睡眠時無呼吸症候群と寝方の関係とは
睡眠時無呼吸症候群といえば、年齢を重ねた男性が発症するものだというイメージがありますよね。
じつはこの症状、加齢も原因のひとつですが、性別や年齢を問わず誰でも発症する可能性がある睡眠トラブルなのをご存じでしょうか。
そこでまずは、睡眠時無呼吸症候群の概要と、無呼吸になりやすい人の姿勢、そして症状の予防方法について解説していきます。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が浅くなったり、止まったりしてしまう病気です。
この病気の症状は複数ありますが、代表的な症状は「いびき」が当てはまります。
中には、周囲に響くような大きないびきをかいている人もいるでしょう。
これは、口から肺にかけて伸びる気道が塞がってしまうのが原因であり、睡眠中に緩んだ舌が、喉の方に落ち込むことにより発生します。
ただし、睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に発生するため、自分だけでは気が付きにくい病気です。
もし「しっかり寝ているのに眠い」「頭がボーっとして集中できない」と感じる方なら、寝ているときに症状が出ているかもしれません。
無呼吸になりやすいのは仰向けの姿勢
あなたは、いつもどのような姿勢で眠っているでしょうか。
中には、天井を見つめる仰向けの姿勢で眠っている人も多いでしょう。
この姿勢は、よくTV番組やマンガに登場する睡眠の姿勢なので、正しい姿勢だと思い、仰向けで眠っている人も多いはずです。
ですが本当は、この姿勢こそ睡眠時無呼吸症候群を誘発してしまうのです。
日本人は顎が小さく、舌が気道側に落ち込みやすい骨格をしています。
そのため、仰向けという姿勢は重力も合わさり、舌を喉側へ落とし込んでしまいやすいのです。
特に加齢が進んでいくと、筋肉量が減り、舌の筋肉も自然と衰えていきます。
その結果、無呼吸症候群を発症してしまう場合があるので、
逆に「座って寝ていてもいびきをかいてしまう」「うつ伏せでもいびきをかいてしまう」場合は、
別の原因が考えられるので病院やクリニックで検査を受ける事をおすすめします。
横向きの寝方で睡眠時無呼吸症候群を予防しよう
睡眠のときに、正しい姿勢で眠りたいなら、横向きで就寝してください。
かつて、睡眠時の姿勢と無呼吸の関係性を調べる研究が行われたことがあり、仰向けの寝方をすると血中酸素濃度(SpO2)の最低値が上昇すると分かっています。
血中酸素濃度(SpO2)の最低値が下がると、より血中の酸素が減り、めまいや衰弱、嘔吐を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
また、横向きで寝る効果については、「ポリソムノグラフィー(PSG検査)」を受ければ簡単に分かります。
この検査は、センサーを使って睡眠時の状態を調べるというものであり、寝方を含め次の内容が把握できます。
- ・ 脳波
- ・ 眼球運動
- ・ 呼吸
- ・ 換気運動
- ・ 酸素飽和度
- ・ 心電図
- ・ 寝方
- ・ いびき
ポリソムノグラフィーは特定の病院だけで利用できる検査であり、一時入院が必要となります。
もし睡眠時無呼吸症候群に不安をお持ちなら、症状の度合いや睡眠時の特徴を知るためにチェックしてみるのもいいかもしれませんね。
横向きの寝方を維持する2つの方法
正しい睡眠の姿勢は横向きだと紹介しましたが、意識のない睡眠中、どのようにして横向きの寝方を維持するのでしょうか。
答えは、寝具の見直しを行い、横向きになりやすい環境を作ることです。
そこでここでは、2つの項目に分けて、横向きの寝方を維持する方法を紹介していきます。
いつも使っている寝具が、睡眠時無呼吸症候群に影響している場合もあるので、チェックしていきましょう。
自分に合ったまくらを見つける
まくらの種類があなたに合っていない場合、睡眠時無呼吸症候群を誘発する可能性があります。
例えば、まくらが高すぎたり低反発で柔らかすぎたりすると、眠っている間に気道が舌で塞がれて、無呼吸になってしまうかもしれません。
そこで今現在、症状に悩まされているなら、次の選び方を参考にまくらを買い直してみてはいかがでしょうか。
- ・ 自分の首にあった高さか
- ・ 頭が沈み込んで固定されないか
まくらは、気道が歪まず、頭の位置が高すぎたり低すぎたりしないまくらを選ぶことで、舌が喉側に落ちにくくなります。
また、低反発のまくらは気持ちいいかもしれませんが、仰向けがクセづいている人の頭を固定するのが特徴です。
寝返りがうちづらくなるため、程よい固さの沈み込みにくいまくらを選んでください。
もしまくらをお探しなら、寝具販売店といった実際に寝て確かめられる場所を訪問し、自分に合ったまくらを選ぶのがおすすめです。
寝返りがうてるマットレスを探す
まくらと一緒に、マットレスの買い直しを検討することも大切です。
マットレスの中にもスプリングやクッション、硬さなど様々な違いがあります。
中には寝返りがうちづらいマットレスもあるので、もしかすると自然と仰向けの姿勢で寝てしまっているのかもしれません。
