睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療法は?
睡眠時無呼吸症候群には、閉塞性と中枢性、そのふたつが混ざっている混合性があります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、呼吸するときに空気が通る上気道が閉塞することで呼吸が止まってしまうタイプです。代表的な治療法は軽症のものから順に以下の通りです。
- ・生活習慣の改善
- ・マウスピース療法
- ・CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
この他にも原因によっては外科手術や薬物治療などが行われています。
中枢性睡眠時無呼吸症候群は、呼吸中枢が正常に働かなくなることで呼吸が止まってしまうタイプです。代表的な治療法は軽症のものから順に以下の通りです。
- ・薬物療法+生活習慣の改善
- ・夜間在宅酸素療法もしくはCPAP療法
それでは以下でそれぞれの治療法を詳しくご紹介します。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の治療法は?
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣病と深い関係があるため、どの治療を受けるにしても、生活習慣病に注意を払う必要があります。そのため、生活習慣の改善はどの治療を受けることになったとしても、併行して取り組むべきことです。
生活習慣の改善
軽症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群なら、生活習慣の改善をしただけでもよくなることもあります。
減量
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、肥満な人に多く発症していることは知られています。首周りに多くの脂肪がついてしまうと、気道を圧迫して空気が通る道が狭くなってしまうからです。そのため、肥満が原因で閉塞性睡眠時無呼吸症候群になってしまった人は、減量に取り組まなければなりません。
ダイエットとしておすすめなのは、糖質制限と有酸素運動です。
糖質制限は、今よりも少しだけ食べる量を減らす程度で十分です。過度な糖質制限は、低血糖による頭痛や倦怠感、思考力の低下などを引き起こす可能性があります。また、摂取カロリー不足になると筋肉量が落ちてしまう可能性があります。そのため、特に高齢者は過度な糖質ダイエットをしないように注意してください。
糖質が多いお米やパン、麺類、お菓子類、イモ類などの食べる量を少しだけ減らして、代わりに野菜やチーズなどの乳製品を多めに取るようにするのがおすすめです。
有酸素運動でおすすめはランニングや水泳ですが、それが難しい方は早歩きや水中ウォーキングなどをして脂肪を燃焼させましょう。大切なことは、継続して定期的に運動することです。毎日運動する時間帯を決めて、習慣にしてしまうことをおすすめします。
禁煙
タバコを吸うと、気道や鼻の粘膜を煙が通ることにより、慢性的な炎症を引き起こします。炎症した気道粘膜は腫れて気道が閉塞してしまうと、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高くなってしまいます。また、タバコの煙は口蓋扁桃や咽頭扁桃にも慢性的な炎症を引き起こし、気道を狭くしてしまう可能性があります。そのため禁煙すれば、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症を抑えることにつながると考えられています。
アルコールを控える
過度のアルコール摂取は、喉の筋肉の緊張を低下させ気道を広く保つことができなくなるため、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高くなります。そのため、就寝前はアルコールを控えた方が無難です。
また、無呼吸によって血中酸素濃度が低下すると、覚醒を促しますがアルコールが作用して感度が鈍くなり、血中酸素飽和度が低い状態が長い時間続くようになることも知られています。
薬の服用制限
精神安定剤や睡眠薬は、気道周りの筋肉の緊張を低下させ気道を広く保てことができなくなります。そのため、精神安定剤や睡眠薬を服用している人は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高いといえます。
気になる方は、医療機関で検査をして閉塞性睡眠時無呼吸症候群を発症しているかどうか調べましょう。もし、発症していたら主治医に服用量を減らせるか相談してみてください。
口呼吸の改善
口で呼吸をするようになると、舌が後方に落ち込み気道が狭くなります。そのため、口呼吸は閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクを高めます。
口呼吸の対策方法についてはコチラのコラムでも紹介しています。
上手にストレスを発散
過度なストレスは、自律神経を乱し呼吸が浅くなり脳に必要な酸素が運ばれなくなってしまいます。そのため、多くの酸素を取り込めるように口で呼吸をするようになってしまうのです。口で呼吸をすると、舌が後方に落ち込み気道を閉塞させるため、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクを高めます。
また、過度のストレスが原因で呼吸中枢が正常に働かなくなり、中枢性睡眠時無呼吸症候群を発症しやすくなるという報告もあります。
ストレスがかからない生活を送れればよいのですが現代社会ではそれは難しいため、上手にストレスを発散する方法を見つけて、ストレスを溜め込まないようにしましょう。
没頭できる趣味を見つける、運動をして汗を流す、気分転換のドライブに行くなどなんでもよいですが、手間がかからずに簡単にできることをおすすめします。ストレスを発散するためにしようとしていることなのに、手間がかかったり難しかったりすると逆にストレスが溜まってしまい、逆効果になってしまう可能性があるからです。
マウスピース療法
マウスピース療法は、睡眠中の下の顎の位置を前方に移動させることで、気道を広げ呼吸を改善する治療法です。閉塞性睡眠時無呼吸症候群の軽症から中等度で使用されています。マウスピースは健康保険を利用して対応している歯科医院で作成することができます。
ナステント
ナステントは、鼻から口蓋垂付近までチューブを挿入し、気道の閉塞を防止し呼吸を助けてくれる医療機器です。チューブはソフトな素材でできていて、体への負担を抑えて挿入できるようになっています。
