睡眠時無呼吸症候群のセルフチェック方法
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。英語ではSleep Apnea Syndrome、その頭文字をとってSASとも呼ばれています。
医学的には10秒以上呼吸が止まった状態を無呼吸として、一晩に無呼吸が30回以上、または1時間に5回以上あれば睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
睡眠時無呼吸症候群は、その名が示す通り睡眠時に発生しているため自分でなかなか気づきにくいとういう特徴があります。気付くためには体の不調や変調をチェックし、睡眠中の様子を家族やパートナーなどから聞くなどして、サインを見逃さないようにしましょう。
チェックポイント
睡眠時無呼吸症候群は寝ている間に起こるので気付きにくい病気です。パートナーや家族などが寝ている間に無呼吸を確認したのであればすぐに診察を受けましょう。それ以外の場合は次の項目をいくつあてはまるかチェックしてください。
- ・いびきが大きい、大きいと言われる
- ・朝までいびきがつづく
- ・夜中に何度も目が覚めたり、よくトイレに行く
- ・寝苦しいことが多い
- ・寝起きが悪い、すっきり起きられない
- ・起床時に頭痛がある
- ・睡眠時間は十分なのに、日中眠気がある
- ・運転中など重要な時でも眠くなることがある
- ・よく寝ているつもりでも疲れがとれない
- ・生活習慣病がある
上記に当てはまる項目はいくつありましたか?
当てはまる項目が2個までの方は、症状が一時的なのであれば問題のない可能性が高いです。ただし症状が長期間続くのであれば検査を受けましょう。
3個~4個までの方は、睡眠時無呼吸症候群予備軍の可能性があります。睡眠時無呼吸症候群になると寝ている間に十分な酸素を取り込めずに、身体の色々な部分に変調をきたし、疲れや集中力の低下などになって現れます。一度検査を受けた方が良いでしょう。
5個以上当てはまる方は、すでに睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。運転中に強い眠気があるようですと交通事故の原因になり、また心臓病や、糖尿病、高血圧など合併症を引き起こしやすいのが睡眠時無呼吸症候群です。早めに専門の病院で検査を受けましょう。
病院での検査方法
睡眠時無呼吸症候群の検査方法は大きく分けると「簡易検査」と「精密検査」の2つがあります。ここでは簡易検査と精密検査について解説します。
簡易検査
睡眠時無呼吸症候群の簡易検査として最も利用されているのがパルスオキシメーターです。パルスオキシメーターは新型コロナウイルスの際にも血中酸素濃度を測るために自宅療養やホテル療養の患者さんに貸し出されていたのでご存じの方も多いのではないでしょうか。
パルスオキシメーターを睡眠中に装着することにより、動脈血酸素飽和度と脈拍数を測定します。睡眠時に無呼吸が起こっている場合は、酸素を取り込むことが出来ずに動脈血酸素飽和度が下がるため、この測定値を元に睡眠時無呼吸症候群の診断を行います。
精密検査
睡眠時無呼吸症候群の精密検査として利用されるのが、ポリソムノグラフィー(PSG)です。正確には終夜睡眠ポリグラフ検査と言われ、通常一泊二日程度の入院を行い、夜の睡眠中に検査を行います。検査のために頭、あご、胸、指などにセンサーをつけ、睡眠中の脳波、血液中の酸素の量、心電図、気管内の空気の流れ、眼球の動き、あごの筋肉の動き、胸部や腹部の動きなどを測定し診断をします。
身体に色々な装置をつけるため寝にくく、簡易検査に比べて費用と時間がかかります。
家族やパートナーにチェックしてもらう
睡眠時に無呼吸状態があるかどうかを見るのに一番わかりやすいのは、他の人にチェックしてもらうことです。
睡眠時無呼吸症候群の症状で自分に当てはまるものがあり、身体の不調を感じるようであれば、お願いをして無呼吸状態があるかをチェックしてもらいましょう。その際には一晩中診てもらう訳にはいかないので数十分だけでも協力してもらい、その間に無呼吸が起こったのであれば、無呼吸が起きた時間の長さと頻度をチェックしてください。