そこで、マットレス選びでは、寝返りがうちやすい次のようなものを選んでみてください。
- ・ 体重を均等に分散してくれるか
- ・ 低反発すぎて沈み込んでいないか
マットレスは、頭側に重心がくると寝返りを打ちづらくなるので、体重を均等に分散してくれるものを選びましょう。
また、沈みすぎないマットレスを選ぶことも大切です。
まくらと同様に、マットレスも寝具販売店で実際に寝て確かめることができます。
寝返りがうちづらいと、身体の疲れが取れなかったり、関節を痛めたりする場合があるので、ぜひ検討してみてくださいね。
睡眠の正しい寝方や注意点についてより詳しく知りたい方は、いびきメディカルクリニックの記事「いびきの改善には横向きでの睡眠がおすすめ!」をご覧ください。
睡眠時無呼吸症候群の改善方法
睡眠時無呼吸症候群は、寝方を改善することで症状を出にくくできますが、他にも誘発する原因が複数あります。
そこでここからは、睡眠時無呼吸症候群の改善方法として、4つの対策を紹介していきます。
意外なポイントが無呼吸の症状を引き起こすので、予防策としてもチェックしておくのがおすすめですよ。
参考文献
適正体重の維持
睡眠時無呼吸症候群は、首まわりと喉まわりに脂肪が溜まることで、発症する場合があります。
これは、身体に溜め込まれた脂肪の影響で、気道を圧迫されることが原因となり、睡眠時に気道が塞がりやすくなってしまうのです。
もちろん、原因は脂肪ですので、日常的に余分な脂肪を溜め込まない生活を送りましょう。
もし、どれくらいの体重を目安にしていいか分からないなら、消費者庁から公開されている適正体重の資料を参考に、自分のBMIと標準BMIを把握しましょう。
【BMI計算式】
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)=BMI(kg/m2)
年齢 | 目標BMI(kg/m2) |
---|---|
20代、30代、40代 | 18.5~24.9 |
50代、60代 | 20.0~24.9 |
70歳以上 | 21.5~24.9 |
自分のBMIが分かったら、今日から適性BMIに近づくよう努力してみてはいかがでしょうか。
飲酒を控える
会社の飲み会や自宅でのリフレッシュに、お酒を飲んでいる人も多いでしょう。
このときお酒を適量に抑え、酔いが醒めてから眠っている人は問題ありませんが、就寝時でも酔いが回っている人や、寝る前までお酒を飲み続けている人は、注意が必要です。
アルコールは、筋肉の緊張をほぐす効果があります。
リフレッシュには効果的ですが、舌の筋肉まで弛緩したり舌が落ち込んだりするので健康的とはいえません。
特に酔った状態のまま症状が出てしまうと、意識がもうろうとします。
また、睡眠時無呼吸症候群に気づけず睡眠トラブルを起こしてしまう人もいるので注意が必要です。
もしお酒を飲むのであれば、就寝時間の3~5時間前までと決め、深酒しすぎないように気を付けてくださいね。
口呼吸を改善する
睡眠時無呼吸症候群を引き起こしやすい人の特徴として、口呼吸を行っている人がいます。
鼻炎やアレルギーといった鼻づまりはもちろん、日常的に口呼吸がクセづいていると、いつの間にか睡眠時無呼吸症候群を発症してしまうので注意してください。
もし口呼吸が続いてしまうと、喉を痛め、炎症を起こしてしまったり、免疫力が低下したりする場合もあります。
他にも歯肉炎や虫歯になる場合もあるので、口呼吸になっている原因の治療や、なるべく鼻で呼吸することを意識しながら改善していきましょう。
最近では、口呼吸改善の睡眠グッズがドラッグストアやクリニックで販売されています。
自分の意識だけじゃ治せないと感じたら、活用してみるのもいいかもしれません。
睡眠薬の服用を避ける
普段から寝つきが悪く、睡眠薬を服用している人もいるでしょう。
確かに睡眠薬は便利な薬ですが、就寝時の服薬は睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因になる場合があるので注意が必要です。
睡眠薬の服用がクセづいてしまうと、無呼吸になったときに発生する低酸素という症状が起きても、その回復が遅れてしまうトラブルが発生する可能性もあります。
自力で就寝できるように対策することはもちろん、もし自分で改善できそうにないなら、医師と用法用量の相談を行いましょう。
また、医師からトラブルを起こさない知識を聞き出すことをおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群になってしまう人はいびきをかきやすい
睡眠時無呼吸症候群を発症している人の多くは、睡眠時にいびきをかいています。
睡眠時無呼吸症候群といびきは同時に発生することが多く、同じような原因が関係しているのです。
中には「いびきがうるさい」と言われた経験をお持ちの方もいるでしょう。
それは、もしかすると無意識のうちに、睡眠時無呼吸症候群を発症しているかもしれません。
