良い睡眠にするための改善方法とは?
不眠症の治療は、薬物療法と非薬物療法に分かれますが、非薬物療法で不眠症を改善することが理想的です。ここでは、良い睡眠にするための非薬物療法をご紹介します。
非薬物療法は薬物療法に比べると改善するまでに時間がかかる傾向があるため、すぐに睡眠の質の改善を希望する方は、医療機関に行き医師と相談して、適切な薬を処方してもらいましょう。
日中にできること
良い睡眠をとるために、日中にできることがあるので、6つご紹介します。入眠障害や中途覚醒で悩まれている方は、継続してできることから試してみてください。
起床直後に太陽の光を浴びる
起床直後に太陽の光を浴びると、目覚めが促されるだめではなく、体内時計がリセットされます。また、太陽の光を浴びると、眠りを誘う作用がある「メラトニン」の分泌量は抑えられます。太陽の光を浴びてから14~16時間後にメラトニンの分泌が増えるため、夜になると自然と眠くなりスムーズな入眠が期待できます。
朝食をしっかり食べる
朝食は、1日のエネルギー源となるだけではなく、血行を改善して体や脳を目覚めさせる役割もあります。朝にしっかり体や脳を目覚めさせることは、夜に良い睡眠をとることにつながります。
昼寝は30分以内にする
夜、良い睡眠をとるためには、日中に長時間の睡眠をとってはいけません。しかし、どうしても眠気に襲われてしまうこともあるでしょう。眠いままではパフォーマンスが低下してしまうので、15~30分だけ昼寝することをおすすめします。昼寝する前に、カフェインが含まれているコーヒーや緑茶などを飲むと、短時間の睡眠でもすっきりとした目覚めが期待できます。また、昼寝は15時までにするようにしてください。それ以降に昼寝をしてしまうと、夜の睡眠に悪影響を及ぼす可能性があるからです。
適度な運動をする
就寝の3時間ほど前に、適度な運動をするとよい睡眠がとれるといわれています。
脳の温度は、就寝の約2時間前に最も高くなりそれ以降、急激に下がり始め起床前に最も低くなります。そのため、就寝の約3時間前に、ウォーキングや軽いランニングを行い脳の温度を上げておくと、就寝時には脳の温度が低くなり良い睡眠をとりやすくなるのです。
ストレスを上手に発散する
ストレスを上手に発散させることは、良い睡眠につながります。ストレスが溜まると、交感神経が優位となり、脳が興奮状態に。そのため、過度のストレスは入眠の妨げとなります。もし、眠れたとしても浅い眠りが増え、睡眠時間は十分にとったにもかかわらず、睡眠不足になってしまうこともあるのです。ストレスを感じないような生活が送れれば良いですが、現代社会ではそれは難しいでしょう。そのため、ストレスを上手に発散する方法を見つけておくことが、良い睡眠をとるためには必要です。ストレスが原因での早朝覚醒に悩まれている方は、試してみてください。
休日の生活サイクルを整える
休日に遅くまで寝ていたり長時間の昼寝をしたりして、夜に眠れなくなり夜更かししてしまう方は少なくありません。しかし、毎週末や正月やゴールデンウィークなどの連休にそのような生活をしてしまうと、生活サイクルが狂い平日の睡眠に影響を及ぼしてしまう可能性があります。そのため、休日でも平日と同じような生活サイクルを送るように心掛けることが、良い睡眠をとることにつながります。特に早朝覚醒で悩まれている方は、規則正しい生活を送ることを心掛けましょう。
寝る前にできること
寝る前は脳を覚醒させるような行動を控えることが、良い睡眠をとることにつながります。良い睡眠につながる寝る前にできることを7つご紹介します。入眠障害と中途覚醒で悩まれている方は、試してみましょう。
就寝3時間前には夕食を済ませる
食べ物を消化するためには約3時間かかるため、夕食は就寝3時間前には済ませましょう。なぜなら、睡眠中に消化器系が活発に動くと、途中で目が覚める原因につながり、睡眠の質を低下させる可能性があるからです。そのため、就寝3時間前に食事を済ませて、消化器系の活動が落ち着いてから寝た方が、良い睡眠をとれる可能性が高くなります。
タンパク質中心の夕食をとる
