寝起きの頭痛は不調のシグナル
朝目が覚めて起き上がった瞬間、ズキンと頭に痛みを感じた経験はないでしょうか。「少し頭が痛いだけ」と見過ごされがちな症状ですが、深刻な病気が隠れている恐れがあります。
もしかすると寝起きの頭痛は体調不良のシグナルなのかもしれません。まずは、どうして頭が痛くなるのか、その理由を見ていきましょう。
いびき・睡眠時無呼吸症候群
寝起きの頭痛は「いびき」や「睡眠時無呼吸症候群」によって引き起こされているのかもしれません。
いびきや睡眠時無呼吸症候群とは、加齢や肥満、生活習慣の乱れによって引き起こされる睡眠障害のことです。例えば、次の影響で気道が狭まってしまい、うまく酸素を取り込めなくなります。
- ・気道まわりに脂肪がつく
- ・お酒の飲みすぎで口呼吸をしている
- ・舌の筋肉が緩んで気道を塞いでいる
睡眠中にうまく酸素を取り込めなければ、その影響が起床時に頭痛として表れます。自分の睡眠中の行動が、そのまま体調不良につながってしまうため、頭痛を感じたら病院に相談するのがおすすめです。
片頭痛
寝起きの頭痛は「片頭痛」によって引き起こされるケースがあります。
片頭痛は、こめかみ付近に脈打つような痛みを感じる病気のことです。例えば、次のような理由で片頭痛を発症してしまいます。
- ・不眠
- ・ストレス
- ・季節変化による体調不良
- ・睡眠時間が長すぎたことによる心拍数・呼吸数の減少
- ・寝起きの急激な血圧増加
- ・月経前後
片頭痛は、誰にでも起こりうる病気です。一時的な頭痛で終わるケースが多いのですが、連日続くようなら病院に相談しましょう。
緊張型頭痛
睡眠時の姿勢によって引き起こされる「緊張型頭痛」で、寝起きの頭痛を発症する人がいます。例えば、睡眠時の姿勢が次のような状態になると、緊張型頭痛を発症しやすくなるので注意してください。
- ・寝返りを打たない
- ・枕の高さ・固さが合わない
- ・ベッドの質感が合わない
主に長時間同じ姿勢でいることが原因で、後頭部や首筋にじんわりとした痛みを感じるようになります。時間を置けば症状が和らぎますが、日々痛みを感じているのなら、早めに病院に問い合わせてみるのが良いでしょう。
緊張型頭痛
不定期に襲われる「群発頭痛」で、寝起きの頭痛を発症する人がいます。のたうち回るような痛み、そしてじっとしていられないほどの痛みを感じるのが特徴です。
主な理由は脳血管の拡張や炎症が原因ではないかと言われていますが、今のところ、はっきりとした原因が解明されていません。もし急な頭痛に襲われたのなら、その場で救急車を呼ぶことをおすすめします。
いびきと頭痛の関係性
寝起きの頭痛は、さまざまな理由で発症する問題ですが、中でも「いびき」と強い関係性をもっています。いったい、どのようなメカニズムで頭痛につながるのか、その関係性を詳しく見ていきましょう。
いびきと頭痛で疑うべき病気とは?
いびきと頭痛がセットになっているのなら、次の病気を疑う必要があります。
- ・睡眠時無呼吸症候群
- ・脳卒中
- ・耳鼻科疾患(アデノイド肥大、副鼻腔炎、蓄膿症など)
上記のうち、耳鼻科疾患は命の危険を伴うような病気ではありません。しかし「睡眠時無呼吸症候群」「脳卒中」については身体に大きなダメージを与えるほか、命を落とす恐れのある問題となります。特に睡眠時無呼吸症候群は、いびきをかく人が発症しやすい病気なので、発症の流れを詳しく理解することが重要です。
睡眠時無呼吸症候群でいびきと頭痛が起こるメカニズム
睡眠時無呼吸症候群により頭痛が起きるのは、低酸素状態が続いてしまうからです。
加齢や肥満によって気道が狭くなること、そして睡眠中に舌根沈下が発生することによって、一時的に呼吸が止まります。また、その状態が睡眠中に何度も繰り返されるため、酸欠状態となり、頭痛へと発展するのです。
低酸素状態は身体にとってストレスフルな状態ですので、早めの対策が欠かせません。
睡眠時無呼吸症候群かも!不安な方が取るべき行動は?
睡眠時無呼吸症候群は、放置すると命が危険にさらされる病気です。よって自己判断でどうにかするのではなく、まずは専門の医療機関に相談しましょう。
医療機関では、いびきや睡眠時無呼吸症候群の検査を利用できるほか、専門機器を用いた治療を受けられます。症状の度合いを詳しく知るためにも、ぜひ病院の利用を検討してみてください。
いびきや頭痛は脳梗塞や脳出血の危険!
