AHIとは?
AHIとは、「Apnea Hypopnea Index」の略で、睡眠1時間あたりの無呼吸、低呼吸の回数を測定した指数のことを指します。
AHIには一定の基準があり、その基準を上回るかどうかを測ることで、睡眠時無呼吸症候群を発症しているかどうか、さらに、症状の重症度まで測定することが可能です。
また、睡眠中に息が止まる、息がしにくいといった状態を数値に置き換えることによって、診断の解像度を高めることができます。
睡眠診断は、AHIを測定するところから始まると言っても過言ではありません。
AHIが指す無呼吸、低呼吸とは睡眠障害の一つであるため、これらについても理解が必要です。
無呼吸
無呼吸とは、睡眠時に呼吸が10秒以上停止している状態のことを指します。
睡眠中にこの無呼吸の状態が頻発してしまうことによって、体内が酸素不足に陥り、起床時のだるさや頭痛、日中の眠気などの症状につながることが多いです。
低呼吸
低呼吸とは、睡眠時の呼吸が通常時の半分程度になってしまう症状です。
これによって、体内へ送られる酸素量が低下し、無呼吸と同じように起床時のだるさや日中の倦怠感を招きます。
無呼吸よりも軽症な部類に入りますが、頻度が高ければ無呼吸と同等の悪影響を体に及ぼす可能性も高いです。
無呼吸発作
無呼吸発作とは、睡眠時の呼吸が20秒以上停止している状態のことを指します。
無呼吸よりもさらにひどい症状のため、脳や体が常に低酸素状態になり、日常生活で不注意による事故を引き起こす原因となることが多いです。
無呼吸、低呼吸、無呼吸発作はどれも呼吸障害であり、頻繁に症状が見られる場合、睡眠時無呼吸症候群へと繋がります。
AHIによる睡眠時無呼吸症候群の診断基準
AHIを測定することによって、睡眠時無呼吸症候群の重症度を診断することができます。
診断の結果、AHIの数値が5以上の場合、睡眠時無呼吸症候群であると診断されます。AHIの数値が5を超える状態というのは、睡眠1時間あたりに無呼吸、低呼吸が5回以上続いているということです。
5以下の場合、その日の疲れやストレス、寝具の影響の可能性も見られるため、大きな心配はありません。
また、5以上の数値の場合、睡眠時無呼吸症候群の重症度が高くなるということになります。
AHIの数値が5の段階で睡眠診断を受けたのであれば、比較的軽症な症状なので、少しずつ睡眠を改善していくことで改善の余地が見られます。
AHIの数値が示す重症度とは一体どれくらいなのか、見ていきましょう。
AHIをもとにした軽症から重症の基準
AHIによる重症度の判別は、年齢によっても異なります。
一般的に成人の方を診断する場合、AHI5〜15の数値を軽症とし、15〜30を中等症、30以上を重症と区別することが多いです。
病院によっては40回以上を重症と診断することもあるようですが、この辺りは医師によって意見がばらつき、診断を受けた方の体質や骨格による変動もあります。
小児の場合、AHI1〜5を軽症とし、5〜10を中等症、10以上を重症と診断するため、成人男性のAHIの指標での比較はしてはいけません。
睡眠時無呼吸症候群とは?
