睡眠時無呼吸症候群(SAS)とストレスの関係性
睡眠時無呼吸症候群は身体だけでなく、精神的にも不調が起きることがあります。ここでは、睡眠時無呼吸症候群のストレスが、どのような影響を与えるのか解説します。
眠りの質の低下により物事がうまく進まなくなる
睡眠時無呼吸症候群は眠りの質が低下するため、昼間の仕事中や車の運転中などに、強い眠気に襲われることがあります。
その結果、仕事のパフォーマンスが上がらず失敗をしてストレスになり、さらにイライラから人間関係も悪化する…など負のスパイラルに陥ってしまうものです。
このように、物事がうまく進まなくなると夜眠る前に考え込んでしまい、悪夢を見るなど睡眠の質がより低くなるでしょう。
不眠の原因がストレスであることも
「卵が先かニワトリが先か」のような話ですが、不眠はストレスが原因になっていることもあります。
人間の睡眠は、脳の「覚醒中枢」と「睡眠中枢」により管理されています。
身体がストレスを受けると中枢神経のバランスが崩れて、覚醒中枢が強くなり眠れなくなってしまうのです。
うつ病などのこころの病気は、多くの場合、不眠の症状も現れます。そのため、単なる不眠だと思い病院で検査したら、実はうつ病だったとういパターンもあります。
眠っても心身の疲れが取れず、いつも気持ちが重たい、行動意欲がなくなった、などの症状が続く場合はうつ病の可能性を疑ってみましょう。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とうつ病の関係についてはコチラのコラムでも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
ストレスが溜まる!睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群の症状は、人の身体に強いストレスを与えます。ここでは、具体的な症状や原因について解説します。
命にもかかわる睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に呼吸が止まってしまう病気です。
呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下して目を覚ましますが、再び眠りにつくとまた呼吸が止まってしまいます。
この状態が繰り返し起こるため浅い睡眠しか取れなくなり、日中は眠気に襲われて活発に活動できなくなります。
また、酸素濃度が低下すると心臓の動きが活発になるため、高血圧となることも特徴の一つです。
その他にも、酸素濃度の低下は動脈硬化や心筋梗塞・脳梗塞などのリスクを高めます。
これらの症状によるストレスは身体に負担をかけるため、血糖値やコレストロール値が上昇し、多くの生活習慣病を発症します。
睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠時に呼吸が止まる原因は、口から肺に空気を送る「気道」がふさがってしまうためです。
肥満体型になると気道が脂肪で覆われてしまうため、睡眠時無呼吸症候群にかかりやすくなります。
また、肥満だけでなく以下の条件に当てはまる方も、発症する確率が高いです。
- ・下あごが小さい
- ・扁桃腺が大きい
- ・花粉症や鼻炎などで鼻が詰まりやすい
- ・お酒を飲んですぐに寝ることが多い
このように、睡眠時無呼吸症候群は身体的な特徴だけでなく、生活習慣とも強い関連がある病気です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因については下記のコラムでも紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
睡眠時無呼吸症候群が悪化するとどうなる?
