウムが多く含まれています。これらを踏まえ、食後のデザートにはバナナときなこをトッピングしたヨーグルトがおすすめです。
これにより、マグネシウムを補うだけでなく、マグネシウムとともに骨を形成する働きを持つカルシウムも摂取することができます。
マグネシウムを摂取するときの注意点
ここまで、マグネシウムが睡眠に影響を及ぼす理由と、効率的な摂取方法について解説しました。ですが、マグネシウムを摂取する際にぜひ気をつけてほしいことがあります。
1日の推奨摂取量
まずは、マグネシウムの推奨摂取量を見ていきましょう。1日のうちで推奨されているマグネシウムの摂取量は、性別・年齢ごとに分けると以下の通りです。
年齢(歳) | 男性:推奨量(mg/日) | 女性:推奨量(mg/日) |
---|---|---|
18〜29 | 340 | 270 |
30〜49 | 370 | 290 |
50〜64 | 370 | 290 |
65〜74 | 350 | 280 |
75以上 | 320 | 260 |
マグネシウム過剰摂取の影響
上記を踏まえて、基本的に普段の食事でマグネシウムを過剰に摂取してしまうことはありません。また、もしマグネシウムを推奨量以上摂取してしまっても、過剰分は尿中に排泄されます。ゆえに、日常生活を送る上ではマグネシウム過剰をそこまで気にすることはないでしょう。
しかし、腎機能が低下している場合は高マグネシウム血症が生じやすくなり、血圧低下や吐き気などの症状が現れます。高マグネシウム血症の主な症状は、以下の通りです。
- ・吐き気、嘔吐
- ・食欲不振
- ・血圧低下
- ・不整脈、脈が遅くなる
- ・呼吸障害
- ・意識障害
よって、腎機能に異常がある人は、マグネシウムを過剰に摂取しないよう注意しましょう。
また、通常の食事でマグネシウムを取るのが難しい場合、サプリメントで補填することもあるでしょう。足りない分を手軽に補えるサプリメントは、とても効果的な方法です。しかし、サプリメントや薬剤で大量にマグネシウムを摂取すると、下痢につながる恐れがあります。サプリメントを服用するときは、必ず用法用量を守り、正しく使用することが大切です。
まとめ
今回は、マグネシウムが睡眠に効果を発揮するメカニズムと、効率的な摂取方法について解説しました。
マグネシウムには、神経や筋肉の緊張をほぐし、メラトニンの生成をサポートする働きがあります。ゆえに、睡眠の質改善のためにマグネシウムを摂取することは、効果的といえるでしょう。
そして、マグネシウムは全身の健康を維持するのにも欠かせない栄養素です。しかし、現代人は食生活の変化やストレスの影響で不足しやすく、不眠だけでなくさまざまな健康被害をもたらすことが懸念されています。
大切なのは、普段の食事にマグネシウムの多い食材を積極的に取り入れることです。特に、海藻や豆類、穀物類などを多く含んだ昔ながらの日本食は、マグネシウムを効率よく摂取するのに最適といえます。まずは、1日に1食でも良いので、マグネシウムが豊富な食材を取り入れてみましょう。
ぜひ、この記事をきっかけに、日々の生活にマグネシウムを効果的に取り入れてみてください。
よくある質問
Q.マグネシウムはどうして睡眠に効果があるの?
A.マグネシウムには、筋肉や神経の緊張をほぐし、リラックスさせる働きがあるからです。また、メラトニン生成のサポートもしてくれるため、睡眠の質改善に効果が見込めます。
Q.マグネシウムが欠乏する原因は?
A.マグネシウムは、ストレスや飲酒、カフェインの過剰摂取を原因として尿中に多く排出され、欠乏してしまいます。また、食の欧米化に伴い海藻類や豆類、穀物類を摂取する機会も減ったため、食事由来のマグネシウムが減少したことも、マグネシウム不足に拍車をかける要因です。
参考文献
- メディカル・ケア・サービス、2022.5.6、マグネシウムが不足すると?役割と魅力を徹底解説!!
- メディカル・ケア・サービス、2022.4.7、マグネシウムとは?多く含む食品と効果についても解説!
- CASSIE SHORTSLEEVE AND MARA SANTILLI、2021/04/27、より良い睡眠のためには「マグネシウム」を摂取すべき?
- 管理栄養士 / 衞藤敬子、2021.06.04、安眠のサポートとなるマグネシウムを効率的に増やすコツ
- 2022年11月2日、睡眠の質を上げる食べ物はある?熟睡するために食べるべきもの
- あんこ、21.08.30、マグネシウムで良質な睡眠を!知られざるマグネシウムの安眠効果とおすすめ食べ物のご紹介
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