またお願いする人がいない場合には、スマホなどで一晩撮影するのも良いでしょう。
アプリでチェックする
最近ではスマホで使える「睡眠アプリ」がたくさん出ています。アプリにもよりますが、いびきの録音が出来たり、寝ている間の体の動きや音などを記録したり、眠りの浅い時間帯までわかるような機能がついていたりします。さらにスマートウォッチの連動することで詳細なデータを得ることが出来たりもします。
「家族からいびきがうるさい」など言われ、睡眠時無呼吸症候群の症状に当てはまるものがあった場合にはスマホアプリを利用してみても良いでしょう。特にいびきの音が録音できると睡眠時無呼吸症候群チェックに役立つと思います。
ただしスマホアプリは、あくまでも参考です。それだけで判断することは決してせずに、症状があれば必ず専門の医療機関を受診してください。
睡眠時無呼吸症候群のサイン
睡眠時無呼吸症候群になると体の色々な部分に悪影響を与えます。それが症状となって現れるのですが、頭痛など睡眠時無呼吸症候群と結びつきそうにないものまであります。
身体の不調は睡眠時無呼吸症候群のサインかもしれません。見逃さないようにしましょう。
いびき
家族などから「いびきがうるさい」と言われたことはありませんか。
いびきは睡眠時無呼吸症候群の重大なサインです。いびきを指摘されても病気を疑うことはないかもしれませんが、実は大きないびきには重大な病気が隠れているかもしれないので注意しなければいけません。
いびきは、狭くなった気道を無理やり呼吸がとおることで、喉が振動して起こる異常な呼吸音のことです。主に舌の落ち込みによる閉塞が原因ですが、筋肉の衰えや肥満など、その発端はさまざまです。
舌が落ち込み完全にのどを塞いでしまうと呼吸が出来なくなり息が止まってしまうので、いびきは睡眠時無呼吸症候群の重要なサインです。大きないびきをかくようならダイエットやアルコールを控えるなど生活習慣の改善を始めましょう。
睡眠中に呼吸が止まる、息苦しさを感じる
睡眠中に息苦しさを感じて目が覚めてしまう「中途覚醒」が頻繁にある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。睡眠時にのどが塞がれて呼吸が止まってしまうと、血中の酸素濃度がさがってしまうので、息を吸うために覚醒します。そうすると心臓や血管、脳にまで負担がかかってしまい狭心症、心筋梗塞、脳出血、脳梗塞の発症頻度などの合併症を引き起こすリスクが高くなります。健常者に比べると3〜5倍の発症頻度といわれます。
「悪い夢でもみたかな」と軽くとらえて、そのまま放っておくと他の病気につながる可能性があるので、夜中に息苦しさを感じて何度も目覚めてしまう場合には検査を受けるようにしましょう。
昼間の眠気
睡眠時間は十分とったはずなのに、昼間の眠気が強い場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に何度も息が止まり、そのたびに中途覚醒を繰り返すため、深い睡眠をとることが出来ません。質の悪い睡眠を日々繰り返すと、日中強い眠気におそわれることが頻繁に起こるようになります。それが運転中であれば命の危険があり、とりかえしのつかないことになるでしょう。
制御できないくらいの眠気を感じるようであれば、当ページで紹介している睡眠時無呼吸症候群チェックをしてみることをおすすめします。
起床時の疲れや頭痛
朝起きたときに両側性の頭痛があり、その頭痛が30分以内に消えるという場合は睡眠時無呼吸性頭痛が疑われます。
原因は睡眠時に無呼吸になることにより、肺が酸素を取り込めずに低酸素血症や高炭酸ガス血症、眠れないことによるストレスによるものと考えられています。
また、朝起きたときに疲れを感じることが多い場合にも睡眠時無呼吸症候群を疑うべきです。深い睡眠がとれずに疲れが回復しきれていない可能性があります。他、起床時に頭痛がある場合も一度医師に相談してみることをおすすめします。
起床時に口が乾いている
日中は特に口の乾きを感じることはないのに、朝起きたときにはなぜか口の中が乾燥している場合も睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
口が乾く原因としては、鼻呼吸ではなく口呼吸をしていることが考えられます。
