睡眠時無呼吸発作とは?
睡眠時無呼吸発作とは、睡眠中に無呼吸発作が発生してしまう呼吸障害の一つです。
睡眠中に10秒以上の呼吸停止状態が続くことを無呼吸と言い、20秒以の呼吸停止状態が続くことを無呼吸発作と言います。
ご家族やパートナーと寝室を共にしていると、いびきや呼吸が途中でピタリと止まり、息ができているのか心配になるといった経験はないでしょうか?
ご年配の方や、中年の男性に多くみられる症状ではありますが、他人から注意されない限り気が付きにくい症状のため、一人暮らしや住まいの状況によって、自分では気が付かぬうちに無呼吸発作を発症しているケースが多いです。
また、睡眠時無呼吸発作が頻繁に起こることによって、睡眠時無呼吸症候群を招いてしまいます。睡眠時無呼吸発作はあくまでも危険信号であり、睡眠時無呼吸症候群こそが、最も危険な状態です。
睡眠時無呼吸症候群とは?
無呼吸や無呼吸発作が睡眠中に30回以上、もしくは一時間の中で5回以上現れる状態のことを、睡眠時無呼吸症候群と言います。
睡眠中に無呼吸発作の症状が頻発するということは、体内の酸素が不足してしまうということです。
体内が低酸素状態になると、睡眠中に何度も目を覚ましたり、日中も眠化が残っているような感覚を抱き、疲れや倦怠感が体に蓄積されていきます。
睡眠時無呼吸症候群の基本的な症状は、日中の判断力が鈍る程度のことだと軽視されがちですが、低酸素状態は体や臓器への負担が大きく、心筋梗塞であれば3倍、脳梗塞は4倍の発生率を高めてしまうため、極めて危険な状態です。
では、睡眠時に発生する発作の原因は、一体どこに潜んでいるのでしょうか。
睡眠時に発作を引き起こす原因
睡眠時無呼吸症候群を発症する無呼吸発作には、閉塞性睡眠時無呼吸症候群と、中枢性睡眠時無呼吸症候群の二つの種類があります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群とは、口や鼻の空気の通り道が狭くなることによって発作を引き起こすことをいい、二種類目の中枢性睡眠時無呼吸症候群は、脳から呼吸指令が出なってしまう呼吸中枢の異常によるものです。
しかし、中枢性睡眠時無呼吸症候群は、発症のメカニズムが完全には解明されておらず、発症の確率もかなり低いため、大抵の場合は閉塞性睡眠時無呼吸症候群であると考えて良いでしょう。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、いびき・肥満・生活習慣からもたらされることが多く、特にいびきは発症の原因でもあり、異変を知らせる信号であるため極めて重要です。
いびきが及ぼす体への悪影響
映画や漫画などでもよく表現されるせいか、大きないびきをかいて眠っている人を見ると、気持ちよくぐっすり眠っているような印象を持ちませんか?
実はそれは大きな勘違いで、いびきは睡眠時に呼吸器が塞がることによって生まれるただの雑音でしかありません。そして、いびきが発生しているということは、体に酸素が送り込まれにくくなっているということであり、脳へ送られる酸素量が低下しているということです。
また、睡眠時の口呼吸は睡眠時無呼吸症候群だけでなく、扁桃腺や口内炎、歯周病や口臭の悪化など、無数のリスクを伴います。
では、いびきはなぜ起こるのでしょうか?また、どんな人がいびきをかきやすいのでしょうか。
いびきの仕組み
いびきは、睡眠中に気道が狭くなり、適切に空気を吸い込むことができなくなることによって発生します。
睡眠中は仰向けになることで、喉の奥にある口蓋垂(のどちんこ)や舌根、咽頭蓋などが重力の力で下へ沈むため、気道を圧迫させてしまいます。
しかし、このように気道が狭くなる状態は、睡眠時には誰にでも起こりうることです。問題なのは、気道が完全に塞がってしまう状態であり、気道が完全に塞がることで無呼吸が生まれ、無呼吸発作へとつながります。
気道を塞いでしまう原因は、体質や生活習慣にあります。下顎が小さい方や扁桃腺が大きい方は、気道が狭くなりやすいです。ですが、いびきが多い方の原因の60%が肥満であるとされています。
首周りについた脂肪が気道を狭めてしまうからです。
そのほかにも筋肉を緩めてしまう飲酒、睡眠薬も原因となり得ます。
睡眠時無呼吸症候群が引き起こす症状
睡眠時無呼吸症候群が引き起こす症状は、軽いものであれば睡眠中の目覚め、日中の眠気、倦怠感、頭痛、集中力の低下などが見られますが、命に関わる大きな症状としては、高血圧、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病などの合併症が見られます。
日常のだるさや倦怠感は無視しがちな症状ですが、睡眠時無呼吸症候群を発症している方は交通事故の割合も高くなる傾向があり、日中の注意力不足による死因は、歳を重ねるごとに増え続けてしまいます。
また、無呼吸という病名から、呼吸停止による死因が勘違いされていることが多いですが、睡眠中の窒息死の例はなく、大きな合併症か、日常の注意力欠如に伴う事故が大半です。
個人差はありますが、睡眠時無呼吸症候群を放置することで、寿命が7年から8年縮まるとも言われているため、
睡眠時無呼吸発作の疑いを感じた方は、なるべく早く検査を受けるようにしてください。
睡眠時無呼吸発作を発見するには?