寝起きの頭痛にはもうひとつ、脳梗塞や脳出血の危険があります。前述した睡眠時無呼吸症候群のメカニズムと合わせて、発症の流れや取るべき行動を見ていきましょう。
脳卒中でいびきと頭痛が起こるメカニズム
いびきや睡眠時無呼吸症候群を発症すると、低酸素状態が続きます。実はこの状態になると、脳にダメージが蓄積されて脳卒中を引き起こす恐れがあるのです。主な理由を以下に整理しました。
- ・血中酸素不足による脳の萎縮
- ・血圧の上昇
呼吸が止まると血圧が上がってしまうため、自然と血管が破裂しやすい状態ができてしまいます。いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状が重い人ほど脳卒中のリスクがあるのでご注意ください。
脳卒中かも!?不安な方が取るべき行動は?
「もしかすると脳卒中かもしれない」と不安を感じたのなら、ご自身で経過を見るのではなく、すぐに医療機関を利用してください。また、頭痛が激しく動けない場合には救急車を呼びましょう。
問題は脳の中で起きているため、自分で解決できる状態ではありません。生死に関わる問題になることも多いので「かもしれない」と感じたときには、すぐに治療を検討しましょう。
睡眠時無呼吸症候群は交通事故をおこしやすい
もし睡眠時無呼吸症候群を発症しているのなら、それが交通事故につながりやすいことを理解しておきましょう。睡眠中に蓄積されたダメージは、寝起きだけでなく、さまざまなタイミングで引き起こされます。中には、急に頭の痛みを感じて意識を失うケースもあるので注意が必要です。
もし運転中だったら、大事故を免れません。身体の健康を気遣い、健やかな生活を送るためにも、寝起きに頭痛を感じたのなら早めの行動を心がけてください。
睡眠時無呼吸症候群から発症しやすい生活習慣病3つ
睡眠時無呼吸症候群には、生死に関わる問題だけでなく、生活習慣病のリスクがあります。具体的に、どういった生活習慣病を引き起こしやすいのか、その症状を詳しく見ていきましょう。
高血圧
睡眠時無呼吸症候群を発症する人の多くが、高血圧になります。
j-stageの「内分泌性高血圧症としての睡眠時無呼吸症候群の病態と治療」という研究報告によると、発症者の約50%近くが高血圧になっているとまとめられています。高血圧になると、心筋梗塞や動脈硬化といった心疾患につながるため、早めの治療が必要です。
糖尿病
睡眠時無呼吸症候群は、糖尿病の合併症を引き起こす可能性があります。
睡眠の質が低下すると、インスリンの分泌機能も低下します。その結果、身体がうまくインスリンをつくりだせなくなり、糖尿病のリスクが高まってしまうのです。
内臓脂肪肥満
睡眠の質が低下すると、ストレス解消のために暴飲暴食する人が増えてしまいます。
暴飲暴食が続くと内臓脂肪が増えて、肥満体型へと変わってしまうでしょう。以前までの体型から大きく変化してしまうため、内臓や関節を痛めてケガや病気を発症しやすくなります。また、肥満にも糖尿病のリスクがあるので、日々生活習慣を考えることが欠かせません。
睡眠時無呼吸性頭痛にならない4つの対策
「睡眠時無呼吸症候群を発症したくない」「寝起きの頭痛を回避したい」
このように思っている方は、ご紹介する4つの対策を実施してください。生活の見直しが改善・予防の効果を生み出すので、始められる項目から実践してみましょう。
太り過ぎに要注意
太り過ぎると気道まわりにお肉がついてしまうので、暴飲暴食や偏食に気を付けましょう。毎日バランスの取れた食事をとることはもちろん、食べ過ぎに注意してください。
お酒の飲み過ぎに要注意
アルコールを摂取すると気道や舌の筋肉が緩んでしまいます。その結果、睡眠時無呼吸症候群を発症しやすくなるのでお酒の飲みすぎに注意してください。
また、酔った状態で眠ると睡眠時無呼吸症候群を発症しやすくなります。症状を回避するためにも、寝る前3時間前に飲酒しないように気を付けましょう。
口呼吸に要注意
普段から口呼吸している人は、いびきや睡眠時無呼吸症候群を発症しやすい状態なので、鼻呼吸へと矯正することが重要です。
中には、花粉症や鼻炎などで仕方なく口呼吸している人も多いでしょう。それならまずは、花粉症や鼻炎の改善から始めてみてはいかがでしょうか。
寝起きの頭痛の治し方
寝起きの頭痛の治し方を探しているのなら「自分でできること」「自分でできないこと」を理解して正しい行動を取ることが大切です。
主に2つの方法で寝起きの頭痛を改善できます。ぜひ参考にしてください。
生活習慣の改善
まずは自分でできる対策として、生活習慣を改善しましょう。例えば、次のような行動がいびきや睡眠時無呼吸症候群を改善してくれます。
- ・程よい運動
- ・バランスの取れた食事
- ・同じ時間に就寝・起床
生活習慣の乱れは、そのまま身体に影響を与えてしまいます。寝起きの頭痛も生活習慣の乱れが原因ですので、始められることから実践してみてください。
クリニックへの相談
次に、どうしても自分で解決できないとお悩みなら睡眠を専門とした医療機関・クリニックに相談しましょう。医療機関では、寝起きの頭痛の治し方に関するのアドバイスはもちろん、検査・治療を提供しています。
自分にできないことはプロに任せるという意識が重要です。豊富な経験と知識をもつ医療機関なら、すぐに解決策を提案してもらえるでしょう。
寝起きの頭痛に関する5つの疑問
寝起きの頭痛に対して、まだ分からないことが多いとお悩みの方向けに、よくある5つの疑問を整理しました。Q&A形式で解説しているので、気になる項目をチェックしてみてください。
片頭痛のNG行為や解消法とは?