AHIを測定することで睡眠時無呼吸症候群を発症しているかを診断できると説明してきました。具体的に、睡眠時無呼吸症候群についても解説しておきます。
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中の無呼吸、低呼吸が無呼吸発作を起こし、無呼吸発作が頻発して発生することによって、睡眠中に呼吸停止状態を発生させる病気です。
睡眠時無呼吸症候群を発症することによって、脳や身体へ送り込まれる酸素が減り、日中のだるさや倦怠感を招き、どれだけ寝ても眠った気がしないなどのストレスを抱えることになります。
睡眠時無呼吸症候群を発症する原因には、脳にある呼吸中枢の影響による中枢性睡眠時無呼吸症候群と、気道の圧迫が原因となる閉塞性睡眠時無呼吸症候群の二種類があります。
たいていの場合は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を発症しますが、一定の確率で中枢性睡眠時無呼吸症候群を発症することもあります。原因によって治療法が異なるため、自己判断で済まさずに、まずは自分がどちらのタイプなのか調べるようにしましょう。
中枢性睡眠時無呼吸症候群
中枢性睡眠時無呼吸症候群は睡眠時無呼吸症候群の発症率のわずか数%のため、極めて珍しい症状です。
脳の呼吸中枢が異常をきたし、うまく呼吸をするように命令ができなくなることが原因と言われていますが、そのメカニズム自体は未だ完全には解明されていません。
ただし、心臓に疾患を持つ方や、高齢者の方には発症が見られることが多いです。
しかし、全体的には数%の確率なので、たいていの場合は閉塞性の睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群
閉塞性睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に何らかの影響によって気道が塞がり、呼吸が困難になることで発症します。
気道が塞がる原因としては、いびき、枕の高さ、顎の骨格の影響などと幅広く、先天的な原因から後天的な原因まで様々です。
しかし、この閉塞性睡眠時無呼吸症候群のほとんどの原因は肥満と言われています。
体重が増えることによって、頬や首の周りに脂肪がついてしまい、睡眠中にその脂肪が重力の影響で気道を圧迫することで、呼吸時の酸素供給量が低下します。
中年から高齢まで、歳を重ねるにつれてリスクが高くなる病気です。
AHIの測定方法
睡眠時無呼吸症候群は、他者からの指摘がない場合、自分自身ではなかなか気がつきにくい症状です。そのため、無呼吸、低呼吸状態を測定するAHIを測定することも、自分一人では不可能なため、通院は必須になります。
AHIの測定は2種類です。
一つは簡易ポリグラフと呼ばれるもので、もう一つはポリソムノグラフィー(PSG)といいます。
簡易ポリグラフ検査の方が比較的簡単で自宅でも行うことができるため、まずは簡易検査を受けることが多いです。ポリソムノグラフィー検査は簡易ポリグラフよりも精度が高いため、簡易ポリグラフで異常が見られた方がもう一度、より高い解像度で検査するための用途として用いられることが多いです。
簡易ポリグラフ
簡易ポリグラフ、または簡易検査と呼ばれるこの検査方法は、専用の機器を使って行います。この簡易ポリグラフで用いる機器は操作が非常に簡単であるため、持ち帰って自宅で検査を行うことができるのが特徴です。
その一方で、覚醒中か睡眠中であるかの測定はできないため、装着している間の血液中の酸素状態や脈拍を測り、無呼吸、低呼吸などの呼吸障害を調べることしかできません。
本来は睡眠中に無呼吸が発生しているかどうかを測定したいのですが、簡易ポリグラフでは、機器を装着している間を、睡眠中と仮定することでAHIを測定します。
測定能力は特筆して高い訳ではないので、この簡易ポリグラフでAHIの数値が10〜15と計測された場合、より解像度の高いポリソムノグラフィー(PSG)を受けることになります。
ポリソムノグラフィー(PSG)
簡易ポリグラフを用いてAHIを測定した際に、一定の基準値を超えていた場合、ポリソムノグラフィー(PSG)検査に移ります。
当然ですが、ポリソムノグラフィー検査は簡易ポリグラフとは比較にならない精度と解像度を誇ります。脳や体を隅々までチェックする必要があるので、検査には最低1日から数日の入院が必須です。
いびきや心電図、脳波まで調べることができるので、睡眠障害の原因を突き止めるのに最も正確な診断が可能と言えるでしょう。
二段階目の診断としての役割が多いですが、高齢者や、診察の段階で重症の疑いが見られる方は、すぐさまポリソムノグラフィー検査を受けることも珍しくありません。
また、泊まり込みの診断が必要なため、平日は仕事などで訪れることができない人を対象に、土日の検査が可能であるのも魅力的です。
睡眠時無呼吸症候群の改善!AHIを低下させるには?