タンパク質(アミノ酸)中心の夕食をとると、睡眠の質が改善されると考えられています。誘眠作用があり、睡眠の質を高めるメラトニンに変わる「セロトニン」は、必須アミノ酸のトリプトファンから作られているからです。また、疲労回復や身体の修復などの役割がある成長ホルモンもタンパク質から作られています。そのため、タンパク質(アミノ酸)を食事からしっかりとると、良い睡眠がとれる可能性が高くなります。
就寝前にカフェインやアルコールをとらない
疲労を感じると、覚醒作用のあるヒスタミンの放出が抑えられるため、眠くなります。しかし、カフェインはヒスタミンの放出抑制を阻害するため、眠気を感じにくくなってしまうのです。カフェインを過剰に摂取する人は、睡眠の質が低下するという報告がされています。
一方、アルコールを摂取すると、リラックス効果で眠れる場合もあります。しかし、3時間ほど経つと、アルコールが代謝してできるアセトアルデヒドの覚醒作用で深い眠りは減り、浅い眠りが増えてしまうのです。また、アルコールには利尿作用もあるため、睡眠中にトイレに行きたくなり何回も目が覚めてしまう可能性もあります。寝る前にアルコールを飲む習慣をつけてしまうと、摂取量が増えてアルコール依存症になってしまったというケースも珍しくありません。そのため、就寝前にカフェインやアルコールをとらないようにした方が、良い睡眠がとれるでしょう。中途覚醒で悩まれている方は、特に注意してください。
就寝1時間前はテレビやスマホを控える
テレビやスマホから出ているブルーライトは、脳を興奮させ入眠を妨げる作用があり、誘眠効果があるメラトニンの分泌量を抑えてしまう可能性があります。そのため、就寝1時間前にはテレビやスマホを見るのを控え、脳をリラックスさせることが良い睡眠をとることにつながります。早朝覚醒で悩まれている方は、意識してみてはいかがでしょうか。
ぬるめのお風呂に入りリラックスする
就寝の約2時間前にぬるめのお風呂に入り体温を上げ、お風呂を上がったあとに体温が徐々に下がると、良い睡眠がとりやすくなります。また、入浴剤などを入れてリラックスした状態で湯船につかると、スムーズな入眠が期待できるでしょう。
温かい飲み物を飲んで眠気を促す
忙しかった日は、ハーブティーなどの温かい飲み物をゆっくり飲んで、心を落ち着かせると入眠しやすくなります。飲み物はなんでも構わないのですが、ハーブティーなどリラックス効果が期待できるものを選ぶのがおすすめです。しかし、何杯も飲み睡眠中に何度もトイレに行きたくなるようなことがないように、注意してください。中途覚醒で悩まれている方は、飲み過ぎないように気をつけましょう。
リラックスできる音楽を聞く
良い睡眠をとるためには、就寝前に心身ともにリラックスさせることが重要です。脳がリラックスした状態のときは、α波が出ています。そのため、α波が出る効果が期待できる穏やかな音楽を就寝前に聞くと、良い睡眠につながるでしょう。
目元を温めてリラックス
就寝前に目元を温めるとリラックスでき、スムーズに入眠できるといわれています。約40度で目元を温めると、目元だけではなく手足の血行も改善されて放熱が促されるため、良い睡眠をとりやすくなるでしょう。入眠障害の方は試してみてください。
良好な睡眠環境の整備
良い睡眠をとるためには、睡眠環境を整えることも大切です。そこで、おすすめの睡眠環境を3つご紹介します。不眠症で悩まれている方は、改善が期待できるので試してみましょう。
自分に合った寝具を選ぶ
自分に合った寝具で寝ることが良い睡眠につながります。枕は、肩や頭に負担がかかりにくいもの、布団は適度な硬さがあり保温性・吸湿性が高いもの、掛布団は軽く保温性・吸湿性が高いものを選びましょう。
室温と明るさを調整し心地よい空間を作る
室温が暑すぎたり寒すぎたりすると、睡眠の質を低下させる原因となります。季節に応じて室温を調整しましょう。また、就寝時は部屋を暗くして、起床時には日の光が入るような部屋が理想的です。厚手のカーテンで日の光が入らない場合は、カーテンを閉め切らず隙間を少し開けておくことで、朝になると自然と日の光が入るようになります。睡眠に心地よい空間作りは、良い睡眠へとつながることが期待できます。
リラックスできる香り
室内をリラックスできる香りにすると、睡眠の質を高めると効果が期待できます。ラベンダーやオレンジ、ベルガモットなどの香りがおすすめです。
良い睡眠とは?