片頭痛は、血管が拡張して痛みが発生します。よって、次に示す血管拡張に関わる行為は避けるようにしましょう。
- ・入浴
- ・運動
- ・マッサージ
- ・喫煙、飲酒
また、チラミンが含まれているものを食べると、血管が拡張されやすくなります。チーズ、チョコ、ソーセージなどの食材を控えるようにしましょう。
緊張型頭痛のNG行為や解消法とは?
緊張型頭痛は、同じ姿勢で眠るなどによって血流が悪くなることが原因で発生します。例えば次のような血流の悪くなる行為を控えてください。
- ・患部を冷やす
- ・長時間同じ姿勢で過ごす
- ・水風呂に入る、シャワーだけで済ます
血流が悪くなると、さらに頭痛が悪化する恐れがあります。特に寝起きは、上記の行為を避けるようにしましょう。
不眠を伴う頭痛はすぐ治る?
不眠を伴う頭痛は「すぐには」治りません。コツコツと継続的に不眠を治療する必要があります。もし治し方が分からないとお悩みなら、まずは医療機関に相談しましょう。
痛み止めを自己判断で飲むのは危険?
最近は、ドラッグストアなどで、簡単に痛み止めが手に入るようになりました。しかし、頭痛改善のために痛み止めを長期間すると、薬が効かなくなり、頭痛の慢性化を引き起こすかもしれません。
逆に身体を悪くするケースも多いので、安易な自己判断で薬を服用し続けるのではなく、医師による正しい診断・処方を受けることが治療への第一歩となります。
何科を受診すれば良い?
不眠症状や頭痛でお悩みの方は、まずは内科を受診すると良いでしょう。不眠症と頭痛、どちらの診察も受けられます。
また、不眠症状に悩んでいる場合は精神科や心療内科、頭痛に悩んでいる場合は、神経内科や脳神経外科でも診療可能です。最近では、睡眠の問題を専門に診察する睡眠専門外来や、頭痛などの痛みに特化した頭痛外来やペインクリニック(痛み専門外来)など、より患者のニーズに合わせた診療科が増えています。目的に合う医療機関を利用してみましょう。
まとめ
寝起きの頭痛は、いびきや睡眠時無呼吸症候群、不眠症など、さまざまな要因で発生します。また、頭痛に関係する睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣の乱れによって発生する場合もあるため、日常生活の改善に取り組みましょう。
「ちょっと頭が痛いだけ」とないがしろにされがちな頭痛ですが、脳卒中といったリスクもあります。もし日常的に頭の痛みを感じているのなら、この機会に医療機関で検査を受けてみてはいかがでしょうか。
よくある質問
Q.寝起きの頭痛の原因は何?
A.寝起きの頭痛の原因は「寝起きの頭痛は不調のシグナル」で紹介しています。例えば、以下のような原因で頭痛が発生します。
【いびきや睡眠時無呼吸症候群による頭痛】
・気道まわりに脂肪がつく
・お酒の飲みすぎで口呼吸をしている
・舌の筋肉が緩んで気道を塞いでいる
【片頭痛】
・不眠
・ストレス
・季節変化による体調不良
【緊張型頭痛】
・寝返りを打たない
・枕の高さ・固さが合わない
・ベッドの質感が合わない
Q.寝起きの頭痛の対策や治し方は?
A.寝起きの頭痛の対策や治し方は「睡眠時無呼吸性頭痛にならない4つの対策」「寝起きの頭痛の治し方」で紹介しています。
頭痛の原因となる睡眠時無呼吸症候群を改善したいなら、生活習慣の改善を心がけましょう。自己対策としては運動や食事を気にかけることによって改善できます。また、自分で改善できないとお悩みなら、医療機関に相談するのがおすすめです。専門機器を用いた検査・治療を受けられます。