チューブが奥まで入ってしまい取り出せなくなるのを防ぐために、端にストッパーがついています。持ち運びが楽で使用後は捨てられるため、出張先や外泊時にも使うことが可能です。軽症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に適した治療法といえるでしょう。
CPAP(シーパップ)療法(持続陽圧呼吸療法)
CPAP療法は、鼻マスクを装着しそこから圧力をかけた空気を送り込むことで、気道が閉塞することを防止する治療法です。鼻から空気を送り込むため、慢性鼻炎などで鼻が詰まっている方は、CPAP療法を受ける前に耳鼻咽喉科に行き鼻の治療を受ける必要があります。
CPAP療法は、睡眠時の無呼吸が減少し熟睡感が得られるため、日中の眠気の改善や起床時の疲労感などの改善が期待できます。
CPAPは対症療法のため、機器を外しているときは無呼吸を防止することはできません。使用目標として、使用期間の80%以上の日で使用し、1日4時間以上が最低のラインとなります。しかし、毎日6時間以上使用することが望ましいです。
自宅以外でも使用できるように、バックサイズに収容でき持ち運べる機器のため、出張先や外泊時にもできるだけ持参して使用するようにしましょう。
手術治療
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の原因が、骨格や扁桃肥大などの場合は、外科手術をして原因を解消することがあります。
口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)
UPPPは、扁桃肥大があり軟口蓋が長いことが原因で、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が発症している場合に行う外科手術です。気道の閉塞の原因となっている口蓋垂、口蓋扁桃、軟口蓋、咽頭扁桃の一部や切除して、気道を広げる治療が行われています。
この治療法はメスをいれるため、出血や痛みがあり体への負担が大きいことがデメリットです。そのデメリットを改善した治療法が最近行われています。
レーザーを口蓋垂や軟口蓋周辺に照射して組織を引き締めることで、切除した治療法と同様の効果が期待できる治療法です。組織を切り取っていないため出血がなく、痛みも抑えられています。
扁桃・アデノイド除去手術
子供に多く見られるのが、扁桃肥大やアデノイド肥大が原因の閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。そのような場合は、これらを取り除くことで気道の閉塞を解消する治療が行われています。
ご紹介した他に行われている外科手術は、小さな顎が原因となっている場合の上下顎同時前進術、舌の後方部分が狭いことが原因となっている場合のオトガイ舌骨前方牽引術、鼻中隔弯曲症による鼻詰まりを解消するために行う鼻中隔矯正手術、粘膜下下鼻甲介切除術などがあります。
薬物療法
閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する薬物療法は、補助的に行われる治療法です。
アレルギー性鼻炎を解消するために抗アレルギー薬や抗ロイコトリエン薬、点鼻ステロイド薬など、呼吸を調整する薬としてはアセタゾラミドなどが使用されています。
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)の治療法は?
中枢性睡眠時無呼吸症候群への治療は、原因となっている基礎疾患への治療を段階的に行っていきます。薬物療法と生活習慣の改善でも効果が認められなかった場合は、夜間在宅酸素療法もしくはCPAP療法などを行います。
薬物療法と生活改善
心不全が原因の場合は、薬物療法と生活習慣の改善を行います。
薬物療法として使われている薬は、血管を拡げて血圧を下げることで、心臓の負担を減らす効果が期待できるACE阻害薬や利尿薬、β遮断薬などです。
生活習慣の改善で大切なことは、禁煙や減塩などで心臓や脳血管への負担を減らすことです。また就寝前のアルコールを控えて睡眠の質をあげてください。運動は、有酸素運動を継続的に行いましょう。最初は、体調の様子を伺いながら軽い運動から始めて、問題がないようなら少しずつ負荷の大きい運動をするようにしてください。おすすめは、早歩きや水中ウォーキングなどの運動です。
夜間在宅酸素療法
在宅酸素療法は、現在の状態は安定しているが、酸素を十分に体内に取り込めない人に対して、長期間に渡り自宅で酸素吸入をする治療法です。
慢性心不全患者の中でNYHAの心機能分類Ⅲ度以上を満たし、終夜睡眠ポリグラフ検査でチェーンストローク呼吸、無呼吸低呼吸指数20以上が確認された場合に保険適用となります。
睡眠中に、鼻から酸素を吸入することで、睡眠の質や呼吸状態、低酸素血症の改善が見込めます。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群のタイプ別の治し方をご紹介しました。
閉塞性と中枢性で治療法は異なりますが、生活習慣の改善はどちらのタイプ、どの治療法でもやらなければならないことです。
睡眠時無呼吸症候群は、重症度や状態に合っている治療を受けることが大切です。命にかかわるような深刻な病気を引き起こす可能性があるので、できるだけ早く医療機関に行き、適切な治療を受けるようにしましょう。
よくある質問
Q.睡眠時無呼吸症候群の治療を受けるに際に、日頃の生活で注意すべきことはありますか?
A.治療方法によってそれぞれ注意すべきことは異なりますが、睡眠時無呼吸症候群は高血圧や糖尿病などの生活習慣病と関係しています。そのため、どの治療を受けたとしても、生活習慣病に注意しなければいけないことは共通しています。以下に注意すべきことをまとめておきます。
・適正体重を維持すること
・過度の飲酒を控えること
・睡眠薬や精神安定剤などの服用制限
・バランスの取れた食事をとること
・禁煙すること
・適度な運動をする習慣をつけること
・ストレスを上手に発散する方法を見つけること など
Q.CPAP療法は毎晩しなければいけませんか?
A.毎日使用することが望ましいです。
CPAPは対症療法のため、機器を外しているときは無呼吸を防ぐことができません。
使用目標として、使用期間の80%以上の日で使用し、1日4時間以上が最低ラインとなります。
しかし、毎日6時間以上使用していただくことが望ましいです。
自宅以外でも使用できるように、バックサイズに収容でき持ち運べる機器のため、出張や外泊時にもできるだけ持参して使用してください。