睡眠時無呼吸症候群を放置すると重症化して、心筋梗塞や脳梗塞、日中の眠気による事故などにより、死亡する可能性が高くなります。
厚生労働省が発表した「健康づくりのための睡眠方針2014」によると、中等以上の睡眠時無呼吸症候群の患者は、過去5年間で複数の交通事故を経験している方が2.4倍と大幅に高いです。
しかし、睡眠中に無呼吸となっても自覚していないケースがあり、気付かぬ間に重症化していることがあります。
睡眠時無呼吸症候群は、無呼吸だけでなく大きないびきも症状の一つですが、必ず症状が出るわけではなりません。
女性ではいびきが出ないことがあり、男女問わず眠気がなくても睡眠時無呼吸症候群と診断されるケースもあります。
睡眠時無呼吸症候群かもしれないと不安になったら、以下の表で眠気の自己評価が可能です。
日中の眠気チェック項目 | ほとんど眠る | しばしば眠る | たまに眠る | ほとんど眠らない |
---|---|---|---|---|
すわって読書中 | 3 | 2 | 1 | 0 |
テレビを見ている時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
会議・劇場などで積極的に発言などをせずにすわっている時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
乗客として1時間続けて自動車に乗っている時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
午後に横になったとすれば、その時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
すわって人と話をしている時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
アルコールを飲まずに昼食をとった後、静かにすわっている時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
自動車を運転中に信号や交通渋滞などにより数分間止まった時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
合 計 |
-
- 引用元:
独立行政法人 国立病院機構 近畿中央呼吸器センター – 睡眠時無呼吸症候群
それぞれの項目の点数を合計して、以下のどれに当てはまるか判断してください。
- ・0~5点 :日中の眠気少ない
- ・5~10点 :日中軽度の眠気あり
- ・11点以上 :日中の強い眠気あり
合計の点数が11点以上になった場合、睡眠障害の可能性が高いので早々に病院で検査するといいでしょう。
10点以下の場合でも、自覚症状があれば睡眠障害の可能性があるため、気になる方は病院での検査をおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療でストレスを減らそう
睡眠時無呼吸症候群は死にも至る病気なので、早い段階で治療を受けることが大切です。ここでは、病院ではどのような治療をするのか解説します。
根本の原因を解決するための治療
無呼吸症候群の根本的な原因は、肥満や扁桃腺肥大などの身体的な特徴にあります。
肥満が原因となって脂肪が気道をふさいでいる場合、食習慣の改善や運動などにより減量が必要です。ただし、減量は時間がかかるため、その他の治療も並行しておこないます。
扁桃腺が肥大しているのであれば、耳鼻科で扁桃腺を切除する手術が必要です。
扁桃腺はウィルスや細菌などが侵入した際に免疫反応を起こす重要な役割がありますが、扁桃腺を切除しても他のリンパ組織が代わりに働くため、一般的には身体に悪影響はありません。
無呼吸状態を減らすための治療
無呼吸状態を減らすための代表的な治療に、CPAP(シーパップ)療法があります。
CPAP療法とは睡眠時に無呼吸になるのを防ぐために、鼻に装着したマスクからエアチューブで空気を送り続けます。
これにより気道が通るようになり、深い睡眠になるだけでなく、いびきを防ぐことも可能です。
CPAP療法は睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法ですが、肥満や扁桃腺肥大などの根本的な原因がなくなるわけではありません。
そのため、減量などの根本原因を取り除く治療をするとともに、毎日継続的にCPAP療法をおこなうことが大切です。
睡眠時無呼吸症候群を改善してストレスを減らす生活習慣
睡眠時無呼吸症候群は生活習慣と密接な関係があるため、治療だけでなく日々の生活を変えていくことが求められます。ここでは、日常生活で意識するべきポイントについて解説します。
