動悸の基本情報
まずは、動悸の基本情報について解説していきます。
動悸の症状について
通常、普段の生活の中で心臓の拍動を自覚することはありませんが、拍動・鼓動、その乱れを自覚することがあります。これを、「動悸」といいます。
動悸によって見られる主な症状は、次の通りです。
- ・心臓が一瞬止まる感じがする
- ・ときどき脈がとぶ
- ・急にドキドキし始めて、しばらくすると治まる
- ・脈が増え、手が震える
- ・胸が突き上げられるような感じがする
動悸の種類・タイプについて
さまざまな原因によって、あらゆるバリエーションの動悸が見られます。典型的な4タイプは、下記の通りです。
不整脈
動悸の原因で最も多いのが、不整脈です。
不整脈とは、正常な心拍のリズムが妨げられた状態をいいます。心臓は、心房や心室がリズムよく収縮することで、ポンプのように効率良く全身へ血液を送り出していますが、不整脈になると正しいリズムが刻めなくなり、うまく血液を送り出せなくなります。
不整脈にはあらゆるバリエーションがあり、それぞれ発生する動悸、症状も異なります。代表的なものを下記にまとめました。
期外収縮
期外収縮は、本来のリズムよりやや早いタイミングで脈を打つため、その後本来のリズムで脈を打つ間に通常より長めのブランクができます。これにより、リズムが乱れて「脈がとぶ」感覚を覚えます。
<期外収縮で感じる動悸のタイプ>
-
- ・正常:トントントントントントン…
-
- →強さ、リズムともに常に一定
-
- ・期外収縮:トントントトンットントントトンットン…
- →ときどき通常のリズムを刻めなくなるなるため、脈がとんだように感じる
心房細動
心房細動とは、心臓の血液を貯蔵する役割を持つ「心房」が、通常より細かく動き続けてしまう状態です。血液を送り出すポンプとしての機能は失われませんが、収縮のリズムがかなり不規則になるため、心臓に大きな負担がかかります。そのため、動悸だけではなく、息切れやめまい、頻尿などの症状もみられるのが特徴です。
<心房細動で感じる動悸のタイプ>
-
- ・正常:トントントントントントン…
-
- →強さ、リズムともに常に一定
-
- ・心房細動:トントトトトンットトトンッットントンットトトトトン
- →心房がぷるぷると細かくふるえるため、脈もばらばらになってしまう
心臓に原因がある場合
不整脈がなくても、本来の心臓の動きから逸脱することで、動悸を感じる場合があります。代表的な疾患は、次の通りです。
- ・心不全
- ・高血圧
- ・肥大型心筋症
- ・心臓弁膜症
- ・安静時狭心症 など
心臓以外に原因がある場合
上記のように、不整脈や心臓そのものに異常があることによって動悸を起こす場合もありますが、心臓以外を原因として動悸が生じる場合もあります。
代表的な原因は次の通りです。
- ・発熱
- ・貧血
- ・起立性低血圧
- ・甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
- ・更年期障害
- ・パニック障害
- ・過換気症候群
- ・心臓神経症
- ・自律神経失調症
- ・低血糖
- ・更年期障害
- ・妊娠 など
このような疾患や状態になると、自律神経の調整に不具合が生じます。
本来、心臓の動きを制御する自律神経は、体内のさまざまなシグナル(ホルモンなど)を感知しながら調整されています。ですが、上記のような場合は自律神経に乱れを生じさせ、心臓の制御に影響を及ぼします。その結果、拍動が強くなって動悸を自覚するようになります。
生理的な原因
動悸は、日常の生理現象や些細なきっかけでも起こることがあります。
- ・ストレス
- ・過度な緊張
- ・興奮
- ・カフェインやアルコールのとりすぎ
- ・脱水 など
動悸は病気のサイン?
ここまで、動悸の症状や発症の原因について解説しましたが、ときに動悸は命に関わる危険な疾患の前兆の可能性があります。
危険な動悸の見分け方
動悸や息切れは、ストレスや疲労などでも発症することもあるため、すべてが大きな病気のサインとは限りません。ですが、動悸・息切れに伴って次のような症状が出ている場合は、深刻な疾患が影響している可能性もあります。躊躇せず、なるべく早めに医療機関を受診しましょう。
- ・咳や痰が収まらない
- ・呼吸音が「ゼーゼー」「ヒューヒュー」など
- ・身体を少ししか動かしていないのにすぐに息が切れる
- ・呼吸がしにくい
- ・胸が痛む
- ・むくみがひどい
- ・倦怠感がある
- ・めまいやふらつきがある
- ・冷や汗が出る
- ・失神する
寝る前に動悸が現れる理由
医学的に断定はされていませんが、就寝前のリラックスしたタイミングで動悸を自覚することが多いとされています。また、寝る前に見られる動悸は、心理的な要因によって発生する場合が多いことも指摘されています。
ただ、不整脈や心疾患による動悸が就寝前に現れる場合もあるため、安易な自己判断はせず、医師による正しい診断を受けることをおすすめします。
動悸が起きたときは安静に
もし動悸が起こってしまったときは、とにかく安静にすることを第一に考えましょう。動悸を抑えようと焦れば焦るほど、さらに心臓に負担をかけてしまうので、落ち着くことが先決です。
そして、可能であれば、動悸が治まったら脈拍を1分間計測し、脈の様子を観察します。特に、次のような項目に注意してチェックしておくと、病院を受診した際に診断の手助けとなります。
- ・動悸が起こったときの行動や状況(何かきっかけなどはあったか)
- ・脈拍が規則正しかったかどうか(脈がとぶ感覚の有無)
- ・動悸が拍動する速さ(いつもより速い、もしくは遅いなど)
- ・動悸の持続時間
- ・動悸以外の症状があったか(めまい、吐き気、頭痛など)
- ・1分間の脈拍数
病院を受診する目安
もし動悸があっても、多くの人は病院に行くほどでもないと考えて、受診を後回しにしてしまいがちです。自分の動悸が病院を受診するほどのものなのかわからない場合は、次のポイントを参考にしてください。
動悸が3日以上続くときは病院へ
就寝時の動悸が3〜4日以上続く場合は放置せずに、病院の受診をすぐさま検討しましょう。
前述したように、動悸や息切れは、ストレスや疲労などでも発症することもありますが、実はその裏に深刻な不整脈や心疾患が隠れている場合も多いです。もし治療が遅れると、突然死につながりかねないので、早急な治療が必要になります。
また、精神的な要因での動悸も、放っておくと慢性的な睡眠不足やうつ病につながる可能性もあるため、やはり早めの治療が大切です。
動悸は何科を受診するべき?