AHIの数値の低下は、睡眠障害の改善に直結します。AHIの数値を下げるというのは、無呼吸、低呼吸の回数を減らすということです。
無呼吸、低呼吸などの呼吸障害は無自覚のうちに発症しているため、自力で解決するのは不可能に近く、偶然買い替えた枕や寝具が体にあっていたり、私生活の影響で肥満が解消されたりなど、意識していない変化によって改善されるケースが稀にあります。
しかし、基本的には睡眠の質の改善、睡眠時無呼吸症候群の治療が行われない限り、AHIの数値が下がることはありません。
ahiの低下と睡眠の質
AHIの数値を下げるには、睡眠の質の見直しが必ず必要になります。
眠っている時間に脳へ送られる酸素量が低いことが睡眠の質の低下につながるため、無呼吸、低呼吸のなどの呼吸障害は、脳や体へ直接的なダメージを与えているという理解が必要です。
なるべく呼吸障害を改善しつつ、適切な睡眠時間を確保することがAHIの低下には欠かせません。さらに呼吸障害は、身体的な影響によるものが大半ですが、原因を突き止めたからといってすぐに改善できる訳ではありません。
例えば肥満が原因となっている場合、気道の周りの脂肪を取り除く必要があるため、食事の改善や運動の必要性が出てきます。
持続して適切な処置を行う必要があるため、睡眠の質の向上のためには一度医師の診断を受けることが最も効果的と言えるでしょう。
代表的な治療はCPAP
睡眠時無呼吸症候群の治療方として代表的なのは、CPAP療法です。
CPAP療法とは、睡眠中に専用のマスクを装着し、一定の圧力で空気を送ることで気道の圧迫を防ぐ治療法です。適切に気道を通るように空気を送り込むため、睡眠時の無呼吸を防ぐことができます。
機器は呼吸の補助としての役割しか持たないため、持続的に治療を行い、適切な気道を確保するまで継続する必要があります。
またCPAP療法は日本だけではなく、海外でも主流な治療法なため、普及率も高く安心して取り組むことができます。
まとめ
AHIとは、睡眠1時間あたりの無呼吸、低呼吸を測定した指数です。
このAHIを基準に睡眠障害、呼吸障害を測り、睡眠時無呼吸症候群の発症と、重症度を診断しています。
AHIの数値の高さは睡眠障害の重症度に直結するため、診断を受けた際はよくわからない数値として無視するのではなく、しっかりと医師の話を聞き、自分の睡眠の状態がどのようになっているのかを理解することが必要です。
そして、このAHIの数値を下げるには、睡眠の質を改善するしかありません。睡眠中の呼吸障害は自分自身で気がつくのは非常に難しく、第三者が近くにいない方の場合、小さな症状を敏感に察知することが大切になります。
睡眠時間を十分に確保できているにもかかわらず、疲れや倦怠感を感じたり、日中に眠気が残っていると感じたりする場合、自分の睡眠がうまく取れていないことを疑うようにしましょう。
睡眠中の呼吸障害は、脳や体へ直接ダメージを与えているということを理解し、些細な症状を感じた場合でもしっかりと睡眠診断を受け、適切な処置を受けるようにしてください。
よくある質問
Q.AHIは何がわかる?
A.AHIを測定することによって、睡眠中の無呼吸、低呼吸の回数を測定することができます。睡眠中の呼吸障害は、睡眠の質に直結する危険な病気です。
Q.AHIの数値を下げるには?
A.AHIの数値を下げるには、睡眠の改善、呼吸障害の改善しかありません。睡眠の質が低いから呼吸障害を起こしているのか、いびきや肥満などの呼吸障害から睡眠の質の低下を招いているのか、原因から突き止める必要があります。