音楽やお風呂などでリラックスする
睡眠の質を上げるには病院での治療だけでなく、リラックスできる環境づくりも大切です。
日々の忙しさから入浴はせずにシャワーだけで済ませるという方は多いですが、湯船に浸かることは心身のリラックスに繋がります。
ぬるめと感じる温度で適度な時間入浴すると、もっとも効果が出るでしょう。
また、就寝の30~20分前に入浴による体温変化があると、寝付きやすくなる・深い睡眠の時間が増えるなどの効果があります。
ただし、就寝直前に高温(42℃以上)の湯船に浸かると体温が上がり過ぎて、身体が目覚めてしまうので気を付けましょう。
正しい生活習慣を身に付ける
正しい生活習慣は体重を減らす助けになるだけでなく、寝付きがよくなり中途覚醒の回数を減らす効果があります。
正しい生活習慣の条件はいくつかありますが、主なものは以下の通りです。
- ・心身を目覚めさせるために朝食を取る
- ・睡眠薬代わりに寝酒をしない
- ・定期的な運動を心がける
- ・規則正しい食生活を送る
- ・就寝前にタバコやカフェインの摂取を避ける
これらを実践することで睡眠と覚醒のリズムが整い、睡眠時無呼吸症候群の症状を和らげられます。
睡眠時の姿勢を変える
仰向けで眠っていると舌や軟口蓋(のどちんこの手前の柔らかい部分)が下がり、気道をふさぎやすくなります。
横向きで眠れば呼吸をしやすくなるため、睡眠時無呼吸症候群の症状が和らぐことがあります。横に眠る場合は身体の左側を下にすると、消化系の臓器に負担がかかりにくくなると言われているので、意識してみてください。
ただし、同じ方向を向いて寝ていると身体が歪み、筋肉のこりや冷え性、骨盤などにも影響が出る可能性があるため、寝返りを邪魔しない寝具を選ぶことも重要です。
無呼吸を防止するアイテムを使用する
無呼吸症候群の症状が軽度な場合には、呼吸を補助するアイテムを活用して治療します。
例えば、マウスピースを着用して下顎を前に出して固定すると、気道が開くので呼吸しやすくなります。
市販のマウスピースを使用するのではなく、専門の歯科医師に作成してもらいましょう。
マウスピースの他に口閉じテープも有効とされています。
口閉じテープは就寝する前に、唇に縦にテープを貼って使用します。唇同士が接触していると舌も唇付近に移動するため、気道がふさがらずに正しく呼吸ができるようになるのです。
ただし、鼻炎などで鼻が詰まっている方が使用すると呼吸ができなくなってしまうので、医師に相談してから口閉じテープを試すようにしましょう。
睡眠時間よりも質にこだわろう
「適切な睡眠時間は8時間」だと認識している方がいるかもしれません。しかし、必要な睡眠時間はひとそれぞれなので、睡眠時間よりも睡眠の質にこだわることが大切です。
例えば、睡眠時間が6時間だとしても、日中の眠気が困らない程度であれば問題ありません。
「もっと睡眠時間を長くしないと!」と思っていると、それがプレッシャーとなり逆に眠れなくなってしまうものです。
必要な睡眠時間以上に眠っても健康になるわけではないので、日中の眠気で困らない自然な睡眠時間を意識するようにしましょう。
生活習慣を改善すれば睡眠の質が向上するので、この記事を参考にしながら自分の生活を見直してみてください。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は浅い眠りが続くため、日中に眠気が強くなり仕事などに影響を与えます。
その結果、日常生活がうまく進まなくなり、大きなストレスを抱える病気です。
睡眠時無呼吸症候群は症状が重くなると、心筋梗塞や脳梗塞などが発症して命にかかわることもあります。
自覚症状がないこともありますが、日中に強い眠気に襲われるようなら病院での検査を受けてみましょう。
病院での治療は体重を減量するなどの根本的な原因を取り除く治療や、CPAP療法など無呼吸の状態を減らす治療があります。
その他に自宅でも、生活習慣を改善するなどできることがあるため、重症化する前に医師に相談しながら治療していきましょう。
よくある質問
Q.睡眠時無呼吸症候群とストレスの関係は?
A.睡眠時無呼吸症候群により浅い眠りが続くと、日中に強い眠気に襲われるためストレスを受けます。また、眠気により日常生活がスムーズに進まなくなり、夜に考え事をしてしまってさらに睡眠の質が悪くなるなど、負のスパイラルが発生します。
Q.睡眠時無呼吸症候群が悪化するとどうなる?
A.最悪の場合は死に至ります。呼吸が止まり酸素濃度の低下が発生すると、動脈硬化や心筋梗塞・脳梗塞などのリスクが高まるためです。その他にも、不眠により受けたストレスが身体に悪影響を及ぼし、血糖値やコレステロール値の上昇など生活習慣病も併発します。
参考文献