口呼吸するために口を開いていると舌がのどの奥に落ち込んでしまうので気道が閉塞してしまい、いびきや睡眠時の無呼吸を引き起こす原因になってしまいます。常に鼻呼吸をしているかどうかを意識してチェックするようにしましょう。
ED(勃起機能不全)
睡眠時無呼吸症候群とED(勃起機能不全)に関係があることが報告されています。
原因としては、睡眠時の無呼吸により酸素が十分に運ばれないことや睡眠不足によるホルモンの乱れなどが考えられます。男性ホルモンの代表であるテストステロンが作られるのは主に睡眠中です。睡眠不足の場合、テストステロンの量が減ってしまいED(勃起機能不全)につながる可能性があります。
ED(勃起機能不全)でお悩みの方は睡眠時無呼吸症候群チェックをしてみることをおすすめします。
集中力・記憶力の低下
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類の眠りがあり、その両方共が記憶の定着に関わります。そして記憶の定着には、レム睡眠とノンレム睡眠を約90分おきに繰り返す、正常な睡眠サイクルになっていることがだいじです。
睡眠時無呼吸症候群の場合は、レム睡眠やノンレム睡眠の周期が乱れるため、記憶の定着作用がうまく働かず、記憶力の低下につながります。
また無呼吸症候群になると夜中に十分な睡眠がとれていないため、疲れがとれなかったり、昼間に眠気に襲われてものごとに集中できなくなったりしてしまいます。
充実した生活を送るためにも睡眠時無呼吸症候群を治療し、質の良い睡眠をとることが大切です。
抑うつ状態
睡眠時無呼吸症候群の症状に「日中、眠くてだるい」「集中力の低下」「やる気がおきない」などがあります。これらはうつ病の症状と似ており、実際にうつ病と診断された人が実は睡眠時無呼吸症候群だったということも少なくありません。
また睡眠時無呼吸症候群の人はうつ病になりやすく、その逆もおこりやすいと言われています。
原因として考えられるのは、睡眠時無呼吸症候群によって睡眠の質が低下し、脳がうまく休めないことです。うつ病の治療を受けていたり、うつ病を疑っていたりして、さらに睡眠時無呼吸症候群のサインがある人は専門の病院を受診した方が良いでしょう。
睡眠時無呼吸症候群の検査方法?
睡眠時無呼吸症候群は寝ている時に起こるので、自分では気付きにくい病気です。早期で発見するためにはサインを見逃さず、見つけたら専門の病院で検査をしましょう。
ここでは検査の方法について紹介します。
問診
病院に行った際には、まず問診で症状をしっかりと伝えましょう。他の病気と違い睡眠時無呼吸症候群は寝ている間のことなので、診察で原因を突き止めることは困難です。日中の症状などを伝えることが大事です。
いびきや頭痛、日中の眠気など身体の不調をチェックし伝えることが大事です。
スクリーニング検査
パルスオキシメーターを使用して、睡眠中の動脈血酸素飽和濃度を測定します。睡眠時無呼吸症候群になると呼吸が止まってしまうため、身体の酸素濃度が低下し低酸素状態になります。ただしこの方法でわかるのは酸素濃度だけで、深い睡眠がとれているのかまではわかりません。症状によっては他の検査を行う必要があります。
簡易無呼吸検査
問診で睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、簡易ポリソムノグラフィと言われるスクリーニング検査が行われることがあります。自宅で寝るときに携帯型の装置をつけ、睡眠中の呼吸状態や心拍数、酸素飽和度などを調べます。体の負担もなく、自宅でリラックスしながら検査できるのがメリットです。
ポリソムノグラフィ(PSG)検査
上記よりさらに精密に調べることが出来るのがポリソムノグラフィ(PSG)検査です。通常は1泊2日で入院をして、身体の色々な部位にセンサーを取り付け、睡眠中の脳波、血液中の酸素の量、心電図、気管内の空気の流れ、眼球の動きやあごや胸部、腹部の動きなどを測定し、睡眠時無呼吸症候群の重症度や原因についての診断を行います。
病院で寝る上に、様々な装置をつけるためリラックスして眠れないなどのデメリットはありますが、より精緻なデータをとることが出来るのが特徴です。
睡眠時無呼吸症候群の治療をしないとどうなるのか?