他人からいびきを注意されることが多い方や、しっかりと眠ったはずなのに翌朝起きるのが辛い、倦怠感がある、体が重いなどの症状がある場合、睡眠中に無呼吸発作を起こしている可能性が高いです。
また、睡眠時無呼吸症候群を発症している方の特徴として、起床時の口の乾きや、睡眠中の息苦しさ、何度も目が覚めるなどの特徴が見られます。
一人での発見が難しい症状ではありますが、起床時のだるさや、睡眠中の覚醒が続いている方は、なるべく早い診察を心がけてください。
無呼吸発作の主な治療方法
睡眠時無呼吸発作は自分ではなかなか気がつきにくく、初期症状も単なるいびきであると思われることが多いため、初期段階で発見されることは少ないです。つまり、睡眠時無呼吸症候群に陥って初めて診察を受けるケースが大半であるということです。
治療方法としては、症状や体の状態に合わせていくつかの種類があります。明らかに肥満症であれば、単なるカロリー制限で済む場合もありますが、発作の頻度が高いと判断された場合、夜間に空気を直接送り込む装置をつける治療法も有効とされています。
特に代表的に三つの治療方法があり、症状に合わせて適切な治療を受けることになります。
- ・CPAP療法
- ・マウスピース
- ・外的手術
CPAP(シーパップ)療法
CPAP療法は睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法です。
CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)とは言葉の通り、鼻に装着した装置から空気の圧を送り込み、睡眠時の気道を適切に確保するための治療法です。
CPAPは、保険適用の場合1ヶ月5000円程度、保険適用外の場合は1ヶ月15000円程度の費用がかかります。現在日本国内、欧米で最も普及している治療法です。
マウスピース
マウスピースを用いた治療法は、比較的軽度な無呼吸発作を発症している方を対象としています。
睡眠時無呼吸症候群の初期症状の方への効果は非常に高く、マウスピースで十分です。
マウスピースでの治療を受ける場合は、歯科医で自身の口腔検査を受けた上で行うのが最適ですが、市販にも2000円前後の金額でいびき防止グッズとして販売されています。
外的手術/口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)
重度の睡眠時無呼吸症候群の場合、もしくは顎の形状が発作の原因となっている場合は外科的手術を行います。
代表的な手術は口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)と呼ばれるもので、口蓋垂(のどちんこ)とその周辺の口蓋を切除して、気道の塞がりを改善します。
ただし、術後には完治するまでの間に激しい痛みを感じたり、飲んだ水が鼻から逆流してしまうなどの症状が続くという声が多いです。
睡眠薬の服用には注意が必要
睡眠時無呼吸症候群は自分でなかなか気がつかない症状のため、ただの寝不足だと勘違いしてしまうことが非常に多く、寝不足改善のために睡眠薬を処方されているという場合があります。
しかし、睡眠薬の中には睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させてしまうものがいくつか確認されています。睡眠薬には筋弛緩作用が働いているため、喉の周りの筋肉が緩み、気道の圧迫を促進させてしまうからです。
筋弛緩作用が含まれる薬。
- ・ハルシオン(トリアゾラム)
- ・リスミー(リルマザホン)
- ・レンドルミン(ブロチゾラム)
- ・サイレース(フルトラゼパム)
上記5点が睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性のある睡眠薬です。
一方で、下記2点の薬は菌置換作用が起きないように改善された薬です。
- ・マイスリー(ゾルピデム)
- ・ルネスタ(エスゾピクロン)
睡眠時無呼吸症候群と、睡眠薬の関係をしっかりと理解した上で処方していただくように気をつけなければいけません。
睡眠時無呼吸発作と未熟児無呼吸発作
睡眠時無呼吸発作について、成人に向けた詳細を記載しましたが、新生児に発症する無呼吸発作のことを、未熟児無呼吸発作といいます。
原因は、呼吸中枢の未発達による中枢性無呼吸と、頭や首の位置が悪いことで呼吸器が塞がる閉塞性無呼吸があります。無呼吸の症状は、在胎期間37週未満で出生した場合に25%の確率で発症しますが、44週を超えることで発症の確率は大幅に減少します。
まとめ
睡眠時無呼吸発作は、睡眠時無呼吸症候群を引き寄せます。
軽い症状が多く、ただの寝不足や疲労と判断してしまいがちですが、心筋梗塞や脳梗塞を発症する確率を大幅に高めてしまい、最悪の場合命を落とすケースも少なくありません。
いびきは自分では気がつきにくく、肥満や生活習慣の悪化にも自ら気がつき改善しようと試みるのは簡単ではありません。ですが、見落としがちなところにこそ大きな病や危険性は潜んでいます。
無呼吸発作は気がついたとしても治療に時間がかかり、病院に行けばすぐに完治するといった病ではありません。
自分の体を少しずつむしばむ病です。
あなたの生活に、心当たりはありませんか?
早期発見が何よりも重要です。この記事で無呼吸発作、睡眠時無呼吸症候群の危険性を感じていただければ幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。