動悸は、あらゆる原因・疾患によって発症するため、さまざまな診療科でみてもらうことができます。まずは、自分のかかりつけ医に相談してから、より専門的な診療科を紹介してもらうのがベストでしょう。
もし、自身のかかりつけ医がいない場合は、下記を参考に診療科を選択してみてください。
<循環器内科がおすすめの人>
-
- ・不整脈
-
- ・期外収縮
-
- ・心房細動
-
- ・安静時狭心症
-
- ・弁膜症
- ・高血圧 など
<内科がおすすめの人>
-
- ・肥満
-
- ・貧血
-
- ・低血糖
- ・嗜好品の過剰摂取(アルコールカフェインのとりすぎ) など
<心療内科・精神科がおすすめの人>
-
- ・パニック障害
-
- ・過換気症候群
-
- ・心臓神経症
- ・自律神経失調症 など
<婦人科がおすすめの人>
-
- ・更年期障害
- ・妊娠
動悸を予防するために日常生活でできること
動悸は、毎日の生活習慣を整えることで予防が可能です。ここからは、動悸を予防するために、ぜひ行ってほしい3つの予防法をご紹介します。
適度な運動
動悸の予防には、適度な運動が欠かせません。
運動不足による筋力の低下は、動悸や息切れが起こる原因のひとつです。日頃から、動きながらでも会話を楽しめる程度の軽い有酸素運動やエクササイズを取り入れていきましょう。
また、適度に運動して疲労することで、寝つきが良くなり、熟睡につながる効果も期待できます。
しかし、ゼェーゼェーと息切れするような激しい運動は、不整脈などの心疾患がある人には危険な場合があるので、負担をかけすぎない程度を意識してください。
減塩
塩分のとり過ぎは、高血圧の引き金になります。塩分をとり過ぎると、血中のナトリウム濃度が高くなり、体はそれを水分で薄めようとします。その結果、血流量が増えて、血圧が高くなるのです。
高血圧を防ぐためには、まず自分はどのくらいの塩分を摂取しているのか知ることが大切です。そして、どのくらいの塩分をとれば十分なのかを把握し、普段の食生活に取り入れてみましょう。塩分を含む食品を摂る頻度を減らしたり、毎日の料理に使う調味料に気を配ったりするのが効果的です。
また、高血圧ガイドラインでは、1日の塩分摂取量を6g未満にすることが推奨されているので、こちらも参考にしてください。
ストレスをためない
精神的な不安や緊張によっても動悸は引き起こされるため、日頃からストレスを溜めないことが大切です。
特に、夜ふかしなどによって満足な睡眠が取れないと自律神経の調整が乱れ、慢性的な睡眠不足につながります。そこから動悸が頻発し、さらに不眠状態になることも懸念されますので、睡眠の質を向上させるよう工夫をしてみてください。
よく眠るためには、次のことを意識すると効果的です。
- ・寝る直前のスマホやパソコンの使用は控える
- ・間接照明で赤みがかった温かみのある色で照らすと入眠効果アップ
- ・毎日同じ時間に寝床に入る
- ・寝床で飲食や読書、ゲームなどをしない
まとめ
今回は、寝る前に見られる動悸・息切れの原因や、危険な動悸の見分け方について解説しました。
動悸の多くは、不整脈や心疾患、心臓以外の疾患によって引き起こされますが、精神的な要因や生理的な要因によっても発症します。そのため、動悸がするからといって必ずしも大きな病気というわけではありません。
しかし、長期的に見られる場合や頻繁に見られる場合には、何かしらの疾患が隠れている場合があるので、心当たりがある際はためらわず、病院を受診することが大切です。
また、動悸は日々の生活習慣を改善することでも予防できます。日頃から適度な運動を取り入れたり、塩分のとり過ぎに気をつけたりすることで、動悸やそれに伴う疾患の発症を予防する効果が見込まれます。
この記事が、寝る前の動悸・息切れに悩んでいる人が次の一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
よくある質問
Q.どうして寝る前に動悸がするのですか?
A.動悸が起こる原因には、不整脈やそれに伴う心疾患、そして心臓以外の疾患、心理的な要因によるものなど、さまざまなものがあります。
Q.寝る前の動悸に悩んでいるのですが、病院に行くべきでしょうか?
A.動悸が3日以上見られる場合は、病院への受診を検討しましょう。また、動悸に伴って胸の痛みや息切れ、呼吸のしづらさ、失神などの症状が見られた場合は緊急性が高いので、速やかに医療機関で治療を受けましょう。