いびきや起床時の頭痛、日中の眠気などを感じているのに、治療をしないと合併症を引き起こしやすいのが睡眠時無呼吸症候群という病気です。
高血圧のリスク
本来睡眠中は副交感神経が優位に働き血圧は安定しているのですが、無呼吸により覚醒すると交感神経が優位に働き血圧が上昇します。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に無呼吸と呼吸再開が繰り返し短期的に急激な血圧変動が続くので心臓や血管に負担がかかってしまいます。そうなると動脈硬化や心筋梗塞などにつながるリスクが高くなるので注意が必要です。
糖尿病のリスク
2型糖尿病患者における睡眠時無呼吸症候群(SAS)の有病率は65%、アメリカでは77%という報告されています。それほど睡眠時無呼吸症候群と糖尿病は合併率が高いのです。
原因は睡眠不足によりインスリンが上手く働かないことなどもありますが、睡眠時無呼吸症候群と糖尿病は、暴飲暴食による肥満と同じ原因で起こるということも理解しておかなければいけません。
心血管障害
睡眠時無呼吸症候群は高血圧を誘発し、血管や心臓に負担をかけてしまいます。
睡眠時に呼吸が停止してしまうと酸素を取り込むことが出来なくなってしまいます。そうなると心臓は酸素を取り込むことに必死になり、急激に心拍数を上げます。それが心臓にとって負担となり心筋梗塞や心不全といった心臓の病気につながってしまうのです。
交通事故のリスク
国土交通省の発表によると、睡眠時無呼吸症候群の人は、そうでない人に比べて、交通事故のリスクが2.4倍であることが示されています。
睡眠時無呼吸症候群になると、無呼吸などが原因で睡眠中に何度も目覚めてしまい睡眠の質が低下してしまいます。そうなると日中に強い眠気が襲ってくることがあります。これが運転中に起きると交通事故を引き起こす原因になるのです。
まとめ
この記事では睡眠時無呼吸症候群のセルフチェックの方法や病院での検査方法、睡眠時無呼吸症候群のサインについて解説しました。
睡眠時無呼吸症候群は、自分で気付くことが難しい病気です。知らない間に症状が進み心臓病などを引き起こしてしまう可能性があります。
そうならない為には早期発見が大事です。この記事の中にある睡眠時無呼吸症候群のチェックやサインに当てはまることがあれば、一度専門の病院で診察を受け、検査してもらいましょう。
よくある質問
Q.睡眠時無呼吸症候群のセルフチェックのポイントは?
A.日常生活の中の身体の不調などをチェックしてください。自分でわかりやすいポイントは、起床時の頭痛、昼間の眠気、倦怠感などです。また睡眠時無呼吸症候群は家族に見てもらったり、ビデオを撮ったりしてチェックをしましょう。
Q.睡眠時無呼吸症候群はどのような検査をしますか?
A.問診、パルスオキシメーター、自宅で出来る簡易のポリソムノグラフィ、入院が必要なポリソムノグラフィなどがあります。検査方法は症状によって変わるので、まずは専門の病院で診察を受けることをおすすめします。