こちらの記事では、睡眠時無呼吸症候群と同時に発症しやすい「いびき」をかきやすい人・かきにくい人の特徴や原因を紹介しています。
いびき改善もあわせて実施したい方は、この機会にチェックしてみてください。
内部リンク:【あなたは当てはまる?】いびきをかきやすい人・かきにくい人の特徴まとめ
睡眠時無呼吸症候群にお悩みならクリニックの治療もおすすめ
もし自分の力で睡眠時無呼吸症候群を改善するのが難しいと感じているなら、クリニックで治療を受けるのも一つの手です。
そこで最後に、クリニックの探し方から治療にかけての情報を、3つのステップに分けて紹介していきます。
また、クリニックで行う治療内容についても紹介しているので、ぜひチェックしてください。
参考文献
ステップ1:病院を探す
睡眠時無呼吸症候群に対応してくれるクリニックは、主に次の通りです。
- ・ 内科
- ・ 呼吸器内科
- ・ 循環器科
- ・ 耳鼻咽喉科
- ・ 睡眠外来
- ・ 歯科・口腔外科
- ・ 精神科
比較的、いろんな場所で治療が受けられるのが特徴です。
また、自宅近くのクリニックをお探しなら、事前に病院の評価を調べておくことをおすすめします。
評価だけでなく、できる限り利用者コメントなども見ておくと、よい情報が見つかる場合があります。
ステップ2:問診・検査
病院を訪問したら、担当医から検査・ヒアリングを受けるのが一般的な流れです。
例えば日常生活の状況や、睡眠時無呼吸症候群でどのような支障が出ているのかなど、体調とヒアリング内容から症状を判断していきます。
このとき、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は「簡易無呼吸検査」や「ポリソムノグラフィー」を行い、睡眠時の状況を詳しく調べるのが特徴です。
もちろん睡眠が関わる検査ですので、翌日の予定は立てず、休みを確保しておきましょう。
ステップ3:診断・治療
検査結果がまとまるのは翌日以降となるので、再度クリニックを訪問して診断結果を聞きましょう。
このときに睡眠時無呼吸症候群の可否や、症状・検査で判明した健康状態、整理した評価値などを見せてもらえます。
もし、睡眠時無呼吸症候群と診断された場合には、このまま治療に移ります。
治療法については医師の判断によって変化するので、診断時に今後の治療内容を聞いておくようにしましょう。
クリニックで行う治療とは
睡眠時無呼吸症候群と診断されたなら、クリニックに通いつつ治療を受ける必要があります。
このときよく利用される治療は次の通りです。
- ・ CPAP(シーパップ)治療
- ・ 口腔内装置(マウスピース)治療
- ・ 外科的手術による治療
- ・ 生活習慣の改善
呼吸習慣を矯正する「CPAP(シーパップ)治療」は、専用の機器を用いて睡眠時の鼻呼吸をサポートしつつ、経過観察を行う治療です。
また「口腔内装置(マウスピース)治療」は、専用のマウスピースで顎を固定し、舌が落ち込みにくくする矯正治療です。
他にも、もし気道が狭まっていたりアデノイドが肥大していたりする場合は、身体的トラブルが影響しているので「外科的手術」を受けることも可能です。
最後に「生活習慣改善」では、クリニックを定期訪問して症状の改善を目指していく治療です。
まずは、始めやすい治療から挑戦してみてください。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は、就寝時の寝方や生活習慣によって引き起こされる、睡眠トラブルとして知られています。
女性が発症しやすかったり加齢で発症すると有名ですが、じつは性別や年齢を問わず誰でも発症してしまう病気なんです。
また、無呼吸を改善するためには、普段利用している寝具の見直しや生活習慣の改善が必要となります。
もし自身で改善したいと考える方がいるなら、本記事の情報を参考に、始められそうな対策からチャレンジしてみてください。
しかし中には、自分での改善が難しいと感じている人もいるはずです。
そんな時にはクリニックを利用して治療を受ける方法もあるので、早めの行動をとり睡眠時無呼吸症候群の改善を目指していきましょう。
よくある質問
Q.睡眠時無呼吸症候群は寝方が関係するの?
A.睡眠時無呼吸症候群は、気道が塞がりやすい寝方が原因で発症する場合もあります。
中でも仰向けの姿勢で寝ることがクセづいている方は、睡眠時に舌が喉に落ちやすく、気道を塞ぎやすい状態なので注意してください。
このとき覚えておいて欲しいのは、正しい睡眠の姿勢は気道確保しやすい横向きの寝方であることです。
就寝時は仰向けにならず、横向きの姿勢で眠りにつくように意識してください。
Q.横向きの寝方にはどうやってなればいいの?
A.もし横向きの姿勢を維持したいなら、現在利用しているまくらやマットレスといった寝具の見直しを行ってみるといいでしょう。
寝具の種類によっては寝返りをうちづらかったり、気道を塞ぎやすい姿勢になったりするものもあります。
専門の寝具販売店で実際に寝心地を確かめつつ、自分の身体にぴったりな寝具を選んでみてはいかがでしょうか。
また睡眠時無呼吸症候群にお悩みなら、クリニックに相談するのも手です。