良い睡眠をとるための改善方法をご紹介してきましたが、そもそも良い睡眠とはどのようなものを指すのでしょうか。厚生労働省が公表している資料には、以下のような状態が良い睡眠とされています。
- ・規則正しい生活を送り、昼と夜のメリハリが明瞭である
- ・必要な睡眠時間がとれ、日中に過度な眠気を感じない
- ・睡眠中に目が覚める回数が少なく、安定した睡眠がとれている
- ・目覚めが良好である
- ・横になってからそれほど時間がかからずに眠れている
- ・目が覚めてからスムーズに行動を開始できている
- ・熟睡感が得られている
- ・日中の疲労感が少ない
良い睡眠とは、寝つきと目覚めが良く、心身の疲労がとれることです。健康な状態で生活を送るために、良い睡眠は不可欠なものといえるでしょう。
良い睡眠にはノンレム睡眠が重要
良い睡眠とは、長時間の睡眠ではなく、どのぐらい深い眠りにつけたかが重要です。
睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。レム睡眠は、浅い眠りのことで体が休んでいますが脳は働いている状態です。一方、ノンレム睡眠は、深い眠りのことで、身体も脳も完全に休んでいる状態になっています。
睡眠中は、ノンレム睡眠とレム睡眠が約90分のサイクルで繰り返します。そのため、すっきりと目覚めよく起きるためには、浅い眠りであるレム睡眠の状態で起床することが重要です。90分サイクルでノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返すことを利用して、3時間や4時間30分で起床すると、睡眠時間のわりにすっきりした目覚めが期待できます。
良い睡眠が及ぼす影響
良い睡眠は次のような影響を及ぼします。
- ・疲労回復
- ・精神的な安定
- ・生活習慣病予防
- ・記憶の定着
以下でそれぞれについて簡単に説明します。
疲労回復
良い睡眠は、疲労回復には必須なことです。睡眠中は、呼吸や脈拍はゆっくりとなり、血管がゆるんで血圧が下がり、筋肉も弛緩します。体温が下がりエネルギー消費量は抑えられ、体は休養状態となります。また、睡眠中に分泌される成長ホルモンは、身体の修復や疲労回復に重要な役割を果たすことが知られています。
このように、良い睡眠は体を休ませ回復させるためには、必要なことなのです。
精神的な安定
良い睡眠は、肉体的な疲労だけでなく精神的な疲れも取り除き、精神的安定へとつながります。睡眠の質が低下し慢性的にストレスを感じるようになると、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌量が増加します。慢性的なコルチゾール分泌過多によって、うつ症状が出やすくなることがわかっているため、注意が必要です。そのため、良い睡眠は精神的な安定につながるといえます。
生活習慣病予防
良い睡眠は、肥満や高血圧、メタボリックシンドロームなどの予防になるといわれています。慢性的な睡眠不足になると、糖代謝異常が現れやすくなり肥満や2型糖尿病の発症リスクが高くなってしまうのです。また、睡眠不足は交感神経を活性化させ血圧が上昇するため、高血圧の発症リスクも高くなるといわれています。
そのため良い睡眠をとることは、生活習慣病の予防につながるといえます。
記憶の定着
人間の記憶は、睡眠中に整理され定着されることが明らかになっています。そのため、良い睡眠をとることは、記憶の定着に好影響を与えると考えられています。
まとめ
良い睡眠をとるための方法や良い睡眠が与える影響などをご紹介しました。
日中の過ごし方や睡眠環境を整えるだけで、良い睡眠をとれるようになることは可能です。逆に、日中の過ごし方や睡眠環境によって睡眠の質を低下させてしまっている場合もあります。不眠症で苦しんでいる方は、まず日中の過ごし方や睡眠環境を見直してみてください。
不眠症をできるだけ早く解消し、充実した生活を送れるようになることを願っています。
よくある質問
Q.薬を使わずに不眠症を改善することはできますか?
A.できます。薬を使うことに比べると時間がかかる傾向はありますが、それぞれの状態に適切な方法をとることで、不眠症の改善が期待できます。
Q.寝る前にアルコールを飲んではいけないのですか?
A.睡眠の質を低下させる可能性があるため、寝る前にアルコールを飲むのは控えましょう。
アルコールは、リラックス効果で眠れる場合もあります。しかし、3時間ほど経つと、アルコールが代謝してできるアセトアルデヒドの覚醒作用で深い眠りは減り、浅い眠りが増えてしまうのです。また、アルコールには利尿作用もあるため、睡眠中にトイレに行きたくなり何回も目が覚めてしまう可能性もあります。